【完結】【R18】幼妻は寡黙な最強軍人夫に初夜されたい

魯恒凛

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9.触りたい触られたい

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「ねえ、オリビア。私、アラン様に触れたり触れられたいのだけど」
「な、なんだかすごい言葉を聞いてしまった気がします……!」

 いつものように朝の支度を手伝いにきたオリビア。シャルロッテが悩ましい顔で昨日読んだ小説の感想を伝えると、鏡越しに見る侍女の顔がみるみる赤く色づいていった。

「……ということは、閨事というのは男女がくっつくことということですか? 抱きしめられると幸せな気持ちになり、口と口を合わせるととろけるような気持ちになれるのですか?」
「うん、そうらしいの。でね、私、アラン様にそうされると思ったら胸がドキドキして、なんだかソワソワして落ち着かないというか」
「へぇ……! なんだか聞いているだけでむずむずしますね。ですが、そうですか。男女がくっつく……男と女は節度を持った距離感を保ちなさいって、淑女教育の先生がおっしゃってましたのに」

 アランがつけた家庭教師はすぐ辞めさせられてしまったが、最初の方の授業でシャルロッテはそう習っていたはず。オリビアも壁側に控えながらその話は聞いた記憶がある。

「そうよ。だから、閨事っていけないことをしているような気がしてドキドキするのかもしれないわ」
「なるほど……!」

 お互いの中で腑に落ち、鏡越しに見つめ合いながら頷く。

「それなら余計、お嬢様から抱きついたり強引に口を合わせたりするのは、はしたないような気がします。やっぱり、そこはアラン様からしてもらうべきなんじゃないでしょうか。それに、……アラン様って、勝手に触ったら怒りそうです」

 シャルロッテはアランのことを少しも怖いと思ったことがなかったが、オリビアからしたらアランは、畏怖の対象でもあるようだ。彼女に言わせると口数が少ない分、怒っているのか怒っていないのかがよくわからないから、余計に怖いのだと言う。
 それに、戦地でどれだけ活躍したのかと言う噂が出回っているのも、オリビアを怖がらせる一つの要因なのかもしれない。アランが剣を一振りするだけで首が5つ飛ぶなんて噂もあるのだそうだ。
 現実的にそんなことは無理だとシャルロッテは思ったし、デマだとちゃんとわかってる。そんなことより、不作法をしてアランに不愉快な思いをさせるのは嫌だなと顔を歪めた。

「じゃあアラン様から触ってもらいたいけど、どうやったら私に触ってくれるかしら?」
「私にお任せください。この家の使用人たちは一致団結して私たちに閨事を隠そうとしますが、軍人たちが帰ってきましたからね。彼らはお酒さえ飲ませば何でも簡単に吐いてしまう人種です」
「うん、確かにそうね」

 ここ7年、オリビアもシャルロッテとともに、シュルテン家で暮らしていたのだ。軍人たちに囲まれ、彼らの生態や習性を把握していると言っても過言ではない。こうして、オリビアが兵士たち(下っぱに限る)に調査をした結果、ある結論が導き出されたのだ。

「お嬢様、そういうわけで、今日はこのドレスを着てみましょう」
「あら、こんなドレスあったのね。初めて見たわ」
「本館のクローゼットの中に入っていたんです。ダナさんに聞いたところ、アラン様がシャルロッテ様の体型に合わせて何着か作らせたそうですよ」

 シャルロッテはオリビアが手にしているドレスをじっと観察した。

「それじゃあアラン様はこういうドレスが好みってことなの?」
「どうでしょう? ドレスのデザインまでアラン様が指示したのかわかりませんけれども、とにかくシャルロッテ様は隠れた武器をお持ちですから、今こそ使う時がやってきたということです」
「そっか、これが武器になるなんて知らなかった。でも、若い軍人たちが言うんだったら、そうなのかもしれないわね。じゃあ今日のディナーは、このドレスを着て行ってみるわね」


 その日の夜。

 先に席についてワインを飲んでいたアランは、食堂にやってきたシャルロッテを一目見るなりゴホゴホとむせた。

「アラン様、お待たせいたしました」

 普段は首元までしっかり詰まった清楚なワンピースを着ているシャルロッテが、まるで夜会に出るかのようなデコルテが大きく開いたドレスを着てきたのだ。何なら、ブリタは普段からそんなドレスを着ているし、アランや使用人たちも見慣れていないわけではない。
 だけど肌が見えるような服をシャルロッテが着たことは、今までなかったのではないだろうか。使用人たちも思わずシャルロッテに釘付けになってしまった。
 
 ナイフを動かすだけでぷるぷると揺れる胸。いったい、今までどこに収まっていたか疑問なくらい、シャルロッテの胸が大きいのだ。はち切れんばかりの豊満な胸が窮屈そうにデコルテから覗く。ほわほわとしたシャルロッテの笑顔と妖艶な体のアンバランスさが目に毒だ。皿を持ってくる使用人たちが、いちいちシャルロッテの胸に目が向いてしまうのを、アランは不機嫌そうに見つめていた。
 今日は何をした、こんなことがあったと楽しそうに話すシャルロッテ。対するアランは、普段なら「……そうか」と相槌を打つのにもかかわらず、この日はぶすっとしたまま頷きもしない。
 そのうち、珍しくアランの方から、シャルロッテに話しかけてきた。

「シャルロッテ」
「はい、アラン様」

 今日はアランも何があったのか、話してくれるのかと期待に胸が膨らみ、シャルロッテはキラキラとした目をアランに向けた。だが、残念ながらアランの口から告げられたのは期待した言葉ではなかった。

「そのドレスは着るな」
「はい……」

 その言葉にシャルロッテはしょんぼりと落ち込んでしまった。いつもならデザートをおかわりするのに、ひと皿を食べただけで肩を落として部屋に帰って行ったのだ。

 シャルロッテは自分の部屋に戻るなり、オリビアに愚痴をこぼした。

「ダメだった。やっぱり、こんな大人っぽいドレスは私に似合わないみたい。それに、おっぱいは武器ではなかったわ。誘惑失敗でした」

 その場にいたオリビアも悔しそうに歯がみする。

「申し訳ございません。私の分析不足だったようです……アラン様、胸はきっとブリタさんで見慣れていて、そこまで好きではないのかもしれません」

 オリビアが軍人たちに調査をしたところ、女性のどこに魅力を感じるのかの第一位の結果が『胸』だったのだ。シャルロッテは胸が豊かに発達した、いわゆる巨乳である。残念ながらアランには武器にならなかったのだが。

「お嬢様、一位の『胸』がダメなのなら、アラン様はきっと胸派ではなく、『尻』派なんですよ。軍人にとったアンケートでも意見が2つに分かれたんです」

「お尻が好きって言われても、どうしたらいいのかしら。服を着ていたらわからないし、まさか人にお尻を見せるような機会はないでしょう?」
「う~ん、お尻の形かなと思ったんですけど、ドレスの上からだと形の良さはよくわからないですね。だけど、乗馬服だと形の良いお尻かどうかってわかるじゃないですか。やっぱり軍人ってお尻がきゅっとしているから、女性のお尻の形にも厳しいんじゃないですかね」
「そうか……じゃあ魅力的なお尻になるにはどうしたらいいのかしら」

 魅力的なお尻に詳しそうな人と言ったらブリタだけど、絶対、教えてくれそうもない。オリビアが悪い笑みを浮かべて小声になった。

「実は、アンケートを取ってる最中、何度も名前が出てきたダニエラという方がいらっしゃるのです。娼館で働く娼婦の方で、とても人気があるそうですよ。女性の中の女性、魅力的な女性といったらダニエラさんだそうです」
「娼館? そういえば帰還パーティーの時も軍人たちはよく娼館に行ってたって言ってたわ。そこに行けば、ダニエラさんに教えてもらえるかしら?」
「ライトマンさんか、パウロさんに聞いてみます?」

 2人で向かい合って悩んでいたが、シャルロッテが頭をブンブンと振った。

「ううん、だめよ。あの人たち、アラン様に告げ口しそうだもの。ダニエラさんに内緒で教わって、アラン様をびっくりさせたいの」
「確かに! 『シャルロッテ、君のお尻はとても魅力的な形をしているね。どうやって鍛えたんだい?』なんて言わせたいですよね」

 そんなに長い言葉、言わなさそうですけど、とオリビアが笑った。
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