60 / 79
四章【焦がれを抱きて】
十話
しおりを挟む
三人は、それぞれ恋文の返事を書く事に決めた。
どう届けるかを悩んでいたのだが、どこからともなく、鷹の姿をしている晴明の式神が庭に降りたち、文を託せたのでひとまずは安心だったが……次なる出来事を想像すれば、皆、寝付けるはずもない。
久遠は、布団に横になっていたが落ち着けなくて、とりあえずその上に正座して座っていた。
蝋燭の明かりは消している。
一応、この時代の事情は頭に入っているので、驚きはしたが、拒絶するつもりはなかった。
――あいつ、何を考えてるんだ!?
あんな手紙を寄越すだなんて、晴明に説得されたに違いない。
瞳を閉じて呼吸に集中していると、かすかな足音を耳が拾った。
――まさか……!
急激に心音が速まる。
戸口がゆっくりと開かれ、月明かりを浴びた彼が姿を表す。
うっすら見えた顔は、確かに蓮であった。
「先輩? 眠ってないんですね」
「……っあ、ああ」
思わず返事をすると、蓮が傍に近寄るので、布団の上から這い出る。
蓮が手を伸ばしたので、軽く振り払うとため息をつかれた。
ため息をつきたいのは、久遠の方だ。
「どういうつもりだ? あの手紙!」
「僕の想いをそのまま書きました」
「……そんな、わけあるか! あ、あんなラブレターだぞ!?」
「はい。そうですよ?」
「なっ」
「先輩、良いって返事をくれましたよね……?」
「ち、近寄るな!」
そう叫ぶと彼は拗ねた。
久遠は蓮が理解できない。
――僕を嫌がっていたくせに! いったいなんなんだ!
蓮が口をとがらせて迫ってくる。
「だいたい僕が危険をおかしてまで、この場所にやってきた理由を考えればわかるんじゃないですか?」
「わ、わかるか! お前の気持ちなんて分かりたくもない!」
「本当に余裕がないですね……これじゃあ、本番は駄目かなあ」
「ほんばん、だって?」
「じゃ、これなら良いですか?」
「!」
ズイッと顔を突きつけられて、固まった。
目を閉じて……明らかにキス待ちだ。
――あああ!!
久遠はもうどうにでもなれ! と、勢いよく唇を押し付ける。
ぶに!
「「むぐう?」」
お互いに間抜けな声を上げて目があうと、さっと顔を離す。
久遠は胸を手で押さえて呼吸を整えた。
――い、いま、したよな?
「勢いあり過ぎですよ、先輩のキス」
「や! やかましい!」
「これ以上は、無理ですか?」
「……っ」
月明かりが照らし出す生意気な後輩は、困り顔だというのに、やけに雄の顔をしていて……目が離せなくなる。
――な、ながされないぞ!
そっぽを向くと吐き捨てた。
「当たり前だろ!」
「……ですよね、すみません」
申し訳なさそうに謝るくせに、後ろからだきしめてくる。
久遠はもう何も言えず、ただ黙って蓮の温もりを感じていた。
どう届けるかを悩んでいたのだが、どこからともなく、鷹の姿をしている晴明の式神が庭に降りたち、文を託せたのでひとまずは安心だったが……次なる出来事を想像すれば、皆、寝付けるはずもない。
久遠は、布団に横になっていたが落ち着けなくて、とりあえずその上に正座して座っていた。
蝋燭の明かりは消している。
一応、この時代の事情は頭に入っているので、驚きはしたが、拒絶するつもりはなかった。
――あいつ、何を考えてるんだ!?
あんな手紙を寄越すだなんて、晴明に説得されたに違いない。
瞳を閉じて呼吸に集中していると、かすかな足音を耳が拾った。
――まさか……!
急激に心音が速まる。
戸口がゆっくりと開かれ、月明かりを浴びた彼が姿を表す。
うっすら見えた顔は、確かに蓮であった。
「先輩? 眠ってないんですね」
「……っあ、ああ」
思わず返事をすると、蓮が傍に近寄るので、布団の上から這い出る。
蓮が手を伸ばしたので、軽く振り払うとため息をつかれた。
ため息をつきたいのは、久遠の方だ。
「どういうつもりだ? あの手紙!」
「僕の想いをそのまま書きました」
「……そんな、わけあるか! あ、あんなラブレターだぞ!?」
「はい。そうですよ?」
「なっ」
「先輩、良いって返事をくれましたよね……?」
「ち、近寄るな!」
そう叫ぶと彼は拗ねた。
久遠は蓮が理解できない。
――僕を嫌がっていたくせに! いったいなんなんだ!
蓮が口をとがらせて迫ってくる。
「だいたい僕が危険をおかしてまで、この場所にやってきた理由を考えればわかるんじゃないですか?」
「わ、わかるか! お前の気持ちなんて分かりたくもない!」
「本当に余裕がないですね……これじゃあ、本番は駄目かなあ」
「ほんばん、だって?」
「じゃ、これなら良いですか?」
「!」
ズイッと顔を突きつけられて、固まった。
目を閉じて……明らかにキス待ちだ。
――あああ!!
久遠はもうどうにでもなれ! と、勢いよく唇を押し付ける。
ぶに!
「「むぐう?」」
お互いに間抜けな声を上げて目があうと、さっと顔を離す。
久遠は胸を手で押さえて呼吸を整えた。
――い、いま、したよな?
「勢いあり過ぎですよ、先輩のキス」
「や! やかましい!」
「これ以上は、無理ですか?」
「……っ」
月明かりが照らし出す生意気な後輩は、困り顔だというのに、やけに雄の顔をしていて……目が離せなくなる。
――な、ながされないぞ!
そっぽを向くと吐き捨てた。
「当たり前だろ!」
「……ですよね、すみません」
申し訳なさそうに謝るくせに、後ろからだきしめてくる。
久遠はもう何も言えず、ただ黙って蓮の温もりを感じていた。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる