142 / 154
第142話 灰谷の告白
しおりを挟む
「真島、ちょっと話さねえ?眠い?」
「ううん」
「うちの母ちゃんなんだけどさ」
灰谷が布団の上であぐらをかいた。
「久子母ちゃん?」
「うん。なんか、急に会社辞めて自分で事業始めるとか言い出してさ」
「お!いいじゃん。仕事できるんだし。そういう道もあるよな」
「ん~。まあ、それは別にいいんだけどさ……」
中々に口が重い。
なんだろう。
「……それでな。結婚するとか言い出して」
「結婚!」
これはきちんと聞かないと、と、オレはベッドの上に起き上がった。
「まあ、パートナーっていうか。そういうのができたのは良いと思うんだけどさ」
「え~いいじゃんいいじゃん。オマエの母ちゃん、カッコイイし。あの母ちゃんが認めた男だろ。間違いないって」
「ん~それがさ……」
なんだか歯切れが悪い。
これはもしかしてのもしかして……。
「何、灰谷、オマエまさか、母ちゃん獲られちゃう、みたいな」
「違えよ」
灰谷は本当にイヤそうな顔をした。
違うんだな。
「じゃあ、いいじゃん」
「それがさ……はあ~」
「なんだよ。もったいぶるなよ」
「相手、会社の後輩とかで」
「おう、年下?やるね~」
「んでさ……」
「おう」
「…んな、なんだよね」
「ん?何?」
「だから、女、なんだよな」
「ほう?」
オレがわからなかったとわかったのだろう。
灰谷はハッキリ言った。
「母ちゃんの相手、女、なんだよ」
「ああ……え~~!マジか」
「マジだ」
え?え?え?
それって……えー?
だから、えー?
「まあ結婚とかなんかは、ゆくゆくはって感じだって言ってたけど。そのぐらいの気持ちってカミングアウト受けた」
「おう~。……スゲエな」
「うん」
「ん~。……ファンキー母ちゃんやるね~」
「いや、ファンキーにも程があるだろ」
ん、でも、あれあれ?灰谷の母ちゃんってそっちの人だったっけ。
いや、でも灰谷がいるし……。
ん?
自分の事もあるし、どっからツッコんでいいかわからなかった。
とりあえず……。
「会ったことあんの?どんな人?美人?」
「一回、酔っ払った母ちゃんを送って来たことがあって。その時に挨拶ぐらい。感じは良かったけど。まあ、美人って言えば美人」
「ほう~。ん~。なんて言っていいやら」
「うん。まあ、オレもだから、そう言ったんだけど」
「なんて言っていいかわからないって?」
「うん」
「まあ、正直なとこだよな」
「うん……」
灰谷は腕を組んで黙った。
オレは灰谷がまた話し始めるのを待った。
「まあその後、おめでとうとは言ったんだけど」
「うん」
「良い人が見つかって良かったって」
「ああ。よく言ったな」
「ん?」
灰谷が顔を上げてオレを見た。
「エライよ灰谷」
「…うん」
灰谷は、ほんの少しテレた顔をした。
「少し話してさ。オレの父親の事とか。普段ほとんどしないんだけどな」
「うん」
「女手一つで苦労してオレを育てて来たんだし、これからは母ちゃんの人生だしなとかも思ってさ」
「うん」
「でもやっぱ多少複雑な気持ちでは、ある。母ちゃんには言えねえけど」
「うん。そりゃあそうだ」
だよな。
……で、そこに持ってきてオレだろ。
なんか、申し訳ない気持ちになって来た。
「でもまあ、母ちゃん、ホントにその人の事好きみたいでさ」
「うん」
「それが一番かなって。……ってまあ、それだけなんだけど」
「うん」
「でもやっぱ。驚いたし」
「うん」
「なのに……真島はいねえしさ」
灰谷はちょっとスネた子供のような顔をした。
「ああ」
「もう…」
「うん。悪かった」
そんな時にそばにいなくて悪かったと思った。
オレたちは見つめ合った。
先に、なぜかちょっとまぶしそうな顔をして目をそらしたのは灰谷の方だった。
なんだ?
「で、母ちゃん、節子にさっそく話してさ」
「え?うちの母ちゃんに?」
「うん。で、節子がごちそう作るから、顔合わせも兼ねてみんなで食事しようって」
「お~。いいじゃん」
「いやいいけど。一人で会うよりはいいけど」
母ちゃん、灰谷とおばさんの事を思って言い出したんだろうな、と思った。
「オレどんな顔してればいいんだよ。母ちゃんとその彼女だぜ」
「あ~わかるわ~」
「それでなくても母ちゃん、頭がお花畑になってて、ミネミネ言ってんのに」
「ミネって言うの?相手」
「ああ。峰岸だからミネなんじゃね?聞かないけど」
「なるほど」
「この間もパスタ作ってやったら、ミネに食べさせた~い、だからな」
「ああ」
「しまいにはミネも料理ウマイから、オレと並んで作ってるのをつまみに飲んだら最高。嫁と息子~とか言ってたしな」
やっぱちょっとスネてるか?灰谷。
自分では気がついてないみたいだけど。
普段は、一人でもオレは平気、みたいな顔してるのに。
「……なんだよ」
マズイ。ニヤけていたのがバレてしまう。
「まあまあ。別に取り繕わなくても。そのまんまでいればいいじゃん」
「そのまんまって」
「いいんだよ。灰谷はそのまんま、いつもの灰谷でいれば。ちゃんと母ちゃんとその人に通じるよ」
「そうかな」
「そうだって」
「……うん」
言って灰谷は小さくうなずいた。
オレの言葉にうなずく灰谷。
うん、だって。うん、だって。
カ~ワイイ~。
あ~なんだこれ。
今まで見えてなかったカワイさが見えてきたぞ。
ヤバイ。
抱きしめてえ~。
けどそうするわけにもいかないんだよな。
まさにニュー地獄。
話変えよう。
「あ~パスタって、ナスとトマトとベーコンのやつ?ニンニクが効いた」
「うん」
「オレも食べたいわ」
「おう。今度つくってやるわ。大葉は多めだろ」
「うん」
このわかってる感…ヤバイ。
「ううん」
「うちの母ちゃんなんだけどさ」
灰谷が布団の上であぐらをかいた。
「久子母ちゃん?」
「うん。なんか、急に会社辞めて自分で事業始めるとか言い出してさ」
「お!いいじゃん。仕事できるんだし。そういう道もあるよな」
「ん~。まあ、それは別にいいんだけどさ……」
中々に口が重い。
なんだろう。
「……それでな。結婚するとか言い出して」
「結婚!」
これはきちんと聞かないと、と、オレはベッドの上に起き上がった。
「まあ、パートナーっていうか。そういうのができたのは良いと思うんだけどさ」
「え~いいじゃんいいじゃん。オマエの母ちゃん、カッコイイし。あの母ちゃんが認めた男だろ。間違いないって」
「ん~それがさ……」
なんだか歯切れが悪い。
これはもしかしてのもしかして……。
「何、灰谷、オマエまさか、母ちゃん獲られちゃう、みたいな」
「違えよ」
灰谷は本当にイヤそうな顔をした。
違うんだな。
「じゃあ、いいじゃん」
「それがさ……はあ~」
「なんだよ。もったいぶるなよ」
「相手、会社の後輩とかで」
「おう、年下?やるね~」
「んでさ……」
「おう」
「…んな、なんだよね」
「ん?何?」
「だから、女、なんだよな」
「ほう?」
オレがわからなかったとわかったのだろう。
灰谷はハッキリ言った。
「母ちゃんの相手、女、なんだよ」
「ああ……え~~!マジか」
「マジだ」
え?え?え?
それって……えー?
だから、えー?
「まあ結婚とかなんかは、ゆくゆくはって感じだって言ってたけど。そのぐらいの気持ちってカミングアウト受けた」
「おう~。……スゲエな」
「うん」
「ん~。……ファンキー母ちゃんやるね~」
「いや、ファンキーにも程があるだろ」
ん、でも、あれあれ?灰谷の母ちゃんってそっちの人だったっけ。
いや、でも灰谷がいるし……。
ん?
自分の事もあるし、どっからツッコんでいいかわからなかった。
とりあえず……。
「会ったことあんの?どんな人?美人?」
「一回、酔っ払った母ちゃんを送って来たことがあって。その時に挨拶ぐらい。感じは良かったけど。まあ、美人って言えば美人」
「ほう~。ん~。なんて言っていいやら」
「うん。まあ、オレもだから、そう言ったんだけど」
「なんて言っていいかわからないって?」
「うん」
「まあ、正直なとこだよな」
「うん……」
灰谷は腕を組んで黙った。
オレは灰谷がまた話し始めるのを待った。
「まあその後、おめでとうとは言ったんだけど」
「うん」
「良い人が見つかって良かったって」
「ああ。よく言ったな」
「ん?」
灰谷が顔を上げてオレを見た。
「エライよ灰谷」
「…うん」
灰谷は、ほんの少しテレた顔をした。
「少し話してさ。オレの父親の事とか。普段ほとんどしないんだけどな」
「うん」
「女手一つで苦労してオレを育てて来たんだし、これからは母ちゃんの人生だしなとかも思ってさ」
「うん」
「でもやっぱ多少複雑な気持ちでは、ある。母ちゃんには言えねえけど」
「うん。そりゃあそうだ」
だよな。
……で、そこに持ってきてオレだろ。
なんか、申し訳ない気持ちになって来た。
「でもまあ、母ちゃん、ホントにその人の事好きみたいでさ」
「うん」
「それが一番かなって。……ってまあ、それだけなんだけど」
「うん」
「でもやっぱ。驚いたし」
「うん」
「なのに……真島はいねえしさ」
灰谷はちょっとスネた子供のような顔をした。
「ああ」
「もう…」
「うん。悪かった」
そんな時にそばにいなくて悪かったと思った。
オレたちは見つめ合った。
先に、なぜかちょっとまぶしそうな顔をして目をそらしたのは灰谷の方だった。
なんだ?
「で、母ちゃん、節子にさっそく話してさ」
「え?うちの母ちゃんに?」
「うん。で、節子がごちそう作るから、顔合わせも兼ねてみんなで食事しようって」
「お~。いいじゃん」
「いやいいけど。一人で会うよりはいいけど」
母ちゃん、灰谷とおばさんの事を思って言い出したんだろうな、と思った。
「オレどんな顔してればいいんだよ。母ちゃんとその彼女だぜ」
「あ~わかるわ~」
「それでなくても母ちゃん、頭がお花畑になってて、ミネミネ言ってんのに」
「ミネって言うの?相手」
「ああ。峰岸だからミネなんじゃね?聞かないけど」
「なるほど」
「この間もパスタ作ってやったら、ミネに食べさせた~い、だからな」
「ああ」
「しまいにはミネも料理ウマイから、オレと並んで作ってるのをつまみに飲んだら最高。嫁と息子~とか言ってたしな」
やっぱちょっとスネてるか?灰谷。
自分では気がついてないみたいだけど。
普段は、一人でもオレは平気、みたいな顔してるのに。
「……なんだよ」
マズイ。ニヤけていたのがバレてしまう。
「まあまあ。別に取り繕わなくても。そのまんまでいればいいじゃん」
「そのまんまって」
「いいんだよ。灰谷はそのまんま、いつもの灰谷でいれば。ちゃんと母ちゃんとその人に通じるよ」
「そうかな」
「そうだって」
「……うん」
言って灰谷は小さくうなずいた。
オレの言葉にうなずく灰谷。
うん、だって。うん、だって。
カ~ワイイ~。
あ~なんだこれ。
今まで見えてなかったカワイさが見えてきたぞ。
ヤバイ。
抱きしめてえ~。
けどそうするわけにもいかないんだよな。
まさにニュー地獄。
話変えよう。
「あ~パスタって、ナスとトマトとベーコンのやつ?ニンニクが効いた」
「うん」
「オレも食べたいわ」
「おう。今度つくってやるわ。大葉は多めだろ」
「うん」
このわかってる感…ヤバイ。
0
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる