主人公VSえっちしないと出られない部屋(with幼馴染)

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

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 第六部屋 内訳(幼馴染妹視点)③

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「……」

「……っ」

 自分が吐き出した言葉を思うと、どうしたって恥ずかしさがあって頬が赤く染まる感覚がある。断じて彼に対して照れている、とかそういうわけではないけれど、ただこういう発言をしたうえで彰人さんに責任を取ってもらう、という構図を作っている以上、彼からはそうとしか見えないかもしれない。

 舌打ちが出そうになるほど長い沈黙。その間、彼はどのように考えを働かせているのだろう。もうそろそろ、流石に意味が理解できただろうか。ここまで回りくどいやりとりを繰り返してきて、それで私も直接的に言葉を吐いた。それでも理解できない、なんてことは──。

「──あ、あれだよね? 漫画の話だよね? あれー、おっかしいな。俺朱里とか藍里ちゃんとかにもジ〇ジョを借りた記憶は──」

「──そのくだりはもうお姉ちゃんとやりました」

 ──だめだこの人、早く何とかしないと。

 やっぱりあれなのかな、アホな人はアホな人をかき集めるのかな。類は友を呼ぶってそういうことなのかな。もしかしてお姉ちゃんが生粋のアホになってしまったのも、もともとアホだった彼と関わってしまったためなのだろうか。

 ここまで言ってもわからない、なんてことある?! だいぶ私我慢してきたよ?! 譲歩してきたよ!? 恥ずかしいけれど、それでもちゃんと言葉を伝えたよ!? それなのになんなのこの人! まだ私に羞恥プレイを続けるつもりなの?!

「……あ、そうなの?」

 そんな私の憤りなど何一つとして伝わっていないように、彼は興味がないような声を返してくる。いやいや、興味出しなさいよ。もう目の前にあなたの奥さんになる人が、その責任をとれって言ってるのですよ! お姉ちゃんと同じくらいに可愛くて、その上でアホじゃない完璧な私が責任をとれ、って暗に示しているんですよ! そんなの彰人さんほどの変態になれば食いつかないはずないでしょう!?

 けれど──。



「──そ、そもそもなんだけど、処女って返すものなの……?」

「────ッ!!」



 ははーん、そう来ましたか。本性表したね。

 もともとこの人、意味はわかってたんだ。そうだよね、私を襲うくらいの知識はあるもんね。お姉ちゃんと比べれば性知識は豊富だよね。倫理観もそりゃありますわな。

 でも、その上で彼は『責任なんてとらねぇよ』と返しているのだ。私の処女など奪っていない、あの部屋の状況では仕方がなかった。処女を返せと言われても、あれは俺のせいじゃない。俺が責任を取る謂れはない、と彼はそう言ったのだ。

 な、なんて悪魔なんだ……。純粋な私の貞操を奪って、その上で羞恥プレイをさせるようなことをしておいて! それでも責任なんてとってやるものか、ってひどすぎる、ひどすぎるよ……。

 や、やっぱりお姉ちゃんにこの人は譲れな──、じゃなくて、お姉ちゃんにこの人は釣り合わない。こんなクズとお姉ちゃんが付き合ったら、すぐにえっちしまくって子供をたくさん産んで少子化を解決して幸せに暮らしちゃうんだ。そんなのだめ、大家族番組に出演するお姉ちゃんとか見たくないっ!

「……というか、返してって言ってるけど、俺は、そ、その……。藍里ちゃんの処女を奪うようなことはしてな──」

「──この期に及んで白を切るつもりですか?! あ、あんな部屋に閉じ込めておいてっ!」

「白を切るもなにも……」

 彼はさも何もわからないかのような表情を浮かべてとぼけ続けている。

 私、もう非処女なんですよ。幼馴染であるお姉ちゃん、そしてその妹である私にまで手を出す鬼畜に襲われて、大事にしていたものをすべて奪われたわけですよ。もう私の記憶の中には鮮明に残ってる。……いや、覚えてないけれど、ぼやぼやー、って頭の中ですぐに想像できるもん。それくらいにこの人はケダモノで、私のことを激しく──。──いや、そんなえっちなリフレインはどうでもいいっ!

「だ、だって部屋から出れてたじゃないですか!!」

 私はなんとか責任をとらせたくて、そう彼に言葉を返してみる。『えっちしないと出れない部屋』という単語だけは恥ずかしくて使えないから、ちょっと濁した感じになるけれど、それでも彼には伝わるだろう──。

「──どの部屋のことかわからないけど、そりゃあ部屋から出られないと困るんじゃない?」

 ──へー、部屋から出るためには必要な行為だった、という理由をずっと押し出していくんだぁ。ふーん、へぇ、そうなんですねぇ……!

「そ、それはそうですけど!! それで私のしょ、処女を奪うだなんて!」

「だから奪ってないよ!! 部屋から出ることと何の関係があるのさ!」

 ……もうだめ、我慢の限界。

 そこまで私に卑猥な単語を言わせたいって言うのなら、もう言ってやりますよ。でも、絶対に責任を取らせてやるんだから。

 そうして、私は発した。

「──え、『えっちしないと出れない部屋』から、わたしを出したじゃないですか」





 恥ずかしくて、顔がタコみたいな色になっていると思う。それくらいに顔が熱くなってる。正直、これ以上彰人さんの顔も恥ずかしくて見ることができない。

 けれど、私がようやく答えを発言したことによって、彼は「……あー、そっかぁ。……なるほど、なるほどねぇ」と理解してくれたような表情を浮かべてくれる、……が。

「え、ええと、まず勘違いをひとつひとつ正してもいいかな──」

 ふん、そんな言い訳、聞くもんですか! ひとつひとつ論破してやりますよ! その手にはのらないんだから!!

「──そうやって言いくるめようとしても無駄なんですから、わ、わかってるんで。もう彰人さんがけものさんだっていうこと、ちゃんと理解しているんで」

「と、とりあえず聞いてくれない? まず、俺は藍里ちゃんを襲ったりはしてな──」

「──うそつきっ、うそつきうそつき!! なんでそうやって責任を負おうとしないんですか!! それでも男ですかあなたはっ!」

「ほ、本当なんだよ! マジで俺は藍里ちゃんを襲ってない! 処女とか奪ってない! マジで! 本当に!! 神に誓っ──」

「──だってあの部屋から出られたじゃないですか!! それが何よりの証拠じゃん! ふざけないでくださいよ!!」

 認めろ! 認めなさい竹原 彰人! 私とえっちしたことを認めて、認知しなさい! 認知、認知、認知! 絶対に認知して責任を──。

 そんな私の言葉から彼は黙った。

 本当にマジでそろそろ諦めてくれたのか、ようやく私の方へと近づいてくる。

 ──うそ、そんないきなり──。

「な、なにをするつもりですか」

 き、キス? キスされちゃう? この男にぜんぶのハジメテ、あげちゃうのかな。



 ……で、でもいっか。責任、取ってくれるってことだもんね。



 そうして彼は私の方へと近づいていき、それから手を伸ばす。

 真っすぐにその手は私の方──ドアの方──へと伸びていき、ドアはがちゃりと閉まる音を立てた。

「ふぇっ」



 ふ、ふーん? あれか、それでも大義名分が必要なのね。えっちしないと出れない部屋っていう大義を背負って、私を犯そうって言うんだ。ふうん?



 べ、別にいいし。気にしないし。彰人さんと、……む、結ばれるっていうのなら、別に気にしないし。あーあ! これで結ばれるのは癪だけど、今度ばかりは言い逃れさせないし、もう絶対に結婚してもらう。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、これもお姉ちゃんに魔の手が伸びないようにしているだけだからしょうがない。目の前の変態は鬼畜だから!

 さあ、もうこれであなたも私もえっちから逃げられなくなりました。もう責任を取るしかありません。まだ結婚するのには二年くらい早いけれど、でもこれは結ばれるしかないです。あーあ、やっちゃったね。いや、今からやっちゃうんだけど。もうあなたは私の伴侶になるんです。私のお婿さんですね。へへ。あ、いや、私がお嫁さんかな? どっちなんだろ、そういうのって話し合いで決めるのかな? ま、いっか!

「よ、ようやく責任を取る覚悟が出来たんですね」

 彰人さん、……ううん。彰人くんが私の考え事の最中になんかいろいろ言っていたような気がするけれど、そんなことは気にしない。これ以上うだうだ言われてもしょうがないし。

「か、勝手に処女を奪われたのはもうしょうがないです。お、お姉ちゃんに捧げるはずだったのですが、この際、もう妥協します。汚らわしいあなたの魔の手がお姉ちゃんに触れないのであれば、わ、わ、私の身体で、そ、その……。え、えっちなことをしてもいいです。……い、いいって言っても、きちんと責任はとってくださいっ! け、結婚は絶対、絶対なんですから──」

 お姉ちゃん、ごめんなさい。お姉ちゃんには申し訳ないけれど、私、一足先に大人になるね。もう、ハジメテをこの人に捧げてしまった時点で、きっと大人だったんだろうけれど。

「ええとね、藍里ちゃん」

「は、はいっ、ど、どうぞ」

 身を捧げる覚悟はできてますとも。もうハジメテを喪った時点でね。もういいよ、さっさとやっちゃいなさい。証拠として録画しておいて、責任を絶対取らせるんだから──。

 ──そんな時、後ろのドアががちゃ、と音を立てた。

 そんな音が鳴ったのは、彰人さんが開けた音でしかなかった。

 彼が私に向けて伸ばした手で、ドアノブを掴んで、そうしてゆっくりと開けた。

 え、なんで? なんで開けるんです? 今から色情タイムの始まりなのでは? ……っていうか、なんでこのドア開くの──。



「──このドア、建付けが悪いだけでさ。この前も少し揶揄っただけで、俺は藍里ちゃんを襲ったりしてないし、処女も奪ってないんだよね」

「────は」

 は、はぁ? な、なにそれ? 冗談だよね? 冗談ですよね?

 私は彰人くんという変態さんに襲われて、それで処女を散らしてしまったんですよね? そうだよね? そうじゃないと、今までの私は──。

「いや、いやいやいや、嘘、嘘ですよね? そ、そんな往生際の悪い嘘をつかれても困りますよ、はは、やだなぁ。彰人くんったら照れちゃって」

「……いや、本当に建て付けが悪いだけなんだよね」

 そう言って彼はもう一度、ドアを閉めたり、開けたりを繰り返していく。本当に建付けが悪いようで、持ち上げようとしながら開くことを語っている彰人さんがいる。



 ──嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘っ。



「……なんかごめんね。でも、大事な幼馴染の妹なのに、手を出すなんてそんなことできないよ」

 

 頭が真っ白になる感覚の中、彰人さんが申し訳なさそうな表情でそう語った。それだけが妙に記憶に強く刻まれた感覚がした。





──────────────────────────
 というわけで第六部屋終了です。
 次回は今さらながら普段の日常回からの……、という風な予定になっております。お楽しみに!
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