ナツノヒカリ ~親友への片思いをこじらせるDK真島くんのひと夏の物語~

カノカヤオ

文字の大きさ
133 / 154

第133話 言え。

しおりを挟む

「真島てめえ、オレを走らせやがって」

ドアを開けて入って来たのは、汗だくの灰谷だった。

「なんで」
「あ?」
「なんでここってわかった。オレ、誰にも言ってないのに」
「呼んだだろ」
「は?」
「テレパシー飛ばしたろ」
「…何、言ってんだよ」
「灰谷。灰谷。灰谷って呼んだだろ」
「つっ……」

灰谷の顔を見たら涙がこみ上げた。


「アホか!」

泣いちゃダメだ。

灰谷はオレの隣りにドスリと腰を下ろした。


「あ~疲れた~。なんか飲み物くれ」

オレはクーラーボックスから水のペットボトルを出して渡した。
ゴブゴブと飲んで灰谷はむせた。

「なんだこれ、ヌルっ」
「しょうがねえだろ。冷蔵庫ないんだから」

部屋をくるりと見渡して灰谷が言った。

「え~。ああホントだ。つうかなんでこの部屋あっちこっちに本が散らばって……あ!」


声を上げると灰谷は立ち上がり、外に出て行ってしまった。

「え?あ!って何。え?」

しばらくしたら灰谷はビニール袋を下げて帰ってきた。

「ん」

オレに差し出す。
受け取ってオレは中をのぞく。

ペプシといちごオーレとアメリカンドッグが二本が入っていた。

こいつ、ホントに……。


オレは灰谷にペプシのペットボトルを渡す。

灰谷はフタを開けるとグビグビと飲み、プハーと息を吐いた。


「つうか、ここ、なんなんだよ」
「あ~まあ、その……」

城島さんの部屋って言いにくいよな。

「まあいいや」

いいのかよ。


「帰るぞ」
「はあ?そんな急に言われてもオレにも都合ってもんが」
「帰るぞ真島」

灰谷はオレの顔を真正面から見つめた。

有無を言わさない顔だった。
汗だくで、でもやっぱ男前で、オレの好きな灰谷の顔だった。


「その前に、オマエ、オレに言いたいこと、あるだろ」
「は?」
「言え。全部言え」


足元から水が引く。

ぞわぞわと肌に鳥肌が立つ。

こいつ……知ってる。
わかってる。
オレが、こいつの事好きだって。
気づいてる。
それで、言ってる。
全部言えって。


オレ……。


ヒュー。
風が耳元を吹き抜ける。
首に太いロープの感触。

足元の扉がキシむ。

首吊りだ……。


「いやだ」
「なんで」
「いやだ」


言うって、次に灰谷と会ったら伝えるって決めただろオレ。
いや、そうだけど。
そうだけどでも……。


「言え」
「言わない」
「言え」
「だって…」
「だってなんだ?」

オレは灰谷の顔を見つめた。


やっぱりオレ、今までのオレとオマエを失いたくない。
怖え。


ヒュー。
風が強くなる。
ロープが首に食いこむ。
足元の扉の感触が足に柔らかくなる。

飛ぶなら今なのか?
そうなのか。
オレ、新しい地獄に飛ぶ覚悟はできたのか?


その時、灰谷がオレの両腕をつかんだ。
オレはビックリして灰谷の目をのぞきこむ。


「言えよ真島、あの夏の坂道で言えなかった事」

オレの腕を掴む灰谷の手に力がこもる。
 

「言え」


灰谷のその声でオレは飛んだ。



「灰谷、オレ、オマエが好きだ。好きなんだ。どうしようもなく、好きで好きでたまらないんだ」

言い切ったら涙がこみ上げた。
止まらなかった。止められなかった。
後から後から溢れ出した。


ふわり。
熱い何かに包まれた。

え?


灰谷がオレを抱きしめていた。

灰谷の胸。
灰谷の腕。
灰谷のカラダ。

それに気がついて、さらにオレは泣いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

はじまりの朝

さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。 ある出来事をきっかけに離れてしまう。 中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。 これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。 ✳『番外編〜はじまりの裏側で』  『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

処理中です...