神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生

文字の大きさ
3 / 11

ケダモノに追い詰められて


 治癒の水の効果は本物であった。
 怪我人はルネリクスを神のように崇めたが、どうか内密にと念を押す。
 その奇跡の水を次々に使用し、やがて怪我人は一人残らず完治し、数日経たぬうちに村へ帰る事が叶った。

 目立つ事を避けたいので、日が昇るのと同時にこっそりと帰していた。
 水はあっという間になくなってしまったので、あの洞窟に新たな治癒の水を作りに行かなければならない。

 ある事を思いつき、大神官にだけ治癒の水の件を話す事にした。
 自分より年上のちょうど三十路になったばかりの大神官は、ルネリクスの意志を汲んでくれて、しばらくの間、神殿を離れ、治癒の水の生成に集中して良いと許可して下さった。

 幸いアロルフに見つかる事もなく、神殿を離れる事ができたので、これで安心して触手との交わりを行えると喜んだ。

 正直、治癒の水よりも快楽を欲している己の浅ましさに、罪悪感を抱いているが、神託であるのだからと、無理矢理心を落ち着かせた。

 ルネリクスは洞窟の近くにある小屋を、住処にする事に決めた。
 小屋は泉の傍にあり、さらに豊かな生態の森の中なので、水にも食べ物にも困らなくて済む。

 泉で身を清めた後、触手の元へと向かう。
 出迎えてくれた輝く触手は、するするとルネリクスの四肢に絡みつく。
 その甘い香りと感触にすでに身体は火照り、心臓は期待でどきどきしている。

「さ、さあ……じっくりと交わって治癒の水を作りましょう♡」

 誘う言葉に触手は応えた。

 *

 全身がどろどろに穢されるまでたっぷりと快楽を味わい、ぼんやりとしていたルネリクスは、ようやく眠気が覚めるとゆっくりと起き上がる。

 洞窟の入り口が月明かりで照らされているのが見えて、小屋に急いで帰らなければと焦った。
 この森には獰猛な生き物はいないが、オーガの軍団が気になっていた。
 最後に暴れたという話を聞いてから、もう一月は経つ。
 どこかに移動したかも知れないが、慎重に行動しなければ。

 しっかりと治癒の水入りの触手の籠を両手に抱えると、歩き出すが、足がもつれて転びかけて顔を振る。

 ――ねむい……。

 またしても強烈な眠気に襲われて、とうとう動けなくなり、洞窟を出たところで意識を失った。
 
 身体が揺れているのに気付いてうっすらと目を開くと、誰かの肩に担がれているのだと分かって動揺する。

「もう少しで小屋に着くぞ」
「あ、ありがとうございます……?」

 この声は聞き覚えがあった。
 小屋の前に辿り着くと、そっと地に降ろされて、扉に背を預けて深呼吸を繰り返す。
 目の前にいるのは――

「アロルフ様、どうして」

 名前を呼ぶと、巨漢の将軍は腕を組んで肩を揺らした。

「大神官殿に護衛を頼まれてな、この場所を教えて貰ったのだ」
「な……!?」

 誰にも言わないで欲しいと伝えて、確かに頷いてくれたのに。
 まさか、二人は……!

 ルネリクスは顔を振ってアロルフに帰るように促すが、言う事を聞く筈もなく、強引に小屋の中へ入ろうとするので困り果てた。
 不用心だが鍵をかけておらず、押されると簡単に扉は開いてしまう。

「ところで、ルネリクス殿」
「はい?」
「この、網籠が何で作られているのかを知りたいのだが」
「!」

 いつの間にか、アロルフの片手には治癒の水が入った触手の籠があったのだ。
 息を飲み、その籠を返して欲しいと懇願すると、説明を求められてしまい、渋々その正体について話してみた。
 アロルフは訝しむように眉根を寄せる。

「アロルフ様?」
「触手から作られるというのは分かったが、どんな方法で……?」
「そ、それは」

 まさか触手と交わる事で生成されるだなんて、大神官にも話してはおらず、どうすればこの事実を話さずに済むのかと思考を巡らせるが、良い答えが思い浮かばない。
 押し黙っていると、突然アロルフが嗤い声を上げて籠を押しつけてくるので、心臓が跳ねた。

「わ?」
「すまんすまん! 無理に話す必要はないぞルネリクス殿!」
「あ、アロルフ様」
「実際に触手の元へ行けばわかる」
「……えっ」

 一歩、前に進み出るアロルフから後ずさるが、壁に突き当たり逃げ場はなくなる。
 獣のような歪んだ笑みを浮かべる将軍に、今にも食べられそうで瞳を閉じて心を落ち着かせようと試みるが、うまくいかない。

「おや? 触手を見る事もダメなのか? 何故だ、ん?」
「え、えっと」
「はっきり言え! 神官よ!!」
「ひっ」

 大きな声に思わず悲鳴を上げると、頭をぐりぐりと撫でられて、うっすらと視界を開いた。
 獲物を喰らおうとする獣が嗤っている。
 気圧されたルネリクスは、とうとう真実を口にした。

「わ、分かりました! 触手と交わることで、治癒の水が作られるのです!」

 そう叫ぶと、すうっと大きな手の平が頭から離れていく。
 ルネリクスはゆっくりと長い息を吐き出すと、まるで檻の中から抜け出した気分になった。
 
「大神官には、言ってないな?」
「え? ええ」
「ならば、その肉体を好きなようにさせてくれれば、誰にも言わないでやろう」
「!?」

 勝手な言葉にルネリクスはそっと顔を上げる。
 
「あ……」

 アロルフの表情を見つめて、ルネリクスは絶望した。

 彼は欲情し、舌なめずりをしていたのだ。 
 
感想 8

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

地下酒場ナンバーワンの僕のお仕事

カシナシ
BL
地下にある紹介制の酒場で、僕は働いている。 お触りされ放題の給仕係の美少年と、悪戯の過ぎる残念なイケメンたち。 果たしてハルトの貞操は守られるのか?

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

苗床になった元騎士

鵜飼かいゆ
BL
引退した元騎士の老人が触手に寄生されて若返って苗床になるラブラブハッピーエンド話です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。