『無頼勇者の奮闘記』 ―親の七光りと蔑まれた青年、異世界転生で戦才覚醒。チート不要で成り上がる―

八雲水経・陰

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第三章 シャノン大海戦編

EP66 夢幻 <キャラ立ち絵あり>

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 稲妻と共にミナトが消えると、漁師たちはすぐに自分の体に起こった変化に気付かされた。

「うおお!!か、体が熱い!!」

 そう言った捨て子の漁師は、手先から赤い閃光をほとばしらせた。

「な、なんか寒い・・・。」
「だ、だよなあ・・・いや、そうでもないぞ?」
「手先だけが寒いけど・・・うおっ!?」

 寒がっていた漁師たちは、手先から巨大な雪の結晶を生み出した。

「な、なんかベトベトするな・・・。」
「だよなあ、俺も・・・」
「腕が引っ張られる!」

 漁師の一人は突然、水の枯れた井戸へと吸い寄せられるように歩いていくと、手先から水を発射して空の桶を満たした。

「すげえ!!これが魔法なのか!!!だったら俺も!!!」

 シンはそう言うと地面に向けて、意気揚々と腕を振り下ろした。

「地割れ!!!」

 シンは興奮したように叫んだ。

 しかし、何も起こらない――。

「あれ?あっ、あれ?」

 シンは繰り返し腕を振ってみるが、何も起こらない。

「私とあなたは、どうやら魔能をもらえなかったようね・・・。」

 花は大きく落胆している。

「そりゃねえよ!!俺たちが戦えなくてどうすんだ!!」

 魔法を使える漁師たちの大将が、一切の魔法が使えないなど、笑い話もいいところだ。他の者に示しが付かない。

「別の方法を探すしかないわ・・・。」

 皆が新たに得た力に興奮し、自分が今できることの限界に挑む中で、シンと花の二人だけは暗く沈んでいた。



 いや、もう一人いた。
 力を試す男たちの狂乱の中でサムは倒れ込んで痙攣し、意識を失っていた。
 誰よりも冷静な目で周囲に気を配っていた花は、すぐにその事に気が付いた。

「見てシン!サムが倒れてる!!!」

 花は言い切るよりも先に、サムのもとへ駆け寄った。

「おい!どうしたんだ?しっかりしろ!
 お前ら、いい加減に遊ぶのをやめろ!訓練は後でさせるから道を開けろ!」

 シンが漁師たちに叫ぶと、男たちはすぐに道を開けた。

「う、うぅ~ん・・・。」

 花に抱き起されたサムは、呻く事が出来るぐらいには回復していたが、かなり衰弱している。

「ううぉっ・・・コイツめっちゃ熱高いぞ!」

 シンはサムの、服越しにも伝わって来る高熱に驚いた。
 そして、すぐにサムを負ぶさると、自分が泊まっていたホテルに向けて走り出した。

~~~~~~~~~~

 サムが次に目を開けると、美しい山の頂上に立っていた。
 崖の下にはどこまでも続く雲海が、波打ちながら広がっている。

「そんなに慌ててどうしたんだ、雷夜らいや。」

 サムは振り向くこともせずに、自分の背後に巨大な気配が広がるのを感じると、知らない単語が自分の口から飛び出すのを感じた。

「マスターに近況報告を・・・しようと思い・・・急いで来ました・・・。」

 その言葉を聞くと、サムの視点は大きく動き後ろを向いた。

「それほど息を切らせるという事は、かなり重要な報告だな?
 そんなに慌てなくていい。まずはフードを取ったらどうだ?」

 振り向いた視線の先には、白い服に身を包んだ少女が跪いていた。

「も、申し訳ありません!主君の前で顔を隠すなど・・・。」

「いや、普通に息苦しいだろう?」

「お心遣い、大変恐縮です・・・。」

 雷夜と呼ばれた少女は白いフードを脱いだ。



(これが・・・魔法少女さんの素顔!?)

 それを見たサムは興奮が抑えられなかった。

 雪のように白い肌に、高く整った鼻、大きすぎない口に、末端にいくほど白くなる金色の長い髪。
 キリっとした瞳は右目が瑠璃色で、左目は濃い緋色だった。
 両耳に緑色の耳飾りをしたその顔は、それだけでも道ゆく人が振り返る程の美貌だった。
 だが、それを決定的にする特徴があった。

(まさか・・・あれって耳!?)

 フードに隠されていて分からなかったが、その頭には左右に大きな白い耳が付いていた。

「して、近況報告は義務づけていなかったはずだが、一体何があったのだ?」

「見つけました。エレメントロード・・・・・・・・です。」

 落ち着きを取り戻した雷夜は、少しだけ機械的な口調で報告する。

「・・・そうか、遂に見つけたか。」

「ですが、実は・・・。」

 雷夜の口から、その先が発せられる事は無かった。
 しかし男の口からは、それを察した言葉が出てきた。

「まだ子供・・・。まぁいい、これで完全に閉じ込める・・・・・ことが可能になった。
 あとは奴を見つけ出して殺すだけだ。この宇宙から、絶対に奴を逃がさない。」

 サムの意識はそこで途切れた。

~~~~~~~~~~

「なんだよ、ただの疲れ熱か・・・驚かせやがって。」

 サムを担ぎ込んだシンは乱暴な、しかし安堵に満ちた声で独り言をつぶやいた。

「いいの?あの子の傍にいなくて・・・?」

 花は心配そうに問いかけたが、付き添いをしている余裕が自分たちに無いことは分かっている。

「俺たちも戦う手段を探さないと・・・でも今日は遅いな、早いとこ寝るぞ。」

 夕日が水平線の彼方に沈み切るのを確認したシンは立ち上がり、自分の部屋へと戻っていった。

~~~~~~~~~~

 翌朝、薄暗がりの中で目を覚ましたシンは、中々に悩ましい現状に対して思考を巡らせていた。

 戦うには魔法が要る。だが、彼にはそれが使えない。
 唯一使えるのは、黄金を生み出す能力。しかし、潮風に晒された程度で機能しなくなる力で、どうやって戦えというのか。これでは、水中での苦戦は必至である。

「そうだ・・・このホテルもそろそろ出ないとな・・・。金貨は生み出せないし。」

 シンはそう言って、深く落胆した。

(黄金を生み出せる能力が使えたらなぁ・・・。)

 シンは近くのコップに入った水に、金貨を生み出そうとしてみた。やはり彼の予想通り、金貨は出てこない。

(シャワーでも浴びるかあ・・・。)

 シンはシャワーを浴びるために、タオルを取って小部屋へと入っていく。

(水中では銛を使って戦うのか・・・。でも、魔法ほど使い勝手良くないよな・・・。
 水中だと水の抵抗も多いし・・・やっぱり仲間に援護してもらうか?いや、ダサすぎだろ。自分で立ち上げといて援護させるって・・・。)

 シンは悶々としながらシャワーを浴び、歯を磨くと、体をタオルで隅々まで拭いた。



 その時だった。何が理由かはわからないがもしかしたら、自在に伸縮するタオルの生地が、連想させたのかもしれない。

(黄金を操る能力・・・水の抵抗・・・遠距離攻撃・・・金は生み出せない・・・銛・・・そうか!そういう事か!!!!これなら行けるぞ!!!)

 シンは自分の持つ能力、その真の姿を思い出した――。
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