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第三章 シャノン大海戦編
EP65 神童
しおりを挟む「魔能の継承を始める前に、魔法のレベルについて私から教えさせてもらいます!!!」
少女は広場に戻ってくると集まった魔子、すなわち漁師たちに元気よく話しかけた。
その姿はなんとなく、ヒーローショーが始まる前の司会者にも通ずるものがある。
「魔能には系統があって、それぞれにレベルの違う6種類の魔法があります!」
少女はただ話しているだけなのに、シンは顔すら見えない彼女に向かって鼻の下を伸ばしている。
「私は雷撃を主系統として使っているのですが、
レベルが低い順からエレキ、プラズマ、ライトニング、マスターエレキ、マスタープラズマ、マスターライトニング・・・という風に強化されて行きます!もちろん私は全部使えますよ!
命名の方式は基本の3魔法に、マスターをつけたのが上位魔法です!
上位魔法が使える人はマスターウィザード(ウィッチ)って呼ばれます!」
少女は少し誇らしげに、胸をたたいて見せた。
シンは彼女にデレデレなので可愛いとしか思わなかったが、花はその様子に含まれた演技を女の勘で感じ取った。
「凄いじゃないか!」
「いよっ!マスターウィッチ!」
「才色兼備だ~!!」
漁師達も、シンと同様に少女にデレデレである。
~~~~~~~~~~
ある程度、漁師たちの興奮が収まると、少女は咳ばらいをして話を進めることにした。
「じゃあ、私があなた方の適正を見て差し上げますね!私の目と視線を合わせください!」
少女のフードの下でこれまで影に隠されてきた眼が光り、見え始めた。
美しい純白の瞳は、その輝きで少女の素顔を部分的に照らしている。
(え?あれ?ちょっと待て!思ってた10倍は可愛くね?)
シンは正直、炎天下の港町でフードで顔を覆うのは、顔立ちに自信が無いからだと思っていた。
しかし、全くそんな事は無かった。
自らの瞳に照らされた少女の素顔は、部分的とは言え、花に匹敵するほどの美少女だった。
(日焼け止めだったか~俺も精進が足りなかったな・・・。)
シンはもっと、慎重にアタックしていれば良かったと後悔し始めた。
「さあ、目を合わせてください!」
少女が催促しなくとも、その場にいたほぼ全員が既に彼女の目に釘付けだった。
少女は一人一人に指をさしながら丁寧に系統を述べていく。
「水流、水流、空気、水流、冷却、火炎?此処の生まれじゃないのね?」
少女は優しく問いかけた。
「俺は火山地方の出身なんだ。捨て子で・・・」
漁師は急に暗い雰囲気なった。
「あっ・・・い、いい事あるわよ!海の近くで火炎は珍しいじゃない!
冷却、水流、空気、水流、冷却・・・。」
少女は暗い雰囲気になった漁師を雑に励ますと、魔能適性の査定を続けた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「・・・冷却、水流・・・あなたは大地です・・・!」
少女は明らかに不機嫌な様子で、最後に並んだシンの魔能を査定し終えた。
査定結果としては火炎1人、水流20人、冷却8人、空気6人、自然3人、宇宙2人だった。
大地と雷撃は皆、ほとんど適性が無かった。
「魔法少女さん・・あの、私は?」
花は遠慮がちに尋ねた。
「花さ・・・んは自然ですね!とても高い適性をお持ちです!
ただ、杖と親和性が高い割に、杖自体の力が弱いのが難点ですね・・・。」
少女は何故か、”さ”と”ん”に間を置いた。
「そうなの・・・?この杖、気にってるんだけどな・・・。」
花は少し寂しそうに、手に持った不格好な木製の杖を眺めた。
「これで査定は終わりです。早速、魔能を継承しましょうか。」
そう言って、手を振りかざしたとき漁師たちの後ろから甲高い声が聞こえた。
「ぼ、僕は!?お姉ちゃん、僕は見てくれないの!?」
振り向くとサムが手を上げ、背伸びをして必死に訴えている。
「お前は海竜と戦わないだろ?」
シンは当然のような口調で聞き返したが、サムは不服そうだ。
「戦う~!僕もかいりゅーと戦う~!!」
サムは地団駄を踏んで叫んでいる。
「坊やはまだ小さいから無理だと思うわよ・・・。まあ、将来の事を考えてみてあげましょうか・・・。」
少女はそう言うと、瞳を再び純白に輝かせた。
「坊やの魔能係数は・・・・・・・・・あれ?・・・間違いよね・・・?」
少女はそう言うと、頭を左右に少し振った。
後半の言葉は先ほどとは打って変わり、非常に大人びた声だ。
男たちは聞き間違いだと思ったが、花はそれが少女の地声であると見抜いた。
「・・・・・・えっ!?オーバー90が平均・・・!?嘘でしょ・・・大地がオーバー500・・・。まさか、この子が・・・!」
少女は低い声でぶつくさと呟くと、手先から七色の光線を空に向けて発射した。
空中で炸裂した光線は、漁師たちのもとへ降り注ぐ。
そして光を浴びた漁師たちは、それぞれ青や赤などのオーラに包まれた。
しかし、光はサムには注がれなかった。
その代わり少女はサムの頭を撫でて、魔能を直接流し込んだ――。
「やっと見つけたわ・・・。まさかこんな子供だとは思ってなかったけど・・・。
海竜との戦いが終わったら迎えに来ますからね。精進するのですよ。」
少女は唖然としているサムをその場に残すと、高らかに叫んだ。
<<<流れ裂く雷角竜の光>>>
直後、少女に巨大な光の柱が降り注ぎ、彼女は姿を消した。
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