アメイジングノービス ~異世界でチートツールが使えたけど物理法則さんが邪魔をする~

逢須 かた丸

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6章 迷子

例のアレ再び

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 一通り調べたが、更に広範囲に冒険者が散っているようだった。
 中には歩きやすそうな場所を選んでトラップを仕掛けている形跡も見つかった。 

「邪神と関わりのない冒険者を使うとか、嫌らしいわね……ですね」

「……ソウダネ」

 俺から5mくらい離れた場所でアリーセが感想を述べた。
 なんだろうな、この微妙な距離。

「でもまあ、人数が多いだけで、想像もつかないようなトラップがあるよりはマシじゃないか? 見た感じ何処にゲート出るのか詳細がわからなくて人海戦術みたいになってるみたいだし」

 シェイプシフターが混ざった冒険者達パーティは比較的広く広がって操作をしており、出た先で全員が出待ちしているというわけではなかった。
 異相結界のような前例があるので、油断は出来ないが、飛ぶなりしてしまえば振り切るのはそこまで難しくなさそうではある。

「出た瞬間に広域殲滅魔法とかぶっ放して、後は飛んでいけば余裕なんじゃないか?」

「たわけ、関係のない者に死人が出るではないか、更に言えばイオリの未熟な魔力制御で放つ魔法など、余剰魔力が多くてまた支障が出てしまうであろうの」

「魔法のスキルレベルなら最大だぞ? 殲滅は言葉の綾だとして状態異常にするとかなら死なんだろ」

 それこそパールよりスキルレベルは高いのだがな。
 無力化するだけの魔法、例えば麻痺とか睡眠の魔法を使えば良いだけじゃないだろうか?

「イオリのは、ただ使えるというのというだけだの。 魔道具にばかりに頼っておったのだから、魔法の経験も熟練に関しては赤子レベルではないか。 効果範囲に効果時間、それにより与える影響など十全に理解してはおるまい? 心の臓が麻痺してしまったり、一生目覚めぬ眠りとなったりする可能性が高いの。 それはもう死の魔法と変わらぬ」

 反論出来ない、しかも今までのパターンを考えると、自分も食らう気がしてきた。

「あー、うん確かに毎度ひどい目にあってるし、この案は無かったことに……」

 想像よりも自分への被害が大きいせいで、あんまり魔法を使ってなかったのは確かだ。
 ドヤ顔で広域魔法をぶっ放して、自分が一番被害を受けたり、アリーセ達を巻き込んだりしても洒落にならない。

「ちょうど良い機会だの、実地の方が早かろう、フォローくらいはしてやるでの、魔道具の使用を一切せずに、魔法とスキルだけで切り抜けてみるか?」

 なんか、ただの待ち伏せだとわかったからか、パールに余裕の表情が見られるな。

「えー、パールがドラゴン化して蹴散らせば済む話じゃないか」

「我を人類の敵にする気かの?」

「エンシェントドラゴンからすれば人の子等で矮小な存在なんじゃないんですかー? 人からみてもエンシェントドラゴンなんて天災みたいなもんだから諦めもつくだろ」

 ダークドラゴンの奴は問答無用で攻撃してきたわけだし、パールにブレスの一つでもかましてもらって、その隙に抜け出せば無問題だろ。

「何故人の子が混ざっていると思うておるのだ。 イオリの言うような対応をした場合に、我ら神の使徒を貶めるように人心を誘導するに決まっておろう」

「え、つまり目撃者を残さず一人残らず殲滅するってことか!?」

「邪気を追い出したというのに、どうしてそういう結論に達するのか理解に苦しむの……」

 パールがこめかみに指をあて、頭が痛いというジェスチャーをしてくる。

「いや冗談に素で返されると、もにょるんだけどな」

「イオリの場合、存在自体が冗談みたいなものだからの。 常に最悪を想定した方が良いと判断しておる」

 何それヒドイ。

「ともあれだ、数々の嫌がらせが効果を上げているのか、邪神のアプローチが消極的である事は確かだと思うのでな。 せめてその位は利用してやろうと言う事だの」

「邪神とか言う割に根性ねーな」

 神が人を識別出来ないという事は以前パールから聞いて分かったが、異相結界から脱出した時に追いかけて来たウニョウニョ空間に比べると、ただの待ち伏せというのは、大分しょぼい。
 ほかに何か用意されているのではないだろうかと疑いたくなる。

「あ、冒険者はともかくシェイプシフターだったら、ここからでも殺れるかもしれないぞ」

 シェイプシフターのコードは既に入手済みで、面倒くさくなって途中で止めてしまったが、200体以上のシェイプシフターをザコ能力に改変してやったのだから、これを再開してコツコツやれば絶滅させる事も夢では無いはずだ。

「以前イオリがシェイプシフター共を変身出来なくした方法であれば止めておけ。 アレは知らぬ者が見れば人が融けた様に見えるからの。 イオリが人類の敵だと煽動されるのがオチだと思うがの」

「帰ろうとしている世界とは別の世界なんだろ? 旅の恥は掻き捨てって言うし気にしないという手も……」

「精神を持った多くの生物から、恐怖や怒り等の負の感情を向けられる対象となったら、魔王化してしまうの」

 魔王化!? そんな事で魔王になっちゃうのか!?

「コレは知性を持った存在に限った話ではあるの、知性持たぬ低級なモンスターが魔王にはなれぬが、知性がある存在であれば確率は0ではないの」

「なら俺の魔王化が狙いなんじゃねーのか?」

「イオリが知性を持ち合わせているかそうでないかは置いておいて、神の使徒が負の感情をその身に多く受けるのも、対面上よろしくはないことだの」

「対面上だけ!? 魔王(神の使徒)とかもあり得るの!?」

 うーん、それなら俺やパールが負の感情を集めなければ良いってだけのような気がするな。

「かといって、邪神の使徒を騙って邪神に負の感情を集めるのも問題があるんだろうしなぁ」

「いや、それであれば無用の心配だの。 負の感情云々はあくまでも同等かそれ以下の存在にしか影響を及ぼさぬ。 故に邪神に負の感情を向けたとしても特にそれ力を増すなどということは無い。 まあそれと同じく人の子の祈りや信仰心も神に届かぬのだがの」

 そいつは世知辛いな!
 いや、でも変装して大暴れする分には問題無いってことでは?

「かといって虐殺は調和を乱す行為だからの?」

「流石にそんな事をする気はないからな!? 大丈夫だ、俺にいい考えがある!」
 





 数時間後、俺は久しぶりにフル装備のウォリクンスーツを身に纏い、一匹のケモノになった。

「うわ、久しぶりに見たけど、不気味……とても精巧に出来ていますね」

「悪い子はいねがー! フッフッフ、コレならいくら暴れても正体はわかるまい」

「もきゅ!(流石ご主人!)」

 俺が先行して暴れまわり、その隙にアリーセ達には後からこっそり来てもらい、他の冒険者に紛れて貰う予定だ。
 全員姿が知られている可能性も考慮して、他の面子にも簡単な変装をしてもらっている。
 パールは魔法使いっぽいローブ。
 マルには、作りあぐねている自己判断部分をごっそり手動にして操縦可能にした全身甲冑型のゴーレムの頭部に乗り込んで貰い、人っぽく見える様にした。
 ごっつい鎧の頭だけマルになっているのはシュールだが、兜のバイザーを下ろせばわからないだろう。
 アリーセには剣を持ってもらい女戦士装備にしてもらった。

「なんで私はこんなに防御部分が少ないのかしら? 動くと脱げそうなんですけど……」

 女戦士といえば、もちろん伝説のゲーム「ドラゴン探索3」の女戦士しかないだろう。
 コレをチョイスした理由に関しては、幾つもの科学的根拠が存在するが、強いてい上げるならば「たまたまあったから」である。

 半分冗談だったのだが、コンディションポーションがよく効いていて、普通に着込んだ上にあまり恥しそうでもなくブチ切れもしないので、もうこのまま状況開始してしまおうと思う。
 ポーションが切れた後の怒りが半端なさそうで、ちょっとドキドキだ。
 
 
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