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魂は細部に宿る③
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③
翌日の昼、被害者の学校に行った。アポを取り正直に事件の話が聞きたいと言うと、快く了承してくれた。しかし、これといって特に得られた物はなかった。
被害者の子はあまり目立ちはしないが普通の子であったこと。その日は友人と遅くまで遊んでいたこと。よく川辺で遊んでいること。
事件の真犯人に関連するようなことは何もなかった。
なんだか、二心創開でもなく、普通にそこら辺の通り魔か猟奇殺人犯か何かの被害にあったんじゃないだろうか。警察も今はその方向でも捜査を進めている。
二心創開が関係ないと言ってしまえば、俺の役目はほぼない。今井は住民は警察には口を効かないと言っていた。でももし、二心創開が関係ないんだとしたら、加害者の範囲はとんでもなく広い事になる。
流石にそれは俺1人には手に負えない。もう一度二心創開に行ってみるか。あそこはあくまで総本部だし、他の支部もあるだろう。
そう車に戻らず事件について考えながら適当に歩いていると、いつの間にか事件現場の河川敷まで来てしまった。
ここか。確かに人通りも少ないし、灯りもほとんどない。何かしらの事件は起こりそうな場所だ。
現場を確認していると遠目からテントを張っている1人の男性がいるのが見えた。
なんとなく、彼のところまで行き、事件のことをを聞いてみる。
『すみません。』
『んあ?』
凄い険しい顔をされた。
『ごめんなさい。決して怪しい者じゃないんです。ここら辺で起きた事件の事を調べてて...』
捲し上げたてて説明する。よくみると小汚い格好のおじさんだ。毛の質や髭の伸び具合を見るにホームレスかそこらだろう。
『お前警察か?』
疑いの目を向けてくる。
『いえ、ただの好奇心です。』
そう言うと、彼はフンっと鼻で笑い話し始めた。
『物好きもいるもんだな。あの宗教に目つけられたくなかったら辞めた方がいいぜ』
それを聞いて俺はつい食いついてしまった。宗教?二心創開の事だろうか。
『宗教って二心創開ですか?!何か知ってるんですか?!』
そう勢いよく言うと、男性から頭を叩かれる。彼はぼそっと小さい声で言う。
『馬鹿、宗派の奴らに聞かれたらどうするんだよ。何されるかわかんねーぞ。』
俺は確信した。この男は何かを知っている。俺はなるべく彼を警戒させないように話を進める。
『何か知ってたら教えてくれませんか。ただとは言いません。お礼もします。』
そう言い、俺が財布からチラッと2万円を見せる。彼はほーっと感嘆したような声を出すと。小さい声で話していた。
『誰にも言うんじゃねえぞ。俺はなあの事件を見てたんだよ。』
俺はその言葉に心が飛び上がったのを感じた。ビンゴだ。
『俺はいつも転々と一晩寝る場所を変えてるんだが、事件当日たまたま俺はここにいたんだ。あの時はテントを組み建てる前だった』
彼は続ける。
『小学生が2人いたんだ。1人は間違いなく、あのすぐそこの小学生だった。制服で分かった。2人は何やら少し話をして、橋の下に行ったんだ。俺はその時遠目から見て、こんな時間に今時の小学生は、とか思ってたが、特に気にすることもなかった。』
彼は語るような口調で話している。
『で、ちょっと時間が経ったんだ俺がテントを建てて、少し飲み物飲んでた時だ。ちょっとしょんべんと思って、橋の下に行こうとしたら悲鳴が聞こえたんだ。
慌てて草むらに隠れて見てみると、どうやら犬の散歩で出歩いてた奥さんがたまたまその死体を見ちまったらしい。俺はそれを見てビビっちまってすぐ逃げちまったが、今思えば正解だったな。』
正解なのだろうか?通報しないと逆に怪しまれないのだろうかと思った。近場にホームレスがいて、近くに女子小学生の遺体。側から見たら犯人と言われても仕方がない状況だ。まあ捜査の現状を見るにすぐに隠れたから彼がいた事はバレなかったんだろう。
『話はここからよ。俺がテントを急いで片付けて逃げてる間に、二心創開の本部が騒がしかったんだ。慌ただしく、焦ってたのは本部の奴らだった。』
ちなみにここの河川敷からは小学校も二心創開の総本部も近い。だからだろうか。あそこには小学生も数多くいた。
『その時、俺は聞こえちまったんだ。』
『何がです?』
俺は息を呑んだ。
『神が生まれたって。』
何を言ってるんだと思った。もっと確信的な事なのかと思ったので、拍子抜けである。
『まあ聞けよ。本部から車が出ようとしてたんだが、その車の前で女と男が話してたんだよ。』
『なんとしてでも隠せ。って』
隠す。確かに意味深だ。あの事件が起きた後に話した事だとすれば何かしら関係はあるだろう。決めつけるにはまだ早い。
『どうしてそれを警察に言わなかったんです?』
純粋な疑問だった。これを警察に言っていれば、事件は何かしら進展があったはずだ。
『分かってねーなー二心創開だぜ?もし俺がこの事を警察に話したってばれたら俺が何されるか分かんねーだろ。』
どうやら俺の認識は間違えていたらしい。ここら辺の人間からしたら二心創開は逆らってはいけない集団だと言うことか。
なら二心創開に直接聞くわけにはいかないな。何か糸口はないだろうか。あっ
『小学生くらいの女の子がもう1人いたんですよね?』
『あーいたな。そいつも制服を着てたが、あの制服はどこだったかなぁーうーん。』
彼はそう言ってこめかめに手を置いてうーんうーんと思い出している。いじらしい思いをしてつい口が動く。
『思い出してください!頼みます!』
俺が凄い勢いでそう言うと男性はちょっと後ずさりながら言った。
『思い出すも何もこの辺は小学校は二つしかねえじゃねえか。そこかどうかは分かんねーけど、小学生がそこまで遠くまで来ねーだろ。』
それを聞いて俺はそれだ!と思った。
『話す事は話したぞ。約束だ。』
そういう彼に俺は2万円を渡すと、彼はありがとよっと言って満足そうにしていた。
次はそのもう片方の小学校に行ってみるか。依頼がいい方向に向かってきているのを感じて足取りは軽い。
少女が気が付くと、病院の病室ような場所にいた。身体が上手く動かない。服も着ていない。頭もなんだかボーっとする。何があったんだっけと思い出すように脳を動かす。
母親が電話して、数分後、彼女は母親に言われるがまま全裸になり、シャワーを浴びせられた。
血を全て洗い落とすと、母親はこれを飲みなさいと錠剤と水を渡してきた。彼女はそれを見て嫌だと言った。
母親は落ち着いた顔をしていたが、口調は荒かった。
『飲みなさい!!』
と強く言われ、彼女は泣きそうになりながらもそれを飲んだ。飲んで数分経つと急に眠気が襲ってきて、彼女は気を失ってしまった。
彼女がそんな事を思い出していると、部屋に医者のような人が1人と女性が1人、その他複数がゾロゾロと入ってくる。薄暗い部屋の中でよく顔が見えない。
お母さんはどこだろう。っと彼女はボーっとしながらその人たちが話している内容に耳を傾ける。
『間違いないと思われます。』
『ついにきたのね。』
と、そんな話し声が聞こえた。
その男性が自分のお腹に聴診器をさらに大きくしたような物を押し当てる。彼女はボーっとして抵抗出来ない。する気にもならない。
その聴診器のような物を押し当て、テレビのようなものが映る。薄暗い部屋にそのテレビの明かりはよく見えた。でもよく分からない。モノクロのようだ。つまらない。なんだかまたうとうとしてきた。
それが映ると部屋の人達は感嘆の声を上げる。
『おぉ...』
『ニシン様だ...』
そんな声が聞こえてくる。
彼女は部屋の人々が静かな歓声をあげている。
『お母さん...』
彼女はそう呟くとまた深い眠りについてしまった。
次に彼女が目を覚ます事は
なかった。
翌日の昼、被害者の学校に行った。アポを取り正直に事件の話が聞きたいと言うと、快く了承してくれた。しかし、これといって特に得られた物はなかった。
被害者の子はあまり目立ちはしないが普通の子であったこと。その日は友人と遅くまで遊んでいたこと。よく川辺で遊んでいること。
事件の真犯人に関連するようなことは何もなかった。
なんだか、二心創開でもなく、普通にそこら辺の通り魔か猟奇殺人犯か何かの被害にあったんじゃないだろうか。警察も今はその方向でも捜査を進めている。
二心創開が関係ないと言ってしまえば、俺の役目はほぼない。今井は住民は警察には口を効かないと言っていた。でももし、二心創開が関係ないんだとしたら、加害者の範囲はとんでもなく広い事になる。
流石にそれは俺1人には手に負えない。もう一度二心創開に行ってみるか。あそこはあくまで総本部だし、他の支部もあるだろう。
そう車に戻らず事件について考えながら適当に歩いていると、いつの間にか事件現場の河川敷まで来てしまった。
ここか。確かに人通りも少ないし、灯りもほとんどない。何かしらの事件は起こりそうな場所だ。
現場を確認していると遠目からテントを張っている1人の男性がいるのが見えた。
なんとなく、彼のところまで行き、事件のことをを聞いてみる。
『すみません。』
『んあ?』
凄い険しい顔をされた。
『ごめんなさい。決して怪しい者じゃないんです。ここら辺で起きた事件の事を調べてて...』
捲し上げたてて説明する。よくみると小汚い格好のおじさんだ。毛の質や髭の伸び具合を見るにホームレスかそこらだろう。
『お前警察か?』
疑いの目を向けてくる。
『いえ、ただの好奇心です。』
そう言うと、彼はフンっと鼻で笑い話し始めた。
『物好きもいるもんだな。あの宗教に目つけられたくなかったら辞めた方がいいぜ』
それを聞いて俺はつい食いついてしまった。宗教?二心創開の事だろうか。
『宗教って二心創開ですか?!何か知ってるんですか?!』
そう勢いよく言うと、男性から頭を叩かれる。彼はぼそっと小さい声で言う。
『馬鹿、宗派の奴らに聞かれたらどうするんだよ。何されるかわかんねーぞ。』
俺は確信した。この男は何かを知っている。俺はなるべく彼を警戒させないように話を進める。
『何か知ってたら教えてくれませんか。ただとは言いません。お礼もします。』
そう言い、俺が財布からチラッと2万円を見せる。彼はほーっと感嘆したような声を出すと。小さい声で話していた。
『誰にも言うんじゃねえぞ。俺はなあの事件を見てたんだよ。』
俺はその言葉に心が飛び上がったのを感じた。ビンゴだ。
『俺はいつも転々と一晩寝る場所を変えてるんだが、事件当日たまたま俺はここにいたんだ。あの時はテントを組み建てる前だった』
彼は続ける。
『小学生が2人いたんだ。1人は間違いなく、あのすぐそこの小学生だった。制服で分かった。2人は何やら少し話をして、橋の下に行ったんだ。俺はその時遠目から見て、こんな時間に今時の小学生は、とか思ってたが、特に気にすることもなかった。』
彼は語るような口調で話している。
『で、ちょっと時間が経ったんだ俺がテントを建てて、少し飲み物飲んでた時だ。ちょっとしょんべんと思って、橋の下に行こうとしたら悲鳴が聞こえたんだ。
慌てて草むらに隠れて見てみると、どうやら犬の散歩で出歩いてた奥さんがたまたまその死体を見ちまったらしい。俺はそれを見てビビっちまってすぐ逃げちまったが、今思えば正解だったな。』
正解なのだろうか?通報しないと逆に怪しまれないのだろうかと思った。近場にホームレスがいて、近くに女子小学生の遺体。側から見たら犯人と言われても仕方がない状況だ。まあ捜査の現状を見るにすぐに隠れたから彼がいた事はバレなかったんだろう。
『話はここからよ。俺がテントを急いで片付けて逃げてる間に、二心創開の本部が騒がしかったんだ。慌ただしく、焦ってたのは本部の奴らだった。』
ちなみにここの河川敷からは小学校も二心創開の総本部も近い。だからだろうか。あそこには小学生も数多くいた。
『その時、俺は聞こえちまったんだ。』
『何がです?』
俺は息を呑んだ。
『神が生まれたって。』
何を言ってるんだと思った。もっと確信的な事なのかと思ったので、拍子抜けである。
『まあ聞けよ。本部から車が出ようとしてたんだが、その車の前で女と男が話してたんだよ。』
『なんとしてでも隠せ。って』
隠す。確かに意味深だ。あの事件が起きた後に話した事だとすれば何かしら関係はあるだろう。決めつけるにはまだ早い。
『どうしてそれを警察に言わなかったんです?』
純粋な疑問だった。これを警察に言っていれば、事件は何かしら進展があったはずだ。
『分かってねーなー二心創開だぜ?もし俺がこの事を警察に話したってばれたら俺が何されるか分かんねーだろ。』
どうやら俺の認識は間違えていたらしい。ここら辺の人間からしたら二心創開は逆らってはいけない集団だと言うことか。
なら二心創開に直接聞くわけにはいかないな。何か糸口はないだろうか。あっ
『小学生くらいの女の子がもう1人いたんですよね?』
『あーいたな。そいつも制服を着てたが、あの制服はどこだったかなぁーうーん。』
彼はそう言ってこめかめに手を置いてうーんうーんと思い出している。いじらしい思いをしてつい口が動く。
『思い出してください!頼みます!』
俺が凄い勢いでそう言うと男性はちょっと後ずさりながら言った。
『思い出すも何もこの辺は小学校は二つしかねえじゃねえか。そこかどうかは分かんねーけど、小学生がそこまで遠くまで来ねーだろ。』
それを聞いて俺はそれだ!と思った。
『話す事は話したぞ。約束だ。』
そういう彼に俺は2万円を渡すと、彼はありがとよっと言って満足そうにしていた。
次はそのもう片方の小学校に行ってみるか。依頼がいい方向に向かってきているのを感じて足取りは軽い。
少女が気が付くと、病院の病室ような場所にいた。身体が上手く動かない。服も着ていない。頭もなんだかボーっとする。何があったんだっけと思い出すように脳を動かす。
母親が電話して、数分後、彼女は母親に言われるがまま全裸になり、シャワーを浴びせられた。
血を全て洗い落とすと、母親はこれを飲みなさいと錠剤と水を渡してきた。彼女はそれを見て嫌だと言った。
母親は落ち着いた顔をしていたが、口調は荒かった。
『飲みなさい!!』
と強く言われ、彼女は泣きそうになりながらもそれを飲んだ。飲んで数分経つと急に眠気が襲ってきて、彼女は気を失ってしまった。
彼女がそんな事を思い出していると、部屋に医者のような人が1人と女性が1人、その他複数がゾロゾロと入ってくる。薄暗い部屋の中でよく顔が見えない。
お母さんはどこだろう。っと彼女はボーっとしながらその人たちが話している内容に耳を傾ける。
『間違いないと思われます。』
『ついにきたのね。』
と、そんな話し声が聞こえた。
その男性が自分のお腹に聴診器をさらに大きくしたような物を押し当てる。彼女はボーっとして抵抗出来ない。する気にもならない。
その聴診器のような物を押し当て、テレビのようなものが映る。薄暗い部屋にそのテレビの明かりはよく見えた。でもよく分からない。モノクロのようだ。つまらない。なんだかまたうとうとしてきた。
それが映ると部屋の人達は感嘆の声を上げる。
『おぉ...』
『ニシン様だ...』
そんな声が聞こえてくる。
彼女は部屋の人々が静かな歓声をあげている。
『お母さん...』
彼女はそう呟くとまた深い眠りについてしまった。
次に彼女が目を覚ます事は
なかった。
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