ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせるDK真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

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第105話 青春っぽいの

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「あの、今日って多田さんシフトでしたっけ?」

友樹への紹介が一段落したところを見計らって灰谷は聞いてみた。

「ん?真島くんの代わりだけど」
「え?」
「あれ、もしかして灰谷くん聞いてない?昨日の夜電話が来て、八月中のシフト、全部代わったの。夏休みの課題が間に合わないからって」
「そう……ですか」
「灰谷くんは?課題、終わってる?」
「あ~もう少しなんですけど」

灰谷の納得できないような様子を見て、店長の目が好奇心に輝いた。

「あれ?何何?一番の親友が聞いてないって何よ?ケンカでもした?あれえ、それとも明日美ちゃんと三角関係とか?」
「違いますよ」
「だよね~」

昨日はそんなこと一言も言ってなかったんだけどな……。


ん?
灰谷が視線を感じて顔を上げると友樹と目が合った。

友樹は灰谷を見て、ふわりと笑った。

なんだ?人の痴話話が面白いとか?
そういう感じでもないか。

「ワケありだなあ。まあとにかく立花くんは、これから灰谷くんと真島くんとシフトがいっしょになる事が多いと思うから、指導よろしくね」
「はあ」



その日、灰谷はモヤモヤしながら働いた。

バイト終わりに真島に電話をしてみた。
電源が切られている。

あいつ……ホントなんなの?
LINEを送る。

『おい。バイト休んで何してんだよ?』


「あの……灰谷先輩、お疲れ様です」

すでに帰り支度を済ませていた友樹は律儀にも灰谷が電話を終わるまで待っていたらしい。

「ああ。お疲れ」
「先輩、家は大通りの方ですか?」
「いや、反対側。立花くんちはあっちの方?」
「はい。あの、立花でいいですよ」
「そう?」
「真島先輩はこっちですよね」
「うん。あれ?真島のこと知ってるの?」
「いえ。さっき店長に聞いて」
「ああ」
「じゃあ、ボク、お先に失礼します」
「お疲れ」

立花友樹はなるほど、他店舗で働いていただけのことはあり、ほとんど教えることもなく、テキパキと働いていた。
店長の言う通り即戦力だった。
明日美の穴も埋まるだろう。明日美目当ての客は減るかも知れないが。

それにしても真島のやつ、夏休みの残りのシフト全部休みってどういう事だろう。
確かに課題にはまるっきり手をつけてないとは言ってたけど。
みんなで手分けしてやる事になってるし。

具合でも悪くなったとか?
昨日の今日で?
いや、でもこの間の熱中症もあるしな。

灰谷は自転車で真島の家へ向かった。

  *   *   *

チャイムを押すと母の節子が出てきた。

「あら灰谷くんどうしたの」
「真島、いますか?」
「 まことならいないわよ」
「え?」
「あれ?聞いてない?今日のお昼に自転車に乗って出かけたの。旅に出るって」
「旅…ですか」

意外な展開に灰谷は驚いた。

「なんか昨夜急に、一人になって色々考えてみたいから行かせてくれって言い出して。
あたしは反対したんだけど。お父さんが『わかった行って来い』って。
あの人ああ見えて、そういう青春っぽいの好きだから」

青春っぽいの……。

「まあ、あの子もいろいろあったから。
一人になって自分と向き合いたいって言うのもわからなくはないしね。
とは言っても、あと一週間で学校が始まるからそれまでには帰って来るって約束だけはさせたんだけど」
「そうですか」
「でも、灰谷くんに黙って行くなんておかしいわね」

それだけ追いこまれてるって事かもしれないな。
いや、深刻か。

「でもね~あの子あれで淋しがりだから、すぐに帰ってくるとあたしは踏んでるんだけど。多分、長くて二日ってとこね」


真島家を後にして、灰谷はもう一度スマホをチェックしてみた。
折り返しの電話はないし、LINEのメッセージに既読もついていなかった。
もう一度電話してみたが、相変わらず電源は切られたままだった。
念の為に佐藤と中田に電話して聞いてみたが、二人とも真島の行き先はおろか旅に出たことさえも知らなかった。

親とバイト先だけ。
そこだけにはキチッと筋を通す辺りがなんとも真島らしかった。

それにしてもオレには一言あってもいいのに。
もしかしてやっぱ昨日の……つうかオレのことが関係してんのか?
ないことはないよな……。

あいつ、一人でどこ行ったんだろう。


灰谷は空を見上げた。
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