25 / 47
第六部屋 内訳(幼馴染妹視点)③
しおりを挟む
〇
「……」
「……っ」
自分が吐き出した言葉を思うと、どうしたって恥ずかしさがあって頬が赤く染まる感覚がある。断じて彼に対して照れている、とかそういうわけではないけれど、ただこういう発言をしたうえで彰人さんに責任を取ってもらう、という構図を作っている以上、彼からはそうとしか見えないかもしれない。
舌打ちが出そうになるほど長い沈黙。その間、彼はどのように考えを働かせているのだろう。もうそろそろ、流石に意味が理解できただろうか。ここまで回りくどいやりとりを繰り返してきて、それで私も直接的に言葉を吐いた。それでも理解できない、なんてことは──。
「──あ、あれだよね? 漫画の話だよね? あれー、おっかしいな。俺朱里とか藍里ちゃんとかにもジ〇ジョを借りた記憶は──」
「──そのくだりはもうお姉ちゃんとやりました」
──だめだこの人、早く何とかしないと。
やっぱりあれなのかな、アホな人はアホな人をかき集めるのかな。類は友を呼ぶってそういうことなのかな。もしかしてお姉ちゃんが生粋のアホになってしまったのも、もともとアホだった彼と関わってしまったためなのだろうか。
ここまで言ってもわからない、なんてことある?! だいぶ私我慢してきたよ?! 譲歩してきたよ!? 恥ずかしいけれど、それでもちゃんと言葉を伝えたよ!? それなのになんなのこの人! まだ私に羞恥プレイを続けるつもりなの?!
「……あ、そうなの?」
そんな私の憤りなど何一つとして伝わっていないように、彼は興味がないような声を返してくる。いやいや、興味出しなさいよ。もう目の前にあなたの奥さんになる人が、その責任をとれって言ってるのですよ! お姉ちゃんと同じくらいに可愛くて、その上でアホじゃない完璧な私が責任をとれ、って暗に示しているんですよ! そんなの彰人さんほどの変態になれば食いつかないはずないでしょう!?
けれど──。
「──そ、そもそもなんだけど、処女って返すものなの……?」
「────ッ!!」
ははーん、そう来ましたか。本性表したね。
もともとこの人、意味はわかってたんだ。そうだよね、私を襲うくらいの知識はあるもんね。お姉ちゃんと比べれば性知識は豊富だよね。倫理観もそりゃありますわな。
でも、その上で彼は『責任なんてとらねぇよ』と返しているのだ。私の処女など奪っていない、あの部屋の状況では仕方がなかった。処女を返せと言われても、あれは俺のせいじゃない。俺が責任を取る謂れはない、と彼はそう言ったのだ。
な、なんて悪魔なんだ……。純粋な私の貞操を奪って、その上で羞恥プレイをさせるようなことをしておいて! それでも責任なんてとってやるものか、ってひどすぎる、ひどすぎるよ……。
や、やっぱりお姉ちゃんにこの人は譲れな──、じゃなくて、お姉ちゃんにこの人は釣り合わない。こんなクズとお姉ちゃんが付き合ったら、すぐにえっちしまくって子供をたくさん産んで少子化を解決して幸せに暮らしちゃうんだ。そんなのだめ、大家族番組に出演するお姉ちゃんとか見たくないっ!
「……というか、返してって言ってるけど、俺は、そ、その……。藍里ちゃんの処女を奪うようなことはしてな──」
「──この期に及んで白を切るつもりですか?! あ、あんな部屋に閉じ込めておいてっ!」
「白を切るもなにも……」
彼はさも何もわからないかのような表情を浮かべてとぼけ続けている。
私、もう非処女なんですよ。幼馴染であるお姉ちゃん、そしてその妹である私にまで手を出す鬼畜に襲われて、大事にしていたものをすべて奪われたわけですよ。もう私の記憶の中には鮮明に残ってる。……いや、覚えてないけれど、ぼやぼやー、って頭の中ですぐに想像できるもん。それくらいにこの人はケダモノで、私のことを激しく──。──いや、そんなえっちなリフレインはどうでもいいっ!
「だ、だって部屋から出れてたじゃないですか!!」
私はなんとか責任をとらせたくて、そう彼に言葉を返してみる。『えっちしないと出れない部屋』という単語だけは恥ずかしくて使えないから、ちょっと濁した感じになるけれど、それでも彼には伝わるだろう──。
「──どの部屋のことかわからないけど、そりゃあ部屋から出られないと困るんじゃない?」
──へー、部屋から出るためには必要な行為だった、という理由をずっと押し出していくんだぁ。ふーん、へぇ、そうなんですねぇ……!
「そ、それはそうですけど!! それで私のしょ、処女を奪うだなんて!」
「だから奪ってないよ!! 部屋から出ることと何の関係があるのさ!」
……もうだめ、我慢の限界。
そこまで私に卑猥な単語を言わせたいって言うのなら、もう言ってやりますよ。でも、絶対に責任を取らせてやるんだから。
そうして、私は発した。
「──え、『えっちしないと出れない部屋』から、わたしを出したじゃないですか」
〇
恥ずかしくて、顔がタコみたいな色になっていると思う。それくらいに顔が熱くなってる。正直、これ以上彰人さんの顔も恥ずかしくて見ることができない。
けれど、私がようやく答えを発言したことによって、彼は「……あー、そっかぁ。……なるほど、なるほどねぇ」と理解してくれたような表情を浮かべてくれる、……が。
「え、ええと、まず勘違いをひとつひとつ正してもいいかな──」
ふん、そんな言い訳、聞くもんですか! ひとつひとつ論破してやりますよ! その手にはのらないんだから!!
「──そうやって言いくるめようとしても無駄なんですから、わ、わかってるんで。もう彰人さんがけものさんだっていうこと、ちゃんと理解しているんで」
「と、とりあえず聞いてくれない? まず、俺は藍里ちゃんを襲ったりはしてな──」
「──うそつきっ、うそつきうそつき!! なんでそうやって責任を負おうとしないんですか!! それでも男ですかあなたはっ!」
「ほ、本当なんだよ! マジで俺は藍里ちゃんを襲ってない! 処女とか奪ってない! マジで! 本当に!! 神に誓っ──」
「──だってあの部屋から出られたじゃないですか!! それが何よりの証拠じゃん! ふざけないでくださいよ!!」
認めろ! 認めなさい竹原 彰人! 私とえっちしたことを認めて、認知しなさい! 認知、認知、認知! 絶対に認知して責任を──。
そんな私の言葉から彼は黙った。
本当にマジでそろそろ諦めてくれたのか、ようやく私の方へと近づいてくる。
──うそ、そんないきなり──。
「な、なにをするつもりですか」
き、キス? キスされちゃう? この男にぜんぶのハジメテ、あげちゃうのかな。
……で、でもいっか。責任、取ってくれるってことだもんね。
そうして彼は私の方へと近づいていき、それから手を伸ばす。
真っすぐにその手は私の方──ドアの方──へと伸びていき、ドアはがちゃりと閉まる音を立てた。
「ふぇっ」
ふ、ふーん? あれか、それでも大義名分が必要なのね。えっちしないと出れない部屋っていう大義を背負って、私を犯そうって言うんだ。ふうん?
べ、別にいいし。気にしないし。彰人さんと、……む、結ばれるっていうのなら、別に気にしないし。あーあ! これで結ばれるのは癪だけど、今度ばかりは言い逃れさせないし、もう絶対に結婚してもらう。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、これもお姉ちゃんに魔の手が伸びないようにしているだけだからしょうがない。目の前の変態は鬼畜だから!
さあ、もうこれであなたも私もえっちから逃げられなくなりました。もう責任を取るしかありません。まだ結婚するのには二年くらい早いけれど、でもこれは結ばれるしかないです。あーあ、やっちゃったね。いや、今からやっちゃうんだけど。もうあなたは私の伴侶になるんです。私のお婿さんですね。へへ。あ、いや、私がお嫁さんかな? どっちなんだろ、そういうのって話し合いで決めるのかな? ま、いっか!
「よ、ようやく責任を取る覚悟が出来たんですね」
彰人さん、……ううん。彰人くんが私の考え事の最中になんかいろいろ言っていたような気がするけれど、そんなことは気にしない。これ以上うだうだ言われてもしょうがないし。
「か、勝手に処女を奪われたのはもうしょうがないです。お、お姉ちゃんに捧げるはずだったのですが、この際、もう妥協します。汚らわしいあなたの魔の手がお姉ちゃんに触れないのであれば、わ、わ、私の身体で、そ、その……。え、えっちなことをしてもいいです。……い、いいって言っても、きちんと責任はとってくださいっ! け、結婚は絶対、絶対なんですから──」
お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、私、一足先に大人になるね。もう、ハジメテをこの人に捧げてしまった時点で、きっと大人だったんだろうけれど。
「ええとね、藍里ちゃん」
「は、はいっ、ど、どうぞ」
身を捧げる覚悟はできてますとも。もうハジメテを喪った時点でね。もういいよ、さっさとやっちゃいなさい。証拠として録画しておいて、責任を絶対取らせるんだから──。
──そんな時、後ろのドアががちゃ、と音を立てた。
そんな音が鳴ったのは、彰人さんが開けた音でしかなかった。
彼が私に向けて伸ばした手で、ドアノブを掴んで、そうしてゆっくりと開けた。
え、なんで? なんで開けるんです? 今から色情タイムの始まりなのでは? ……っていうか、なんでこのドア開くの──。
「──このドア、建付けが悪いだけでさ。この前も少し揶揄っただけで、俺は藍里ちゃんを襲ったりしてないし、処女も奪ってないんだよね」
「────は」
は、はぁ? な、なにそれ? 冗談だよね? 冗談ですよね?
私は彰人くんという変態さんに襲われて、それで処女を散らしてしまったんですよね? そうだよね? そうじゃないと、今までの私は──。
「いや、いやいやいや、嘘、嘘ですよね? そ、そんな往生際の悪い嘘をつかれても困りますよ、はは、やだなぁ。彰人くんったら照れちゃって」
「……いや、本当に建て付けが悪いだけなんだよね」
そう言って彼はもう一度、ドアを閉めたり、開けたりを繰り返していく。本当に建付けが悪いようで、持ち上げようとしながら開くことを語っている彰人さんがいる。
──嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っ。
「……なんかごめんね。でも、大事な幼馴染の妹なのに、手を出すなんてそんなことできないよ」
頭が真っ白になる感覚の中、彰人さんが申し訳なさそうな表情でそう語った。それだけが妙に記憶に強く刻まれた感覚がした。
──────────────────────────
というわけで第六部屋終了です。
次回は今さらながら普段の日常回からの……、という風な予定になっております。お楽しみに!
「……」
「……っ」
自分が吐き出した言葉を思うと、どうしたって恥ずかしさがあって頬が赤く染まる感覚がある。断じて彼に対して照れている、とかそういうわけではないけれど、ただこういう発言をしたうえで彰人さんに責任を取ってもらう、という構図を作っている以上、彼からはそうとしか見えないかもしれない。
舌打ちが出そうになるほど長い沈黙。その間、彼はどのように考えを働かせているのだろう。もうそろそろ、流石に意味が理解できただろうか。ここまで回りくどいやりとりを繰り返してきて、それで私も直接的に言葉を吐いた。それでも理解できない、なんてことは──。
「──あ、あれだよね? 漫画の話だよね? あれー、おっかしいな。俺朱里とか藍里ちゃんとかにもジ〇ジョを借りた記憶は──」
「──そのくだりはもうお姉ちゃんとやりました」
──だめだこの人、早く何とかしないと。
やっぱりあれなのかな、アホな人はアホな人をかき集めるのかな。類は友を呼ぶってそういうことなのかな。もしかしてお姉ちゃんが生粋のアホになってしまったのも、もともとアホだった彼と関わってしまったためなのだろうか。
ここまで言ってもわからない、なんてことある?! だいぶ私我慢してきたよ?! 譲歩してきたよ!? 恥ずかしいけれど、それでもちゃんと言葉を伝えたよ!? それなのになんなのこの人! まだ私に羞恥プレイを続けるつもりなの?!
「……あ、そうなの?」
そんな私の憤りなど何一つとして伝わっていないように、彼は興味がないような声を返してくる。いやいや、興味出しなさいよ。もう目の前にあなたの奥さんになる人が、その責任をとれって言ってるのですよ! お姉ちゃんと同じくらいに可愛くて、その上でアホじゃない完璧な私が責任をとれ、って暗に示しているんですよ! そんなの彰人さんほどの変態になれば食いつかないはずないでしょう!?
けれど──。
「──そ、そもそもなんだけど、処女って返すものなの……?」
「────ッ!!」
ははーん、そう来ましたか。本性表したね。
もともとこの人、意味はわかってたんだ。そうだよね、私を襲うくらいの知識はあるもんね。お姉ちゃんと比べれば性知識は豊富だよね。倫理観もそりゃありますわな。
でも、その上で彼は『責任なんてとらねぇよ』と返しているのだ。私の処女など奪っていない、あの部屋の状況では仕方がなかった。処女を返せと言われても、あれは俺のせいじゃない。俺が責任を取る謂れはない、と彼はそう言ったのだ。
な、なんて悪魔なんだ……。純粋な私の貞操を奪って、その上で羞恥プレイをさせるようなことをしておいて! それでも責任なんてとってやるものか、ってひどすぎる、ひどすぎるよ……。
や、やっぱりお姉ちゃんにこの人は譲れな──、じゃなくて、お姉ちゃんにこの人は釣り合わない。こんなクズとお姉ちゃんが付き合ったら、すぐにえっちしまくって子供をたくさん産んで少子化を解決して幸せに暮らしちゃうんだ。そんなのだめ、大家族番組に出演するお姉ちゃんとか見たくないっ!
「……というか、返してって言ってるけど、俺は、そ、その……。藍里ちゃんの処女を奪うようなことはしてな──」
「──この期に及んで白を切るつもりですか?! あ、あんな部屋に閉じ込めておいてっ!」
「白を切るもなにも……」
彼はさも何もわからないかのような表情を浮かべてとぼけ続けている。
私、もう非処女なんですよ。幼馴染であるお姉ちゃん、そしてその妹である私にまで手を出す鬼畜に襲われて、大事にしていたものをすべて奪われたわけですよ。もう私の記憶の中には鮮明に残ってる。……いや、覚えてないけれど、ぼやぼやー、って頭の中ですぐに想像できるもん。それくらいにこの人はケダモノで、私のことを激しく──。──いや、そんなえっちなリフレインはどうでもいいっ!
「だ、だって部屋から出れてたじゃないですか!!」
私はなんとか責任をとらせたくて、そう彼に言葉を返してみる。『えっちしないと出れない部屋』という単語だけは恥ずかしくて使えないから、ちょっと濁した感じになるけれど、それでも彼には伝わるだろう──。
「──どの部屋のことかわからないけど、そりゃあ部屋から出られないと困るんじゃない?」
──へー、部屋から出るためには必要な行為だった、という理由をずっと押し出していくんだぁ。ふーん、へぇ、そうなんですねぇ……!
「そ、それはそうですけど!! それで私のしょ、処女を奪うだなんて!」
「だから奪ってないよ!! 部屋から出ることと何の関係があるのさ!」
……もうだめ、我慢の限界。
そこまで私に卑猥な単語を言わせたいって言うのなら、もう言ってやりますよ。でも、絶対に責任を取らせてやるんだから。
そうして、私は発した。
「──え、『えっちしないと出れない部屋』から、わたしを出したじゃないですか」
〇
恥ずかしくて、顔がタコみたいな色になっていると思う。それくらいに顔が熱くなってる。正直、これ以上彰人さんの顔も恥ずかしくて見ることができない。
けれど、私がようやく答えを発言したことによって、彼は「……あー、そっかぁ。……なるほど、なるほどねぇ」と理解してくれたような表情を浮かべてくれる、……が。
「え、ええと、まず勘違いをひとつひとつ正してもいいかな──」
ふん、そんな言い訳、聞くもんですか! ひとつひとつ論破してやりますよ! その手にはのらないんだから!!
「──そうやって言いくるめようとしても無駄なんですから、わ、わかってるんで。もう彰人さんがけものさんだっていうこと、ちゃんと理解しているんで」
「と、とりあえず聞いてくれない? まず、俺は藍里ちゃんを襲ったりはしてな──」
「──うそつきっ、うそつきうそつき!! なんでそうやって責任を負おうとしないんですか!! それでも男ですかあなたはっ!」
「ほ、本当なんだよ! マジで俺は藍里ちゃんを襲ってない! 処女とか奪ってない! マジで! 本当に!! 神に誓っ──」
「──だってあの部屋から出られたじゃないですか!! それが何よりの証拠じゃん! ふざけないでくださいよ!!」
認めろ! 認めなさい竹原 彰人! 私とえっちしたことを認めて、認知しなさい! 認知、認知、認知! 絶対に認知して責任を──。
そんな私の言葉から彼は黙った。
本当にマジでそろそろ諦めてくれたのか、ようやく私の方へと近づいてくる。
──うそ、そんないきなり──。
「な、なにをするつもりですか」
き、キス? キスされちゃう? この男にぜんぶのハジメテ、あげちゃうのかな。
……で、でもいっか。責任、取ってくれるってことだもんね。
そうして彼は私の方へと近づいていき、それから手を伸ばす。
真っすぐにその手は私の方──ドアの方──へと伸びていき、ドアはがちゃりと閉まる音を立てた。
「ふぇっ」
ふ、ふーん? あれか、それでも大義名分が必要なのね。えっちしないと出れない部屋っていう大義を背負って、私を犯そうって言うんだ。ふうん?
べ、別にいいし。気にしないし。彰人さんと、……む、結ばれるっていうのなら、別に気にしないし。あーあ! これで結ばれるのは癪だけど、今度ばかりは言い逃れさせないし、もう絶対に結婚してもらう。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、これもお姉ちゃんに魔の手が伸びないようにしているだけだからしょうがない。目の前の変態は鬼畜だから!
さあ、もうこれであなたも私もえっちから逃げられなくなりました。もう責任を取るしかありません。まだ結婚するのには二年くらい早いけれど、でもこれは結ばれるしかないです。あーあ、やっちゃったね。いや、今からやっちゃうんだけど。もうあなたは私の伴侶になるんです。私のお婿さんですね。へへ。あ、いや、私がお嫁さんかな? どっちなんだろ、そういうのって話し合いで決めるのかな? ま、いっか!
「よ、ようやく責任を取る覚悟が出来たんですね」
彰人さん、……ううん。彰人くんが私の考え事の最中になんかいろいろ言っていたような気がするけれど、そんなことは気にしない。これ以上うだうだ言われてもしょうがないし。
「か、勝手に処女を奪われたのはもうしょうがないです。お、お姉ちゃんに捧げるはずだったのですが、この際、もう妥協します。汚らわしいあなたの魔の手がお姉ちゃんに触れないのであれば、わ、わ、私の身体で、そ、その……。え、えっちなことをしてもいいです。……い、いいって言っても、きちんと責任はとってくださいっ! け、結婚は絶対、絶対なんですから──」
お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、私、一足先に大人になるね。もう、ハジメテをこの人に捧げてしまった時点で、きっと大人だったんだろうけれど。
「ええとね、藍里ちゃん」
「は、はいっ、ど、どうぞ」
身を捧げる覚悟はできてますとも。もうハジメテを喪った時点でね。もういいよ、さっさとやっちゃいなさい。証拠として録画しておいて、責任を絶対取らせるんだから──。
──そんな時、後ろのドアががちゃ、と音を立てた。
そんな音が鳴ったのは、彰人さんが開けた音でしかなかった。
彼が私に向けて伸ばした手で、ドアノブを掴んで、そうしてゆっくりと開けた。
え、なんで? なんで開けるんです? 今から色情タイムの始まりなのでは? ……っていうか、なんでこのドア開くの──。
「──このドア、建付けが悪いだけでさ。この前も少し揶揄っただけで、俺は藍里ちゃんを襲ったりしてないし、処女も奪ってないんだよね」
「────は」
は、はぁ? な、なにそれ? 冗談だよね? 冗談ですよね?
私は彰人くんという変態さんに襲われて、それで処女を散らしてしまったんですよね? そうだよね? そうじゃないと、今までの私は──。
「いや、いやいやいや、嘘、嘘ですよね? そ、そんな往生際の悪い嘘をつかれても困りますよ、はは、やだなぁ。彰人くんったら照れちゃって」
「……いや、本当に建て付けが悪いだけなんだよね」
そう言って彼はもう一度、ドアを閉めたり、開けたりを繰り返していく。本当に建付けが悪いようで、持ち上げようとしながら開くことを語っている彰人さんがいる。
──嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っ。
「……なんかごめんね。でも、大事な幼馴染の妹なのに、手を出すなんてそんなことできないよ」
頭が真っ白になる感覚の中、彰人さんが申し訳なさそうな表情でそう語った。それだけが妙に記憶に強く刻まれた感覚がした。
──────────────────────────
というわけで第六部屋終了です。
次回は今さらながら普段の日常回からの……、という風な予定になっております。お楽しみに!
0
あなたにおすすめの小説
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。
久野真一
青春
羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。
そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。
彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―
「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。
幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、
ある意味ラブレターのような代物で―
彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。
全三話構成です。
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる