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第104話 新人バイト

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真島の家に寄らずに来たので、灰谷は十分前にはバイト先のコンビニに着いた。

「おはようございます」

バックルームに入っていくと、店長が見慣れぬ顔と話している最中だった。

「ああ灰谷くん、紹介するよ。彼ね、今日から入ってもらう立花くん」

店長に紹介されてペコリと頭を下げた少年はひょろりとして手足が長く、キレイに整った顔をしていた。

モデルみたいだな。
灰谷はそう思った。

「立花友樹です。よろしくお願いします」
「友達の樹でトモキくんだって。友達いっぱいいそうだよね」
「いや、そんなことないです。ボク、人見知りなんで」

友樹は、はにかんだ笑顔を見せた。

「そうなの?そんな風には見えないけど。で、こっちが灰谷くん」
「灰谷です」

灰谷も軽く頭を下げた。

「灰谷くんと真島くんはたしか西高だったよね」
「はい」
「じゃあ立花くんは二人の後輩になるんだ」
「ボク、夏休み終わったら西高に編入するんです」
「一年?」
「はい」
「オレは二年。よろしく」
「よろしくお願いします」
「いろいろ教えてあげてね。っていうか他店舗で働いてたこともあるから、ほとんど教えることないと思うけど」
「いや、そんな事ないです。よろしくお願いします」

友樹は丁寧に頭を下げた。


「そうだ灰谷くん。明日美ちゃんとなんかあった?」

聞きにくそうに店長が言った。

「実はご両親からはね、後釜決まったら辞めさせたいってずっと言われてて。例のストーカー、あっ、立花くんは聞こえてても聞き流してね」
「ボク、何も聞こえません」

友樹は耳に手を当ててニコリと笑って言った。

「ありがとう。あれがあった後もね、明日美ちゃん自身は続けたいって言ってたんだよ。それが立花くん決まったって聞いたら急に辞めたいって。あの子、無責任な子じゃないし」

明日美が……。
そりゃそうだよな。オレの顔なんか見たくないよな。

「すいません」

灰谷は頭を下げた。

「あ、違う違う。いいのいいの。ちょっと気になってさ。そっか~。まあねえ、若いうちは色々あるよねえ。ボクもあった。うんうん」

店長は物知り顔にうなずいた。


明日美の方がここでのバイトは長かった。
灰谷が辞めさせたようなものだった。
しょうがないこととはいえ、後味は悪い。
それよりも……明日美が辞めた事で真島がまた自分自身を責めるのではないかとそちらの方が灰谷は気にかかった。


「おはようございま~す」

パートの多田さんが出勤して来た。

「おはようございます」

挨拶を返しながら灰谷は思った。

あれ?なんで多田さん?真島は?

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