ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせるDK真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

文字の大きさ
8 / 154

第8話 二人の間に割りこむ

しおりを挟む

その日の仕事終わり。
バックルームで明日美ちゃんに声を掛けられた。

「真島くん、お疲れさま」
「お疲れ~」

とっとと帰ろう。

「あのね、真島くん、この後って時間ある?」
「え?何?」

♪~
明日美ちゃんのスマホが鳴った。

「あ、ちょっとごめんなさい」

イヤな予感がする。

画面を確認した明日美ちゃんが言う。

「灰谷くん、もう少しで着くって。でね、三人でいっしょにご飯食べて帰ろうって言われてたんだけど」

そう来たか。

「ワリぃ、オレ、家でメシ待ってるし」
「真島くんのお母さんには灰谷くんが連絡するって」

読まれてる。

「いや、オレ、金ないし」
「今日は灰谷くんがごちそうするって」

灰谷のやつ、三人じゃ会わねえつったのに。
ぜってえヤダ。

「ワリぃ、オレ今日寄るところあるんだわ」
「え?」
「明日美ちゃんも灰谷と二人のほうがいいだろ」
「え?そんなことないよ~」

と言っている顔に二人でいたいという本音がにじんでいるように見えた。
オレのやっかみか。

「んじゃ、オレ表から行くわ。灰谷にはテキトーに言っといて」
「え?真島くん……」

灰谷のやつ。ふざけやがって。
明日美ちゃんの返事も待たずにオレは店を飛び出した。





灰谷が店のバックルームに顔を出すと明日美が一人待っていた。

「灰谷くん」

灰谷の顔を見てニコニコ笑った。

「あれ?真島は?」
「帰っちゃった。寄る所があるって」
「寄る所?ちょっと電話するわ」

呼び出し音はするが、真島は電話に出ない。

「出ねえな」
「灰谷くん、また今度でいいんじゃない?」
「え?まあそうなんだけど……」

今までと大して変わらないって所を真島のやつに早めに見せとかないと……。

「灰谷くん、あたしと二人じゃいや?」
「え?」
「やっぱり三人がいい?」
「いや、そんなことはないけど」
「もしかしてあたしが、割りこんだみたいになっちゃうのかな」

明日美が淋しそうな顔をした。

割りこむ?
オレと真島の間に?
:--そういえばあいつもそんなこと言ってたっけ。

オレと真島の間に誰かが割りこむなんて、意味不明なんだけどな。
そういうのと違う……。

灰谷は心から不思議に思った。

電話は留守電になってしまった。

「そういうんじゃないよ。じゃ今日は二人で行こっか」
「うん」

明日美の顔が輝いた。

「高梨さん何食べたい?」
「灰谷くんは?」
「オレ?オレは~なんだろう~肉?」
「お肉、いいね」
「ええと……そしたら……」

女の子を連れて行くお店のデータが灰谷には不足していた。

「灰谷くん、前に真島くんと三人で行ったファミレスにしない?あそこならなんでもあるし」
「そうしよっか」
「うん」

明日美がさり気なくお店を提案してくれた事に灰谷は気がついた。
こういう気遣いのできるところがとてもいいと思った。


明日美と二人、ファミレスまで歩きながら灰谷は考えた。

真島のやつ、本当に三人じゃ遊ばないつもりだな。
メシぐらいいっしょに食ってもいいじゃねえか。
逃げるとかなんなのあいつ。
やっぱ高梨さんのこと……。


灰谷がハッと気がついたら、隣りを歩いていたはずの明日美の姿がなかった。
振り返ると明日美は灰谷の後ろを少し遅れて早足でついてきていた。

身長百八十近い灰谷。一方明日美は百六十センチもない。
歩幅が違った。

「ごめん。歩くの早すぎた」
「ううん。足の長さが違うから。ごめんね」

明日美に合わせて灰谷にしてはかなりのスローペースで並んで歩く。
お店を決めることも含めて真島と三人でいる時には意識したことのない事だった。
いつでも真島がおしゃべりを途切れさせず、先に立ってくれていた。


明日美と初めて二人きりで会った時に気がついたことが灰谷にはあった。

真島がいないと話が転がって行かず会話が弾まない。
灰谷自身、あまりベラベラしゃべる方ではないし、明日美は明日美でどうも緊張しているようで、どうしてもギクシャクしてしまう。
佐藤にいろいろと聞かれても答えられなかったのは実はそのせいもあった。
自分と高梨明日美を真島がうまくつないでくれていた事を灰谷は改めて感じた。

なぜ真島じゃなくてオレなんだろう。
真島と話したほうが楽しいだろうに。

灰谷はそう思いながら明日美を見つめた。

「灰谷くん?」
「腹へったね」
「うん」

それでも微笑む明日美はカワイかった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

処理中です...