曲者が、曲者の常識で曲者と人を裁く非常識な少女の物語である 題名変えました

さや

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序章 アンジェラス1は、世界を救う

17話 代行者"アンジェラス"

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ーーードスンッッッッッ!!!

寝台に、何かが落ちて来た。

「な、何!?」

少女が驚き、飛び上がる。

「って、貴方……」

綺麗な銀髪に、真っ暗な体。そして、立派なツノが生えている落ちてきたもの。

「魔王、じゃないの……」

少女は、憔悴しきった顔色の悪い魔王の頬をつつく。

だが、一向に目覚める気配はなく死んでいる様に眠っている。

「如何してこんな所にいるの……?」

魔王は今、邪神の駒として勇者と死闘を繰り広げているはず。
ソレが何故、邪神ではなく"生きたまま"此処へ落ちてきたのか。

そう、疑問に思うと同時に少女の頭に声が入ってくる。

[アンジェラス1、聞こえるかい?]

「きこえますよっ!」

元気よく返事をした少女の、頭にフフッと上品な笑い声が響く。

「何か御用ですか?世界の意志様!」

[今日も元気な様で何よりだよ。]

「全て世界の意志様のおかげですから!」

[そう言ってもらえると嬉しいな。じゃあ、本題に入るけど大丈夫かい?]

「勿論です!!」

ニッコリと笑っていた少女の顔が急に真剣なものへと変わる。

[君には、久しぶりに世界の修正をしてもらうよ。]

「私がですか?」

[他のアンジェラスでは、手に負えないからね。]

「もしかして、第77世界だったりします?」

[ご明察、さすがはアンジェラス最強と言われるだけのことはあるね。]

「お褒めいただき光栄です!」

心底嬉しそうにピシッと腕をまっすぐ上げる少女。

[で、だ。今から脳に使命データを送るからソコから汲み取ってくるように。]

「リョーカイです!」
 
プツリと、脳内で切れる音が響けばもう声が聞こえてくることはない。

部屋には、少女と眠っている魔王のみ。

「ふむ……大体事情はわかったけど、かなりお人好しな魔王もいたもんだねぇ。」

77世界で起こった事を、頭の中で記録している少女は、魔王に同情する。

「でも、殺しちゃったものは仕方ない。」

邪神と光の神は、いずれ回収するつもりでいた為、時期としては丁度良い。
もう、どの世界にも神の存在は必要ないのだ。

「ゆっくり、眠ってるといいよ。」

幸いなことに完全に魔王の魂は破壊されていない。
世界の意志が、直ぐに此方へ送ってくれたおかげで魂も体も時が止まっているのだ。

そして、魔王が送られてきたという事は有効活用しろというわけで。

「ちよっと、体を借りるよ。」

真っ黒な魂を魂保存瓶の中に収納する。

壊れかけている為か、ビー玉の様な魂にヒビが入っている。

「もう、苦しまずに済むからね。直ぐに邪神も連れて来てあげるよ。」

そしてずっと、邪神と暮らせば良い。
世界の意志様もソレを許したから、少女に送ったのだから。

「本当に運がいいね、君は。」

ふふっと機嫌良さげに笑い、少女は大きな丸い湖の中へと落ちた。






***






真っ黒な煙の立ち込める空に、真っ赤な砂埃。
黒く染まった魔法陣、死体の焦げた腐敗臭……第77世界は、かなり悲惨な状態だった。

『ひっどい状態。』

思わず、目を逸らしたくなるほどには酷い。
少女は、何度も世界を修正するために渡り歩いてきたが、此処まで酷いのは初めてだ。

『こりゃ、他のアンジェラスが対処できないってもんだよ。』

今、魔王の体に少女は入っている為、周りから見たら魔王が参戦したと見えるのだろう。

魔族が少女の姿を見るや否や雄叫びをあげた。

「魔王様が帰ってきたぞーー!!!」

「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」

全く耳鳴りがするほどに五月蝿い。
だが、それだけ魔王の人望が厚かった証拠なのだろう。最前線を駆けている邪神なんて勇者を吹き飛ばして全力で向かってくる始末。

さっきまで、負け戦だったのに魔王が戻ってきた途端コレだ。

まぁ、ソレも火事場の馬鹿力というやつで、直ぐに力尽きるのだろうが。

【魔王!】

『邪神、貴方には私の協力者になって貰うよ。』

【!?】

驚愕に目を見開く邪神に構わず、過去へと無理やり時空を戻す。
もちろん、邪神を引き連れて。

一瞬で周りが黒く染まり、その直後、また視界が白く染まる。

『とっ!』

【きゃ!】

どうやら、魔王の寝室が巻き戻る場所の様で、二人してベットにダイブする形となった。

『私の寝台と同じくらいフッカフカだね~』

【うぇぇ………】

窓に、邪神が吐いてる。ちょっと急ぎすぎたかな?と少女は申し訳なく思ったが、謝ることは無い。

【あ、貴方は代行者ーーアンジェラス様ですか?】

吐き終わった邪神が、少し顔色が悪いながらも、そう聞く。

『正確にはアンジェラス1だよ。最強って言われてる。』

【アンジェラ1様が来るほど、やはり悪いのですね。この世界は……】

『もう悪いどころじゃない、激ヤバだよ。』

【げ、激ヤバ……】

『そうだよ、本来ならば世界を管理する役目のある貴方たちが管理するところを怠ってしまったから、こんな惨状にまでなって……まぁ、悪いのは全部光の神なんだけどね。』

邪神は何も悪くない。
むしろ、よく魔界を守り抜いたと少女は笑顔で褒める。

【あの、一ついいでしょうか?】

『なに?』

【魔王は、死んだのですか?】

『殺したから、私が中にいるんでしょ?』

【あぁ……】

途端、邪神が泣き出した。
ポタポタと、涙を流している。

だが、少々人の感情が分からない少女は魂保存瓶に入ってることを言えばいいのだが、ソレをしない。

ただただ、泣き止むのを待つだけ。

【すみ、ません……】

『ん~なんで泣いてるのか分かんないけど……泣いたら幸せが逃げちゃうよ?』

そこは、"ため息をついたら"と使う所なのだが、細かいことを気にしない少女はニコリと笑ったまま。

『魔王が死んじゃったのは、貴方が殺したからだよね?だから、まさかソレで泣いてる訳じゃないよね?』

少女は思う。自分でしたことを後悔して泣く者は、如何して後悔する事をしてしまうのだろうと。

『まさか、ソレで泣いてるの?』

反応のない邪神に少女の声が低くなる。
魔王の体と言うこともあり、声はもっと低い。

『自分で殺しておきながら、どうして殺した者を思ってなくの?殺された者の方が苦しいはずなのに。』

【っ】

『泣く権利なんてないよ。勝手に泣く暇があるなら、早く役目を果たしなよ。』

神が争わなければ、まだ77世界の神はアンジェラスになる事をまだ先送りに出来たはずなのだ。
自身たちで招いた結果を、嘆かないでほしいと少女は思う。

『ほら、早く泣き止んで。しなきゃいけないことは盛り沢山あるんだから。』

近くにあったタオルで、涙を拭き取り無理やり話題を変える。

『私たちはコレから、光の神だけを倒すの。勇者をただの人間に戻し、この世から勇者と魔王の戦った歴史を消し去る。そして、初めから異種族同士が仲の良い世界に作り替えるの。期間は1年、その間に世界を作り替えないといけない、だから、邪神は協力してくれるよね?』

聞いている割には、逆らうなど許さないと言う圧があり、邪神は本能に従って頷いた。

【わ、分かりました。】

『理解が早くて、助かるよ!』

ニコッと、笑う姿は魔王ならば絶対にしない表情で……邪神の目尻から一筋の涙が溢れた。








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