22 / 87
■第1章 突然の異世界サバイバル!
0083 お皿づくり
しおりを挟む
まるで豆腐でも切ったかのような感覚だ。切った木の断面も電動鋸刃で切ったかのように綺麗な年輪模様が浮かんでいる。驚かないと思っていたが、空気のように軽い木材、しかも豆腐のように柔らかく切れる。こんな木の材料が自然界にあるなんてびっくりだ。
「そ、そっか、ここは不思議の世界だもんね……。私が知らない材料があるのはきっと当たり前なんだ……」
一皿分のブロックに切り分けるのに、今夜一晩くらいかかるだろうと覚悟していたのに、ものの数分で大きなブロックがすべて目的の大きさに切り分けられた。正直、きゅうりやにんじんを切るよりずっと簡単だ。でもこれだけ加工しやすいとなれば、目当てのものに掘り出す工程も予想より楽にできる気がする。
「よーし、やってみよう」
ハンドッゴにはナイフの他にプラス・マイナスのドライバーや、缶切りややすり、錐やドリルなどがついているが、美怜が注文したこの道具には彫刻刀をセットしてもらっている。
キャンプのとき火を焚いたり星を見たり、音楽や釣りを楽しんだりするのと同じように、クラフトやギア作りを楽しむキャンパーがいる。友達にキャンプに誘われたとき、美怜は拾った木や松ぼっくりやクルミで、ちょっとしたクラフトをつくって楽しもうと思っていたのだ。
その彫刻刀がここで役に立とうとは。丸刃と三角刃。これがあればまずまずの木彫が可能だ。
「それじゃあ、早速あれを使って……」
次の工程は、お皿用のブロックに再び線を引いていく。ここで今日手に入れた釘が活躍。木材の真ん中をアマノジャックマキジャックで正確に割り出し、今度はアマノジャックマキジャックのテープの取っ手部分の穴に釘を入れ、その釘を木材の中心にハンマーで軽く打ちとめる。木材の辺の一番長いところに合わせてテープとマルチミニペンを持ち、コンパスの要領で線を引けば、あっという間に正確な円が描き上がる。
その円に合わせて三角刃で溝を入れる。この内側を掘っていけば、お皿になるのだ。
――シュル、シュル、サクサク。
「うわあ、削りやすい」
三角刃はまるで消しゴムハンコでも彫っているときのように力要らず。丸刃もまるで発泡スチロールやコルク、あるいはソフトセラミックのような軽い彫り心地で、思いのままにサクサク彫れていく。
手慣れている美怜には簡単すぎるくらい簡単に、一枚の深皿を彫り出すことができた。外側も整えれば、普通のカレー皿よりやや深め、サラダボウルにはやや浅めの丸い木の深皿が出来上がった。【※31】
「できた……。こんなに簡単に出来ちゃったけど、本当に使えるのかな……。水を入れたら染み出してきたりして……」
そんな不安もよぎったが、手を動かしていると不安がまぎれる。美怜は次のブロックに取り掛かった。
――ピーヒョロロロロ、ピュン、ピュン……。
気が付くと、辺りがすっかりと明るく、鳥の鳴き声がしていた。
「あれ……、集中してたら、朝になっちゃった……」
石かまどの火もすっかり白い灰になっていた。辺りを見渡す美怜の前には、二人分の深皿とスプーンとコップが仕上がっている。不思議と削りかすは風もないのにどこかへ消えていた。イコが出来上がった木の食器と美怜の周りをくるくると浮遊している。
「朝ごはんの支度をしないと……。あ、その前に、銀ちゃんは平気かな……?」
まだ寝入っている銀河をタブレットで確認すると、LPもBPも全回復していた。
「よかった~……。タンズのみんな、起きて……、そっとね」
「む~」
「む~」
「む~」
「銀ちゃんよくなったみたいだから、水と食べ物を取って来てもらえる? 今日はちゃんと食べれると思うの」
「むー」
「むー」
「むー」
三体が朝の森に消えていくのを見守って、美怜は羽根のように軽い食器を手に取った。
「さてと、水が漏れないかどうか、まず確認してみないとね……」
そうつぶやく美怜のすぐ後ろに、小さく草を揺らす者がいた。水のゼリーのように透明な物体。質感はエコロとそっくりだが、色がなく気泡もない。そしてエコロなら被っているはずの帽子もない。
――ガサッ。
それが草から飛び出すと、突然ビタッと美怜の脚に張り付いた!
「きゃあっ!?」
【※24】エコロ …… ブーン101
【※25】サバイバル生活のトイレ …… 情報604
【※26】飾り結び …… アイテム008
【※27】飾り結びの作り方 …… 情報614
【※28】釘を抜く方法 …… 情報618
【※29】サバイバルで拾ったものを活用する方法 …… 情報619
【※30】石かまどの作り方 …… 情報608
【※31】木のスプーンの作り方 …… 情報610
本作に登場した各種情報がイラスト付きでお楽しみただけます! ブラウザ表示のフリースペースにある【※ 脚注 ※】からご覧いただけます。スマホをご利用の場合は、作者プロフィールページに戻って「GREATEST BOONS+」からお楽しみください。
便利な「しおり」機能を使うと読みやすいのでおすすめです。さらに「お気に入り登録」をすると最新更新のお知らせが届きます。便利にご活用していただき、快適に続きをお楽しみください!
「そ、そっか、ここは不思議の世界だもんね……。私が知らない材料があるのはきっと当たり前なんだ……」
一皿分のブロックに切り分けるのに、今夜一晩くらいかかるだろうと覚悟していたのに、ものの数分で大きなブロックがすべて目的の大きさに切り分けられた。正直、きゅうりやにんじんを切るよりずっと簡単だ。でもこれだけ加工しやすいとなれば、目当てのものに掘り出す工程も予想より楽にできる気がする。
「よーし、やってみよう」
ハンドッゴにはナイフの他にプラス・マイナスのドライバーや、缶切りややすり、錐やドリルなどがついているが、美怜が注文したこの道具には彫刻刀をセットしてもらっている。
キャンプのとき火を焚いたり星を見たり、音楽や釣りを楽しんだりするのと同じように、クラフトやギア作りを楽しむキャンパーがいる。友達にキャンプに誘われたとき、美怜は拾った木や松ぼっくりやクルミで、ちょっとしたクラフトをつくって楽しもうと思っていたのだ。
その彫刻刀がここで役に立とうとは。丸刃と三角刃。これがあればまずまずの木彫が可能だ。
「それじゃあ、早速あれを使って……」
次の工程は、お皿用のブロックに再び線を引いていく。ここで今日手に入れた釘が活躍。木材の真ん中をアマノジャックマキジャックで正確に割り出し、今度はアマノジャックマキジャックのテープの取っ手部分の穴に釘を入れ、その釘を木材の中心にハンマーで軽く打ちとめる。木材の辺の一番長いところに合わせてテープとマルチミニペンを持ち、コンパスの要領で線を引けば、あっという間に正確な円が描き上がる。
その円に合わせて三角刃で溝を入れる。この内側を掘っていけば、お皿になるのだ。
――シュル、シュル、サクサク。
「うわあ、削りやすい」
三角刃はまるで消しゴムハンコでも彫っているときのように力要らず。丸刃もまるで発泡スチロールやコルク、あるいはソフトセラミックのような軽い彫り心地で、思いのままにサクサク彫れていく。
手慣れている美怜には簡単すぎるくらい簡単に、一枚の深皿を彫り出すことができた。外側も整えれば、普通のカレー皿よりやや深め、サラダボウルにはやや浅めの丸い木の深皿が出来上がった。【※31】
「できた……。こんなに簡単に出来ちゃったけど、本当に使えるのかな……。水を入れたら染み出してきたりして……」
そんな不安もよぎったが、手を動かしていると不安がまぎれる。美怜は次のブロックに取り掛かった。
――ピーヒョロロロロ、ピュン、ピュン……。
気が付くと、辺りがすっかりと明るく、鳥の鳴き声がしていた。
「あれ……、集中してたら、朝になっちゃった……」
石かまどの火もすっかり白い灰になっていた。辺りを見渡す美怜の前には、二人分の深皿とスプーンとコップが仕上がっている。不思議と削りかすは風もないのにどこかへ消えていた。イコが出来上がった木の食器と美怜の周りをくるくると浮遊している。
「朝ごはんの支度をしないと……。あ、その前に、銀ちゃんは平気かな……?」
まだ寝入っている銀河をタブレットで確認すると、LPもBPも全回復していた。
「よかった~……。タンズのみんな、起きて……、そっとね」
「む~」
「む~」
「む~」
「銀ちゃんよくなったみたいだから、水と食べ物を取って来てもらえる? 今日はちゃんと食べれると思うの」
「むー」
「むー」
「むー」
三体が朝の森に消えていくのを見守って、美怜は羽根のように軽い食器を手に取った。
「さてと、水が漏れないかどうか、まず確認してみないとね……」
そうつぶやく美怜のすぐ後ろに、小さく草を揺らす者がいた。水のゼリーのように透明な物体。質感はエコロとそっくりだが、色がなく気泡もない。そしてエコロなら被っているはずの帽子もない。
――ガサッ。
それが草から飛び出すと、突然ビタッと美怜の脚に張り付いた!
「きゃあっ!?」
【※24】エコロ …… ブーン101
【※25】サバイバル生活のトイレ …… 情報604
【※26】飾り結び …… アイテム008
【※27】飾り結びの作り方 …… 情報614
【※28】釘を抜く方法 …… 情報618
【※29】サバイバルで拾ったものを活用する方法 …… 情報619
【※30】石かまどの作り方 …… 情報608
【※31】木のスプーンの作り方 …… 情報610
本作に登場した各種情報がイラスト付きでお楽しみただけます! ブラウザ表示のフリースペースにある【※ 脚注 ※】からご覧いただけます。スマホをご利用の場合は、作者プロフィールページに戻って「GREATEST BOONS+」からお楽しみください。
便利な「しおり」機能を使うと読みやすいのでおすすめです。さらに「お気に入り登録」をすると最新更新のお知らせが届きます。便利にご活用していただき、快適に続きをお楽しみください!
0
あなたにおすすめの小説
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
『ラーメン屋の店主が異世界転生して最高の出汁探すってよ』
髙橋彼方
児童書・童話
一ノ瀬龍拓は新宿で行列の出来るラーメン屋『龍昇』を経営していた。
新たなラーメンを求めているある日、従業員に夢が叶うと有名な神社を教えてもらう。
龍拓は神頼みでもするかと神社に行くと、御祭神に異世界にある王国ロイアルワへ飛ばされてしまう。
果たして、ここには龍拓が求めるラーメンの食材はあるのだろうか……。
異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる
谷川 雅
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞 読者賞受賞作品】
「君は25歳の誕生日に異世界へ飛ばされる――準備、しておけよ」
そんなリアルすぎる夢を見たのは、中学3年・15歳の誕生日。
しかも、転移先は「魔法もあるけど生活水準は中世並み」、しかも「チート能力一切なし」!?
死ぬ気で学べ。鍛えろ。生き抜け。
目指すのは、剣道×農業×経営×工学を修めた“自己完結型万能人間”!
剣道部に転部、進学先は国立農業高校。大学では、園芸、畜産・農業経営・バイオエネルギーまで学び、最終的には油が採れるジャガイモを発見して学内ベンチャーの社長に――
そう、全部は「異世界で生きるため」!
そしてついに25歳の誕生日。目を覚ますと、そこは剣と魔法の異世界。
武器は竹刀、知識はリアル、金は……時計を売った。
ここから始まるのは、“計画された異世界成り上がり”!
「魔法がなくても、俺には農業と剣がある――」
未来を知る少年が、10年かけて“最強の一般人”になり、異世界を生き抜く!
※「準備型転移」×「ノンチートリアル系」×「農業×剣術×起業」異色の成長譚!
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
魔法使いアルル
かのん
児童書・童話
今年で10歳になるアルルは、月夜の晩、自分の誕生日に納屋の中でこっそりとパンを食べながら歌を歌っていた。
これまで自分以外に誰にも祝われる事のなかった日。
だが、偉大な大魔法使いに出会うことでアルルの世界は色を変えていく。
孤独な少女アルルが、魔法使いになって奮闘する物語。
ありがたいことに書籍化が進行中です!ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる


