アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

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6章 迷子

浪漫否定ドラゴン

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 俺は意識を手放し……てないな。
 いや、気絶直前までは行ったが、黒い何かが抜けた時に熱も一緒に抜けていき、スッキリ爽快感が物凄かったので、ぎりぎりのところで意識が保たれたのだ。
 あの黒いモヤモヤだかドロドロに、どんな影響を受けていたかはわからないが、例えるならば、腕の良い接骨院で身体中のコリをほぐされ、そのまま高級なベッドでガッツリ8時間くらいしっかり寝て、便秘が解消した後に、全裸で海岸を走り回っているような開放感だ。

「おかしいの? 視覚化するほどの邪気を祓って、レベルもそこそこ上がったはずだが、特に変わったように見えぬの」

「レベル? ああ、本当だ……ってあぶねーな! 急激にレベルアップすると筋肉痛やらなにやらで結構酷い目にあうんだぞ!」

 俺のステータスはチートツールによって変更して、更に固定したのでレベルが上がっても変動が無い。
 これはレベルが上がったときに元の数値に戻ってしまう可能性を防ぐためと、数値の変化で苦しみたくないからである。

「己の能力を自由に変えられるというのは、非常識な存在だの。 まあよい、今更言っても仕方がない。 して、どうだ? 変わりはないか?」

「さっきは熱くて死ぬかと思ったが、今は新品のパンツを履いた朝のようにサッパリしているな」

 邪気とか言っていたが、なんらかの影響を受けていたのだろうか?
 俺にはよくわからないが、コンディションポーションを飲んだ後の様な状態に近い気がする。

「あ、でも、なにか不思議な力というか、神の力が身について、何でもできてしまうかのような万能感が湧き上がって……」

「気のせいだ。 主に神の目印であるだけだからの、使徒になってもその様な効果は無い」

「無いのかよ!」

「現在進行形で邪気によって捻じ曲げられていた物があれば、もとに戻ることはあるであろうが、調和の神であるリーラ様は精神構造や考え方が変えてしまわれたり、能力を大きく変化させる事などはせぬの」

 それは懐が広いな? ん? それって一見不利益が無いように見えるけど、タダ働きさせられるってことなのでは?

「イオリには関係が無かったが、大きくレベルアップするのは、普通ならば十分過ぎる程の報酬だと思うがの。 それに邪神からの干渉を防げるだけでも利益はあるであろう?」

 確かにそうか……。 邪神に捻じ曲げられたといえば、俺の欲望の幾つかが抑えられてるって事があるが、それも治ったのだろうか?
 今の所、実感的な物はまったく無いな、なにか手っ取り早い確認方法とかないかな?

「そうだパール、確認の為にちょっと服を脱いで……」

「不能は治っとらんぞ」

 間髪入れずパールがバッサリと俺の疑問を解決してくれやがった。

「脱ぐのは構わんがな」

「いや、構えよ! そして意味が無いのに脱ぐな。 うん、スカートもまくって見せてくれなくて良いからな。 ん? へーちゃんと尻尾があったんだな……って、だから尻も見せなくて良いっての!」

 恥ずかしげもなく見せられても、全く興奮しないな……。
 悲しい男のサガなのか、思わず目は行ってしまうことはあるが、魔法によって人の姿に変えているパールの、人体の再現性の方が興味深いと思ってしまい、途中からフィギュアや立体データの確認をしているような気分になってしまった。

「ふむ、どうやら知らぬうちにより欲望が希薄になっておったようだの」

「悪化してたのか!?」

「おそらく位相結界脱出時に、邪神の力に近づいたせいであろう。 気が付かずに放っておいたら、欲望や感情を完全に喰われておったやも知れぬの」

 邪神の野郎絶対に許さねぇ、更なる嫌がらせを追加しつつ、倒すなり封印するなりの方法を模索しないといかんな。
 爪と言わず次はホーリーメタル粉で目とか狙ってやろう。
 人工的作った金属粉はエッジが立っているから、ただの砂より深く刺さるからな。

「悪い顔をしておるぞ、負の感情もまたリーラ様は認めておられるが、そればかりに偏りすぎるのはいかんの」

「そう言うが、不条理や不利益に憤るのは、自然な反応だろ? 今後の人生邪神に嫌がらせだけして生きても悔いは無い!」

「負の感情で邪神と向き合っても喜ばせるだけだ、正義感を持てとまでは言わぬが、もっと事務的に対処を考えた方が良かろう」

 なるほど一理あるな。 よし、面白半分に嫌がらせをしてやろう。
 ホーリーメタル粉に刺激物や汚染物質なんかも混ぜて、勢い良く噴霧するというのはどうだろうか?
 お、ちょっと楽しくなってきたぞ。

「喫緊の問題は取り敢えずこれで大丈夫だの。 それで、界渡りをした先の対応についてだが、なにか妙案はないかの?」

「妙案? パールはどこからでも界渡りが出来るんだから、遠くからちょこっと見に行って蹴散らしてくるってのは駄目か?」

 決めつけは危険だが、どうせシェイプシフターが待ち伏せでもしてるんだろうから、パールがちょちょいと片付けてくれれば問題無いように思える。
 もちろん、謝礼魔晶石くらいはいくらでも出すつもりだ。

「我が下手に暴れると空間にも干渉を及ぼしてしまって、ジャンプポイントが使えなくなってしまう可能性があるのだ。 一度乱してしまった空間は、元の状態に戻るまで少々の時間を必要とするので、あまりお薦めはせぬの」

 空間に干渉するって、どういう暴れ方をするつもりだ!?
 あ、でも俺が龍言語魔法で戯れに吐いたブレスが、いろいろとヤバそうだったことを考えると、本家のブレスとか気軽に吐かれたら洒落にならんレベルに達していそうだ。

「えーと、少々の時間ってどのくらいだ?」

「20年といったところかの」

 だから20年は少々じゃない……。

「そうだな、じゃあ、捜査用の魔道具を先に送って偵察してみるというのはどうだろう?」

「同一空間ならばともかく、異なる世界からその魔道具から送られる情報をどのように受け取るのかの? 我が情報を拾うことは出来ぬぞ」

「あーそうか、でもまあリアルタイムにする必要はないだろ。 偵察の情報を記録だけさせておいて魔道具ごとこっちに戻すってのは駄目か?」

「ふむ、それくらいであれば可能だが、破壊されては元も子もないのではないかの?」

 そこは多少の防衛機能をつけて、数とかでカバーすれば良い気がする。
 もし一つも帰ってこないとかでも、そういう脅威が待っているという情報になるしな。
 俺の考えを伝え、どの程度の物を問題なく送れるのか等パールと偵察の計画を練っていく。

「ミニゴーレムに記録機能と邪神のお目々真っ赤しちゃえ君1号を搭載して付近をジャンプ先を捜索させよう」

「ネーミングセンスはともかく、我に依存はないの」

パールからもOKが出たので、さっそくミニュチュアゴーレムのセットアップを始める。

「そうだ、自動迎撃装置と自爆装置もつけないと!」

「駄目だ。 周りに被害が及ぶ行為は了承しかねる」

「なん……だと……!?」











「あ、ところで、いつまで服を脱いでるんだ?」

「何か問題があるかの?」
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