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願いの代償
あの日からアロルフの姿が見えなくなった。
手元には治癒の水が入った網籠が残されている。
本当は神殿に持って行きたいのだが、どんな顔をすれば良いのかわからず、躊躇していた。
この奇跡の水を求めている人々はたくさんいるのだ。
いつまでも引きこもってはいられない。
触手とアロルフに蹂躙された身体は未だに怠くて体力が戻らず、一日眠っている日が多くなっていた。
それから七日過ぎた頃だろうか。
突然、小屋の扉が誰かに叩かれて返事を返す。
「どちら様ですか?」
「ルネリクス殿ですか? 大神官殿に申しつけられて、お迎えに上がりました」
「え!?」
――私を迎えに?
胸騒ぎを覚えるが、来訪者を部屋に招き入れるとひとまずお茶を出して、話をきいてみた。
治癒の水を持って来ない自分を心配してくれているようだ。
というよりはお怒りなのだろう。
当然だ。
兵士は肩を竦めると急に椅子から立ち上がって、部屋の中をうろつき始める。
何事かと声をかけると「治癒の水は?」と言うので、寝室に置いてある旨を伝えた。
手で部屋を指し示すと兵士はずかずかと歩いていき、扉を乱暴に開け放つ。
「どこだ?」
「お、奥の窓の近くに」
兵士の剣幕に怖じ気づき、ルネリクスは扉から少し離れて兵士の様子を伺う。
すると、兵士が何かぶつぶつ呟いている声が聞こえてくる。
静かな室内なのだ。耳を塞がなければ聞こえてしまう。
どうやら術を施した手鏡で誰かと会話をしているようだ。
扉の横に移動して、壁に背を預け兵士が出てくるのを待つ。
「ええ。治癒の水は手に入れました。はい……」
ルネリクスは瞳を瞑って早く終わらないかなと、他人事の様に思っていたが、ふと聞こえてきた単語に動揺する。
「分かっております。神殿につくまえに奴を処刑します」
「……!?」
――え、いまなんて?
確かに処刑と聞こえた。
ルネリクスはある可能性について考えを巡らせる。
――私を処刑するのであれば、どんな罪で?
考えられるのは一つしかない。
大神官がルネリクスが触手と交わり、さらにアロルフと肉体関係を持ち、淫欲に溺れたという事実を知ったのだ。
アロルフは全てを話したのだ。
「……っ」
ルネリクスは目眩に襲われて足元がふらついたが、全身に力を入れて踏ん張る。
将軍は自分を拒絶した神官が気に食わず、殺す事にしたのだ。
あの欲の塊の男ならばおかしくはない。
将軍の言葉を大神官は疑う筈もない……。
頭が回らないが、足は勝手に動いていた。
気付けば小屋から外へと飛び出し、走り始めていた。
後方から兵士の怒声が聞こえてくる。
それでも走り続けた。
足は自然と触手の元へと向かう。
混乱する思考でも、思い浮かぶのは病や怪我に苦しむ人々の顔だった。
――治癒の水は、大切に保管される筈……!
途中歩いたり休み休みでも、兵士に追いつかれる事はなかった。
恐らく迷ったのだろう。
ルネリクスは洞窟に辿り着くと、触手の元へ駆け寄って、祈りを込めて叫ぶ。
「私は処刑されます!! しかし、治癒の水はどうしても必要なのです!! この命、貴方と一体化することで終わらせたいのです!! 私の体液、血肉を、命全てを、治癒の水を生成する為の糧にしたい!!」
思いの丈を叫ぶと、触手は反応してルネリクスに絡みついてきた。
そのまま宙へと持ち上げると、触手はまるで大木のようになり、中心部分をがばっと開け放つ。
脳内に何者かの声が響いた。
『ならば、快楽と引き換えにその命、我に捧げよ』
「――っ」
無数の触手がローブを勢いよく破いて裸にされた。
「あ」
触手の檻にルネリクスはぐばっと閉じ込められてしまう。
一瞬、自分がどこにいるのか分からなくなった。
暗い世界にすっぽりと包まれて静寂が支配する。
息はできるが、全身にべっちゃりと触手が絡みついて、大きく呼吸をするようにうごめいていた。
目と耳以外はすべて触手に絡みつかれていた。
恐怖よりも役目を果たせるという安心感が胸に広がる。
――ただむごたらしく処刑されるよりも、意味はある。
そう自分に言い聞かせたその瞬間、猛烈な勢いで触手達が動き始めた。
口腔内と尻奥に入り込み、乳首や首筋、太ももを這いずり回る。
どぢゅっ♡ ぐちゅっ♡ じゅりゅうう~っ♡ ぢゅちゅっ♡ ぢゅちゅっ♡ ぐりゅうっ♡ ぐちゅっ♡ ぐちょっ♡
ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡ ぢゅちゅっ♡ ぢゅちゅっ♡
ぐちゅんっ♡ ぐちゅっ♡ ぐちゅんっ♡ どぢゅぢゅううう――ッ!!
「むごおぉおおお~っ!? あひぃいっ♡ おひっ♡ んほおおぉおお~っ!! 」
――しにゅしにゅしにゅううう~っ!! いぐっ!! いぐいぐっ!! いぐうううううっ!!
「あへえぇえ~っ♡ ぐひっ♡ あひぃいっ♡ ぐひいい~っ♡ あひぃ~っ♡」
触手達はルネリクスを快楽地獄へ閉じ込めてその命を喰らう為に力を尽くす。
まさに性拷問である。
そんな強烈な悦楽に抗える筈もなく――もはやまともな思考など吹っ飛び、理性が飛んだ。
息も絶え絶えに喘ぎ声を絞り出す。
「ぐひいい……っ♡ あひぃ~っ♡ あへ……っ♡ ひへえぇえ~っ♡」
――あふう~っ♡ てんごくううう~っ♡ てんごくいきましゅううう~っ♡
全身も身体の奥もぐちょぐちょにされながら、自分が間もなく天へ召されるのを感じて絶頂して白濁をまき散らし、イき狂う。
もはや自分が何者で何の役目を担っているのかも忘れて、快楽地獄に沈み、獣のように汚い声で泣き叫ぶ。
視界がぼやけて世界が揺れ動き、意識が朦朧としてきた頃、どこからともなく大声が聞こえてきた。
「ルネリクス――ッ!!」
その瞬間、視界が突如として光に包まれ、身体が落下する。
「――ひ」
「おっと!!」
ガシッと豪腕に受け止められて、目を見開く。
自分を抱き抱えているのは、赤髪の将軍である。
「あろるふ、さま……?」
発した声は酷く掠れており、生気のないものだった。
アロルフは怒っているような顔つきで、口元を吊り上げると口を開く。
「俺の許可なく死を選ぶとは、それでも神官か!?」
「な、なにを言って、わたしのいのちは、民のために、神へささげるのです」
「ふざけるな!!」
アロルフの怒声に息を飲む。強い視線から目をそらす事ができない。
「オマエは、俺のモノだ……!! 神だろうが触手だろうが誰にも渡さん!!」
「――っ」
将軍の凄まじい執着を感じて、魂が縛り付けられるように四肢が震えた。
頭がぼんやりして身体に力が入らず、この男の腕の中に閉じ込められるのが悔しくてたまらない。
この男のせいで処刑されるのに。
何故そんな横柄な思考になるのだろうか。
胸の内には憎悪が溢れて声に出したくて仕方なかったが、言葉を発する気力がなく、大人しく洞窟から連れ出されてしまった。
将軍の肩に担がれながら、遠ざかる洞窟を眺めていた。
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