【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴

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■第1章 突然の異世界サバイバル!

0100 ヒシャラはアジの味を覚えた!

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「なんで……? じゃあ、BPとMPは違うってことに……僕達のスキルは一体……?」
「銀ちゃん、ブーンズパワーがこの世界の魔法なんじゃなかったの?」【※34】
「ちょ、ちょっと待って……。ヒシャラ、君のステータスを見せてくれ!」

 しょうがないなぁ、みたいなそぶりでヒシャラがこちらを向いた。銀河は素早く眼鏡にスキャンを命じる。表示されたステータスがリンクしてタブレット画面に表示された。

「えっ、ヒシャラのステータス、BP、MP、LP、HPの四つがあるぞ……!?」
「え、四つも?」
「ちょ、ちょっと待てよ、そうするとスライムは……!?」
 
 先ほどの襲撃で記録されていたスライムのデータを広げると、ステータスはMP、HPがその順番で表示されている。BP、LP表示はない。

「じゃあ……この世界には、四つ別々のエネルギー値があるってことなのか……!」

 銀河がぶつぶつとつぶやきながら思案に入ってしまった。
 話しかけても今は邪魔になるだけだろうと思った美怜は、ひとまずアジの焼け具合を見に行った。

(石かまどのおかげかな、火の回りがいいみたい)

 いい焼け具合だ。取急ぎ今回はアジをそのまま串焼きにしたが、海の近くに行って海水が手に入ったら、塩味のスープを作ろう、と美怜はつくったばかりの深皿に料理が温かい湯気が立つ様子を思い描いた。

(よし、あとは……)

 にわか拵えした葉っぱのお皿に、焼けたアジの串焼きとベリーを盛り付け、羽根のように軽いコップに水を汲んだ。不思議な木のブロックから掘りだした素朴な食器は、別段水漏れすることもなく普通に使えた。
 まだぶつぶつやっている銀河の背中に声をかけた。

「銀ちゃん、ご飯ができたんだけど……」
「あっ、う、うん! ありがとう!」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます!」

 香ばしいアジにかぶりつく。久しぶりに感じるほのかな塩分が、舌に強いうまみをもたらす。

「うっ……、んんっ! ほわはっ、アジ、最高だね!」
「うん、ほんのり塩が効いてるね。ユリタン、本当にご苦労様!」
「むー!」
「ヒトエタンとクラウンタンも、ありがとうね!」
「むー!」
「むー!」

 嬉しそうなタンズをよしよししていると、妙な音がした。
 ――くうぅ~……。
 ブーンズの誰かの鳴き声かと思って、一体一体に視線を送ったが、みな一様に左右に首を振る。まさか……。銀河と美怜が揃って見ると、らんらんとした目でヒシャラがアジの串焼きを見つめていた。

「もしかして、ヒシャラのお腹の音……?」
「銀ちゃん、ヒシャラもやっぱりお腹が空くんだよ」
「え、でも、ブーンズはなにも食べないんじゃ……」
「ううん、正確には私たちほどたくさんは食べなくていいみたいだよ」
「えっ、そうなの?」
「うん、みんな食べたいときに好きなものを採って食べてるんだって。私たちとお腹がすくタイミングが違うから気にしないでいいよっていってたよ」
「えっ、いつの間に……」
「それにカタサマはずっと薬草食べてるよね」
「もっしゃ、もっしゃ」
「そうだった……」
「も~、銀ちゃんたら自分が生みの親なのに」
「う、うん……そうだ……」

 銀河は頼りなさそうに自分の頭をかいた。ブーンズの生みの親が銀河なのは間違いないが、育ての親は美怜、これもまた間違いなさそうだ。美怜が手を付けていない自分の串を持って、ヒシャラに差し出した。

「はい、どうぞ。熱いから気を付けてね」

 その途端、ヒシャラがガブッとアジの串焼きにかぶりついた。だがすぐにその口を離すと、じたばたと悶えだす。ヒシャラの口に焼きたてのアジが熱すぎたのだ。美怜が慌てて水の入ったコップを持って行くが、熱さに驚いたヒシャラはベロを突き出し首をブンブンと振りまくっている。

「ヒ、ヒシャラ……、だ、大丈夫……?」

 ようやく熱さと痛みが過ぎ去ったらしいヒシャラが恨めしそうに、でも、獲物を狙う真剣な目で美怜の手に握られた串焼きをじっと見ている。

「ヒシャラ、こうやって、フーフーしてから食べるんだよ。ふーっ、ふーっ」

 美怜が串焼きに息を吹きかけて見せると、ヒシャラがクンクンと鼻をひくつかせた。アジの油と身の香ばしい匂いがヒシャラの空腹をさらにかき立てているようだ。もう一度ヒシャラの前に差し出すが、ヒシャラはじっと目の前のアジを見つめたまま、フーフーもしなければ、受け取ろうともしない。だが、らんらんとした目は間違いなくアジを食べる気満々だ。

「あ、そっか……!」

 なにかに気づいて、美怜は一度串を皿に戻しヒシャラの隣に腰を掛けた。銀河は串を片手にもぐもぐしながら、美怜がなにに気づいたのかを観察する。

「ヒシャラ、大蛇のときは手がなかったもんね。食べるときはね、手を使うと便利なんだよ」

 アジの行方が気になって仕方がないヒシャラの手を美怜がそっと取ると、カンフー風の袖の中からヒシャラの手を出した。小さいけれどするどい爪のある恐竜のような手だ。その手に美怜が串を握らせた。

「ほら、ぎゅってしてみて?」
「……」

 すると、ヒシャラはたった今、自分に手があることに気づいたみたいに丸い目をさらに丸くした。もう片方の手を目の前に出すと握ったり開いたりをして、また目を見開いている。

 こうして見てみれば、なるほど。蛇には手足がない。カラコマに憑依させられてタカラコマになったヒシャラには、生まれて初めてくっついている手や足の使い方がよくわからなくても当然だったのだ。
 思い出してみれば、美怜の靴も手ではなく口で持ち帰って来ていた。

「それがヒシャラの手だよ。この手で物を掴めば、上手に食べれるよ」
「み、みれちゃん……、すごいや。よく気づいたね……。僕、ヒシャラが手を使ってなかったことに全然気がつかなかった……」
「自分の体が変わっちゃったら、そんなのわからないよね。ヒシャラ、フーフーは? できそう?」

 ヒシャラが「フンッハフンッ」と鼻と口を鳴らした。
 どうやらフーフーのつもりらしい。口の中に含んだ空気をすぼめた口から一気に強く噴き出すという動作。人間にはごく当たり前の動作だが、蛇だったヒシャラは、いま生まれて初めてやっている。

 さらに、蛇と人とでは骨格や筋肉の形も機能も違う。だから、ヒシャラがやりたいと思っていることと、筋肉への指令が一致しておらず、フーフーはうまくいっていないのだ。
 美怜がよくわかるようにやって見せながら順を追って説明する。

「こうやって……息を吸うでしょ? 息を止めたら、プクッてほっぺに力を溜めて……フウーッって、喉と顎とほっぺと全部で強く押し出す感じ。やってみて?」
「ぶふぅ、ぶふ~っ」
「うん、そうそう! 上手上手!」
「DPが上がりました」【※35】

 小さな子供に教えるかのように丁寧で根気のいい美怜によって、ヒシャラは自らの手の存在を発見し、フーフーを覚え、DPが飛躍的に上がり、そしてアジの味を覚えた! 

 串を両手で持ってアジを頬ばったあとのヒシャラは、満足そうにその場で丸くなって食休みを始めた。他のブーンズと違いこの世界の生き物を取り込んだぶん、ヒシャラは食べ物からのエネルギーを欲するのだろう。

「それで銀ちゃん、MPっていうのはなにかわかったの?」
「うん……、まだ推論の域を出なくて確かなことじゃないんだけど。この世界にはLPとBP以外にも、HPとMPがあるということ。DP、SPもしくはUSPについては、僕らもブーンズもモンスターも共通みたいだということ」
「うん」
「多分だけど、この世界のモンスターはMPがメインの活動エネルギーで、ブーンズはBPがメインの活動エネルギーなんだと思う……。この先もっとモンスターに出くわしたらはっきりすると思うけど……」
「えっ!? まだ出るの、あのスライム……」
「多分……、スライム以外のモンスターも出てくるんじゃないかな……」
「う、うぇ~……」
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