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6章 迷子
懲りない男
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魔導アシスト弓の作り直しを要求されたので、渋々ながらデチューンを施していくことにする。
処分とか封印とか禁止を言い渡されなかったのは、アリーセの大好きな弓だからだろう。
必死に今後の為だと言って、アリーセの装備品の強化の必要性と正当性を訴えた事は一切関係がない。
ついでに防具の強化の必要性も説いて、魔導アシストスーツ作成の許可ももぎ取ったことも関係がない。
パールには俺の世界では医療や介護の為に使われている技術の再現だと言っておけば大丈夫だろう。
それはさておき、魔導アシスト弓のデチューン作業だ。
といっても、パーツその物を作り変える必要はない。
アシストに使っているゴーレムのパーツがリミッター的な動作もするようにしただけなので、周りの警戒とかをやらなければ歩きながらでも出来てしまうのだ。
現状は矢を放つリリースの際に魔導アシストによる引く方向の力を0にしているが、この引く力をリリースした後も抵抗として残し威力を弱めようという算段だ。
普段はリミッターをかけて使い、いざという時にはリミッター解除というプロセスを経て高火力での攻撃手段も残しておくというわけだ。
ゴーレムのパーツを利用している為、音声認証も出来るので、リミッターの調節やセーフティ機能も追加しておこうと思う。
「あ痛っ!?」
「もきゅっ(ご主人、歩き改造は危険だから止めた方がいいの)」
歩きながらゴーレムコアに書き込むプログラムを作成していたら、木にぶつかってしまった。
兜もあるし痛くは無かったが、自分のステータス的に考えると、ぶつからないで避けられそうな気がしていた。
流石に他の事に集中しているとなると、他が疎かになってしまうのはステータスの高さや今あるスキルなど関係がないようだ。
ながら歩きを安全にこなすには、並列思考とかそういうスキルが必要になるのだろうか?
「ちゃんと前見て歩きなさいよ? そんな兜被ってるから前が見にくいんじゃないの?」
「失敬な、しっかり前面180度半球状に視界クッキリ、バックミラー搭載で後方の確認出来るぞ! さらにズーム機能、サーモグラフィー、ソナー、暗視装置なんかも随時更新予定だ。 ズーム機能はレンズを可動式にしてやれば出来るのだが、ピントを合わせようとするとレンジファインダーが必要になって……」
「ごめん、イオリはそのままで構わないわ!」
逃げたか……。
構わないとアリーセから言質を取ったので、あっちフラフラこっちフラフラしながら、リミッター付き魔導アシスト弓を仕上げていく。
リミッターのレベルを調整するついでに、パーツをもう一組つけてアシストの力を増し、アシストのレベルも調整出来るようにしておく。
アシストレベルマックスで羽を引くかのように弓が引くことも可能だ。
「よし終了だ」
「え、本当? いい感じになった?」
「最初の状態が最高にいい感じだっただろ!?」
「もきゅ?(見解の相違ってやつ?)」
アリーセにアシストとリミッターの使い方を説明して弓を渡す。
「声で言うか、滑車部分のダイアルで直接調整するのね? よくよく考えると引く力も、放つ力も選べるって、地味に凄いわね。 小さな子供でも使えちゃうってことでしょう?」
「その辺は安全を考えて、ちゃんとゴーレムの認証機能でアリーセにしかまともにアシストが使えないようにしてあるぞ」
アリーセ以外が使おうとすると、アシスト無しでリミッター最大になるように設定されている。
引くときめちゃくちゃ重いのに、放ってもひょろひょろな矢にしかならないという、ただの筋トレマシンと化すのだ。
「つまり、本当に私専用ってことなの?」
「まごうことなくアリーセ専用だな。 あとアシストとリミッターの設定も10個まで登録出来るから、使い分けてくれ」
「最大攻撃って、最初の試射のアレよね? あれ必要?」
「いきなりドラゴンに襲われることもあるんだから、あっても悪くないだろ? 普段は抑えておけるんだし」
矢の先にホーリークリスタルくくりつけたら邪神にも効きそうな気がするしな。
「もきゅっ(まだ行かないの?)」
「おっと、すまんなマル、先に進もう」
「えーと、リミッターは1メモリでどの位なわけ?」
「目盛り1つ進むごとに強さが半分ずつになるぞ」
目盛りが1で1/2、2で1/4、3で1/8、4で1/16と続いていき1/1024まで可能だ。
「パーセントとかじゃないの?」
「どうせ1パー未満が欲しくなるし、そんなにたくさん目盛り刻んでられんよ」
「使って試せって事ね!」
「もっきゅ?(行っちゃっていいの?)」
マルがペシペシと俺の足を叩いて、一向に進まない俺とアリーセに抗議の声を上げる。
「ああ、すまん。 とりあえず先に進もうぜ」
「そ、そうね、ゴメンねマル」
「もきゅー!(しゅっぱーつ)」
マルが先頭に立って、歩みを早める。
アリーセが弓を試射したそうにアイテムボックスから、出したり収納したり、と落ち着きが無い。
まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだな。
「こういう時に限って、何にもモンスターの反応がないのよね」
「試射もしてない状態で実戦に使おうとするな」
「もきゅ(なんか、立場が入れ代わったみたいになってるの)」
マルがソワソワと落ち着きのないアリーセを見て感想をもらす。
「マルは知らないのだろうが、アリーセはしっかりしているように見えて結構ポンコツだぞ?」
小声でマルに、アイテムボックスに水を収納する時のエピソードや弓に特殊な矢を渡したときのエピソード、ギルドでを面白おかしく脚色して語って聞かせてやる。
「もっきゅー(なるほどー)」
「……で、ギルドのマナー講習に最初に出たときなんか、教えてくれる人は貴族でもなんでもないのに何度もトイレに行ってさ、しまいには出てこなくなって、流石に呼びに行ったらよほど慌てたらしく便器に足を突っ込んだ上にパンツ上げないで飛び出して……」
「もきゃ!(ご主人、うしろ!)」
「ん? 後ろがどうかした……」
「なかなか面白いお話をしているわねー? 誰の話をしてるのかしらー?」
振り返ると、魔導アシスト弓を笑顔で構えたアリーセが居た。
おかしいな、そんなスキル無いはずなのに背後に鬼のようなオーラが見えるような気がする。
数々の修羅場をくぐっていなかったら、漏らしていたかもしれない。
「足は無事だったし、ちゃんと履いてたわよ!」
叫ぶと同時に顔の赤いアリーセに矢をバカスカ撃ち込まれる。
「うわっ、たっ、危ね!? ちょ、ま、話せば解る!」
「問答無用ー!」
「ぎゃー!」
「もきゅぅん?(うーん、流石にご主人が悪いかな?)」
逃げ出した俺の背中にガスガスと弓が当たる。
鎧越しに衝撃を感じるので、相当な威力だし、当たる場所も明らかにそこに刺さったら死ぬだろうって場所だ。
「ってゆーか、鎧越しとは言えなんでノーダメージなのよ!?」
「仕様だ! ちょ、なんか徐々に威力上がってないか!?」
流石に痛くなってきたし、生身で受けたら即死するくらい威力がありそうで怖い。
どんなに回避行動をとっても、急所必中する容赦の無いアリーセの攻撃を食らいながら逃げ回る。
なにもかわせてないのに一体何から逃げてるのかって?
関節技だよ!
「ちっ、矢が無くなったわ」
「鎧がなかったら即死だった……」
腰を落として低く構えるアリーセと少し距離をとってにらみ合うような感じになった。
俺が一歩下がろうと意識がほんの少し外れた瞬間に一気に間合いを詰められた。
「まさか、縮地だと!?」
「意識が逸れた隙に踏み込みこんだだけよ!」
「ぐっふぉうっ!」
タックルを食らい、両足を刈られて転倒、そのまま右脚を捕まれひっくり返され、足を決められた。
「取れる! 足取れちゃうからあっ!」
「なにか私に言うことはないかなー? んー?」
いくら鎧を着てても無意味な攻撃に耐え……られるか!
地面をバンバン叩いてギブアップ宣言をするが放して貰えない。
「ご、ごめんなさい……」
「よろしい」
手加減なのかどうかはわからないが、意識を飛ばすことなく被害は右足だけで済んだ。
取れるかとは思ったが……。
俺がアリーセの膝関節技から逃がれると、マルが鳴り続ける見覚えのある黒電話を持ってきた。
「もきゅ(ご主人、お電話)」
「あとほんの少し早く持って来て欲しかった……」
具体的には俺が矢を食らう前に……。
ため息を付きながら受話器をとり電話に出る。
「こちらは破壊と再生の天使イオリエル! 終末ホルンを吹き鳴らせ!」
処分とか封印とか禁止を言い渡されなかったのは、アリーセの大好きな弓だからだろう。
必死に今後の為だと言って、アリーセの装備品の強化の必要性と正当性を訴えた事は一切関係がない。
ついでに防具の強化の必要性も説いて、魔導アシストスーツ作成の許可ももぎ取ったことも関係がない。
パールには俺の世界では医療や介護の為に使われている技術の再現だと言っておけば大丈夫だろう。
それはさておき、魔導アシスト弓のデチューン作業だ。
といっても、パーツその物を作り変える必要はない。
アシストに使っているゴーレムのパーツがリミッター的な動作もするようにしただけなので、周りの警戒とかをやらなければ歩きながらでも出来てしまうのだ。
現状は矢を放つリリースの際に魔導アシストによる引く方向の力を0にしているが、この引く力をリリースした後も抵抗として残し威力を弱めようという算段だ。
普段はリミッターをかけて使い、いざという時にはリミッター解除というプロセスを経て高火力での攻撃手段も残しておくというわけだ。
ゴーレムのパーツを利用している為、音声認証も出来るので、リミッターの調節やセーフティ機能も追加しておこうと思う。
「あ痛っ!?」
「もきゅっ(ご主人、歩き改造は危険だから止めた方がいいの)」
歩きながらゴーレムコアに書き込むプログラムを作成していたら、木にぶつかってしまった。
兜もあるし痛くは無かったが、自分のステータス的に考えると、ぶつからないで避けられそうな気がしていた。
流石に他の事に集中しているとなると、他が疎かになってしまうのはステータスの高さや今あるスキルなど関係がないようだ。
ながら歩きを安全にこなすには、並列思考とかそういうスキルが必要になるのだろうか?
「ちゃんと前見て歩きなさいよ? そんな兜被ってるから前が見にくいんじゃないの?」
「失敬な、しっかり前面180度半球状に視界クッキリ、バックミラー搭載で後方の確認出来るぞ! さらにズーム機能、サーモグラフィー、ソナー、暗視装置なんかも随時更新予定だ。 ズーム機能はレンズを可動式にしてやれば出来るのだが、ピントを合わせようとするとレンジファインダーが必要になって……」
「ごめん、イオリはそのままで構わないわ!」
逃げたか……。
構わないとアリーセから言質を取ったので、あっちフラフラこっちフラフラしながら、リミッター付き魔導アシスト弓を仕上げていく。
リミッターのレベルを調整するついでに、パーツをもう一組つけてアシストの力を増し、アシストのレベルも調整出来るようにしておく。
アシストレベルマックスで羽を引くかのように弓が引くことも可能だ。
「よし終了だ」
「え、本当? いい感じになった?」
「最初の状態が最高にいい感じだっただろ!?」
「もきゅ?(見解の相違ってやつ?)」
アリーセにアシストとリミッターの使い方を説明して弓を渡す。
「声で言うか、滑車部分のダイアルで直接調整するのね? よくよく考えると引く力も、放つ力も選べるって、地味に凄いわね。 小さな子供でも使えちゃうってことでしょう?」
「その辺は安全を考えて、ちゃんとゴーレムの認証機能でアリーセにしかまともにアシストが使えないようにしてあるぞ」
アリーセ以外が使おうとすると、アシスト無しでリミッター最大になるように設定されている。
引くときめちゃくちゃ重いのに、放ってもひょろひょろな矢にしかならないという、ただの筋トレマシンと化すのだ。
「つまり、本当に私専用ってことなの?」
「まごうことなくアリーセ専用だな。 あとアシストとリミッターの設定も10個まで登録出来るから、使い分けてくれ」
「最大攻撃って、最初の試射のアレよね? あれ必要?」
「いきなりドラゴンに襲われることもあるんだから、あっても悪くないだろ? 普段は抑えておけるんだし」
矢の先にホーリークリスタルくくりつけたら邪神にも効きそうな気がするしな。
「もきゅっ(まだ行かないの?)」
「おっと、すまんなマル、先に進もう」
「えーと、リミッターは1メモリでどの位なわけ?」
「目盛り1つ進むごとに強さが半分ずつになるぞ」
目盛りが1で1/2、2で1/4、3で1/8、4で1/16と続いていき1/1024まで可能だ。
「パーセントとかじゃないの?」
「どうせ1パー未満が欲しくなるし、そんなにたくさん目盛り刻んでられんよ」
「使って試せって事ね!」
「もっきゅ?(行っちゃっていいの?)」
マルがペシペシと俺の足を叩いて、一向に進まない俺とアリーセに抗議の声を上げる。
「ああ、すまん。 とりあえず先に進もうぜ」
「そ、そうね、ゴメンねマル」
「もきゅー!(しゅっぱーつ)」
マルが先頭に立って、歩みを早める。
アリーセが弓を試射したそうにアイテムボックスから、出したり収納したり、と落ち着きが無い。
まるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のようだな。
「こういう時に限って、何にもモンスターの反応がないのよね」
「試射もしてない状態で実戦に使おうとするな」
「もきゅ(なんか、立場が入れ代わったみたいになってるの)」
マルがソワソワと落ち着きのないアリーセを見て感想をもらす。
「マルは知らないのだろうが、アリーセはしっかりしているように見えて結構ポンコツだぞ?」
小声でマルに、アイテムボックスに水を収納する時のエピソードや弓に特殊な矢を渡したときのエピソード、ギルドでを面白おかしく脚色して語って聞かせてやる。
「もっきゅー(なるほどー)」
「……で、ギルドのマナー講習に最初に出たときなんか、教えてくれる人は貴族でもなんでもないのに何度もトイレに行ってさ、しまいには出てこなくなって、流石に呼びに行ったらよほど慌てたらしく便器に足を突っ込んだ上にパンツ上げないで飛び出して……」
「もきゃ!(ご主人、うしろ!)」
「ん? 後ろがどうかした……」
「なかなか面白いお話をしているわねー? 誰の話をしてるのかしらー?」
振り返ると、魔導アシスト弓を笑顔で構えたアリーセが居た。
おかしいな、そんなスキル無いはずなのに背後に鬼のようなオーラが見えるような気がする。
数々の修羅場をくぐっていなかったら、漏らしていたかもしれない。
「足は無事だったし、ちゃんと履いてたわよ!」
叫ぶと同時に顔の赤いアリーセに矢をバカスカ撃ち込まれる。
「うわっ、たっ、危ね!? ちょ、ま、話せば解る!」
「問答無用ー!」
「ぎゃー!」
「もきゅぅん?(うーん、流石にご主人が悪いかな?)」
逃げ出した俺の背中にガスガスと弓が当たる。
鎧越しに衝撃を感じるので、相当な威力だし、当たる場所も明らかにそこに刺さったら死ぬだろうって場所だ。
「ってゆーか、鎧越しとは言えなんでノーダメージなのよ!?」
「仕様だ! ちょ、なんか徐々に威力上がってないか!?」
流石に痛くなってきたし、生身で受けたら即死するくらい威力がありそうで怖い。
どんなに回避行動をとっても、急所必中する容赦の無いアリーセの攻撃を食らいながら逃げ回る。
なにもかわせてないのに一体何から逃げてるのかって?
関節技だよ!
「ちっ、矢が無くなったわ」
「鎧がなかったら即死だった……」
腰を落として低く構えるアリーセと少し距離をとってにらみ合うような感じになった。
俺が一歩下がろうと意識がほんの少し外れた瞬間に一気に間合いを詰められた。
「まさか、縮地だと!?」
「意識が逸れた隙に踏み込みこんだだけよ!」
「ぐっふぉうっ!」
タックルを食らい、両足を刈られて転倒、そのまま右脚を捕まれひっくり返され、足を決められた。
「取れる! 足取れちゃうからあっ!」
「なにか私に言うことはないかなー? んー?」
いくら鎧を着てても無意味な攻撃に耐え……られるか!
地面をバンバン叩いてギブアップ宣言をするが放して貰えない。
「ご、ごめんなさい……」
「よろしい」
手加減なのかどうかはわからないが、意識を飛ばすことなく被害は右足だけで済んだ。
取れるかとは思ったが……。
俺がアリーセの膝関節技から逃がれると、マルが鳴り続ける見覚えのある黒電話を持ってきた。
「もきゅ(ご主人、お電話)」
「あとほんの少し早く持って来て欲しかった……」
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