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第26話 再会

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コンビニに行くと言って家を出た。

佐藤や中田の家に遊びに行くには時間が遅いし、もちろん灰谷のところにも行けない。
結局行くところなんてなくてコンビニへ。
雑誌をダラダラ立ち読みして、それにも飽きたんでお菓子とジュース買って。
ぶらぶら家まで帰ろう。

ふとあのコンビニ近くの公園に足を向けた。
この間、オレの処女を奪ってくれたおっさんと酒飲んだベンチ。
なんとなく……。

で……いた。


「よお」

オレの顔を見ると男は笑顔で手を挙げた。
この時間だからかスーツ姿じゃなくて、Tシャツにジャージでサンダル履き。
手には缶ビール。
コンビニのビニール袋を持っている。
近所にふらりと買い物に来たみたいな姿だ。
ただ、この間会った時より痩せてやつれたように見えた。


「こんばんは」
「こんばんは。ハハ、他人行儀だな。まあ他人か。座れば。あ、飲む?」
「いいえ」

オレは隣りに座る。
男はビールをグビリと飲んでから言った。

「この間大丈夫だった?カラダ」
「はい」
「そう。気になってたんだ」

オレばっか何度もイカせてもらっちゃって気持ちよかったです……とは言えるわけもなく。

「あの……」
「うん?」
「キスマーク」

と、この間灰谷にバッチリ見られた首の後ろを指差す。

「ここに付けました?」
「あ、ごめん。君がカワイくて……つい」

カワイイ!?

「……カワイくねえし」
「カワイかったよ」

う~。

「一応、服着てれば見えないところに付けたつもりだったんだけど。よく気づいたね」

いや気づいたのオレじゃないけど。

「もしかして誰かに見られた?」

一番見られたくないやつに見られた。

「……」
「そっか。ごめんね」
「いや、まあ……もともとオレが頼んだんだし」
「あ、これ、あげる」

男はコンビニのビニール袋から棒つきのキャンディーを出した。

「メロンソーダ味ってのがそそるよね」

メロンソーダか。
ペロペロ、男と並んでキャンディーをなめる。

ガキの頃、灰谷とよくなめたな。
安っぽいメロン香料の味。
ガリガリと噛んで、最後に紙の棒が残る。
ガジガジとしがんでチュウチュウと吸う。

思い出もしゃぶり尽くせばいつかは味もしなくなっちゃうのかな。
アップデートされない記憶はいつかどこか遠くへ。
したら、灰谷のこと忘れられるのかな。
こんな風にいつもいつも何かにつけて思い出したりしなくなるのかな。

かなかなかな。

かな……ばっか。



「うち……来る?」
「え?」
「まあ、よかったらだけど」

そう言うと男はグビグビグビとビールを飲み干してグシャリと缶をつぶした。

どうしたもんかな、と思っていたら、男は立ち上がった。

「行こっか」

男はゆるく笑った。

まあ、いっか。
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