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13責任をとってもらおうか
しおりを挟む早速呪術師に胎を見てもらう為、個室に移動して二人だけで話し合う。
フリオは、自分の身に起こった事を細かく説明した。
この胎に宿っているのは、恐らくサビーノの弟の、オディロンの子であるという事実を、理解してもらうのに時間はかからなかった。
ローブを目深に被った呪術師は、口元と声音で心配しているような感情を伝えてくる。
「なるほど。それは災難でしたね」
顎に手を当てて、考える素振りを見せる呪術師を見守り、その言葉を静かに待つ。
やがて顎から手を離した呪術師は、ある提案を持ちかけてきた。
その提案を聞いたフリオは、耳を疑うと、呪術師に語気を荒げて質問する。
「そんな事を、どうやって承諾させるんだ!?」
「フリオ様は、オディロン様についてはどれくらいご存じですか?」
「……いや、ほとんど知らない」
「ならば、直接会ってお話した方が宜しいでしょう」
あの人狼が、こんな話に乗るだろうか。
兄のサビーノとは仲が悪いようなので、その兄に心情的に打撃を与えられるのであれば、乗ってくる可能性はあるが、とんだ茶番だ。
それに、フリオ自身想像したくない話である。
子供を使うとは考えてはいたが、そういう事ではないのだが……。
それでも、呪術師の策に賭けてみようと思い直し、結果的に、フリオはサビーノの元へは帰らず、オディロンと会う事となった。
呪術師とは不思議な存在だ。
数はあまりいないが、各々百年は生きているという噂がある。
フリオが懇意にしている、この呪術師も長い生を生きてきたのだろう。
誰がどこにいるのかなど、すぐに分かるらしい。
それは呪術によって見つけ出すのか、頭に入っているのかまでは知らないが。
オディロンは、王都の街から離れた、山の中の森に根城を構えていた。
例の生贄と二人だけで住んでいるらしい。
鬱蒼とした木々が太陽を隠し、薄暗い中で無数のランプが、小さな城を照らし出している。
呪術師に案内されて辿り着いたものの、足が棒のようになり、感覚がなくなっていた。
顔をしかめていると、呪術師が手を貸してくれる。
その肩を借りて城の門の前に立った。
「では、呼びかけますよ」
「ああ」
「オディロン様!! 客人でございます!!」
大声に反応するように、木々がざわめき、その合間から塊が降ってきて、大地を揺らした。
その振動にフリオの足が揺れて、あやうく転びかける。
目の前に降り立った緑の巨体に、目を見張った。
左右の頭から突き出た角、大きな口からはみ出た牙――ボロボロの腰巻きをした、怪物オーガは、息を荒げて迫って来る。
「オディロンサマにナンのようだ!!」
「フリオ様がお会いしたいというので、お連れしました」
「フリオ?」
オーガはフリオを見ると、大仰に首を傾げて、鼻を鳴らすと、踵を返し、城の門を乱暴に開けた。
「ハイレ!!」
「あ、ああ」
「無駄な体力を使わなくてすみましたね」
「ああ」
この怪物を前にしても、全く動じない呪術師に流石だな、と内心で感心していると、何故か歩を進めないので、足を止めて振り返る。
呪術師はまるでフリオの心を読んだように、声を掛けてきた。
「その胎の子は順調に育っていますよ」
「本当に?」
「ええ。間違いなくオディロン様の子です。ですが、フリオ様の目的を達成する力になってくれる筈……後は、うまくやって下さい」
「あ――」
手を伸ばすと同時に、呪術師の姿は風と一緒にかき消えた。
術を使ったのだろうが、こんな時に行ってしまうなんて。
せめてオディロンと話をするまでは、いて欲しかった。
ふとオーガの姿が、どんどん先に行くのに気付いて、慌てて追いかけていった。
オーガに追いつくと、奥の階段を上がれと指示されたので、言われるままに上っていく。
階段を上りきった先の前には、広大な廊下が延びており、その突き当たりに巨大な鉄の扉があった。
その前には、鷲と豹の獣人が、槍を持って警戒している。
フリオは堂々とその前に進んでいくと、声を張り上げた。
「フリオだ!! オマエの子供について話がある!!」
そう叫ぶと、二人の獣人は「「ごふ」」っと吹き出し、扉が内側から開かれた。
開け放たれる扉の向こうには、不機嫌そうな人狼が仁王立ちしていた。
あろう事か、下半身まで丸見えで勃ちあがっている。
その大きさに凝視していると、頭を掴まれて部屋の中に引きずり込まれた。
「い、て!」
「すぐに終わるから、隅で待ってろ!!」
「!?」
一体なんの話だ!?
と聞かなくても、答えはすぐに分かった。
大きな寝台の上で、生贄――ジョエルが裸で寝転がっていたのである。
その目は虚ろで、熱に浮かされたようにオディロンを呼ぶ。
「おでぃろんさまあ……」
「待ってろ、すぐに続きをしてやる!!」
「んふ」
二人はフリオの目の前で、濃厚な性交を始めてしまった。
目を閉じて耳を塞いでも、ジョエルの喘ぎ声と、オディロンの獣の興奮した声は聞こえてくる。結局、部屋の隅で、硬くなったペニスを慰める羽目となった。
フリオが何度か一人でイッて落ち着いた頃、ようやく二人も熱がおさまったらしく、オディロンが声をかけてきた。
「で、いったい何の用事だ」
「……オディロン、面倒だから率直に言うぞ」
「なんだ?」
フリオは長い息を吐き出すと、オディロンの青い目をまっすぐに見つめて言い放つ。
「俺と結婚してくれ」
――そう伝えた途端、明らかに、空気が凍りついたのを感じた。
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