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EP7_④

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(ふぅ……やっぱり……お葬式は疲れるわねぇ……お胸が蒸れちゃうわぁ……。)

 寝室のベッドに腰掛け、胸元を少し広げ、パタパタと扇を振って汗ばんだ谷間を冷やすセレア。
 葬儀は滞りなく終わり、式後の食事会も終わった。慌ただしい1日であったが、終わってみると呆気ない。

コンコンコン……ガチャ……!

「お~い! セレねえいるかぁ~?」

「あら、ゼスト様。 こんばんわ!」

 ノックが響き、返事をするより先にドアが開き、ゼストが部屋に入って来た。
 女性の部屋に入るのに、少しばかり無礼。だが、悪意が無い事は分かっているので、セレアの方も怒らない。

「周りに誰も居ないし、タメ口で良いぜ。 その方が楽だ。」

「流石はゴルソント1のプレイボーイ! なんかこう……手慣れてるわね!」

「お褒めに預かり光栄だ……!」

 開け放ったドアに背をもたれ、足を伸ばして腕を組み、不敵な笑みを浮かべるゼスト。
 一見すると近づき難い雰囲気を崩すように、気さくに話し掛けて来る。相手との距離感を自在に調整できるのは、やはり長年の経験だろう。

(わぁお……改めて見ると……すっごいイケメン……。)

 そんじょそこらの女では、簡単に堕とされてしまうハンサムな顔と、圧倒的なオーラ。
 その輝きを喩えるなら、スターと呼ぶのが相応しい。皆を統率するとは少し違う、個人で完結したカリスマだ。

「こんな深夜にどうしたの? フフッ♪ まさか私を襲いに来た?」

「あんまり煽るなよ。 になっちまうぞ?」

「ッ!……こ、怖いわねぇ~♪ アハハ~。」

 温和な薄ら笑いが、コンマ1秒だけ獲物を狙う捕食者の色に裏返った。
 背筋を走る悪寒は、何よりも信用出来る危険信号アラートだ。セレアは今、僅かに恐怖を覚えた。

(こ、この子……結構強いわね……。
 押し倒されたら、振り解けない気がする……。)

 不用意に煽れば、押し倒され、押さえ付けられ、身包みを剥がされて食べられてしまう。そんな予感。
 あくまで自分は被捕食者。豊満な女体を持つ獲物として、貪られる立場であるとの認識を教え込まれてしまう、強烈な雄の覇気フェロモン

(よく見たら……すごい筋肉……。)

 線は細くとも、完璧に引き締まった肉体。
 ヴィルほどの絶倫には見えないが、か弱い乙女を徹底的に破壊して、身も心も屈服させるには十分だ。
 全身が汗で塗れ、四つん這いになって、イヤらしく垂れ下がった爆乳をぷるんっ💕ぷるんっ💕と暴れさせながら尻を叩かれて犯される自分の姿が、セレアは容易に思い浮かんだ。

(悪い子じゃないけど……気を付けないと……。)

 無論、ゼストが非道を働くような人間でない事は、長年の勘で理解出来る。
 だが同時に、常人の何倍ものテストステロンが分泌され続けている"戦士アスリートの獣性"が起こす暴走の危険性も、彼女は良く理解していた――。

「親父が呼んでるんだ。 義姉ねえさんを連れて来いってさ。」

「ヴィル君は?」

「俺とフィラは帰されたんだけど、アイツだけは残らされてる。 なんか親父は、先に義姉さんと話したいらしい。」

「何の話をしてるの?」

「兄貴の事業の引き継ぎが云々とか?
 まぁ正直、兄貴の権力は相当だったしなぁ……後が大変だぜ……。」

「と、言うと?」

 思わせぶりなゼストの口調に、セレアの好奇心が反応した。大袈裟に首を傾げて聞き返すと、彼は簡単な説明を始める。

「親父は数年前から体調を崩してる。
 領主の仕事にも支障が出て来たってんで、俺たちが手伝う事になったんだよ。」

「ふむふむ。」

「ただまぁ……なんとなく分かるだろ?
 俺はバカ過ぎ&試合ゲーム多過ぎ。
 フィラもまぁ……仕事が出来るタイプじゃない。
 ヴィルは逆に頭が良過ぎて、延々と研究してるからな。」

「そんなに謙遜しなくても……。」

「まぁ正直、っていう余罪も無くはない。」

「まぁ……そうよね……若いんだし……。」

 ゼストは悪人ではないし、男としてもクズではない。
 肉体関係は数十人規模で重複しているが、あくまでだと全員に伝えているし、他の男から奪い取った訳でもない。

 彼ほどのスターなら、豪遊ハーレムは自然な事だ。女の方も、それを分かった上で寄って来る。
 だがやはり、領主の職務を手伝うには、彼はあまりにもチャラ過ぎた――。

「まぁ、要するにだ。
 4兄弟居るけど、まともに親父を手伝えたのは兄貴だけ。 だからまぁ、色々と権力みたいなのが集中してたのさ。」

 生前のアウレスタは、病で衰えた父の後を継いで様々な事業に手を付けていた。
 クラリアス領は、王族でもない一介の貴族が持つには、巨大すぎる領地。国と呼べるほどの物ではないが、かなり大きな経済規模を誇っている。

 その権力を握る者が、善人であれば良いのだが――。

(言い方的に……あんまり良くなさそうね……。) 

 後輩の実体験と、ゼストの口ぶりから、セレアはキナ臭い雰囲気を感じ取っていた。
 その話題に深入りするのは、部外者として過ぎた真似。そう察すると、彼女はすぐに話題を変えた。

「ヴィル君って研究してるの?」

「よく分かんねぇ論文書いたり、討論会?とかいうのに出席したり、色々してるぜ。」

「なるほど……それだと、お義父様の手伝いは出来ないわね……。」

「……とまぁ、そんな訳で! 色々と面倒だし、俺は今日中に出てくぜ! 親父の話は、小難しくてよく分からん!」

 神妙な面持ちで語っていたゼストの顔は、一瞬で崩れ去った。
 キザに振る舞えば最高のイケメンなのに、素で話すと馬鹿っぽくなってしまう。だが、そんな親しみやすさも彼の魅力だ。

ガチャッ……!

 ロックを捻り、勢いよく開け放たれた窓に身を乗り出すゼスト。
 眼下に広がる深緑から吹き抜ける爽やかな旋風が、トパーズ色の髪を揺らす。

「ヴィルをよろしく! またな☆」

「任せなさいっ♪」

 身に纏ったコートの黒い裾を夜風にはためかせながら、青年は煌めくようなウィンクだけを残して、地上30mの窓から城外へと飛び出して行った――。

~~~~~~~~~~

コンコンコン……

「入りなさい。」

「失礼します……!」

 緊張と不安の入り混じった声色で、ヴィルヘルム1世の書斎をノックする。
 中から響く領主の声は待ち侘びたような声色だが、やはり冷静沈着だった。

ガチャッ……

 ドアノブを捻り、中に踏み入る。
 廊下とは違う色の床が視線に映り込み、その色は真紅だった。

 だが、それよりもセレアの興味を惹いた物は――。

(天然の結界……これは……螺旋式?)

 そこに張られたのは、蜘蛛の巣のように緻密な結界。
 しかし、ソレは人為的に作られた物ではなかった。
 この土地に元より存在している霊脈の類か、もしくは誰かの魔力漏洩が定期的に起こった証。

 何より奇怪なのは、その形状。
 結界の種類には幾つかの系統パターンが有るが、螺旋状に巻かれた魔力の渦など自然に発生する事は稀有だ。

(凄い……ほとんど要塞じゃない……。
 しかもコレ、よく見たら城全体を覆ってる……。)

 最低でも100×100はあると思わしき、10000平方メートルの敷地。
 その全体を覆い尽くすほど巨大な結界が、領主の書斎を起点にして発生している。
 人為的に張っても、この規模の物は中々作れない。それを漏洩した魔力だけで練り上げるのは、明らかに異常と言わざるを得ない。

「夜分に呼び出してすまないね、セレア殿。」

「いえ、ちょうど暇を持て余しておりまし」

ギュィィィィーンッ……!

「ひきゅぅ"ッ!?💕💕💕」



 目と眼が合った瞬間、セレアの体内にが、一瞬にして流れ込んだ――。



「あっ……あっ……ぁーっ……。」

 トロンと、蕩けた瞳。
 震える口先から溢れ出す、情けない声。
 小刻みに震えながら汗を滴らせる、湿気に満ちた肌。

ドクッ……ドクッ……ドプッ……

 螺旋状に巻かれた結界が、セレアに向けて収束する。

 流し込まれるエネルギーは、か弱い乙女が受け止めるには重過ぎた。喩えるなら、まるで
 蕩け合い、弾け合う爆発的なエネルギーを血管に流し込まれ、内側から肉体が膨張していくような感覚。

 だが、決して痛くはない。
 むしろ、彼女の身体は正反対の感覚を享受していた。

「んぉ"ッ……ん"お"……ぉ"ッ……ほぉ"ぉ"……💕」

 両手で口元を抑え込み、膝からその場に倒れ込む。
 胃から逆流する、吐き気にも似た吐息。あまりにも下品なその声色には、搾り取られるようなの色を漂わせていた――。
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