陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

文字の大きさ
61 / 79
四章【焦がれを抱きて】

十一話※

しおりを挟む
 道満は明かりを消して布団に潜り込み、“奴”を待っていた。
 ふいに風を感じたので気を張ると、勢いよく布団から引っ張り出されて声を上げた。

「小癪な真似を!」

 叫ぶ道満に、男は月明かりに照らされながら妖しく笑う。

 安倍晴明である。

「そんなつれない態度をされると辛いなあ」

 わざとらしくおどける口調の晴明に、道満は術をしかけた。
 黒い炎の小さな蛾が晴明を襲うが、さっと扇子でかきけされてしまう。

「チィッ」

 道満は舌打ちすると、次なる一手に出るべく、懐から呪符を取り出そうとするが、すさまじい力によって、布団の上に仰向けに押し倒された。

「うぐっ」
「観念しないか」
「く、うう……!」

 妖しく微笑み、覆いかぶさる晴明から目をそらせない。
 心臓が馬鹿みたいに速く脈打っているのを感じて、唇を噛みしめる。

 ――何を考えているのか、わからん男よ!

 そっと頬に手を添えられて、指の冷たさにぴくりと身体が震えた。

「愛の言葉を返してくれたというのに……お前らしいな、道満……」

 晴明の囁き声が脳内に甘く響く。

 ――な、ながされるな……!

 道満はきつく閉じた瞳をぱっと見開いて、晴明に疑問を投げつけた。

「妻がいる身でありながら、よくもあんなでたらめな恋文を書けるものだな!」
「おや。やはり気にしていたか。ふふふ……ハハハッ」
「な、何がおかしい!?」
「妻などおらぬ。回りが心配するので噂話を流したまで……私は、お前しか頭にない」
「……っ!?」

 抱きしめられて、耳元に囁かれる。

「あの時の口づけを、忘れたとは言わせぬ」
「な……!」

 ――し、知られていた!

 もはや爆音となった心音と己の荒い呼吸音を聞きながら、反論する気力もなく、ただ晴明の肉体の温かさに身を委ねた。

 ゆっくりと衣服を剝ぎ取られて、とうとう裸体を曝け出した時、恥ずかしさのあまり叫んでしまった。

「ひい!」
「静かに」
「せ、晴明……ま、まさか本当にするのか!?」
「もちろん、よく見えないのが残念だな。私も裸になっているぞ」
「明かりはつけるな!」

 慌てて叫ぶと残念そうにため息をつかれたが、絶対に認めるものか。
 髪の毛をおろし、いざ本番を迎える。 お互いの肌を弄るように絡み合い、濃厚な口づけを繰り返すが、やはりこいつは慣れていると怒りが込み上げてきた。

「お前! や、やはり、経験があるんだな!」
「想像に任せよう……それより、足を広げて」
「は……ひああ!?」

 くちゅ……と下半身の秘部に冷たくて粘ついた感触を感じて、思わず変な声が出る。
 口元を手で押さえて、これ以上妙な声を発しないように集中を試みた。

 晴明がから笑いする。

「私が作った特殊な淫具だ。役目を終えれば、体内に入り込み、後に排出される」
「な……なぜ、こんなもの、を……」
「男同士では、痛みがつらかろう。深く考えず、深呼吸を」

 額に口づけをされた道満は、不思議と落ち着いてきて、言われた通り深呼吸を繰り返す。

 ――ああ……体から、力が……。

「道満……!」
「ひっいいっ!?」

 性急な動きで秘部を男根で貫かれ、道満は舌を突き出して悲鳴を上げた。
 晴明が頬を引きつらせながら、苦しそうに熱い吐息を吐き出す。

「はあ……は……道満、私にしがみつけ」
「ま、まて」

 ――ま、まさか、動くつもりか?

 尻の中に異物を插入された恐怖と、圧迫感にすでに怖気づいているのに、かき回されたら己はどうなってしまうのかと血の気が引く。

 晴明は道満を抱きしめながら、腰をゆるく打ちつけはじめた。

「く……ふうっンッふううっ」
「道満、大丈夫……!」

 ――く、るしいっ!

 体内を穿つ熱い楔を締め付けながら、必死に晴明の背中に腕を回し、あられもない声を上げていたら、いつのまにか熱を己の男根から放出していた。

 脱力した道満は、ぼんやりした頭のまま、晴明を見やる。
 晴明は、わずかに染めた頬を緩めていた。

 ――感じて……いるんだな……。

 道満は胸が震えるのを感じて、何故か視界が滲んだ。

 一度果てた道満の中に、晴明の欲望が放たれた時、道満は甲高い己の声を聞いて、気を失った。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...