ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせるDK真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

文字の大きさ
88 / 154

第88話 最後の電話

しおりを挟む
妊娠がなかったことがわかった日の夜遅く電話が鳴った。
結衣ちゃんからだった。

「もしもし」
『…真島くん、電話に出てくれてありがとう』

結衣ちゃんの声は小さく、少し震えていた。

「うん」
『……ごめんなさい。こんなに大変なことになっちゃって』
「うん」
『あたし、もし真島くんの子供ができてたら、真島くん、帰ってきてくれるんじゃないかって』
「うん」
『そんなことないのわかってたけど。もしかしたらって』
「うん」

うん、しか言うことができなかった。
ここまで追いこんだのはオレだった。

『まだ早いのわかってたけど、検査薬使ったら、それをお母さんにみつかっちゃって。で、で……本当にごめんなさい。真島くんのご両親にも……』
「いいんだよ。オレが全部、悪い。結衣ちゃんには本当に悪い事したと思ってる。ごめん。本当にごめん」
『謝らないで。あたしは嬉しかった。楽しかった。この夏、真島くんと一緒にいられて』
「……」

灰谷への当てつけで始めた結衣ちゃんとの付き合いだたったけど、オレも嬉しかったし楽しかった。
こんな自分の事を全身で好きだと言ってくれる結衣ちゃんの存在になんて言えばいいんだろう。
そう。慰められた。
でも灰谷を想う気持ちとは全然違くて……。


『あのね、あの……灰谷くんの事』
「うん」
『知ってるの?灰谷くんは真島くんの気持ち』
「知らない。気づいてないと思う」
『そっか。……あのね、灰谷くんとうまくいくといいね、とは言えない』
「うん」
『でもね、一番そばにいる人に想いを伝えられないツライ気持ちはわかる。わかると思う』
「うん」
『真島くんの気持ち知ってるのって、あたしだけだよね』

城島さんは……省いていいんだろうな。

「うん」
『二人の秘密だね』
「うん」
『話してくれてありがとう。あ、あたしが無理やり言わせたんだよね』
「……」
『真島くん、あたし、真島くんのこと、本当に好きだったよ』
「うん。わかってた。ちゃんとわかってた。ごめんな」

ごめんしか言える言葉がなかった。

『……これで最後、だよね』
「……うん」
『元気でね』
「結衣ちゃんも。元気で」

二人とも電話を切れずにいた。

『真島くん、電話切って』
「いや、結衣ちゃんが切りなよ」
『わかった……じゃあ……さよなら……』


電話を切った後、結衣ちゃんはきっと泣くだろう。
オレが傷つけた人。


今度のことでイヤというほどよくわかった。
オレ自身の弱さと女々しさ、灰谷への執着の深さ。


オレ、時期が来たら、ここを離れよう。
灰谷から、離れよう。
それで、灰谷のいないところで一人で何もかも始めるんだ。
自分一人で自分の責任において。
城島さんの言うように何もかも捨ててみたら何が一番大事なのかわかるのかもしれない。

――って、まあ、高校卒業まではこのままやってくしかないし、大学までは(行ったらだけど)親掛かりになっちゃうだろうけど……。

母ちゃんを、親父を、オレの周りにいる人を、これ以上オレのせいで泣かせたくない。


高校卒業まであと1年半。
それまでなんとか持ちこたえよう。


そう心に誓った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

処理中です...