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序章 登録試験編
EP2 始まりの日
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女神エレーナは長きに渡って転生者を導き、数多の能力を授けてきた。
その過程で前世の功績に見合わぬほど強力な効果を求める者や、自分の性質に合致していない能力を求める者、挙げ句の果てには女神自身と共に転生することを望む者。
その他、様々な転生者と出会ってきた。
しかし、今回のようなことは前代未聞だった。
「能力がいらない!?」
思わず、女神としての威厳を保つことさえ忘れ、本音が漏れてしまった。
「私が人生の中で唯一学んだこと、それは身に余る力は人を溺れさせ、堕落させるという事です。
私は人生をやり直せるなら自分の力で運命を切り開きたいとずっと考えてきました。誰かの力に頼ることなく歩んで行きたいと。
エレーナ様に言うのも変ですが、これこそ神の与えたチャンスだと思うのです。」
エレーナは、訝しく思うと共に、この若者には何か光るものがある。そう感じて、とても興味深く思った。
今でこそ凡庸な青年。しかし女神の眼には、彼の姿に重なる巨大な宿命の輪郭が見えていたのかもしれないーー。
「良いであろう。能力とは転生時にのみ手に入れられるものではない。
今の自分に似合うものがないと考えるのなら、旅を通して見つけるのも良いであろう。
幸い、冒険者の酒場での名簿登録試験に合格できるだけの最低限の力は有りそうだ。
謙虚なる冒険者、清也に祝福あれ!其方は太平の世界にてじっくりと経験を積むが良い!其方の活躍楽しみにしておるぞ!」
エレーナが呪文の詠唱を始めると視界が回り始め
意識が深い渦の中に吸い込まれていった。
~~~~~~~~~~~~~~~
気がつくと、そこは森の中だった。
起きあがろうとして少しよろめき、自分の体を見ると、鉄の甲冑を纏っていた。
右足の付け根には袋がついていて、左足の付け根には青銅の剣がしまわれている。
早速、袋の中を見てみると中には現在地と近辺の地図が一枚。手紙が一枚。
金貨が4枚。銀貨が9枚。銅貨が10枚が入っていた。
手紙には、
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
冒険者たちへ
無事に転生が済んだようで何よりだ。
能力を使わずとも、もしくは使えなくても十分に名簿登録試験に合格できるような装備を渡してあるから安心して欲しい。
失敬、名簿登録試験について説明していなかったな。
君たちが送られた3つの世界はどの世界でも、冒険者の酒場(トラベラーズギルドとも呼ばれる)に登録することで旅のサポートを受けられる。
そのため、余程の理由がない限りは加入を奨めているのだが、その地を治める領主や国王の許可を得る必要がある。
その為の登録試験である。土地によって内容は異なるが、能力を持ってさえいれば、十分に突破が可能なはずだ。安心して欲しい。
能力が使えない場合は、少し厳しい戦いになるかも知れないが、突破さえできれば大きな成長を得られることだろう。
名簿に登録すれば仲間を募ることや、負傷時の治療費の一部負担、怪我などで動けなくなった際の救出、関門の特別許可証、クエストの受注など様々なことが可能となる。
重ね重ね言うが、絶対に加入してもらいたい。
硬貨についても説明しておこう。三つの世界共通で
金貨がファルゴ、銀貨がファルシ、銅貨がファルブだ。
ファルシ10枚でファルゴ一枚。
ファルブ10枚でファルシ一枚と覚えていて欲しい。
まずは近辺の村や町に向かって欲しい。全てはそこから始まる。冒険の順調な滑り出しを期待している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
清也は”能力を使えない者”というのは自分のことだと理解し、エレーナからの激励に感動した。
清也は地図で一番近くいソントの町へ向かうことにした。どうやらギルドもそこにあるようだ。
うっそうと茂る森林の中で、一人の青年の冒険は始まった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2時間が経ち、日が暮れてきた。
清也はもちろん野宿などしたことはないし、そもそも甲冑を着て2時間も歩いたことなどあるわけない。疲れ果て、座り込むと腹も空いてきた。
仕方がないので一度仮眠を取ろうかとしていると、木々の隙間から煉瓦造りの家と煙突が見えた。
これは助かったと思い、早速ドアノブを叩いた。
次の瞬間、勢いよく扉が開き清也は家の中へと一瞬で引き込まれた。
「けけけけ、ギルドの野郎だぜ、けけけけ。大層な鎧と剣じゃねぇか、え?ふへへへ」
下品な笑いをあげる、髭を生やした男は短剣を突き付けながら清也の鎧を脱がし、剣を抜き去り、袋に手を伸ばした。
登校も下校も習い事も旅行も、全てSPと共に行ってきた清也は今、自分に起こっていることが理解できなかった。
「おお!5ファルゴか!なかなか持ってるじゃねぇか」
自分がいわゆる”カツアゲ”に合っていて、相手は空き家を寝蔵にしていた山賊だった。
そうと気付いたのは、全財産がシャツとズボン、パンツ、それに地図と手紙へと成り果ててからであり、気付いたら男はいなくなっていた。
自分の今の状況が理解できた清也。当然、大慌てである。
(え、ちょっと待って!?何も残って無いよ!?)
ここに居るのはまずいと思い、残された地図を頼りに、彼は再び歩み始めた。
一晩かかって、体中傷だらけになりながら野を越え、山を越え森を抜けて泉で水を飲みつつ、やっとソントの町へと辿り着くことができた。
その過程で前世の功績に見合わぬほど強力な効果を求める者や、自分の性質に合致していない能力を求める者、挙げ句の果てには女神自身と共に転生することを望む者。
その他、様々な転生者と出会ってきた。
しかし、今回のようなことは前代未聞だった。
「能力がいらない!?」
思わず、女神としての威厳を保つことさえ忘れ、本音が漏れてしまった。
「私が人生の中で唯一学んだこと、それは身に余る力は人を溺れさせ、堕落させるという事です。
私は人生をやり直せるなら自分の力で運命を切り開きたいとずっと考えてきました。誰かの力に頼ることなく歩んで行きたいと。
エレーナ様に言うのも変ですが、これこそ神の与えたチャンスだと思うのです。」
エレーナは、訝しく思うと共に、この若者には何か光るものがある。そう感じて、とても興味深く思った。
今でこそ凡庸な青年。しかし女神の眼には、彼の姿に重なる巨大な宿命の輪郭が見えていたのかもしれないーー。
「良いであろう。能力とは転生時にのみ手に入れられるものではない。
今の自分に似合うものがないと考えるのなら、旅を通して見つけるのも良いであろう。
幸い、冒険者の酒場での名簿登録試験に合格できるだけの最低限の力は有りそうだ。
謙虚なる冒険者、清也に祝福あれ!其方は太平の世界にてじっくりと経験を積むが良い!其方の活躍楽しみにしておるぞ!」
エレーナが呪文の詠唱を始めると視界が回り始め
意識が深い渦の中に吸い込まれていった。
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気がつくと、そこは森の中だった。
起きあがろうとして少しよろめき、自分の体を見ると、鉄の甲冑を纏っていた。
右足の付け根には袋がついていて、左足の付け根には青銅の剣がしまわれている。
早速、袋の中を見てみると中には現在地と近辺の地図が一枚。手紙が一枚。
金貨が4枚。銀貨が9枚。銅貨が10枚が入っていた。
手紙には、
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
冒険者たちへ
無事に転生が済んだようで何よりだ。
能力を使わずとも、もしくは使えなくても十分に名簿登録試験に合格できるような装備を渡してあるから安心して欲しい。
失敬、名簿登録試験について説明していなかったな。
君たちが送られた3つの世界はどの世界でも、冒険者の酒場(トラベラーズギルドとも呼ばれる)に登録することで旅のサポートを受けられる。
そのため、余程の理由がない限りは加入を奨めているのだが、その地を治める領主や国王の許可を得る必要がある。
その為の登録試験である。土地によって内容は異なるが、能力を持ってさえいれば、十分に突破が可能なはずだ。安心して欲しい。
能力が使えない場合は、少し厳しい戦いになるかも知れないが、突破さえできれば大きな成長を得られることだろう。
名簿に登録すれば仲間を募ることや、負傷時の治療費の一部負担、怪我などで動けなくなった際の救出、関門の特別許可証、クエストの受注など様々なことが可能となる。
重ね重ね言うが、絶対に加入してもらいたい。
硬貨についても説明しておこう。三つの世界共通で
金貨がファルゴ、銀貨がファルシ、銅貨がファルブだ。
ファルシ10枚でファルゴ一枚。
ファルブ10枚でファルシ一枚と覚えていて欲しい。
まずは近辺の村や町に向かって欲しい。全てはそこから始まる。冒険の順調な滑り出しを期待している。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
清也は”能力を使えない者”というのは自分のことだと理解し、エレーナからの激励に感動した。
清也は地図で一番近くいソントの町へ向かうことにした。どうやらギルドもそこにあるようだ。
うっそうと茂る森林の中で、一人の青年の冒険は始まった。
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2時間が経ち、日が暮れてきた。
清也はもちろん野宿などしたことはないし、そもそも甲冑を着て2時間も歩いたことなどあるわけない。疲れ果て、座り込むと腹も空いてきた。
仕方がないので一度仮眠を取ろうかとしていると、木々の隙間から煉瓦造りの家と煙突が見えた。
これは助かったと思い、早速ドアノブを叩いた。
次の瞬間、勢いよく扉が開き清也は家の中へと一瞬で引き込まれた。
「けけけけ、ギルドの野郎だぜ、けけけけ。大層な鎧と剣じゃねぇか、え?ふへへへ」
下品な笑いをあげる、髭を生やした男は短剣を突き付けながら清也の鎧を脱がし、剣を抜き去り、袋に手を伸ばした。
登校も下校も習い事も旅行も、全てSPと共に行ってきた清也は今、自分に起こっていることが理解できなかった。
「おお!5ファルゴか!なかなか持ってるじゃねぇか」
自分がいわゆる”カツアゲ”に合っていて、相手は空き家を寝蔵にしていた山賊だった。
そうと気付いたのは、全財産がシャツとズボン、パンツ、それに地図と手紙へと成り果ててからであり、気付いたら男はいなくなっていた。
自分の今の状況が理解できた清也。当然、大慌てである。
(え、ちょっと待って!?何も残って無いよ!?)
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