魔法使いの幼馴染を助けたら俺も魔法使いになってしまった件について ~灰色の対極~

若椿 柳阿(わかつばき りゅうあ)

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第四章 異質殺し

4-22 ゼロの魔法

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「……それで? なんとなくリンクしているとかなんとかはわかったような気がしないでもないけれど、それでどうやってイギリスに転移するのさ」

 理解できないことは理解できないこと、ということに分類することによって、とりあえず俺は原理についてを聞くことにする。

 とりあえず、転移でこの空間の座標とやらを使用することはよくわかった気がしないでもないけれど、それはそれとしてだ。座標というものがあったところで、悪魔祓いは魔法を反発してしまうのだから、転移をするための魔法を天音が使ったとしても、結局無駄家に終わってしまう。

「……というか、座標云々とかの前に、普通に葵が座標とか使わないで転送しているの、見たことあるんだけど」

「ああ、あれは危険だよなぁ」

 朱音は少しばかり眉をしかめながら言う。俺はその言葉の意味合いがよく理解できず、首を傾げることしかできない。そんな俺を見て、注釈をするように朱音は言葉を続ける。

「割と魔法の力っていうのは出鱈目なんだよ。出力については血液量で調整できるけれど、その結果については血液で保証できるわけじゃない。

 これは天音の受け売りでしかないけれど、水の魔法を使うときとかだったら、血液量が多ければ多いほどに水の量については増加するが、その結果となる形については確定しない。まあ、だからこそ形の指定とかを行って、詠唱で補完をするらしいんだが、転移も同様らしいんだよ。転移の場合は血液を使えば使うほど遠い場所に行けるけれど、その目的地については補足できない。一応詠唱で補足をすることで場所を限定することはできるけれど、ちょっとした問題がある。

 転移魔法は何もないアリクトエアルにおいては弊害も何もないだろうが、適当に『家』とか『学校』とかに設定して転移したら『いしのなかにいる』みたいな状態になりかねないんだよ。ほら、家具だったり、置物だったり、いろんな障害物があるからな」

「……へぇ」

 ……いしのなかにいる、というのがよくわからないところではあるけれど、なんとなくのニュアンスで伝わるところはある。

「とまあ、今回このアリクトエアルを使うのは、詳細に魔法へと情報を伝えるっていうのが主ではある。座標を詠唱に加えることで一ミリの寸分の狂いもなく転移をすることができる。それがアリクトエアルに来た理由ってわけだな。わかったか?」

「……まあ、原理についてはわかったけれど」

 転移魔法については、まあ、なんとなくでしかないけれどわかったような気がする。だが、俺が聞きたいのはそういうことではなく、そもそも悪魔祓いに転移の魔法が効くのかどうか、という話であり──。

「──悪魔祓いに魔法なんて効かねぇ、ってか?」

「──……まあ、うん」

 一瞬、頭の中を探られたのではないか、という気持ちになって息を呑み込んでしまう。けれど、朱音が言う通りのことしか思ってなかったから、俺は彼女の言葉に頷いた。

「実際、悪魔祓いは魔法を反発するけどな。……でも、ここには最終兵器と言ってもいい天音がいるから!」

 最終兵器? と俺がオウム返しをすると、天音が途端に、ふふん、と鼻で声を鳴らしながら、大きな胸を張るように誇りだす。

「さて、ここで問題だ。天音には他の魔法使いとは違うところがある。その違う点とは?」

「違う点? ……そうだなぁ──」

「──はい残念、時間切れだ。正解は──」

 考える暇もくれないのかよ、とツッコミを入れそうになったところで、今度は朱音が格好をつけるように言葉を吐く。

「天音が使、ってことだ!」





 対極。

 対極とは、あらゆる存在に対する絶対値のようなものであり、正であれば負、陰であれば陽、白であれば黒、というような相対するもののことを言う。

 それは悪魔祓いのひとつの試練として用意されているものとも言われており、負の自分と見つめあい、受容するものだと言われている。俺の場合は自分の中に巣食っていた劣等感、……もとい過去に記憶を封印された自分自身と敵対し、それが自分自身だと受け容れたことで受容した。

「……まあ、天音も受容しているわな」

 直接的に天音から話を聞いたわけではないけれど、彼女の非現実的な銀色っぽい白髪を見れば察するところはある。どういう仕組みなのかはわからないけれど、対極を受容した者は髪色が変わっている。俺の場合であれば灰色に、朱音であれば水色という具合に。そして天音についても同様なのだろう。

「それで? 対極を受容している魔法使い……、というか魔法使いにも対極ってくるもんなの?」

「それは今度追々説明するわ」と朱音はさらっと俺の質問を流して、言葉を続ける。

「ともかく、ここにいる天音は対極を受容しているんだよ。存在の対義である対極を受容しているんだ」

「……はあ」

「……だから? とでも言いたそうな顔をしてるな。でもすごいんだぞ、よく聞いておけよ」

 わくわくした顔とでも言わんばかりに、溌溂とした表情で朱音は歩きながら続ける。

「あらゆる存在には対義がある。それはもちろん魔法に関しても同様だ。そして天音は、その魔法の対極を見極めることができるし、扱うことだってできるんだよ」

「……魔法の対極を? ──あっ」

 そこで思い出したのは、天使時間の吸血鬼事件の、その頃合いで起きた出来事。というか日常。

 確か、天音と魔法の反発の練習をしていた時だ。炎の魔法を俺が悪魔祓いの体質で反発すると、同様に炎の魔法を発動して、炎同士で相殺をしていた。そんなことがあったはずだ。





『属性相性っていうのは確かにあるんだよ。例えば炎には水をやったり、水には氷をあてて流動性を止めたりね。そうして魔法の相殺をすることはまだある。瞬時に魔法の展開をできるのはなかなか難しいけれどね。

 でも、天音ちゃんの場合は違う。炎なら炎でそれを。氷なら氷、水なら水、風なら風と、そのままの属性ですべてを打ち消す。そもそも相殺なんて言うレベルじゃない。確実に

 だからこそ、僕は彼女に対しての称号は『化け物』がふさわしい。これはすごくいい言葉としてね』





 天音のことを、立花先生はそう評価していたはずだ。そんなことをなんとなく思い出した。

「なるほどね」と俺は言葉を吐いた。

「けれど、対極を見極められて、それを扱うことができたとしてもさ、結局反発するんだから意味なくない?」

「チッチッチッ!」

 朱音は指を立てて振りながら、揶揄うみたいにそう言う。

「悪魔祓いが魔法を反発してしまうのは、単純に、っていうのがあるんだよ。まあ、それだけでなくとも、世界から異質に認定されている非現実的事象の魔法は本来反発して当然なんだけどさ」

「……」

 また対極かよ、と思ったけれど口には出さない。

「単に悪魔祓いは絶対値があるものに関して、……対極があるものに関しては確実に反発する。プラス1だとか、マイナス4だとか、そういった絶対値があるものは必ず反発する。

 つまり、

 朱音は、そうして結論を呟く。

「簡単に言ってしまえば、使ってだけの話だな」


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