【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴

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■第1章 突然の異世界サバイバル!

0082 BP切れ…!

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 古い油紙のようなものに包まれた四角いものだ。紙はもうボロボロに朽ちかけている。それでも、板のおかげでそこまで雨風にさらされずに済んだようだ。

「なんだろう……、開けてみるね?」
「ま、待って……。この家の人の骨だったりして……」

 美怜が想像したのは恐らく、死んだ人を火葬したあと骨を入れておく骨壺といった入れ物のことだろう。確かに大きさは四十センチほどの立方体で人ひとり分の骨が十分納まりそうな大きさに、見えなくもない。

「まさか……」
「う……」

 ふたりで怖い想像をして固まってしまった……。しばらくしたあと、銀河が首を振った。

「で、でも、お宝が入ってるかもしれないよ? お宝でなくとも、また釘とか道具とか役に立つものが」
「そ、そうだね……」

 ドキドキしながら、ふたりで包みの前に座った。そっと触れると、地図がそうだったように風化していた紙はサラサラと砂のようになって剥がれ落ちた。中から出てきたのは、木の箱……。いや、ただの木のブロックだ。

「あれ……。ただの木材……みたいだよ……」
「え……?」
「しかも、すごく軽い……」

 取り上げてみると、およそ四十センチ四方で高さも同じく四十センチほど。普通の木材ならこの大きさで二十キロくらいはあるはずだ。それなのに、持った感じが空気のように軽い。

「ちょっとよく見せてね」

 銀河から受け取った美怜が手に取って詳しく観察し始めた。なにを隠そう、美怜の祖父は元大工の頭領で、父親は地元で建築設計事務所兼工務店をやっている。美怜がものづくりが好きなのは育った家の環境が大いに関係していたのだ。もちろん木材を見る目だって確かだ。

「確かに見た目は木材だね……。でも、こんな軽い木見たことないよ。重さなんて……多分イコと同じくらい」

 そう声をかけられたイコが興味を持ったのか、木材の周りをふわふわと回りだす。

「中身が空洞なのかな?」
「それにしたって軽すぎるよ。ゲームではこういうアイテムないの? 銀ちゃん」
「う~ん、珍しい木の素材かぁ……。ないこともないけど……、ちょっとスキャンしてみるね」

 そのとき、なにかが這いずり回るような音が小屋の周りから聞こえてきた。
 ――ズザザッ、ズザザザッ……。
 ギクッとしたふたりは互いに顔を見合わせた。銀河が素早く美怜に自分の後ろに入るようにと手で指示をし、美怜はすぐにそれに従った。銀河がバッグからタブレットを取り出そうとしたそのときだ。
 ――ズズ……ッ。
 のそっと、あの大蛇が小屋の陰から姿を現した。改めて見るととても大きい。獰猛な顔というよりは愛嬌のある顔つきではあるが、明らかにこちらを強く警戒していた。

「フシャ―……!」
「ぎ、銀ちゃん……」
「だ、大丈夫だよ、みれちゃん……。今、カラコマを……」

 バッグからタブレットを取り出そうとすると、大蛇がシャッと首を伸ばしてさらに威嚇してきた。相手もバカじゃない。なにか武器になりそうなものを出そうとしているのがわかるのだ。

(し、しまった……! こんなことなら、カラコマを出しておくべきだった……!)

 そう思ったとき、眼鏡の画面にパッと文字が表示された。

「GBとのリンクモードが開始されました」
(リンクモード……!? ってことは、この眼鏡からGBアプリにアクセスできるようになったのか?)

 ためらっている暇はない。銀河はすばやく命令した。

GBジービーからカラコマをコール!」

 ――カッ!
 バッグに入ったタブレットが強い光を放つと、銀河の目の前に『多宝』の文字が入ったカラコマが現れた。落とす前に素早く手を伸ばして掴むと、瓢箪の口を大蛇に向けた。 
 一瞬の強い光にわかにひるんだ大蛇だったが、銀河を前に注意深く様子を探っている。しばらくして、目の前の敵が手にしているのはなんの変哲もない瓢箪ひとつだと理解した大蛇が再び喉を鳴らした。

「シャーッ」

 頭をゆっくりと後ろへ引き、明らかな攻撃態勢に入った。反動をつけて一気にこちらへ飛びかかろうというのだ。慌てて銀河は大声で叫んだ。

「吸い込め瓢箪!」

 その声と大蛇の高速アタックはほぼ同時だった。太さ十センチはあろうかという大蛇がジャンプの勢いのまま、瓢箪の中に吸い込まれていく!
 瓢箪の口はたったの一センチにも満たないのに、ずるずるずるとまるで強力な掃除機にでも吸われていくかのよう。大蛇が抵抗しようと暴れまわっている。銀河はその反動に何度もよろめきながらも、こらえて瓢箪を掲げ続けた。
 その後ろでは美怜が恐れ慄いてか細い悲鳴を上げている。
 銀河にとっては長い時間に思えたが、格闘が終わるまで一分ほどだろうか。丸々と太った大蛇一匹が丸ごと瓢箪の中に納まった。
 ――ストン。
 瓢箪を握りしめたまま、銀河が腰を抜かしたように尻もちを着いた。

「……よ、よし……、成功したぞ……」
「ぎ、銀ちゃん、大丈夫……!?」

 美怜が駆け寄ると同時に、銀河がよろめきバタッとその場に倒れた。

「銀ちゃんっ!?」

「……なんでだろ、急にすごくだるい……」

 オロオロとパニックになりかけた美怜だったが、タブレットで銀河の状態を確認できることを思い出し、ショルダーバッグから取り出すとすばやく掲げた。

「BP切れ状態」

 表示されたポップアップを見て、さっきの大蛇の吸引が銀河のBPを全消費したのだと理解した。

「ぎ、銀ちゃんのBPがゼロになっちゃったみたいだよ……!」
「そ、それでか……」
「とにかく、休めばステータスは戻るんだよね? 今日はもう休もう!」
「う、うん……」
「屋根もかまども薪もたくさんあるし、大蛇は……その瓢箪の中だし……。けど一応、獣避けにすぐ火を焚くね!」
「う、うん、ごめんね、またみれちゃんに任せっきりに……」
「大丈夫だよ! タンズのみんなはいつも通り水と食料を! 他のみんなは銀ちゃんのそばに来て、見守ってて!」
「む~!」
「む~!」
「む~!」
「ミー」
「ニー」
「フル~」 

 タンズが素早く森の中に散り、ピッカランテッカラン、マロカゲ、マチドリ、カタサマ、エコロが銀河のそばに寄り添った。美怜はいつものように順序よく火を起こし、葉っぱを地面に敷き詰め、剥がれた壁を枝で立てかけて野営の準備を始めた。

 イコだけがどうしても気になるのか、放り出された木のブロックのそばを離れずにプカプカ浮いている。
 銀河はいいようのないだるさに耐えながらも、カラコマだけは決して手放さずに握りしめた。 

 タンズが水と食料を持ち帰り、いつものように調理して銀河に食べさせようとしたが、口を動かすのもつらいらしく、いつもの半分くらいしか食べられなかった。

「銀ちゃん……」
「ごめんね、みれちゃん……」
「ううん……。火は私が見てるから、今は休むことだけに集中して?」
「ありがとう……」

 そういってしばらくしたあと、銀河はすうすうと寝息を立て始めた。
 日が傾き、森に夜がやって来た。美怜はいつもより少し多めに火を焚いた。銀河が眠り込んでいるこのときに獣が襲ってきたらと思うと、薪をくべる回数が自然と増えてしまうのだ。
 さっきまでピッカランテッカランがぴょこぴょこ動き回っていたけれど、いつの間にか三体が寄り添って目を閉じて一塊になって、温かな光を発している。他のブーンズもみな静かに寝静まっていた。

(はあ……、起きているの私だけになっちゃった……。もう……早く朝が来ないかな……)

 緊張と恐怖が胸の中で渦を巻いている。
 ふと、自分たちの周りにイコがいないことに気が付いた。周りを見渡すと白く半透明な丸い塊が木のブロックの周りをうろうろしていた。どうやらずっとそうしていたらしい。

(そうだ、なにかに集中していれば恐さも減るよね)

 イコと一緒に木のブロックを火のそばへ持ってきて、アマノジャックマキジャック、ハンドッゴ、マルチミニペンを取り出した。

(これだけ軽いから、きっと細工しやすい木だと思うんだけど……。いろいろと欲しいものはある。けど、まずはそうだな……。器がいいよね。少し大きめの深皿。そうだな、この大きさからならカレー皿二枚分くらい余裕で掘り出せそう。次はスプーン。それからコップ。箸はもうあるし、平皿や小さなお皿なら葉っぱが使えるし。やっぱりまずは深皿かな……!)

 美玲は木のブロックの寸法をアマノジャックマキジャックで測り、二人分の深皿とスプーンとコップが取れるように計算して、マルチミニペンで線を引いた。

(あれっ、そういえば、このペンのインク、紙しか書けなかったはずじゃ……)

 不思議なことがここまで起こりすぎている。インクの質が変わることくらいではもう驚かない。ハンドッゴのナイフに持ち替え、描いた線に沿ってゆっくりと刃を……、と思っていたのに予想に反してナイフは、ストンと木のブロックに書かれた線の通りに垂直に落ちて行った。

「!? ど、どうなって……!?」
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