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第1部 婚約破棄&処刑されて転生しましたけれど、家族と再会し仲間もできて今はとっても幸せです
五家の誓い(2)(三人称)
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――メゾシニシスタ王国、王宮、大庭園を見降ろすバルコニー。
「はっはぁ、集ってるなぁ、トンマーゾ!」
「はい、どのご令嬢も花のように美しゅうございますなぁ。
きっとこの中に殿下の運命の女性がいらっしゃることでしょう」
「う~ん、ユニコーン邸の黒バラというのは、どの令嬢のことだ?」
「プレモロジータ家からは辞退の申し出を受けております」
「なんだ、随分評判がいいから期待していたのに」
「伯爵家の養女とはいえ、もとは孤児でございますから。
身の程をわきまえたのでございましょう」
「じゃあ、コルテジア家自慢の娘とやらは?」
「あの茶色い髪に赤いドレスの美貌のお方です」
「ほう、なかなか!」
「お隣は、サジェッツア家の才女ジュスティーナ嬢ですね」
「おお、十三歳で学問のすすめを読破したという! 思ったより愛らしい顔をしているな」
「どちらも社交界では大変評判のよいご令嬢です。
幼いころはなにかとトラブルが多いふたりでしたが、プレモロジータ家のご令嬢と知り合ってから、関係は良好だそうです」
「ふぅ~ん、我が国に生まれた五つの美徳か……。よし、決めたぞ、トンマーゾ! まずはあのふたりに会う!」
「はっ、承知いたしました」
濃茶の縮毛を後ろになでつけ、精悍な面差しにはくっきりとした意志の強い黒い瞳。
青年らしくも張りのある体躯をドレスコートで包み、立派なあごに、口元には軽快な笑み。
次期王位継承者であるヴァレンティーノ皇子が足取りも軽く大庭園へと向かった。
***
――日が傾き、盛況のうちに幕を閉じた茶会。
上着を預けて、ヴァレンティーノは自室のソファに腰を掛ける。
「うーん」
「殿下、どのご令嬢とも大変お話がはずんていらっしゃいましたが、いかがでございましたか?」
「コルテジア家の娘とサジェッツア家の娘、どちらかがいいと思う」
「左様にお気に召されましたか!」
「だが……」
「はい?」
「アルベルティーナもジュスティーナも揃ってプレモロジータ家の令嬢のことを口にしていた。一番の親友だとな」
「はい、確かに」
「……こういうのはどうだろう?」
トンマーゾがぎくり、と初老の白い髭を震わせた。
皇子が斜め上にこの従者を見上げるとき、それは大抵波乱を巻き起こす前触れだった。
「アルベルティーナとジュスティーナ、どちらも妃にふさわしい家格と素質を備えている。
アルベルティーナは類まれな美貌と完璧な身の振るまい。他を圧倒する魅力がある。
ジュスティーナは貴族界でも名の知れた才女。それに女性としてもなかなか魅力的。
正直、どちらにしようか迷っている。――そこでだ!
ふたりの親友だというプレモロジータ家の令嬢に、こっそりと本性を聞いてみようと思う!」
「でっ、殿下……! そ、それはあまりに……」
「隠れて本性を探るなどとは品がないといいたいのか」
「殿下……!」
「念入りに準備された茶会の態度を見ただけでは、相手の底はわからんだろう。
俺はこういう性格だ。向こうだって、俺のことを将来が約束された皇子というぐらいにしかわかってないだろう。
準備をしろ、トンマーゾ! 明日、ユニコーン邸の黒バラに会いに行く!」
「はっはぁ、集ってるなぁ、トンマーゾ!」
「はい、どのご令嬢も花のように美しゅうございますなぁ。
きっとこの中に殿下の運命の女性がいらっしゃることでしょう」
「う~ん、ユニコーン邸の黒バラというのは、どの令嬢のことだ?」
「プレモロジータ家からは辞退の申し出を受けております」
「なんだ、随分評判がいいから期待していたのに」
「伯爵家の養女とはいえ、もとは孤児でございますから。
身の程をわきまえたのでございましょう」
「じゃあ、コルテジア家自慢の娘とやらは?」
「あの茶色い髪に赤いドレスの美貌のお方です」
「ほう、なかなか!」
「お隣は、サジェッツア家の才女ジュスティーナ嬢ですね」
「おお、十三歳で学問のすすめを読破したという! 思ったより愛らしい顔をしているな」
「どちらも社交界では大変評判のよいご令嬢です。
幼いころはなにかとトラブルが多いふたりでしたが、プレモロジータ家のご令嬢と知り合ってから、関係は良好だそうです」
「ふぅ~ん、我が国に生まれた五つの美徳か……。よし、決めたぞ、トンマーゾ! まずはあのふたりに会う!」
「はっ、承知いたしました」
濃茶の縮毛を後ろになでつけ、精悍な面差しにはくっきりとした意志の強い黒い瞳。
青年らしくも張りのある体躯をドレスコートで包み、立派なあごに、口元には軽快な笑み。
次期王位継承者であるヴァレンティーノ皇子が足取りも軽く大庭園へと向かった。
***
――日が傾き、盛況のうちに幕を閉じた茶会。
上着を預けて、ヴァレンティーノは自室のソファに腰を掛ける。
「うーん」
「殿下、どのご令嬢とも大変お話がはずんていらっしゃいましたが、いかがでございましたか?」
「コルテジア家の娘とサジェッツア家の娘、どちらかがいいと思う」
「左様にお気に召されましたか!」
「だが……」
「はい?」
「アルベルティーナもジュスティーナも揃ってプレモロジータ家の令嬢のことを口にしていた。一番の親友だとな」
「はい、確かに」
「……こういうのはどうだろう?」
トンマーゾがぎくり、と初老の白い髭を震わせた。
皇子が斜め上にこの従者を見上げるとき、それは大抵波乱を巻き起こす前触れだった。
「アルベルティーナとジュスティーナ、どちらも妃にふさわしい家格と素質を備えている。
アルベルティーナは類まれな美貌と完璧な身の振るまい。他を圧倒する魅力がある。
ジュスティーナは貴族界でも名の知れた才女。それに女性としてもなかなか魅力的。
正直、どちらにしようか迷っている。――そこでだ!
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「でっ、殿下……! そ、それはあまりに……」
「隠れて本性を探るなどとは品がないといいたいのか」
「殿下……!」
「念入りに準備された茶会の態度を見ただけでは、相手の底はわからんだろう。
俺はこういう性格だ。向こうだって、俺のことを将来が約束された皇子というぐらいにしかわかってないだろう。
準備をしろ、トンマーゾ! 明日、ユニコーン邸の黒バラに会いに行く!」
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