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14.その気にさせたい
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仕事が早く終わったアランと夕食の席を共にできたその日。シャルロッテは部屋に戻るとオリビアに宣言した。
「今日、いよいよアレを試そうと思う」
「お嬢様、ずっと頑張って練習してきましたものね。きっとアラン様もお嬢様を見る目が変わると思います……!」
「うん、それじゃあアラン様の部屋に行ってくるね」
「はい、ご武運をお祈りしております!」
シャルロッテは必要なものをワインやお菓子が入ったバスケットに詰め、アランの部屋へ向かう。正妻の部屋から夫婦の寝室である主寝室を通り抜け、アランの部屋に繋がる扉をノックする。
コンコン
しばらくするとかちゃりと扉が開き、ラフな装いのアランが顔を覗かせた。……先手必勝である。
「……どう」
「お部屋に入れてください」
有無を言わせず、するりとアランの部屋へ入り込む。
「おおっ、アラン様の部屋……!」
初めて入ったアランの部屋が物珍しく、きょろきょろと眺めていたところではっとした。扉の前で眉を寄せてじっとシャルロッテを見つめるアランの側まで行き、その手を引く。
「アラン様、ちょっとこっちに来てください」
ぐいぐいと引っ張るシャルロッテについてきてくれたが、いざベッドの前に立たせて押し倒そうとするがびくともしない。
「あれ? ふんっ」
渾身の力を込めて押してみるが、軍人の中でも長身のアランは身長190センチを超える筋骨隆々の大男。対するシャルロッテはこの国の女性の中では身長がやや低めの150センチほどだ。
圧倒的体格差の前では、シャルロッテが全力で押したところでアランが倒れるわけもない。上からシャルロッテを見下ろしていたアランが尋ねた。
「……座ればいいのか?」
「はい」
ベッドに腰かけたアランの顔を覗き込み、シャルロッテはお願いをする。
「あの、アランさまに気持ち良くなってほしいのですが、マッサージをしてもいいですか?」
一瞬びくっとしたアランだったが、ゆっくり頷いた。
「……ああ」
「じゃあ、目を瞑ってください」
シャルロッテはアランの前に立つと布でアランの両眼を覆い、後頭部でしっかりと結んだ。
「……っ、目隠しは、なぜ?」
「皮膚の伝達を研ぎ澄ますためです」
皮膚の伝達、と呟いたアランをよそに、シャルロッテはプチプチとシャツを脱がせていく。これにはアランも驚いたようで、シャツを押さえて脱がされまいと抵抗をする。
「……ふ、服の上からじゃないのか?」
「服がしわになっちゃうので」
「……ああ、そ、それでか」
なかなかシャツから手を離さないアランと少々攻防戦があったものの、「破けちゃいます、放してください」というシャルロッテの咎めるような声にようやく観念したようだった。初めて見たアランの裸身は素晴らしく、筋肉に見慣れているシャルロッテも思わず惚れ惚れした。
「うわあ、アラン様。お胸が厚いですね。腕も太い!肩回りも大きくて、よく鍛え上げられていますね」
「……っ、あ、ああ」
シャルロッテは持ってきたバスケットをごそごそと漁ると、柔らかい紐を取り出した。
「はい。じゃあちょっと手をこっちに持ってきてもらって……」
アランの両手を後ろ手に結び、輪っかにした紐を首に通して複雑に交差させながら上半身を縛り上げていく。オリビアをモデルに毎晩練習をしたから、かなり手際よく結んでいけるようになった。
「え? なぜ?」と言ったきり、アランは無言だ。
おとなしくされるがままになってくれたおかげで、短時間で縛り上げられた。
「ふぅ、できた。では、始めます」
首や肩をもんでいくシャルロッテ。がちがちに緊張していたアランは、本当にマッサージだったと安堵し、徐々に力が抜けていった。
意外と力が強いシャルロッテの押圧にすっかり身をゆだね始めた矢先、シャルロッテはダニエラからもらった羽ペンを使い、アランの裸身を優しくなぞり始めた。
「……っ! なっ」
孔雀の羽でさわさわと首筋をなでるとアランはくすぐったそうに身をよじったが、徐々に息があがっていった。だけど、相変わらず無言だ。
(気持ちよくないのかしら。こういう時は聴覚を刺激するんだったわよね)
「美貌の戦士で知られるアラン・ラーゲルレーヴの乳首がこんなにかわいいなんて、敵は知らなかったでしょうね。小さくてぽちっと俺もここにいるぞって主張しているわ、……あら? コリって硬くなってきたみたい。どうしてかしら」
はぁっと色っぽく息を吐くアランの口元にシャルロッテは釘付けになった。常日頃、寡黙なアランの口元はきゅっと引き結ばれているのに、今は甘い吐息を漏らし半開きだ。シャルロッテは引き寄せられるようにアランの唇に触ってみた。
「っ!!」
指先にしっとりとした感触がある。
(……アラン様の唾は甘い気がする。目隠ししてるし、ちょっとだけ味見してもいいかしら)
アランの唇から指を離すと、その指をペロッと舐めてみたが甘くはない。だけど、なんだかおいしい気がする。気配で察したアランはひどく動揺した。
「なにを……」
「な、なにも……」
「っ……、俺がどれだけ我慢を……シャルロッテ」
「……はい」
機嫌の悪そうなアランの声にシャルロッテはしゅんとした。とろんとした顔で「シャルロッテ、おまえに触れたい。縄をほどいてくれ」と言ってくれると思っていたのに、想像していた雰囲気と違う。いつもはぼそぼそと話すアランの口調がはっきりとしていた。
「君は、一体何をしたいんだ?」
「アラン様と初夜をしたいです……」
「……っ」
ぶちっという音がしたかと思ったら、アランが手首の紐を引きちぎった。
「え? 絶対にほどけないはずなのに……」
「ただの紐なら簡単に切れる。それより……」
目隠しを外したアランの瞳がすっと細められた。
「後悔するなよ?」
「今日、いよいよアレを試そうと思う」
「お嬢様、ずっと頑張って練習してきましたものね。きっとアラン様もお嬢様を見る目が変わると思います……!」
「うん、それじゃあアラン様の部屋に行ってくるね」
「はい、ご武運をお祈りしております!」
シャルロッテは必要なものをワインやお菓子が入ったバスケットに詰め、アランの部屋へ向かう。正妻の部屋から夫婦の寝室である主寝室を通り抜け、アランの部屋に繋がる扉をノックする。
コンコン
しばらくするとかちゃりと扉が開き、ラフな装いのアランが顔を覗かせた。……先手必勝である。
「……どう」
「お部屋に入れてください」
有無を言わせず、するりとアランの部屋へ入り込む。
「おおっ、アラン様の部屋……!」
初めて入ったアランの部屋が物珍しく、きょろきょろと眺めていたところではっとした。扉の前で眉を寄せてじっとシャルロッテを見つめるアランの側まで行き、その手を引く。
「アラン様、ちょっとこっちに来てください」
ぐいぐいと引っ張るシャルロッテについてきてくれたが、いざベッドの前に立たせて押し倒そうとするがびくともしない。
「あれ? ふんっ」
渾身の力を込めて押してみるが、軍人の中でも長身のアランは身長190センチを超える筋骨隆々の大男。対するシャルロッテはこの国の女性の中では身長がやや低めの150センチほどだ。
圧倒的体格差の前では、シャルロッテが全力で押したところでアランが倒れるわけもない。上からシャルロッテを見下ろしていたアランが尋ねた。
「……座ればいいのか?」
「はい」
ベッドに腰かけたアランの顔を覗き込み、シャルロッテはお願いをする。
「あの、アランさまに気持ち良くなってほしいのですが、マッサージをしてもいいですか?」
一瞬びくっとしたアランだったが、ゆっくり頷いた。
「……ああ」
「じゃあ、目を瞑ってください」
シャルロッテはアランの前に立つと布でアランの両眼を覆い、後頭部でしっかりと結んだ。
「……っ、目隠しは、なぜ?」
「皮膚の伝達を研ぎ澄ますためです」
皮膚の伝達、と呟いたアランをよそに、シャルロッテはプチプチとシャツを脱がせていく。これにはアランも驚いたようで、シャツを押さえて脱がされまいと抵抗をする。
「……ふ、服の上からじゃないのか?」
「服がしわになっちゃうので」
「……ああ、そ、それでか」
なかなかシャツから手を離さないアランと少々攻防戦があったものの、「破けちゃいます、放してください」というシャルロッテの咎めるような声にようやく観念したようだった。初めて見たアランの裸身は素晴らしく、筋肉に見慣れているシャルロッテも思わず惚れ惚れした。
「うわあ、アラン様。お胸が厚いですね。腕も太い!肩回りも大きくて、よく鍛え上げられていますね」
「……っ、あ、ああ」
シャルロッテは持ってきたバスケットをごそごそと漁ると、柔らかい紐を取り出した。
「はい。じゃあちょっと手をこっちに持ってきてもらって……」
アランの両手を後ろ手に結び、輪っかにした紐を首に通して複雑に交差させながら上半身を縛り上げていく。オリビアをモデルに毎晩練習をしたから、かなり手際よく結んでいけるようになった。
「え? なぜ?」と言ったきり、アランは無言だ。
おとなしくされるがままになってくれたおかげで、短時間で縛り上げられた。
「ふぅ、できた。では、始めます」
首や肩をもんでいくシャルロッテ。がちがちに緊張していたアランは、本当にマッサージだったと安堵し、徐々に力が抜けていった。
意外と力が強いシャルロッテの押圧にすっかり身をゆだね始めた矢先、シャルロッテはダニエラからもらった羽ペンを使い、アランの裸身を優しくなぞり始めた。
「……っ! なっ」
孔雀の羽でさわさわと首筋をなでるとアランはくすぐったそうに身をよじったが、徐々に息があがっていった。だけど、相変わらず無言だ。
(気持ちよくないのかしら。こういう時は聴覚を刺激するんだったわよね)
「美貌の戦士で知られるアラン・ラーゲルレーヴの乳首がこんなにかわいいなんて、敵は知らなかったでしょうね。小さくてぽちっと俺もここにいるぞって主張しているわ、……あら? コリって硬くなってきたみたい。どうしてかしら」
はぁっと色っぽく息を吐くアランの口元にシャルロッテは釘付けになった。常日頃、寡黙なアランの口元はきゅっと引き結ばれているのに、今は甘い吐息を漏らし半開きだ。シャルロッテは引き寄せられるようにアランの唇に触ってみた。
「っ!!」
指先にしっとりとした感触がある。
(……アラン様の唾は甘い気がする。目隠ししてるし、ちょっとだけ味見してもいいかしら)
アランの唇から指を離すと、その指をペロッと舐めてみたが甘くはない。だけど、なんだかおいしい気がする。気配で察したアランはひどく動揺した。
「なにを……」
「な、なにも……」
「っ……、俺がどれだけ我慢を……シャルロッテ」
「……はい」
機嫌の悪そうなアランの声にシャルロッテはしゅんとした。とろんとした顔で「シャルロッテ、おまえに触れたい。縄をほどいてくれ」と言ってくれると思っていたのに、想像していた雰囲気と違う。いつもはぼそぼそと話すアランの口調がはっきりとしていた。
「君は、一体何をしたいんだ?」
「アラン様と初夜をしたいです……」
「……っ」
ぶちっという音がしたかと思ったら、アランが手首の紐を引きちぎった。
「え? 絶対にほどけないはずなのに……」
「ただの紐なら簡単に切れる。それより……」
目隠しを外したアランの瞳がすっと細められた。
「後悔するなよ?」
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