陰陽師盲愛奇譚

彩月野生

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終章【心を紡ぎ我が世は華やぐ】

八話

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 日が傾きかけた頃、群行はようやく伊勢に到着した。
 神嘗祭に望む準備を、泰正達も手伝う事になる。
 祭に紛れ、大津皇子の想いを浄化させる舞を舞う。
 斎王に輿ごしに挨拶をした後、泰正達は各々、一休みを終えてから祭りの準備にとりかかった。

 神嘗祭は、五穀豊穣の感謝祭であり、その年の最初に収穫した稲穂「初穂」を天照大御神にお供えし、感謝する祭りである。

 泰正達は手伝いはほどぼとにして、大宮司に接触し、天照一族の長である緋那からの文を英心から手渡す。
 大宮司は頷いて四人を、八咫鏡をご神体としてお祀りしている正宮皇大神宮へと案内した。
 大木に囲まれた道を歩き、石の階段を上がった。

 実物は見れない為、外で八咫鏡の力を借りる。
 とはいえ……まだ充分に蓮と久遠とは、別れの挨拶ができておらず、しばし泰正と英心は二人と話し込んだ。

 泰正は蓮の手を取り、お礼を伝える。

「千景の言葉をきいてくれて感謝する。それに、私は本当にお前に助けられた」
「いえ、そんな」
「寂しくなるな」
「ああ……」

 英心が口を挟み、その言葉に頷いた。
 蓮が涙ぐむ隣では、久遠がむくれている。
 泰正は思わずその頭をなでてやった。

「な、何するんだよ!」
「蓮に迷惑をかけるなよ、必ず助けあうんだ」
「久遠、泰正の言うとおりだぞ」
「……分かってるよ!」

 泰正と英心、蓮は顔を見合わせて笑いあった。
 最後には四人で抱擁しあって、そっと身を離す。
 泰正と英心はそれぞれ魔鏡を懐から取り出すと、蓮と久遠を挟むようにして地面へと置いた。
 あとは、蓮と久遠が持つ魔鏡と地面の魔鏡が、泰正と英心の祈りと共鳴しあって、八咫鏡の力を借りる事で二人を送り出す。

「泰正さんの舞を見たかったなあ」

 ぽつりともらした蓮に、泰正は柔らかい声音で答える。

「浄化の舞が、時空に異変をもたらすと二人が危ないからな」
「……泰正さん、この時空の晴明さんと道満は妻子を持ちません。そうでなくてはならない理由があるので、どうか注意して下さい……英心さん、宜しくお願いします」

 頭をさげる蓮の腕を、久遠が掴み、彼もお辞儀をした。
 泰正は英心と共に力強く返事をすると、九字を切る。
 本来の用法とは意味は違うが、九字を切った直後、二人の時空への旅立ちを祈るのだ。

「「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」」

 九字を切り、祈りの言葉を叫ぶ。

「「この者達を繋がりし正しき世界へと導き給え」」

 泰正と英心の声が重なり、響き合う。
 瞬間、正宮から淡い光の筋が飛んできた。
 光は地の魔鏡に飛び込み、蓮と久遠に向かって光を放つ。
 二人は淡い光に包まれて宙に浮かんだ。

 泰正は、手を繋いで宙へと消えていく二人に声を張り上げた。

「達者でな! また会おう!」

 蓮も口を開いていたが、声は聞こえない。
 久遠と顔を見合わせると、まばゆい光に包まれてついに姿を消してしまった。





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