12 / 47
第四部屋 まさかの……脱出?(中編)
しおりを挟む
◇
はは、まさかね。ここまで朱里の演技が上手くなっているとはね。流石にこれは度肝を抜かれますよ。いつもなら下手な演技で「アードアガアカナイー」と呪文みたいな片言を発するはずなのに、いつの間にこやつ練習しておったんじゃ。はは、これは誉めてあげた方がいいんだろうな。
まあ、そんなことはさておきだ。とりあえず俺もドアに触れなければ状況なんてわかりはしない。嫌な予感がすることはさておいて、それでも俺からドアを開けようとしなければ何も始まらないのだ。
ドアの前で首を傾げながらぼうっとしている朱里。そんな彼女の前に出るようにして、俺もドアノブを引いてみる。
──ガタッ、ガタガタッ。
「……」
ああ、そういえばこのドア建付けが悪いんだよなぁ! だから、持ち上げるようにしながらドアを引けば──。
──ガタガタガタガタッ、ガダ! ガダガダ!
「……」
──ガダッ! ガンガンガンッ!
「……そんなにやったら、ドアさんこわれちゃうよ……」
「……」
え? マジで開かないんですけど。
「……はは」
乾いた笑いしか出てこない。え、なんでこうなってるの? とうとうファンタジー的な要素が実際に起こって、俺と朱里をこの部屋に閉じ込めようとしてきたの? それほど世界は俺と朱里にえっちをしてほしいんですか? そういうことなんですか。
「……ね、ドア、あかないでしょ?」
「……」
彼女の言葉に頷きそうになったけれど、俺は無言のままでドアを引くだけの作業を繰り返してみる。
物音、物音、物音の反復。うるさいとはわかっているけれど、流石にこの状況では焦りも生じて慌てずにはいられない。
でも、実際朱里が言うようにドアは開かない。ドアを引くのではなく、ドアを推すようにしたり、もしくは横にスライドさせようとしてみたり、いろいろと策を講じてみるけれど、それでも目の前のドアは開かない。
「……あかないねぇ」
「……そう、だな」
俺は一旦焦燥感を忘れるように意識しながら、とりあえず朱里の顔を見つめてみる。
俺と朱里との仲ともなれば、その顔を見て嘘をついているかどうかくらいはよくわかる。それくらい一緒に過ごしているのだ。何か思惑があれば、それを表情の細かな仕草で見分けることができるのだ。
「……」
「……どしたのあきとぉ」
「……」
「……しょ、しょんなにみつめられると、てれちゃうよぉ」
「……」
「えへ、えへへへへ」
──ダメだ、ただ可愛いだけしかなかった。
……いや、そうじゃなくて、確実にこいつは嘘をついていない。何か計画めいた思惑を抱いているわけでもなさそう。
え? じゃあ、なんで? なんで俺たちはこの部屋に閉じ込められているの? なぜ? なぜなぜ?
思い当たる節が何一つとしてない。朱里が原因であるのならば言動や表情に変化があるはずなのに、彼女はいつも通りの素面の状況でいつまでも照れている。いや、照れてる場合じゃないんですよ朱里さん。一旦目の前のことに集中してもらっていいですかね。
それ以外に思い当たる節を考えてみる。朱里以外で何かこういうことをしてきそうな人とか思いつかないけれど、それでも考えなければいけない。
──もしかして藍里ちゃんのせい?
……いやあ、それはないな。だって彼女は重度のシスコンでしかなく、昨日もこの部屋の張り紙についてとても怒っていたのだから、実際に俺と朱里を部屋に閉じ込める、なんていうことをしでかすわけがない。ああ、これは間違いない、……よな?
「あっ」
っていうかアレじゃん。こんな部屋に朱里と俺が閉じ込められている状況、藍里ちゃんだってめちゃくちゃ嫌なはずだし、ここは彼女に助けを求めるのが正攻法なのではないか?
寝ぼけた頭だったせいで、この部屋に閉じ込められている現状を憂うことしかできなかったけれど、そうだよ。普通に外部の人間を、この家のことを知っている人間を呼べばそれだけで済むじゃないか。
……正直、藍里ちゃんに連絡をすることは怖いけれど、それでも連絡をしなければ何も始まらない。もしくは朱里のご両親に連絡をしてもいいかもしれないけど、流石に娘と一緒に寝ていた(本当にそのままの意味で)と彼らが知れば、どれだけ俺にも優しい人たちであっても、ものの数秒で包丁を持ち出してくるかもしれない。
うん、ここは仕方がない。藍里ちゃんに連絡をするしかない。それ以外に頼める人間はいない。……改めて自覚すると、自分の交友関係に狭さに涙が出てきそうになる。
俺はとりあえず携帯を手元に出して、そこから藍里ちゃんの連絡先をタップする。言わずと知れた通話アプリ、彼女の名前をタップして、そこから通話ボタンを押そうとした。急を要するからメッセージのやりとりは後回し──。
「──ってあれ?」
──通話ボタン、ないんですけど。
アレー? オカシイナァ?
普通だったら右上に電話のマークがあるはずなのに、なぜか彼女の連絡先をタップしても表示されないぞぉ? ナンデダァ?
まさか、まさかとは思うけどブロックとかされていたりする? はは、まさかね。そんなことあるわけないわ、だって、一応藍里ちゃんとも幼馴染なわけだし、どれだけ俺のことが嫌いでも流石にないでしょう、ははは。
そう思って、とりあえずブロックされているかを確認するための方法を調べて、手っ取り早く確認できそうなスタンププレゼントという機能を試してみることにする。
なんかブロックされてたら『相手はこのスタンプを持っているためプレゼントできません』って出るらしい。だから、絶対に藍里ちゃんは持っていないであろう、筋肉ムキムキの男が笑顔で応答する音声スタンプをプレゼントしてみる──。
──へ、ヘェ? ア、アイリチャン、ナカナカ奇抜ナスタンプヲモッテルンデスネェ……? ハハ、ハハハハハ……。
俺は、そんな寂しい現実逃避をすることしかできなかった。
──────────────────────────
ナンデブロックサレテルンダロウナァ……。オカシイナァ……。
はは、まさかね。ここまで朱里の演技が上手くなっているとはね。流石にこれは度肝を抜かれますよ。いつもなら下手な演技で「アードアガアカナイー」と呪文みたいな片言を発するはずなのに、いつの間にこやつ練習しておったんじゃ。はは、これは誉めてあげた方がいいんだろうな。
まあ、そんなことはさておきだ。とりあえず俺もドアに触れなければ状況なんてわかりはしない。嫌な予感がすることはさておいて、それでも俺からドアを開けようとしなければ何も始まらないのだ。
ドアの前で首を傾げながらぼうっとしている朱里。そんな彼女の前に出るようにして、俺もドアノブを引いてみる。
──ガタッ、ガタガタッ。
「……」
ああ、そういえばこのドア建付けが悪いんだよなぁ! だから、持ち上げるようにしながらドアを引けば──。
──ガタガタガタガタッ、ガダ! ガダガダ!
「……」
──ガダッ! ガンガンガンッ!
「……そんなにやったら、ドアさんこわれちゃうよ……」
「……」
え? マジで開かないんですけど。
「……はは」
乾いた笑いしか出てこない。え、なんでこうなってるの? とうとうファンタジー的な要素が実際に起こって、俺と朱里をこの部屋に閉じ込めようとしてきたの? それほど世界は俺と朱里にえっちをしてほしいんですか? そういうことなんですか。
「……ね、ドア、あかないでしょ?」
「……」
彼女の言葉に頷きそうになったけれど、俺は無言のままでドアを引くだけの作業を繰り返してみる。
物音、物音、物音の反復。うるさいとはわかっているけれど、流石にこの状況では焦りも生じて慌てずにはいられない。
でも、実際朱里が言うようにドアは開かない。ドアを引くのではなく、ドアを推すようにしたり、もしくは横にスライドさせようとしてみたり、いろいろと策を講じてみるけれど、それでも目の前のドアは開かない。
「……あかないねぇ」
「……そう、だな」
俺は一旦焦燥感を忘れるように意識しながら、とりあえず朱里の顔を見つめてみる。
俺と朱里との仲ともなれば、その顔を見て嘘をついているかどうかくらいはよくわかる。それくらい一緒に過ごしているのだ。何か思惑があれば、それを表情の細かな仕草で見分けることができるのだ。
「……」
「……どしたのあきとぉ」
「……」
「……しょ、しょんなにみつめられると、てれちゃうよぉ」
「……」
「えへ、えへへへへ」
──ダメだ、ただ可愛いだけしかなかった。
……いや、そうじゃなくて、確実にこいつは嘘をついていない。何か計画めいた思惑を抱いているわけでもなさそう。
え? じゃあ、なんで? なんで俺たちはこの部屋に閉じ込められているの? なぜ? なぜなぜ?
思い当たる節が何一つとしてない。朱里が原因であるのならば言動や表情に変化があるはずなのに、彼女はいつも通りの素面の状況でいつまでも照れている。いや、照れてる場合じゃないんですよ朱里さん。一旦目の前のことに集中してもらっていいですかね。
それ以外に思い当たる節を考えてみる。朱里以外で何かこういうことをしてきそうな人とか思いつかないけれど、それでも考えなければいけない。
──もしかして藍里ちゃんのせい?
……いやあ、それはないな。だって彼女は重度のシスコンでしかなく、昨日もこの部屋の張り紙についてとても怒っていたのだから、実際に俺と朱里を部屋に閉じ込める、なんていうことをしでかすわけがない。ああ、これは間違いない、……よな?
「あっ」
っていうかアレじゃん。こんな部屋に朱里と俺が閉じ込められている状況、藍里ちゃんだってめちゃくちゃ嫌なはずだし、ここは彼女に助けを求めるのが正攻法なのではないか?
寝ぼけた頭だったせいで、この部屋に閉じ込められている現状を憂うことしかできなかったけれど、そうだよ。普通に外部の人間を、この家のことを知っている人間を呼べばそれだけで済むじゃないか。
……正直、藍里ちゃんに連絡をすることは怖いけれど、それでも連絡をしなければ何も始まらない。もしくは朱里のご両親に連絡をしてもいいかもしれないけど、流石に娘と一緒に寝ていた(本当にそのままの意味で)と彼らが知れば、どれだけ俺にも優しい人たちであっても、ものの数秒で包丁を持ち出してくるかもしれない。
うん、ここは仕方がない。藍里ちゃんに連絡をするしかない。それ以外に頼める人間はいない。……改めて自覚すると、自分の交友関係に狭さに涙が出てきそうになる。
俺はとりあえず携帯を手元に出して、そこから藍里ちゃんの連絡先をタップする。言わずと知れた通話アプリ、彼女の名前をタップして、そこから通話ボタンを押そうとした。急を要するからメッセージのやりとりは後回し──。
「──ってあれ?」
──通話ボタン、ないんですけど。
アレー? オカシイナァ?
普通だったら右上に電話のマークがあるはずなのに、なぜか彼女の連絡先をタップしても表示されないぞぉ? ナンデダァ?
まさか、まさかとは思うけどブロックとかされていたりする? はは、まさかね。そんなことあるわけないわ、だって、一応藍里ちゃんとも幼馴染なわけだし、どれだけ俺のことが嫌いでも流石にないでしょう、ははは。
そう思って、とりあえずブロックされているかを確認するための方法を調べて、手っ取り早く確認できそうなスタンププレゼントという機能を試してみることにする。
なんかブロックされてたら『相手はこのスタンプを持っているためプレゼントできません』って出るらしい。だから、絶対に藍里ちゃんは持っていないであろう、筋肉ムキムキの男が笑顔で応答する音声スタンプをプレゼントしてみる──。
──へ、ヘェ? ア、アイリチャン、ナカナカ奇抜ナスタンプヲモッテルンデスネェ……? ハハ、ハハハハハ……。
俺は、そんな寂しい現実逃避をすることしかできなかった。
──────────────────────────
ナンデブロックサレテルンダロウナァ……。オカシイナァ……。
0
あなたにおすすめの小説
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる