陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

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二章【愛憎の果てに】

三話

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 鏡の向こう側が、まさか異空間に繋がっていたとは。
 泰正は、用意された己の部屋の畳の上に、放心状態で座り込んでいた。

 清明には時が来るまで出てこないようにと忠告されているが、到底落ち着けるはずも無く、無意味に屏風や掛軸を観察してしまう。

 ふと屋敷の外を見てみたい衝動に駆られて、ふらふらと窓の外を見つめた。
 白い光が溢れた世界は、眩しすぎて直視できず、目元を袖で覆った。

 ――まるであの世だ。

 ふと、目の前に蝶が舞うのが視界に入り、手のひらを差し出せば、ふわりととまる。

 “泰正殿、明日、道満が英心を連れてこちらへ来るので、くれぐれも私の指示なく部屋から出ぬ様に”

 頭の中に直接語りかける清明の声に頷くと、蝶が手のひらから舞い上がり、消えていくのを眺めた。

 英心が心配ではあるが、今はどうする事もできないのだから、機を伺うしかあるまい。

 明くる日。
 清明の言った通り、道満が来訪した。
 泰正は鏡を通して、清明と道満が相対する様子をしばし見守る状況となる。

 ――英心は何処だ?

 二人の交わす会話に意識を傾けた。

 清明が、道満に向かって笑みを浮かべる。

「久しぶりだな、道満」

 挨拶をする晴明に、道満は口元を歪めて懐に手を突っ込んだ――その瞬間、清明は人形を彼に飛ばし、術の行使を遮った。

「おっと!」

 道満は懐に入れた手で人形を跳ねのけ、一歩後ずさる。
 ニヤつきながら、黒い狩衣の袖をはためかせて、清明を睨みつけた。

 対して清明は、あくまでも余裕の笑みを見せているが、その口元が一瞬ぴくりと動いたのが見えたので、やはり気が抜けない相手なのだろう。

 道満は清明と距離を取りつつ、次なる一手を伺っている様子だ。
 白い壁に背を預け、清明を見据えて腕を組む。

 この男が、正攻法で清明に挑むとは思えない。

 道満は、清明を真っ直ぐに見据えて、言葉をかける。

「清明、こちらには人質がいるのを忘れるなよ」
「分かっている。目的を話してもらおうか」
「己の目的は一つのみ……お前の全てを奪う!」

 突然、破裂音が轟いて、清明の傍にある大きな鏡が割れて、何かが飛び込んできた。

 泰正はその人物に釘付けになる。

 ――英心!
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