『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

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序章 登録試験編

EP4 ギルド

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 生来、あまり緊張をしない性格のうえに、おそらく定員割れを起こしていたのだろう。面接は2分と経たず終わった。

 早速、配膳になったのだが、予想以上の激務である。
 テレビでしか見たことのないような、両手と頭に皿を乗せる。そんな芸当をやってのける人もいたが、両手持ちでも十分に腕が疲れてしまう。
 
 ただ、鎧を着ていた数時間で分かったが、圧倒的に体力が不足している。
 やはり、生まれてからずっとこの世界で暮らしてきた(これが普通なのだが、)者の方が体格が良く、元いた世界ではボディビルダー大会に出る様な姿の男を、今日だけで30人は見た。

 職業柄なのかも知れないが、やはり彼らのような男がいる世界でも脅威となり得る魔王を倒すならまだまだ力が足りない。そう実感できただけでもここで働くことに意味はあるだろう。
 
 そして、一つ重大な情報がわかった。
 これはある客の言葉なのだがーー。

「異世界転生だぁ?俺はお前のような、いけすかない奴が大嫌いなんだよ!
 他のとこ当たりな!最も、転生者なんてパーティに入れたがる奴はこの酒場にはいないだろうがな!」

 これだけなら、この男の偏見にも思えるのだが、どうやら彼ほど激しく拒絶する者こそいないが、異世界転生者をパーティに入れようとする者もいないようだ。
 もし、パーティに入れてもらうとしても、転生者であることは隠した方が良いと悟った。

 また、ここはギルドと呼ばれはするが、一般開放の酒場なので一般人の間の噂や、商売の状況、近辺の治安、果ては王の評判など、ありとあらゆる情報が入ってくる。

 あわよくば儲け話を拾おうと、聞き耳を立てながら仕事をしていると次第に慣れ、体力も幾分かついたと実感できるようになった。

 1ヶ月働いて時給7ファルブで1日10時間。
 それを30日続けたので、300回×7で2100ファルブ。
 要するに21ファルゴを手に入れた。

 家賃と食費として6ファルゴを店主に支払い、税金として2ファルゴ徴収され、13ファルゴが手元に残った。

 日本円にして13万円ほど、重労働に見合っているかと聞かれればそうでないが、生まれて初めて自分の力で稼いだ金だった。

「お金ってこんなに重かったんだな。」

 握り締めた拳に加わる重力を感じて、余計に感慨深くなった。

~~~~~~~~~~~

 何はともあれこれで甲冑と剣を買い直すことができると思い、鍛冶屋へ向かった。

 しかし、話は簡単に行かなかったーー。

「うーん・・・鎧だけで最低でも10ファルゴはかかるね。
 剣が欲しいなら、それこそ15ファルゴはかかるんだけど・・・。」

 鍛冶屋の店主は途端に歯切れが悪くなった。どうやら、値段以外の問題があるようだ。

「何かあったんですか?」

「実は、剣の元となる原石の採掘所が、魔物の襲撃で占拠されちまったんだ。幸い死人は出てないのだがな。
 鉄鉱石はあるから鎧は作れるんだが、この辺の魔物は鉄製の剣じゃ余程の使い手じゃないとんだよ。
 ギルドに討伐を願おうにもクエスト依頼の元手となる金がないし・・・。
 本当に商売あがったりだよ。まったく・・・。」

 この状況をうまく利用できないか、交渉の天才と言われた父ならどうするかを清也は必死に考えた。
 そしてすぐに、現状で最も合理的な契約を思いついた。

「名簿に載っているわけではありませんが、僕も冒険者の端くれです!僕が魔物を追い払ってきましょう!そうしたら、僕に剣を作ってください!」

「おぉ!威勢がいいなぁ!気に入ったぞ!ほれ、こいつを持ってけ!」

 店主はそう言うと、小さいが作り込まれている頑丈そうな盾と小さな本を投げ渡した。
 
 「取引成立だ!もし、生きて原石を持って帰ってきたら、お前に歴代最高傑作の剣を作ってやる!」

 盾と鎧、そしてを手に入れた清也は次に、どうやってこの装備で採掘場を取り戻すのかを考え始めた。

 そして、すぐさま単純な結論に行き着くーー。

「ゴリ押し以外にないな。」

 そう思い立ち、作戦に必要なを求めて、再びギルドに駆けて行った。
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