【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴

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■第1章 突然の異世界サバイバル!

0091 ヒシャラの怒り

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 スライムをたった今倒した銀河よりも、美怜の周りのスライムのほうが明らかに多い。
 そう気づいて目を走らせると、スライムたちが一気に美怜に向かって前進していくのが見えた。なぜかわからない、だがスライムの狙いは美怜だ!

「ひいぃぃ…~っ……!」
「み、みれちゃん!」

 石を握りしめて駆け出そうとしたそのとき、黒っぽい影が素早く蛇行するように美怜の周りを走った。次の瞬間、バシャッ、バシャッ、とスライムが一気にはじけ飛んだ。びしょぬれになった美怜はなにが起こったのかわかっていない。もはや呆然として立ち尽くしている。
 だが銀河にははっきりわかった。早すぎてなにをしたかまでは見えなかったが、今の攻撃はヒシャラだ!

「ヒシャラ……!」

 黒い影が目で追い切れないほどの高速で、縦横無尽に美怜の周りを駆け巡っている。次々とスライムの破裂音と水しぶきが飛び、あっという間にスライムが一掃されていた。残ったスライムもその様子を見て身の危険を感じたのか、森の中へ消えて行った。

「……た、助かったぁ~……」

 危機が去って、銀河は一気に気が抜けた。だが美怜はまだ膠着状態だ。急いでそばに行き声をかけて、その強張った手を温めてあげた。リュックをおろして、乾いた地面のところへ連れて行って座らせる。

「今火を焚くからね……!」
「……う……ん……」

 少しずつパニック状態が解けつつある美怜を、ブーンズのみんなが労わるように寄り添っている。銀河は火おこしをしながら、少し離れたところでまたツーンと向こうをむいているヒシャラを見た。

(ヒシャラのやつ……、なんでいうこと聞かなかったんだろう。僕が創造の親だってことがわからないのかな……? 今までのブーンズのみんなとはすぐ打ち解けられたのに)

 火を見て温まってくると、美怜はやっと安心を得られたようだ。濡れた服を乾かしながら、汚れた靴下を見る。

「スニーカーどうしよう……」
「みれちゃん……」

 突然、ヒシャラがくるっと顔を向けて美怜を見た。そのままテクテクやってくると、美怜のそばに来て、スンスンと匂いを嗅いだ。

「……?」

 なにをしているのかわからなかった銀河と美怜が視線を合わせていると、ヒシャラが、タタッと森の中へ駆けて行ってしまった。

「あ……」
「ど、どうしたんだ、あいつ……。みれちゃんのスニーカーでも取りに行ったのかな……?」

 しばらくして戻ってきたヒシャラの口には案の定、美怜のスニーカーが咥えられていた。首を振ってポンと投げてよこすと、スライムの液体でぐっしょりと濡れたスニーカーが美怜の手に戻った。かすかに、うわっという顔をした美怜だが、もはや全身にスライム液を被っているのだ。靴が濡れているくらいなんだと思うしかない。

「ありがとう、ヒシャラ……」
「なんだよお前、行くなら行くってそういえよな……」

 またもツーン……。今までのブーンズと違った様子のヒシャラを美怜も不思議に思う。

「銀ちゃん、ヒシャラと喧嘩したの……?」
「え……っ、そ、そういうわけじゃない……はず、だけど……。な、なんでそう思ったの……?」
「なんか、さっきからずっと、ヒシャラが怒っているみたいに感じるんだけど……」
「え……!」

 さすがは万能スキル。銀河にはわからないヒシャラの心が美怜には感じられるようだ。かさず聞いていた。
 
「な、なんで怒ってるの?」
「えと……、うん……? なんか、銀ちゃんに聞いてみろっていってるよ?」
「え……?」
「この子は銀ちゃんの一番のお気に入りなんでしょ?」
「うん……。ヒシャラはタカラコマの第一号なんだ。僕が一番長く温めてきた大好きなキャラクターだよ……」

 銀河はちらっとヒシャラを見たが、ヒシャラは一ミリも反応を示さず向こうをむいたきりだ。

「えっと確か、将棋の飛車の駒をイメージしてるんだよね?」
「そう。このカラコマは……つまりこの瓢箪の中に入っているカラコマのひとつひとつが、モンスターを憑依させておくための媒体なんだよ。瓢箪はいわば飼い慣らしたモンスターを囲っておくための入れ物なんだ」
「えっ……?」
「僕の考えたストーリーはこうだ。主人公はある日、鈴生りに生った瓢箪の中からこの『多宝』と書かれた不思議な瓢箪を見つけるんだ。この瓢箪は吸い込めと命じるだけで、モンスターをこの中に閉じこめ使役化できるんだよ。次に名前を付けて、出でよ○○と唱えれば、駒に憑依させたモンスターが、主人公の思い通りに戦ってくれる。そうやって、憑依して生まれたキャラクターをタカラコマっていうんだ」
「ぎ、銀ちゃん……」

 意気揚々と自分のアイデアを語った銀河を美怜は悲し気な表情で見つめた。銀河はその意味が分からず、きょとんと目を丸くする。

「え……、あれ、チーフデザイナーにはなかなかいいアイデアだって褒められたんだけど……?」
「銀ちゃん……。吸い込んだあの大蛇を強制的にヒシャラっていうタカラコマにしたの?」
「え、うん……。だって、そういう設定だったから……」
「それはしちゃだめだよ!」
「え……!?」
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