見えない想いの行く末

花戸あみ

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side 凪

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「おはよう!ん、ん。違うか?……よっ!ってのは馴れ馴れしいか?……だ~!!!無理だ!!!」

 朝から百面相を続ける俺は、部屋の姿見の前で1人でしゃがみ込んで悶えて髪を掻きむしっていた。あと10分もしないうちに家を出て朝練に行かなければならないのに、このままでは練習もままならないだろう。

「俺、今日一日無事で過ごせるか?」

 階段を降りながら独り言が朝から止まらない。
 
「凪、時間ないわよ。ご飯食べなさい、おにぎりにしてといたから」
「お袋、サンキュ」
「お弁当も忘れずに持って行きなさいよ」
「おう」

 朝練のある日には6時過ぎに家を出る息子のためにお弁当を用意してくれる母親には頭が上がらない。
ちなみにお弁当は俺だけで無く親父、弟、の分も用意するから多い時は5つのお弁当を作っている時は凄いと思わずにはいられない。
 親父とお袋は未だにラブラブで子どもの前でも平気でイチャつく。
 大切な人に気持ちを伝えることのどこが恥ずかしい?と言って憚らない親父を男として尊敬している。                                       
 そして、自分もそう言える恋をしたいと思っている。
 でも、焦らない。この想いを押し付けたくはないから。橘が幸せなら俺も幸せだから。

 部室で着替え終わるとグランドに練習前に各々がストレッチを始める中で、関根と組んで俺もいつもの手順で練習を始めた。
 始まってみると自分の中で燻る想いは一先ず置いておいて練習に集中することが出来た。でも、練習が終わると途端に自分の中でぐるぐるし始めた。

「どうした朝比奈?」
「関根か、なんでもない」
「そっか?なら良いけどな。ロッカーの扉と睨めっこしてるのが気になった。急がないと授業始まるぞ」
「分かった。ありがとな」
「おう」

 覚悟を決めて教室に行こう。今日も一日が始まる。
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