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1巻
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人間国と相いれない獣人国は、百年以上前に起こった戦争により袂を分かち、迷いの樹海をお互いの境界として国交を断絶している。獣人というのはおとぎ話のような存在だが、総じて悪役である。
その姿は異形で、毛まみれの顔には動物と同じ耳があり、口は裂けて鋭い歯が並ぶのだとか。人間よりも二回り以上体が大きく、野蛮。かぎ状の爪に引っかかれるだけで人間は呆気なく絶命してしまうらしい。
万が一獣人に掴まったら、急所を突かれ体の自由を奪われた後、逆さづりにされゆっくりと殺されたり、生きたまま肉を剝がされたりするとも聞く。
獣人にまつわるさまざまな黒い逸話を聞いた日、幼いリディアーヌは恐怖で眠れないほどだった。
(――残酷な噂であふれる獣人に遭遇してしまうかも)
リディアーヌは身震いした。迷いの樹海は、人間なら物心つく頃には「何人たりとも生きて帰れない」と教わる場所でもあるのだ。
(クリスティーナは、私が獣人に最も残酷な方法で殺されることを望んだんだ……)
涙は出なかった。だけど、心の中の何かが壊れた気がした。
空を見上げると明るい。日中のようだが木が生い茂り、森の中は薄暗かった。これからどうしたらいいのか、どうするべきなのか、わからない。このままここで野垂れ死ぬのだろうか。
それよりも胸が痛いほど脈打つことが気になった。高熱を出した時のように体が熱い。
(こんな時に熱が……ううん、弱気になっちゃダメよ。どこかで体を休めて、まずは熱を下げないと命取りになる)
リディアーヌはあてもなく歩き始めた。
「ふぅっ、ふぅっ、……、熱い……」
熱を下げる野草はどれだったか。足元に目を落とすと視界がぼやけてきた。肌が汗でじっとりと湿り、気持ち悪い。熱のせいなのか、自分の体ではないようなふわふわした感覚がある。
「んっ、……んぅっ」
寝る直前で寝巻替わりのワンピースを着ていたため、コルセットもつけておらず、ワンピースの下はショーツだけ。動くたびにワンピースが肌に触れくすぐったい。体の奥が疼き、股の間がしっとりしてきたのを感じる。
(これ以上動かない方がよさそう。なんだか体の調子がおかしい)
その場にしゃがみこみ、木にもたれる。自分の体を抱きしめるように腕を交差させると、胸の先端がこすれて甘い吐息が漏れた。
「あっ」
体が疼いてたまらない。リディアーヌは自慰について教わったことがなかったが、体のどこが疼いているのかははっきりとわかった。
(もう我慢できない……疼いているところを触りたい、体の中をかきむしりたい)
服の上から両胸を揉み、指でいじる。リディアーヌの細い指では持て余すほどの重みだ。上下左右に荒々しく揉んでも、一向に疼きは収まらない。
やがて、指先が偶然胸の頂点をかすめた。
「あっ、ここ……」
さっきもこのあたりが刺激されて声が出たことを思い出す。自分の胸を見下ろしながら、ワンピースを押し上げる突起を指で触ってみた。
「あっ、き、気持ちいい……」
指でこね、つまんだり、押しつぶしたりしているうちに、夢中になって先端をいじっていた。
(ああ、物足りない……お腹の奥が、うずく……)
膝を立ててスカートをたくし上げ、脚を広げてみる。ショーツがびっしょり濡れているのが自分でもわかった。
片手で胸の先端をいじりながら、もう一方の手で恐る恐るショーツの上に手を伸ばしてみた。
そこは触れるだけで体がとろけそうで、全身がびくびくと震えてしまう。だけど、手のひらでこすったり揉んだりしても、うずきは止まらない。頭がどうにかなりそうだった。
ああ、そういえばクリスティーナは「悶え死ね」と言っていたと思い出す。
こういうことだったのかと腑に落ちた。
「やぁ、ふっ、つらい……どうしたらいいの……うぅ」
恥ずかしい姿でぎこちなく自慰を続けてみるも、リディアーヌの体はますます熱を持ってしまう。そのとき、カツカツと鉄同士がぶつかるような音が聞こえてきた。
「ん? な、なんだあれ」
「うっわ、えっろ! こんな森の奥で自分を慰めてんの? 痴女? 痴女なの?」
「何プレイなんでしょう。放置プレイ? 襲われ待ちでしょうか?」
甲冑をまとった三人の男が呆気に取られた様子で、こちらを凝視している。
大柄な男たちは騎士のようで、兜を脇に抱えながらリディアーヌの様子をうかがった。
「いやっ、見ないで!」
こんな痴態を見られるなんて、正常な頭だったら死んでしまいたいと思ったはず。けれど、今のリディアーヌの頭の中は完全に焼き切れており、ただこの体の疼きをどうにか収めなければ、本当に悶え死にそうだった。
口では嫌と言いながらも手が止められない。男たちに見せつけるかのように、片手は主張する頂きを、片手は濡れた下着の上を一心不乱にいじってしまう。見られていると思ったら、疼きがずんと深くなった。
(やだ、私ったら変態みたい……こんなの、私じゃない)
そう思うのに、胸と股の間をいじる手を止められない。頭と体の意思がつながらず、自分の体ではないみたいだ。恥ずかしくて涙が出てくる。
「この甘い匂い……危険な香りがしますね」
「発情香を混ぜた媚薬か? お遊びにしてはずいぶん悪質な薬を使っている。入手ルートを調べた方がよさそうだ」
「はい、トバイア様。くっ、普通のやつなら理性がすり切れますね」
男たちは悩まし気に額を突き合わせると、まずは自慰にふける痴女と話してみようと相談した様子。警戒した様子の一人の大男がリディアーヌに近づいてきた。
サイドを刈り上げた白金髪に濃紺の鋭い目と高い鼻梁、それに男らしいシャープな面立ち。
太い首が甲冑の間から見え隠れする二十代半ばほどの男は、かなり体格がいいようだ。事実二メートル近くありそうな大きな体は威圧感がすごい。
「あー、俺は第一騎士団団長のトバイア・ボンドだ。攻撃はしない。だから、君も落ち着いてこちらの質問に答えてほしい」
「は、はい……んぅ」
息も絶え絶えに答えるリディアーヌに、トバイアは驚いた表情を見せた。リディアーヌは恥ずかしい姿をさらしているのはわかっていても、手を止められない。
彼に従う他の男性たちは、おそらく部下なのだろう。髪型が違うだけで、まるで双子のようにそっくりな二人だ。
「えーっと、もしかして夫たちにここで自慰行為をするように言われているのか? お楽しみのところ申し訳ないが、その発情香は違法な媚薬だ。少し話を聞きたいのが夫たちはどこに……おい、大丈夫か?」
リディアーヌは首を左右に振る。肩で荒い息をし、涙を流しながら胸と股をこすり続けた。何をしても楽にならず、気が狂いそうだった。
「んう、ふっ、熱いの、た、たすけて……、ん、ぐすっ、もうやだぁ、うぅ」
「ん……? 夫たちの姿が見えないが、まさか一人で遊んでいたのか? それとも、発情香で引きつけて乱交しようと待ち構えていたとか……ではない?」
「ふぅ、んんっ、薬っ、飲まされてっ、んんっ、はぁ、つらいっ、つらいの」
ふむ、と後方から観察していた栗色の髪の青年がもしかして、と口にした。
「媚薬を飲まされたってことですか? ひどいですね。この匂い、かなり悪質な組み合わせですよ」
「それにしても下手くそな自慰だな。やったことがないのか? どうします、トバイア様」
「う~ん。どうするって言ったって……これ、つらいだろうに。でも、この女、自分でイけるのか?」
リディアーヌはもどかしさで頭がおかしくなりそうだった。
男たちがいくつか案を出しあう様子を朦朧としながら聞いていると、トバイアが近づいてきた。
「んー、君、それじゃあ永遠にイけなさそうだから俺が手伝うよ。あいつらにも見ていてほしい?」
「わかんないっ! ぐすっ、つらいの……」
「あー、じゃあ性的興奮を高めるために協力させるか。おまえら、そこに座って見ていてくれ」
彼の指示を聞き「了解です」「喜んで」と部下らしき男たちが座る。
トバイアはさて、とリディアーヌに向き直った。
「じゃあ、まずは指示を出すから従ってね」
トバイアはガチャガチャと甲冑を脱ぐと、シャツにトラウザーズ姿の軽装になった。
リディアーヌをひょいと抱き上げ、背中を自分の胸に預けるように脚の間に座らせる。
そして「じゃあ」と言うや否や、おもむろにワンピースを引き裂いた。
「きゃあっ!」
「ボロボロだし、あとで代わりの買ってあげるよ。じゃあ、ちょっといじわるするけど、ごめんね」
そう耳元でささやくと、トバイアの雰囲気ががらりと変わった。
「君はいやらしい体をしているね。大きなおっぱいに、……ああ、綺麗な乳輪だ。薄桃色の先端が固くなっているじゃないか。ほら、見ていてあげるから、自分で先っぽをいじってごらん」
「え? は、はいっ……こ、こうですか? あっ」
「そうそう、上手だねぇ。爪でカリカリすると気持ちいい? こっそり脚をすり合わせて……そこももどかしいんだろう?」
「ふっ、ん、んっ、ど、どこ?」
「……ごほん。ほら、下穿きを脱いでこっちに貸すんだ……うわぁ、びっしょり。スンスン……甘酸っぱい、いやらしいメスの匂いがするな」
脱ぎたての下着に鼻を押しつけるトバイアを見て、リディアーヌは気絶しそうだった。恥ずかしくて仕方がないのに、下腹部がずくんと疼く。
「やだっ、下着を嗅がないで!」
「ほら、こうやって脚を広げるんだ」
「ああっ!」
トバイアの太ももに両膝を乗せられ、強制的に脚を開かされる。体格差がある分、リディアーヌの脚は限界まで開かれた。ごつごつとした大きな両手がリディアーヌの両脇から伸び、秘部を左右に広げられるとクチュッと音がした。濡れそぼったそこがすうすうし、余計に疼いてしまう。
「ほら、自分で触ってみて。人差し指を伸ばして襞の間を上下に……そう、指で蜜をすくって……上手だ。もっと上……その辺にあるだろう? 気持ちいいところが」
トバイアに言われたとおりに指を動かすと、今までとは段違いの快感にぶち当たった。何かしこりのようなものがある。
「あっ!」
「見つけたか。そこだ、そこ。わかりやすく左右に広げてあげるよ。ほら、それをこすってみて」
「ああっ! 気持ちいい! んんっ、おかしくなるっ」
「おかしくなっていいぞ。ほら、もうちょっとだ。おっぱいの先っぽのカリカリも忘れるなよ」
「あん、あ、あっ」
「……ほら、目を開けて。あっちを見てごらん。君の恥ずかしい姿、見られているぞ」
はっとしたリディアーヌの視線の先に、男が二人、あぐらをかいてこちらを見ていた。
一人の男は笑顔で舌なめずりをし、リディアーヌの羞恥心を煽る。
もう一人の男は薄笑いを浮かべながら「えろいですね」と口をパクパクと動かした。
こんな痴態を見られたことに感情が高まり、下腹部がひくひくと蠢く。体の奥がしびれ、じわっと何かが溢れた気がした。
(あっ! お、お漏らししちゃったかも……!)
真っ赤な顔で泣きながら荒い息をするリディアーヌを、トバイアがじっと見下ろし首を傾げた。
「……まだダメか?」
「今、軽く達したっぽいっすね。やっぱ、中でイった方が早いんじゃないっすか?」
「う~ん、まだ発情香の匂いがしますね」
「自慰じゃラチがあかないな……本当は精を放たないとならないが、そこはこの人の夫に任せよう。応急処置として、とりあえず何回か達せば一旦は落ち着くだろうし。う~ん……仕方ない」
トバイアはリディアーヌの胸と股間に手を伸ばすと、耳元でささやいた。
「非常事態なので少し触るぞ? 頭が真っ白になりそうだったら、イクって言って教えてくれるか? 今から俺がイかせてやるからな」
背後から回された男の指が乳房に食い込んだ。人差し指と中指の間に胸の先端が挟まれ、ゆっくりと乳房を揉まれる。柔らかな乳肉が縦横無尽に揺らされるたび、指の間に挟まれた薄桃色の実にも甘い刺激が送られた。
そのうち、芯を持った胸の尖りを指できゅっと引っ張られ、弾かれた。リディアーナはたまらず天を仰ぐ。
「あっ、き、気持ちいい」
「よかった。だけど胸じゃまだイケないだろうから、下でイこうか」
胸を弄んでいた手が股の間に伸びると、つぷっと太い指が泥濘に侵入した。
「あっ!」
ドロドロになった隘路は、はしたない音を立て始める。
溢れた蜜がお尻を伝って垂れ、トバイアまで濡らしてしまいそうだ。
「あの、わたし、きゃあっ!」
「ほら、集中して?」
トバイアは胸の尖りをつまんでいた手を離すとリディアーヌの花芽を探り当て、蜜をまとった指の腹を優しく押しつけた。大きく分厚い手からは想像できない繊細な動きに、たまらずのけぞる。
「あっ、ダ、ダメ!」
ぷっくりと赤く充血した花芽を執拗に責められ、リディアーヌは頭を左右に振って髪を振り乱す。だが、背面にいるトバイアに四肢を絡めるように固定され、体を自由に動かせない。
快感を逃がせず下腹部に熱がこもっていく中、リディアーヌはパニックになっていた。与え続けられる巧みな性戯に嬌声が止まらず、高みから下りられない。
「ああ、見てごらん。健気に勃起して。愛らしいね。そろそろイきそうだね」
「あぁ! もう、ダ、ダメッ! ん~っ!」
その瞬間、リディアーヌの視界が白く弾けた。
ぴんと張ったつま先と充血した秘部を確認し、トバイアは再び熱い泥濘へ指を沈めた。休む間のない責めに、リディアーヌの思考はとろけてしまう。
「ああっ」
「念のため、中イキもしておこう。それにしても狭いな……とりあえず、ほぐす時間もないから浅いところでイっておこうか。ほら、顔をこっちに向けて」
「んむっ」
トバイアは、振り返ったリディアーヌの華奢な顎を押さえ唇をむさぼった。ぽってりとした唇をはみ、舌を差し込んで口腔内を蹂躙する。そして片手の指は泥濘に差し込んだまま、秘芽の裏辺りを探るように指の腹で優しくこすり始めた。
上と下でちゅぷちゅぷと水音を競うように、その音が大きくなる。リディアーヌがびくんと大きく体を揺らしたポイントを見逃さず、トバイアは責め立てた。
淫らな音が大きくなり、リディアーヌに再び絶頂の波が押し寄せる。
涙を流しながら首を左右に振ろうとするが、固定されて動けない。トバイアはリディアーヌの言葉を飲み込むように舌を吸い、離さないままだ。
蜜口に差し込まれた太い指はリディアーヌのいいポイントを責め立て、その快楽は気が狂うほどだった。大きな波が近づき、リディアーヌはくぐもった声でイクと何度も訴える。
(もうダメっ!)
「ん~! ん~!」
リディアーヌは目の前が真っ白になった。
トバイアは指先に感じる収縮を堪能した後、ゆっくりと指を引き抜いた。ちゅぱっと音を立て、ぽってりと腫れた唇からも離れる。
「ふぅ、頑張ったな。どう? 疼きは収まっただろう? ん?」
「団長、多分気を失いましたよ」
「ええ? やり過ぎたか? だけど、この子」
クンクンと三人の男が脱力するリディアーヌの体臭を嗅ぐ。
「……発情香は汗にまみれて消えましたけど、この子、処女香がしますね」
「ええ? 処女が外を出歩くなんて、まずいな……保護しないと危険だ」
「とりあえず、連れて帰るしかないっすね」
トバイアは自分のマントを外すと、リディアーヌをそっと包み、大切そうに抱きかかえた。
第二章
(ここは……)
リディアーヌは目を覚まし、見慣れない天井をぼんやりと見上げていた。壁紙は温かみのある暖色系で、部屋にはマホガニーの重厚な家具が並んでいる。どれも年代物のようだが、丁寧に手入れされていて高級そうだ。まるで貴族の家の貴賓室のようだった。
体がだるく、頭もすっきりしないまま視線を動かすと、自分がふかふかの布団に包まれていることに気づく。こんなしっかりしたベッドで眠るのは十年ぶりだ。思わず安堵のため息がもれた。
「気持ちいい……」
「夢の中でもイってるのか?」
「えっ!?」
人の気配はなかったのに、とリディアーヌは驚いて体を起こした。
「だ、誰?」
「トバイアだよ。覚えてる? 君に自慰を教えて、手でイかせた第一騎士団長」
「あっ……、はい。その節はどうも……」
あのときの快楽がよみがえる。ベッドサイドの椅子には、腕を組んだトバイアが座っていた。あの指で胸や下半身を弄られたことを思い出し、一般的な令嬢と変わらない貞操観念を持つリディアーヌは、顔を赤らめて俯く。
媚薬は抜けたというのに、トバイアの手を見たら、また下腹部が疼いたのだ。
そんなリディアーヌを見て、トバイアが首を傾げた。
「もしかして、あの程度で恥ずかしがってる? よくわからない女だな。とりあえず、名前は?」
「えっと……、リディアーヌ……です」
家はもう捨てたのだから、苗字は言わなくていいだろう。パナケイア侯爵家は有名過ぎるし、下手に名乗って能力があると期待されても困る。リディアーヌは加護をもらえなかったパナケイア家の落ちこぼれなのだから。
「リディアーヌか。聞きたいことは山ほどあるんだが、とりあえずここは我が家だ。取り急ぎ、俺のシャツを着せた。君の服は俺が破いたから、今買いに行かせている」
「あ、はい……」
見下ろすと、清潔な白いシャツを着せられていた。胸の先端に直接シャツが触れ、股がシーツに直接触れていることに気づき、慌てて上掛けを引き上げる。
「本来は騎士団の拠点に連れていきたかったが、君のその香りで発情する者がいそうだから、うちに連れてきた次第だ。それで、君は今いくつなんだ? なぜ、まだ処女でいる?」
「え?」
(騎士団の取り調べって、そんなことまで尋ねるの? もしかして媚薬には年齢制限があるのかしら。それにしたって恥ずかし過ぎる……だけど、トバイア団長はお仕事で聞いているんだから、正直にお答えしないと困らせるわよね)
リディアーヌは硬い表情でごくりと喉を鳴らした。
「今年、二十歳になりました。婚約者もいませんし、結婚もまだなので、いまだ処女です」
「二十年も生きてきて処女だと……? すごいな。どこかの宗教で守られていたのか? 処女信仰なんて聞いたことがないが、生贄か何かか。それなら無垢なのも納得だが……?」
トバイアがぶつぶつと呟くのを聞きながら、リディアーヌは恐る恐る尋ねた。
「あの、トバイア団長、ここはどのあたりなんですか?」
できれば、パナケイア侯爵家のある場所からうんと離れていることを願う。もし隣接する領なんていう近さなら、一刻も早く遠くへ行った方がいい。ここにいることが知られたら、団長にも迷惑がかかるかもしれない。そのくらいの力をパナケイア侯爵家は持っている気がする。
だけど、そのためには、お金を稼がなくてはいけない。仕事も家も探す必要がある。まずは状況を把握しようとリディアーヌはぎゅっと拳を握りしめ、トバイアの返答を待った。
「ここ? ああ、王都の我が家だよ。どこか目的地があるのか? どちらにしても、そんな処女香をまき散らしながら外に出るのはおすすめしないな」
「処女香?」
聞きなれない言葉だが、トバイアはリディアーヌから香ると言っているようだ。
年上の女性からいろいろ教わったが、処女に香りがあるなんて聞いたことがない。もしかして個人差があって、たまたま自分だけ匂いがするのだろうか。
困惑するリディアーヌを見て、トバイアは首を傾げた。
「どうも君と話していると何かがずれてるんだよな。種族のせいか? ちなみに、君は何族なんだ?」
「……種族とは?」
「まさか、自分の種族を知らないのか!? 混血で両親がわからないとしても何かの拍子にこう、う~ん。……えぇ? わからないなんてことがあるのか?」
頭を抱えてしまったトバイアに、リディアーヌも混乱する。きちんとした学校も通っていないし、家庭教師に何かを教わったこともない。もしかしてリディアーヌが知らないだけで、みんな何かに所属しているんだろうか。
「あの、トバイア団長は……?」
「俺? 犬族」
(イヌ? あの犬? つまり……)
リディアーヌは頭の中が真っ白になった。つまり、それは獣人ということではないのだろうか。
ということは、ここはラグランジュ王国ではなく獣人が住むエクランド王国で、自分はあの森から家とは反対側へ連れてこられたのかもしれない。
リディアーヌはそろりとベッドから降りると、トバイアを警戒しながらゆっくりと扉へ後ずさりした。
(四肢を切り刻まれるのも、生きたまま内臓を開かれるのも嫌。逃げなきゃ……)
リディアーヌがじりじりと後退する姿に、トバイアの雰囲気が変わる。
「……何か都合が悪いことでも?」
「や、こ、来ないで……」
どのみち逃げられないことはわかっている。ここから出られたところで獣人に囲まれ、爪で切り裂かれ、まるで玩具のように転がされるのだろう。
逃げ場のない恐怖にガクガクと足が震え、涙が止まらない。
「え? なんで泣くんだよ。善意で助けてやったのに、何が気に障ったんだ?」
「うっ、わ、わたしを、切り刻むんでしょう?」
「は? 君を? 俺はシリアルキラーではなく、騎士団長だと名乗ったはずなんだが」
「だって、獣人は、ひっく、に、人間を殺すって……、わたし、人間だから……」
「人間だと!?」
その瞬間、トバイアは椅子を倒しながら立ち上がり、わずか数歩でリディアーヌの前に立ちはだかった。首元に顔を近づけ、耳の裏を嗅ぐように鼻を鳴らす。
「スン……嫌な臭いはしないのに……おかしいな」
「ひぃっ! お許しくださいお許しください! 殺さないで刻まないで!」
リディアーヌは腰を抜かし、崩れるように座り込んだ。
トバイアはため息をつき、うずくまったリディアーヌの前にしゃがみこむ。
「人間は獣人についてずいぶんな言いようをしているとは知っていたが、本気で信じているんだな……で? 君が教わった獣人の特徴は?」
「ぜ、全身毛まみれで、ひっく、獣と同じ耳があって、く、口が裂けていて……」
「俺の顔はどうだ?」
指の間からこわごわと顔を上げると、そこには精悍なトバイアの顔。人間でもここまで整った男はめったにいない。意志の強そうな太い眉や、鋭いあごのラインが男らしさを感じさせる。
「すごく、かっこいい……です」
「だろ? ほかには?」
「人間の二回り以上の大きさで、爪は鋭いかぎの形で獲物を嬲る……」
「まあ、体が大きいのは確かだが、爪は普通だぞ。君のいやらしい穴に指を入れてゴシゴシしたじゃないか。気持ちよかっただろう?」
「っ~~!」
リディアーヌが真っ赤になると、トバイアはあははと笑った。
「で、獣人に何をされるって教わってるの?」
「……もしも捕まったら、四肢を切断されて、ゆっくり弄ばれながら殺されるって……」
「ずいぶんと野蛮な話だな……あのな、そもそも獣人を誤解している。まず、姿かたちは君たち人間とほとんど変わらない……普段はな。ただ、三大欲求に関しては本能が強いから、少し種族の特徴が出やすいけど」
「そうなんですか?」
「ああ。もし君の言う通りなら、出会った瞬間に嬲ってるよ。玩具にしてくれといわんばかりに、股を広げて淫らに誘っていたじゃないか」
「あ、あれは、不可抗力で……」
確かに、よくよく考えたら、出会った時から一貫してトバイアは気遣ってくれている。媚薬による欲を発散させるときも無理やりなことはせず、痛いこともされなかった。クリスティーナにされてきたことの方が、よっぽど残酷ではないだろうか。
そう考えた時、リディアーヌはまだトバイアにお礼を言っていないことを思い出した。
「あの、いろいろ誤解していたようです。ごめんなさい。それから、助けていただいて、ありがとうございました」
「まあ、仕事でもあるから。それで? なんで人間が混沌の森にいたんだ? 人間は怖がって立ち入らないだろう?」
「あそこ、混沌の森というんですね……」
リディアーヌは事情を簡単に説明した。自分は何もできない役立たずで、義妹の婚約者に色目を使ったと誤解され、媚薬を飲まされ捨てられたことを話す。
トバイアは真剣な表情で話を聞くと、リディアーヌの手元に視線を落とした。
「苦労したんだな。手を見ればわかる……なあ、これからどうするんだ? 戻ったところで悲惨な目に遭いそうな気がするんだが」
その姿は異形で、毛まみれの顔には動物と同じ耳があり、口は裂けて鋭い歯が並ぶのだとか。人間よりも二回り以上体が大きく、野蛮。かぎ状の爪に引っかかれるだけで人間は呆気なく絶命してしまうらしい。
万が一獣人に掴まったら、急所を突かれ体の自由を奪われた後、逆さづりにされゆっくりと殺されたり、生きたまま肉を剝がされたりするとも聞く。
獣人にまつわるさまざまな黒い逸話を聞いた日、幼いリディアーヌは恐怖で眠れないほどだった。
(――残酷な噂であふれる獣人に遭遇してしまうかも)
リディアーヌは身震いした。迷いの樹海は、人間なら物心つく頃には「何人たりとも生きて帰れない」と教わる場所でもあるのだ。
(クリスティーナは、私が獣人に最も残酷な方法で殺されることを望んだんだ……)
涙は出なかった。だけど、心の中の何かが壊れた気がした。
空を見上げると明るい。日中のようだが木が生い茂り、森の中は薄暗かった。これからどうしたらいいのか、どうするべきなのか、わからない。このままここで野垂れ死ぬのだろうか。
それよりも胸が痛いほど脈打つことが気になった。高熱を出した時のように体が熱い。
(こんな時に熱が……ううん、弱気になっちゃダメよ。どこかで体を休めて、まずは熱を下げないと命取りになる)
リディアーヌはあてもなく歩き始めた。
「ふぅっ、ふぅっ、……、熱い……」
熱を下げる野草はどれだったか。足元に目を落とすと視界がぼやけてきた。肌が汗でじっとりと湿り、気持ち悪い。熱のせいなのか、自分の体ではないようなふわふわした感覚がある。
「んっ、……んぅっ」
寝る直前で寝巻替わりのワンピースを着ていたため、コルセットもつけておらず、ワンピースの下はショーツだけ。動くたびにワンピースが肌に触れくすぐったい。体の奥が疼き、股の間がしっとりしてきたのを感じる。
(これ以上動かない方がよさそう。なんだか体の調子がおかしい)
その場にしゃがみこみ、木にもたれる。自分の体を抱きしめるように腕を交差させると、胸の先端がこすれて甘い吐息が漏れた。
「あっ」
体が疼いてたまらない。リディアーヌは自慰について教わったことがなかったが、体のどこが疼いているのかははっきりとわかった。
(もう我慢できない……疼いているところを触りたい、体の中をかきむしりたい)
服の上から両胸を揉み、指でいじる。リディアーヌの細い指では持て余すほどの重みだ。上下左右に荒々しく揉んでも、一向に疼きは収まらない。
やがて、指先が偶然胸の頂点をかすめた。
「あっ、ここ……」
さっきもこのあたりが刺激されて声が出たことを思い出す。自分の胸を見下ろしながら、ワンピースを押し上げる突起を指で触ってみた。
「あっ、き、気持ちいい……」
指でこね、つまんだり、押しつぶしたりしているうちに、夢中になって先端をいじっていた。
(ああ、物足りない……お腹の奥が、うずく……)
膝を立ててスカートをたくし上げ、脚を広げてみる。ショーツがびっしょり濡れているのが自分でもわかった。
片手で胸の先端をいじりながら、もう一方の手で恐る恐るショーツの上に手を伸ばしてみた。
そこは触れるだけで体がとろけそうで、全身がびくびくと震えてしまう。だけど、手のひらでこすったり揉んだりしても、うずきは止まらない。頭がどうにかなりそうだった。
ああ、そういえばクリスティーナは「悶え死ね」と言っていたと思い出す。
こういうことだったのかと腑に落ちた。
「やぁ、ふっ、つらい……どうしたらいいの……うぅ」
恥ずかしい姿でぎこちなく自慰を続けてみるも、リディアーヌの体はますます熱を持ってしまう。そのとき、カツカツと鉄同士がぶつかるような音が聞こえてきた。
「ん? な、なんだあれ」
「うっわ、えっろ! こんな森の奥で自分を慰めてんの? 痴女? 痴女なの?」
「何プレイなんでしょう。放置プレイ? 襲われ待ちでしょうか?」
甲冑をまとった三人の男が呆気に取られた様子で、こちらを凝視している。
大柄な男たちは騎士のようで、兜を脇に抱えながらリディアーヌの様子をうかがった。
「いやっ、見ないで!」
こんな痴態を見られるなんて、正常な頭だったら死んでしまいたいと思ったはず。けれど、今のリディアーヌの頭の中は完全に焼き切れており、ただこの体の疼きをどうにか収めなければ、本当に悶え死にそうだった。
口では嫌と言いながらも手が止められない。男たちに見せつけるかのように、片手は主張する頂きを、片手は濡れた下着の上を一心不乱にいじってしまう。見られていると思ったら、疼きがずんと深くなった。
(やだ、私ったら変態みたい……こんなの、私じゃない)
そう思うのに、胸と股の間をいじる手を止められない。頭と体の意思がつながらず、自分の体ではないみたいだ。恥ずかしくて涙が出てくる。
「この甘い匂い……危険な香りがしますね」
「発情香を混ぜた媚薬か? お遊びにしてはずいぶん悪質な薬を使っている。入手ルートを調べた方がよさそうだ」
「はい、トバイア様。くっ、普通のやつなら理性がすり切れますね」
男たちは悩まし気に額を突き合わせると、まずは自慰にふける痴女と話してみようと相談した様子。警戒した様子の一人の大男がリディアーヌに近づいてきた。
サイドを刈り上げた白金髪に濃紺の鋭い目と高い鼻梁、それに男らしいシャープな面立ち。
太い首が甲冑の間から見え隠れする二十代半ばほどの男は、かなり体格がいいようだ。事実二メートル近くありそうな大きな体は威圧感がすごい。
「あー、俺は第一騎士団団長のトバイア・ボンドだ。攻撃はしない。だから、君も落ち着いてこちらの質問に答えてほしい」
「は、はい……んぅ」
息も絶え絶えに答えるリディアーヌに、トバイアは驚いた表情を見せた。リディアーヌは恥ずかしい姿をさらしているのはわかっていても、手を止められない。
彼に従う他の男性たちは、おそらく部下なのだろう。髪型が違うだけで、まるで双子のようにそっくりな二人だ。
「えーっと、もしかして夫たちにここで自慰行為をするように言われているのか? お楽しみのところ申し訳ないが、その発情香は違法な媚薬だ。少し話を聞きたいのが夫たちはどこに……おい、大丈夫か?」
リディアーヌは首を左右に振る。肩で荒い息をし、涙を流しながら胸と股をこすり続けた。何をしても楽にならず、気が狂いそうだった。
「んう、ふっ、熱いの、た、たすけて……、ん、ぐすっ、もうやだぁ、うぅ」
「ん……? 夫たちの姿が見えないが、まさか一人で遊んでいたのか? それとも、発情香で引きつけて乱交しようと待ち構えていたとか……ではない?」
「ふぅ、んんっ、薬っ、飲まされてっ、んんっ、はぁ、つらいっ、つらいの」
ふむ、と後方から観察していた栗色の髪の青年がもしかして、と口にした。
「媚薬を飲まされたってことですか? ひどいですね。この匂い、かなり悪質な組み合わせですよ」
「それにしても下手くそな自慰だな。やったことがないのか? どうします、トバイア様」
「う~ん。どうするって言ったって……これ、つらいだろうに。でも、この女、自分でイけるのか?」
リディアーヌはもどかしさで頭がおかしくなりそうだった。
男たちがいくつか案を出しあう様子を朦朧としながら聞いていると、トバイアが近づいてきた。
「んー、君、それじゃあ永遠にイけなさそうだから俺が手伝うよ。あいつらにも見ていてほしい?」
「わかんないっ! ぐすっ、つらいの……」
「あー、じゃあ性的興奮を高めるために協力させるか。おまえら、そこに座って見ていてくれ」
彼の指示を聞き「了解です」「喜んで」と部下らしき男たちが座る。
トバイアはさて、とリディアーヌに向き直った。
「じゃあ、まずは指示を出すから従ってね」
トバイアはガチャガチャと甲冑を脱ぐと、シャツにトラウザーズ姿の軽装になった。
リディアーヌをひょいと抱き上げ、背中を自分の胸に預けるように脚の間に座らせる。
そして「じゃあ」と言うや否や、おもむろにワンピースを引き裂いた。
「きゃあっ!」
「ボロボロだし、あとで代わりの買ってあげるよ。じゃあ、ちょっといじわるするけど、ごめんね」
そう耳元でささやくと、トバイアの雰囲気ががらりと変わった。
「君はいやらしい体をしているね。大きなおっぱいに、……ああ、綺麗な乳輪だ。薄桃色の先端が固くなっているじゃないか。ほら、見ていてあげるから、自分で先っぽをいじってごらん」
「え? は、はいっ……こ、こうですか? あっ」
「そうそう、上手だねぇ。爪でカリカリすると気持ちいい? こっそり脚をすり合わせて……そこももどかしいんだろう?」
「ふっ、ん、んっ、ど、どこ?」
「……ごほん。ほら、下穿きを脱いでこっちに貸すんだ……うわぁ、びっしょり。スンスン……甘酸っぱい、いやらしいメスの匂いがするな」
脱ぎたての下着に鼻を押しつけるトバイアを見て、リディアーヌは気絶しそうだった。恥ずかしくて仕方がないのに、下腹部がずくんと疼く。
「やだっ、下着を嗅がないで!」
「ほら、こうやって脚を広げるんだ」
「ああっ!」
トバイアの太ももに両膝を乗せられ、強制的に脚を開かされる。体格差がある分、リディアーヌの脚は限界まで開かれた。ごつごつとした大きな両手がリディアーヌの両脇から伸び、秘部を左右に広げられるとクチュッと音がした。濡れそぼったそこがすうすうし、余計に疼いてしまう。
「ほら、自分で触ってみて。人差し指を伸ばして襞の間を上下に……そう、指で蜜をすくって……上手だ。もっと上……その辺にあるだろう? 気持ちいいところが」
トバイアに言われたとおりに指を動かすと、今までとは段違いの快感にぶち当たった。何かしこりのようなものがある。
「あっ!」
「見つけたか。そこだ、そこ。わかりやすく左右に広げてあげるよ。ほら、それをこすってみて」
「ああっ! 気持ちいい! んんっ、おかしくなるっ」
「おかしくなっていいぞ。ほら、もうちょっとだ。おっぱいの先っぽのカリカリも忘れるなよ」
「あん、あ、あっ」
「……ほら、目を開けて。あっちを見てごらん。君の恥ずかしい姿、見られているぞ」
はっとしたリディアーヌの視線の先に、男が二人、あぐらをかいてこちらを見ていた。
一人の男は笑顔で舌なめずりをし、リディアーヌの羞恥心を煽る。
もう一人の男は薄笑いを浮かべながら「えろいですね」と口をパクパクと動かした。
こんな痴態を見られたことに感情が高まり、下腹部がひくひくと蠢く。体の奥がしびれ、じわっと何かが溢れた気がした。
(あっ! お、お漏らししちゃったかも……!)
真っ赤な顔で泣きながら荒い息をするリディアーヌを、トバイアがじっと見下ろし首を傾げた。
「……まだダメか?」
「今、軽く達したっぽいっすね。やっぱ、中でイった方が早いんじゃないっすか?」
「う~ん、まだ発情香の匂いがしますね」
「自慰じゃラチがあかないな……本当は精を放たないとならないが、そこはこの人の夫に任せよう。応急処置として、とりあえず何回か達せば一旦は落ち着くだろうし。う~ん……仕方ない」
トバイアはリディアーヌの胸と股間に手を伸ばすと、耳元でささやいた。
「非常事態なので少し触るぞ? 頭が真っ白になりそうだったら、イクって言って教えてくれるか? 今から俺がイかせてやるからな」
背後から回された男の指が乳房に食い込んだ。人差し指と中指の間に胸の先端が挟まれ、ゆっくりと乳房を揉まれる。柔らかな乳肉が縦横無尽に揺らされるたび、指の間に挟まれた薄桃色の実にも甘い刺激が送られた。
そのうち、芯を持った胸の尖りを指できゅっと引っ張られ、弾かれた。リディアーナはたまらず天を仰ぐ。
「あっ、き、気持ちいい」
「よかった。だけど胸じゃまだイケないだろうから、下でイこうか」
胸を弄んでいた手が股の間に伸びると、つぷっと太い指が泥濘に侵入した。
「あっ!」
ドロドロになった隘路は、はしたない音を立て始める。
溢れた蜜がお尻を伝って垂れ、トバイアまで濡らしてしまいそうだ。
「あの、わたし、きゃあっ!」
「ほら、集中して?」
トバイアは胸の尖りをつまんでいた手を離すとリディアーヌの花芽を探り当て、蜜をまとった指の腹を優しく押しつけた。大きく分厚い手からは想像できない繊細な動きに、たまらずのけぞる。
「あっ、ダ、ダメ!」
ぷっくりと赤く充血した花芽を執拗に責められ、リディアーヌは頭を左右に振って髪を振り乱す。だが、背面にいるトバイアに四肢を絡めるように固定され、体を自由に動かせない。
快感を逃がせず下腹部に熱がこもっていく中、リディアーヌはパニックになっていた。与え続けられる巧みな性戯に嬌声が止まらず、高みから下りられない。
「ああ、見てごらん。健気に勃起して。愛らしいね。そろそろイきそうだね」
「あぁ! もう、ダ、ダメッ! ん~っ!」
その瞬間、リディアーヌの視界が白く弾けた。
ぴんと張ったつま先と充血した秘部を確認し、トバイアは再び熱い泥濘へ指を沈めた。休む間のない責めに、リディアーヌの思考はとろけてしまう。
「ああっ」
「念のため、中イキもしておこう。それにしても狭いな……とりあえず、ほぐす時間もないから浅いところでイっておこうか。ほら、顔をこっちに向けて」
「んむっ」
トバイアは、振り返ったリディアーヌの華奢な顎を押さえ唇をむさぼった。ぽってりとした唇をはみ、舌を差し込んで口腔内を蹂躙する。そして片手の指は泥濘に差し込んだまま、秘芽の裏辺りを探るように指の腹で優しくこすり始めた。
上と下でちゅぷちゅぷと水音を競うように、その音が大きくなる。リディアーヌがびくんと大きく体を揺らしたポイントを見逃さず、トバイアは責め立てた。
淫らな音が大きくなり、リディアーヌに再び絶頂の波が押し寄せる。
涙を流しながら首を左右に振ろうとするが、固定されて動けない。トバイアはリディアーヌの言葉を飲み込むように舌を吸い、離さないままだ。
蜜口に差し込まれた太い指はリディアーヌのいいポイントを責め立て、その快楽は気が狂うほどだった。大きな波が近づき、リディアーヌはくぐもった声でイクと何度も訴える。
(もうダメっ!)
「ん~! ん~!」
リディアーヌは目の前が真っ白になった。
トバイアは指先に感じる収縮を堪能した後、ゆっくりと指を引き抜いた。ちゅぱっと音を立て、ぽってりと腫れた唇からも離れる。
「ふぅ、頑張ったな。どう? 疼きは収まっただろう? ん?」
「団長、多分気を失いましたよ」
「ええ? やり過ぎたか? だけど、この子」
クンクンと三人の男が脱力するリディアーヌの体臭を嗅ぐ。
「……発情香は汗にまみれて消えましたけど、この子、処女香がしますね」
「ええ? 処女が外を出歩くなんて、まずいな……保護しないと危険だ」
「とりあえず、連れて帰るしかないっすね」
トバイアは自分のマントを外すと、リディアーヌをそっと包み、大切そうに抱きかかえた。
第二章
(ここは……)
リディアーヌは目を覚まし、見慣れない天井をぼんやりと見上げていた。壁紙は温かみのある暖色系で、部屋にはマホガニーの重厚な家具が並んでいる。どれも年代物のようだが、丁寧に手入れされていて高級そうだ。まるで貴族の家の貴賓室のようだった。
体がだるく、頭もすっきりしないまま視線を動かすと、自分がふかふかの布団に包まれていることに気づく。こんなしっかりしたベッドで眠るのは十年ぶりだ。思わず安堵のため息がもれた。
「気持ちいい……」
「夢の中でもイってるのか?」
「えっ!?」
人の気配はなかったのに、とリディアーヌは驚いて体を起こした。
「だ、誰?」
「トバイアだよ。覚えてる? 君に自慰を教えて、手でイかせた第一騎士団長」
「あっ……、はい。その節はどうも……」
あのときの快楽がよみがえる。ベッドサイドの椅子には、腕を組んだトバイアが座っていた。あの指で胸や下半身を弄られたことを思い出し、一般的な令嬢と変わらない貞操観念を持つリディアーヌは、顔を赤らめて俯く。
媚薬は抜けたというのに、トバイアの手を見たら、また下腹部が疼いたのだ。
そんなリディアーヌを見て、トバイアが首を傾げた。
「もしかして、あの程度で恥ずかしがってる? よくわからない女だな。とりあえず、名前は?」
「えっと……、リディアーヌ……です」
家はもう捨てたのだから、苗字は言わなくていいだろう。パナケイア侯爵家は有名過ぎるし、下手に名乗って能力があると期待されても困る。リディアーヌは加護をもらえなかったパナケイア家の落ちこぼれなのだから。
「リディアーヌか。聞きたいことは山ほどあるんだが、とりあえずここは我が家だ。取り急ぎ、俺のシャツを着せた。君の服は俺が破いたから、今買いに行かせている」
「あ、はい……」
見下ろすと、清潔な白いシャツを着せられていた。胸の先端に直接シャツが触れ、股がシーツに直接触れていることに気づき、慌てて上掛けを引き上げる。
「本来は騎士団の拠点に連れていきたかったが、君のその香りで発情する者がいそうだから、うちに連れてきた次第だ。それで、君は今いくつなんだ? なぜ、まだ処女でいる?」
「え?」
(騎士団の取り調べって、そんなことまで尋ねるの? もしかして媚薬には年齢制限があるのかしら。それにしたって恥ずかし過ぎる……だけど、トバイア団長はお仕事で聞いているんだから、正直にお答えしないと困らせるわよね)
リディアーヌは硬い表情でごくりと喉を鳴らした。
「今年、二十歳になりました。婚約者もいませんし、結婚もまだなので、いまだ処女です」
「二十年も生きてきて処女だと……? すごいな。どこかの宗教で守られていたのか? 処女信仰なんて聞いたことがないが、生贄か何かか。それなら無垢なのも納得だが……?」
トバイアがぶつぶつと呟くのを聞きながら、リディアーヌは恐る恐る尋ねた。
「あの、トバイア団長、ここはどのあたりなんですか?」
できれば、パナケイア侯爵家のある場所からうんと離れていることを願う。もし隣接する領なんていう近さなら、一刻も早く遠くへ行った方がいい。ここにいることが知られたら、団長にも迷惑がかかるかもしれない。そのくらいの力をパナケイア侯爵家は持っている気がする。
だけど、そのためには、お金を稼がなくてはいけない。仕事も家も探す必要がある。まずは状況を把握しようとリディアーヌはぎゅっと拳を握りしめ、トバイアの返答を待った。
「ここ? ああ、王都の我が家だよ。どこか目的地があるのか? どちらにしても、そんな処女香をまき散らしながら外に出るのはおすすめしないな」
「処女香?」
聞きなれない言葉だが、トバイアはリディアーヌから香ると言っているようだ。
年上の女性からいろいろ教わったが、処女に香りがあるなんて聞いたことがない。もしかして個人差があって、たまたま自分だけ匂いがするのだろうか。
困惑するリディアーヌを見て、トバイアは首を傾げた。
「どうも君と話していると何かがずれてるんだよな。種族のせいか? ちなみに、君は何族なんだ?」
「……種族とは?」
「まさか、自分の種族を知らないのか!? 混血で両親がわからないとしても何かの拍子にこう、う~ん。……えぇ? わからないなんてことがあるのか?」
頭を抱えてしまったトバイアに、リディアーヌも混乱する。きちんとした学校も通っていないし、家庭教師に何かを教わったこともない。もしかしてリディアーヌが知らないだけで、みんな何かに所属しているんだろうか。
「あの、トバイア団長は……?」
「俺? 犬族」
(イヌ? あの犬? つまり……)
リディアーヌは頭の中が真っ白になった。つまり、それは獣人ということではないのだろうか。
ということは、ここはラグランジュ王国ではなく獣人が住むエクランド王国で、自分はあの森から家とは反対側へ連れてこられたのかもしれない。
リディアーヌはそろりとベッドから降りると、トバイアを警戒しながらゆっくりと扉へ後ずさりした。
(四肢を切り刻まれるのも、生きたまま内臓を開かれるのも嫌。逃げなきゃ……)
リディアーヌがじりじりと後退する姿に、トバイアの雰囲気が変わる。
「……何か都合が悪いことでも?」
「や、こ、来ないで……」
どのみち逃げられないことはわかっている。ここから出られたところで獣人に囲まれ、爪で切り裂かれ、まるで玩具のように転がされるのだろう。
逃げ場のない恐怖にガクガクと足が震え、涙が止まらない。
「え? なんで泣くんだよ。善意で助けてやったのに、何が気に障ったんだ?」
「うっ、わ、わたしを、切り刻むんでしょう?」
「は? 君を? 俺はシリアルキラーではなく、騎士団長だと名乗ったはずなんだが」
「だって、獣人は、ひっく、に、人間を殺すって……、わたし、人間だから……」
「人間だと!?」
その瞬間、トバイアは椅子を倒しながら立ち上がり、わずか数歩でリディアーヌの前に立ちはだかった。首元に顔を近づけ、耳の裏を嗅ぐように鼻を鳴らす。
「スン……嫌な臭いはしないのに……おかしいな」
「ひぃっ! お許しくださいお許しください! 殺さないで刻まないで!」
リディアーヌは腰を抜かし、崩れるように座り込んだ。
トバイアはため息をつき、うずくまったリディアーヌの前にしゃがみこむ。
「人間は獣人についてずいぶんな言いようをしているとは知っていたが、本気で信じているんだな……で? 君が教わった獣人の特徴は?」
「ぜ、全身毛まみれで、ひっく、獣と同じ耳があって、く、口が裂けていて……」
「俺の顔はどうだ?」
指の間からこわごわと顔を上げると、そこには精悍なトバイアの顔。人間でもここまで整った男はめったにいない。意志の強そうな太い眉や、鋭いあごのラインが男らしさを感じさせる。
「すごく、かっこいい……です」
「だろ? ほかには?」
「人間の二回り以上の大きさで、爪は鋭いかぎの形で獲物を嬲る……」
「まあ、体が大きいのは確かだが、爪は普通だぞ。君のいやらしい穴に指を入れてゴシゴシしたじゃないか。気持ちよかっただろう?」
「っ~~!」
リディアーヌが真っ赤になると、トバイアはあははと笑った。
「で、獣人に何をされるって教わってるの?」
「……もしも捕まったら、四肢を切断されて、ゆっくり弄ばれながら殺されるって……」
「ずいぶんと野蛮な話だな……あのな、そもそも獣人を誤解している。まず、姿かたちは君たち人間とほとんど変わらない……普段はな。ただ、三大欲求に関しては本能が強いから、少し種族の特徴が出やすいけど」
「そうなんですか?」
「ああ。もし君の言う通りなら、出会った瞬間に嬲ってるよ。玩具にしてくれといわんばかりに、股を広げて淫らに誘っていたじゃないか」
「あ、あれは、不可抗力で……」
確かに、よくよく考えたら、出会った時から一貫してトバイアは気遣ってくれている。媚薬による欲を発散させるときも無理やりなことはせず、痛いこともされなかった。クリスティーナにされてきたことの方が、よっぽど残酷ではないだろうか。
そう考えた時、リディアーヌはまだトバイアにお礼を言っていないことを思い出した。
「あの、いろいろ誤解していたようです。ごめんなさい。それから、助けていただいて、ありがとうございました」
「まあ、仕事でもあるから。それで? なんで人間が混沌の森にいたんだ? 人間は怖がって立ち入らないだろう?」
「あそこ、混沌の森というんですね……」
リディアーヌは事情を簡単に説明した。自分は何もできない役立たずで、義妹の婚約者に色目を使ったと誤解され、媚薬を飲まされ捨てられたことを話す。
トバイアは真剣な表情で話を聞くと、リディアーヌの手元に視線を落とした。
「苦労したんだな。手を見ればわかる……なあ、これからどうするんだ? 戻ったところで悲惨な目に遭いそうな気がするんだが」
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