139 / 251
第五章 氷狼神眼流編
EP125 冥土 <キャラ立ち絵あり>
しおりを挟む
(ここは・・・どこ・・・?)
清也が目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。
視界に映る物全てに白い靄がかかっており、自分の身に掛かる重力も小さくなったように感じる。
(僕は・・・死んだのか・・・?なら、ここは天国?・・・いや、人殺しは地獄かな・・・。)
周囲を見渡しても、何も見当たらない。不安になった清也は必死に地平線を見渡すが、それでも何も見えない。
「お~い!誰かいないのかぁ~!」
立ち込める霧と、空間を包む静寂を引き裂くように大声で叫ぶ。
すると、放たれた吐息の先に霧が集中し始め、人の形を作った。
それは、小さな少年だった。おそらく8歳にも満たない幼さだ。
「君!此処がどこか知らないか?」
清也は咄嗟に少年の前へ出て、目線を合わせるために座り込む。しかし、少年へ伸ばした清也の手は、見事にすり抜けてしまった。
そして、清也と重なった時点で、少年は立ち止った。
「お、おい!待ってくれ!どこに行くんだ!」
清也の手が、少年を引き留めるように膝元へ伸びる。しかし少年は、何事も無いように清也を無視したままだ。
「ママ!ごはんかってった!」
少年は突如として言葉足らずな大声を上げた。あどけない顔に、達成感に満ちた笑顔を浮かべている。
「よく出来ました♪偉いわ、私の坊や・・・♡」
清也の背後で、優しい女性の声がする。清也はその瞬間、崩れ落ちそうなほどの衝撃を受けた。
「嘘だ・・・!そんな・・・そんなはずない・・・!そんなはず無いんだ・・・!そんな事・・・ある訳が無い!!!あるはず無いんだっ!!!」
柄に無く大声を上げ取り乱す清也。後ろに振り向く勇気さえ彼には湧かない。
ここが冥土なら、”それ”が現れるのは当然のはず。しかしそれでも、背後に立った亡霊には懐かしくも恐ろしい感覚がある。
「おいで、”清也”・・・♡」
予想した通りの言葉に、思わず振り返りそうになる。しかし尚、清也には勇気が湧かない。
「ママ!」
"せいや"は勢いよく走り込んで"清也"の体を透過し、その先にいる彼の母親の胸に飛び込む。
(振り向いちゃダメだ・・・!振り向いたら・・・呼ばれてしまう!あの世に・・・持ってかれる・・・!)
間違いなく、これは死者の呼び声だ。振り向いてはいけないと、清也の第六感がささやいている。
だが見たい。振り向きたい。今見なければ、もう二度と再会出来ない”かも知れない。”
そして、その欲求に勝てなかったーー。
「僕はもう死んだんだ・・・。みんな・・・ごめん・・・!」
旅立ちの決意をした清也は仲間たちに謝罪をしながら、ゆっくりと振り返った。
「よく頑張ったわね、清也。」
「かあさん・・・!」
暖かな微笑みを浮かべる女性が、清也の事を優しく褒める。しかし、その視線の先にいるのはーー。
「よしよし、お夕食は何にしようか?」
「母さん!?僕だよ!清也だ!僕が本物なんだよ!」
仲睦まじい親子の姿と、それに割り込もうとする社会人。この光景は、清也の精神がいかに未熟かを物語っている。
(見えて・・・無いのか・・・?まぁ・・・母さんをもう一度見れただけでも、良いかな・・・。)
あまりにも無反応な二人の姿に、遂に心が折れた清也は落ち着きを取り戻した。
(母さんって・・・こんなに優しい声だったんだ・・・。)
第三者の視点から見ている彼に、幼い頃は分からなかった母親の愛情が染み入っていく。
感動と満足によって心が洗われ、自分の精神も周囲に漂う霧の中へ溶け込んでいきそうになる。
だが、平穏に満たされた清也の心は、一瞬にして現実に破壊されたーー。
「あら?ケチャップが無いわね?」
刹那、彼の脳内に”人生最悪の記憶”が流れ込んで来た。
「ううううううわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
清也はその場で、この世の物とは思えない叫びをあげた。それだけに留まらず、地面に手を着き嘔吐してしまう。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ごぼっ・・・!」
顔を上げて尚、込み上げて来る吐き気は止まらない。目前で笑う母の姿を見るたびに、心臓が裏返りそうになる。
しかし、そんな清也の様子をよそに、親子の会話は続く。
「これだと、オムライスは駄目かしら・・・。」
「やだぁっ!おむらいすがいいー!!」
「うがぁぁぁっっっっ!!!!だまれぇぇぇぇっっっっ!!!!!!!!」
駄々をこねる少年の元へ、清也は怒号を上げながら走り寄っていく。
口の中に広がる苦い味を噛みしめながら、拳を少年に向けて放つ。
「だまれ!だまれ!だまれ!だまれぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!!!!!」
激昂する清也の手には、いつの間にか剣が握られていた。少年を斬り祓うように剣を振るい、暴れ続ける。
しかし無情にも、彼の祈りは届かなかったーー。
「分かったわ、ケチャップを買ってくるわね♪」
「行くなっ!行かないでくれ母さんっ!!!」
母親に伸ばした腕は、現実を変えるには細すぎた。
無邪気に笑う少年はまだ知らない、これが現世を生きる母親を拝める、最後の瞬間だという事をーー。
清也が目を覚ますと、そこは不思議な空間だった。
視界に映る物全てに白い靄がかかっており、自分の身に掛かる重力も小さくなったように感じる。
(僕は・・・死んだのか・・・?なら、ここは天国?・・・いや、人殺しは地獄かな・・・。)
周囲を見渡しても、何も見当たらない。不安になった清也は必死に地平線を見渡すが、それでも何も見えない。
「お~い!誰かいないのかぁ~!」
立ち込める霧と、空間を包む静寂を引き裂くように大声で叫ぶ。
すると、放たれた吐息の先に霧が集中し始め、人の形を作った。
それは、小さな少年だった。おそらく8歳にも満たない幼さだ。
「君!此処がどこか知らないか?」
清也は咄嗟に少年の前へ出て、目線を合わせるために座り込む。しかし、少年へ伸ばした清也の手は、見事にすり抜けてしまった。
そして、清也と重なった時点で、少年は立ち止った。
「お、おい!待ってくれ!どこに行くんだ!」
清也の手が、少年を引き留めるように膝元へ伸びる。しかし少年は、何事も無いように清也を無視したままだ。
「ママ!ごはんかってった!」
少年は突如として言葉足らずな大声を上げた。あどけない顔に、達成感に満ちた笑顔を浮かべている。
「よく出来ました♪偉いわ、私の坊や・・・♡」
清也の背後で、優しい女性の声がする。清也はその瞬間、崩れ落ちそうなほどの衝撃を受けた。
「嘘だ・・・!そんな・・・そんなはずない・・・!そんなはず無いんだ・・・!そんな事・・・ある訳が無い!!!あるはず無いんだっ!!!」
柄に無く大声を上げ取り乱す清也。後ろに振り向く勇気さえ彼には湧かない。
ここが冥土なら、”それ”が現れるのは当然のはず。しかしそれでも、背後に立った亡霊には懐かしくも恐ろしい感覚がある。
「おいで、”清也”・・・♡」
予想した通りの言葉に、思わず振り返りそうになる。しかし尚、清也には勇気が湧かない。
「ママ!」
"せいや"は勢いよく走り込んで"清也"の体を透過し、その先にいる彼の母親の胸に飛び込む。
(振り向いちゃダメだ・・・!振り向いたら・・・呼ばれてしまう!あの世に・・・持ってかれる・・・!)
間違いなく、これは死者の呼び声だ。振り向いてはいけないと、清也の第六感がささやいている。
だが見たい。振り向きたい。今見なければ、もう二度と再会出来ない”かも知れない。”
そして、その欲求に勝てなかったーー。
「僕はもう死んだんだ・・・。みんな・・・ごめん・・・!」
旅立ちの決意をした清也は仲間たちに謝罪をしながら、ゆっくりと振り返った。
「よく頑張ったわね、清也。」
「かあさん・・・!」
暖かな微笑みを浮かべる女性が、清也の事を優しく褒める。しかし、その視線の先にいるのはーー。
「よしよし、お夕食は何にしようか?」
「母さん!?僕だよ!清也だ!僕が本物なんだよ!」
仲睦まじい親子の姿と、それに割り込もうとする社会人。この光景は、清也の精神がいかに未熟かを物語っている。
(見えて・・・無いのか・・・?まぁ・・・母さんをもう一度見れただけでも、良いかな・・・。)
あまりにも無反応な二人の姿に、遂に心が折れた清也は落ち着きを取り戻した。
(母さんって・・・こんなに優しい声だったんだ・・・。)
第三者の視点から見ている彼に、幼い頃は分からなかった母親の愛情が染み入っていく。
感動と満足によって心が洗われ、自分の精神も周囲に漂う霧の中へ溶け込んでいきそうになる。
だが、平穏に満たされた清也の心は、一瞬にして現実に破壊されたーー。
「あら?ケチャップが無いわね?」
刹那、彼の脳内に”人生最悪の記憶”が流れ込んで来た。
「ううううううわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!」
清也はその場で、この世の物とは思えない叫びをあげた。それだけに留まらず、地面に手を着き嘔吐してしまう。
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ごぼっ・・・!」
顔を上げて尚、込み上げて来る吐き気は止まらない。目前で笑う母の姿を見るたびに、心臓が裏返りそうになる。
しかし、そんな清也の様子をよそに、親子の会話は続く。
「これだと、オムライスは駄目かしら・・・。」
「やだぁっ!おむらいすがいいー!!」
「うがぁぁぁっっっっ!!!!だまれぇぇぇぇっっっっ!!!!!!!!」
駄々をこねる少年の元へ、清也は怒号を上げながら走り寄っていく。
口の中に広がる苦い味を噛みしめながら、拳を少年に向けて放つ。
「だまれ!だまれ!だまれ!だまれぇぇぇぇっっっっっっっ!!!!!!!!」
激昂する清也の手には、いつの間にか剣が握られていた。少年を斬り祓うように剣を振るい、暴れ続ける。
しかし無情にも、彼の祈りは届かなかったーー。
「分かったわ、ケチャップを買ってくるわね♪」
「行くなっ!行かないでくれ母さんっ!!!」
母親に伸ばした腕は、現実を変えるには細すぎた。
無邪気に笑う少年はまだ知らない、これが現世を生きる母親を拝める、最後の瞬間だという事をーー。
1
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】長男は悪役で次男はヒーローで、私はへっぽこ姫だけど死亡フラグは折って頑張ります!
くま
ファンタジー
2022年4月書籍化いたしました!
イラストレータはれんたさん。とても可愛いらしく仕上げて貰えて感謝感激です(*≧∀≦*)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
池に溺れてしまったこの国のお姫様、エメラルド。
あれ?ここって前世で読んだ小説の世界!?
長男の王子は悪役!?次男の王子はヒーロー!?
二人共あの小説のキャラクターじゃん!
そして私は……誰だ!!?え?すぐ死ぬキャラ!?何それ!兄様達はチート過ぎるくらい魔力が強いのに、私はなんてこった!!
へっぽこじゃん!?!
しかも家族仲、兄弟仲が……悪いよ!?
悪役だろうが、ヒーローだろうがみんな仲良くが一番!そして私はへっぽこでも生き抜いてみせる!!
とあるへっぽこ姫が家族と仲良くなる作戦を頑張りつつ、みんなに溺愛されまくるお話です。
※基本家族愛中心です。主人公も幼い年齢からスタートなので、恋愛編はまだ先かなと。
それでもよろしければエメラルド達の成長を温かく見守ってください!
※途中なんか残酷シーンあるあるかもなので、、、苦手でしたらごめんなさい
※不定期更新なります!
現在キャラクター達のイメージ図を描いてます。随時更新するようにします。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
