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終章【心を紡ぎ我が世は華やぐ】
九話
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泰正は、英心と共にしばし空を眺めていたが、やがて顔を見合わせて、手を取り合った。
「泰正」
「英心」
名前を呼びあって、いよいよ浄化の舞に臨む。
祭りの準備が進む最中、邪魔にならぬよう、離れた隅の場所にて、二人は向き合う。
お互いに浄化の対象である為、同時に舞を始める事となる。
月明かりに照らされるお互いの顔を見つめ合い、手にした扇子をヒラヒラと揺らした。
大木の間で距離を取り、二人は同時に足を出す。
「「いざ」」
声が重なり合って、泰正と英心は逆側に跳ねた。
この浄化の舞は、緋那から指南された特殊な舞である。
五芒星の形にそって舞いながら、最後に同時に着地して、顔をつきつけあい、邪気がこもった扇子を粉々にする。
風を切る音、地につく足音、吐息――それらが混ざり合い、一つの唄のように夜闇に響く。
風で唸る木々の声音が激しくなり、二人の舞う所作も一層力強くなる。
とうとう二人は同時に着地し、顔をつきつけあった。
「はあっ、はあ……英心……」
「はあ……泰正……」
お互いの扇子が震えだし、紫の光を放った瞬間、粉々となり、消えていく。
二人はぼんやりと破片を眺めていたが、急に意識が朦朧としてきた。
泰正と英心は、暗闇の世界にいた。
眼の前には、二人の人物が佇んでいる。
永響と大津皇子である。
泰正は、英心に声をかけたかったが、体が動かなかった。
英心も微動だにせず、ただ、二人を見据えている。
永響と大津皇子が向きあって、言葉をかわした。
「この場に、皇子が求める物がいる」
「……まさか、あり得ぬ」
「都へ飛べば良い。魂はきっと報われるだろう」
「……っ」
大津皇子は、泰正と英心を交互に見た後、光の玉となり、消えてしまった。
永響は宙を眺めて呟く。
「ここに、かつて大津皇子の想い人がいたのだな。まさかまたもや具現化するとは……さて、そろそろ私も、浄化とやらを受けるとしよう」
泰正と英心を見やり、永響も光の玉となって、消え去った。
世界がぼやけて、次の瞬間には、現実世界が広がっていた。
泰正は、英心と抱き合う形で地に座り込んでいた。
視線を交わすと、そっと唇を重ねる。
お互いに異変がないか確かめると、体が軽くなったような気がしたのは、共通していた。
二人は体調が芳しく無く、神嘗祭が終わる頃にようやく回復して、斎王に挨拶に出向いた。
奉幣の儀の参進を離れた場所で見ていた。
白装束の彼らが御正宮へと向かって行く姿を、見えなくなるまで見送る。
祭後、残念ながら斎王には会えず、大宮司とお供のひとりに挨拶をして、都への帰路へとついた。
――結局、斎王は私の舞を見てはいなかったようだ。
「泰正、どうかしたか?」
「いや、何でもない」
泰正は英心に笑いかけて、そっと手を繋ぐ。
英心は口元を綻ばせて、視線を前に戻した。
せっかくなので、どこかに立ち寄ろうとなり、思い出作りにしばし時を費やす事にしたのだった。
「泰正」
「英心」
名前を呼びあって、いよいよ浄化の舞に臨む。
祭りの準備が進む最中、邪魔にならぬよう、離れた隅の場所にて、二人は向き合う。
お互いに浄化の対象である為、同時に舞を始める事となる。
月明かりに照らされるお互いの顔を見つめ合い、手にした扇子をヒラヒラと揺らした。
大木の間で距離を取り、二人は同時に足を出す。
「「いざ」」
声が重なり合って、泰正と英心は逆側に跳ねた。
この浄化の舞は、緋那から指南された特殊な舞である。
五芒星の形にそって舞いながら、最後に同時に着地して、顔をつきつけあい、邪気がこもった扇子を粉々にする。
風を切る音、地につく足音、吐息――それらが混ざり合い、一つの唄のように夜闇に響く。
風で唸る木々の声音が激しくなり、二人の舞う所作も一層力強くなる。
とうとう二人は同時に着地し、顔をつきつけあった。
「はあっ、はあ……英心……」
「はあ……泰正……」
お互いの扇子が震えだし、紫の光を放った瞬間、粉々となり、消えていく。
二人はぼんやりと破片を眺めていたが、急に意識が朦朧としてきた。
泰正と英心は、暗闇の世界にいた。
眼の前には、二人の人物が佇んでいる。
永響と大津皇子である。
泰正は、英心に声をかけたかったが、体が動かなかった。
英心も微動だにせず、ただ、二人を見据えている。
永響と大津皇子が向きあって、言葉をかわした。
「この場に、皇子が求める物がいる」
「……まさか、あり得ぬ」
「都へ飛べば良い。魂はきっと報われるだろう」
「……っ」
大津皇子は、泰正と英心を交互に見た後、光の玉となり、消えてしまった。
永響は宙を眺めて呟く。
「ここに、かつて大津皇子の想い人がいたのだな。まさかまたもや具現化するとは……さて、そろそろ私も、浄化とやらを受けるとしよう」
泰正と英心を見やり、永響も光の玉となって、消え去った。
世界がぼやけて、次の瞬間には、現実世界が広がっていた。
泰正は、英心と抱き合う形で地に座り込んでいた。
視線を交わすと、そっと唇を重ねる。
お互いに異変がないか確かめると、体が軽くなったような気がしたのは、共通していた。
二人は体調が芳しく無く、神嘗祭が終わる頃にようやく回復して、斎王に挨拶に出向いた。
奉幣の儀の参進を離れた場所で見ていた。
白装束の彼らが御正宮へと向かって行く姿を、見えなくなるまで見送る。
祭後、残念ながら斎王には会えず、大宮司とお供のひとりに挨拶をして、都への帰路へとついた。
――結局、斎王は私の舞を見てはいなかったようだ。
「泰正、どうかしたか?」
「いや、何でもない」
泰正は英心に笑いかけて、そっと手を繋ぐ。
英心は口元を綻ばせて、視線を前に戻した。
せっかくなので、どこかに立ち寄ろうとなり、思い出作りにしばし時を費やす事にしたのだった。
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