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しおりを挟む私の家はもともと辺境の男爵家だったけど私がまだ小さい頃に子爵家になり、それと同時に王都に住むようになった。でも、王都にいる子どもの中に私のような家柄の子どもはいなかった。私は"家柄の差"と言うだけで仲間外れにされた。
そんなところに、私の踏み台、つまり私でもいじめることができそうなやつがきた。そう、サラのこと。
サラは、侯爵家の娘なのにいつも他人の顔色を伺ってビクビクしてたからみんなに虐められてた。
私はサラの虐めの主犯になることで家柄の差を埋めることが出来た。
その時から私は常にサラよりも上の立場にいると思い込んだ。だから、サラが公爵様と結婚した時に私は公爵家に侍女として雇ってもらった。もう、昔みたいに孤立することはない。サラは私が何をしようと何も言えないから、形だけの公爵夫人。つまり、事実上は侍女長になった私がこの家で2番目の身分にいると思っていた。
それなのに……私は今さっきサラにぶたれた。いつもビクビクしてて目も合わせられないような人間に。
このままだと私の立場が危うくなる。なんとかしてサラに私の方が上だと認識させないといけない。
例えどんなことをしようとも……
***
「多分これで使用人の間で色々噂が立つだろうなぁ」
「でもこれで、他の使用人も今までのようにあからさまな嫌がらせはしなくなるでしょう」
「それにしても暇だ~。私がするべき仕事は全部執事長に取られちゃってるから」
普通貴族は主人が領地の管理、夫人が屋敷の管理、つまり、屋敷の予算管理や使用人の教育が仕事となってる。でも、ろくに仕事を出来なかったサラは予算管理の仕事は執事長に、使用人の教育はセリアにとられてしまっていた。
つまり、今の私は名前だけの公爵夫人というわけ。当分の間仕事を取り戻すことを目標にすることになりそう。
「でも、最優先はここでも楽しめる趣味を作らないと。このままじゃ暇すぎて死んじゃいそう。前世では暇な時に何やってたっけ?そもそも前世では暇な時間が少なかったから……ここでも出来そうな趣味と言えば……ある!バイオリン!この世界にもバイオリンくらいあるでしょ」
私は今日の夕食で公爵にバイオリンが欲しいとお願いすることにした。
***
そろそろ夕食の時間のはずだけどちゃんと呼びに来るかな?
私の記憶には使用人が夕食の時間より遅れて迎えに来ることがよくあった。そんな時は当然食堂で待っている公爵様に怒られていた。
「今朝の出来事が噂になってたら時間通りに来るはず、少なくともあの3人以外なら」
「奥様、夕食の時間です」
「今行くわ」
「今日はちゃんと呼びにきたのね」
私は少し意地悪を言ってみた。
「いつも通りですが?」
一応時間通りに呼びに来た。やっぱり、今朝のことが噂になってるのかな?
食堂に着いてしばらくすると公爵がやってきた。
「お待たせしました」
「いえ、さっき来たところですのでご心配なく」
いつも返事をしない私が明るく返事をしたのに全く気にしていない様子……まあ、冷血公爵って言われてるぐらいだからね。
公爵が夕食を食べ始めてから、私も食べ始める。
すごい気まずい。一緒に食事をしてるのに全く会話をしないなんて……側から見たらすごい不自然な雰囲気だと思う。話しかけちゃいけない雰囲気なんだけど?
「あの、公爵様」
「はい。何ですか?」
「実は欲しいものがあるのです!」
公爵様は少し驚いたようにして
「そうですか。何が欲しいのですか?」
と言った。
***
今日は、妻の様子がいつもと違う。例えば、私が食堂に入った時に、私の言葉に返事をしてくれた。あとは、今まで何もねだったことが無いのに、「欲しいものがある」と言ってきた。何が欲しいのだろうか?私有財産のための宝石やアクセサリーだろうか?何にせよ公爵家の財力で買えないものはないが。
……私は何を考えているのだろうか?妻のことなんてどうでもいいではないか。
***
「実は、バイオリンが欲しいのです」
「はい?」
「あっ、その……実はここに嫁ぐ前はよく時間の空いた時にバイオリンを嗜んでいたので、ここでもバイオリンが欲しくなったのです」
「いえ、そうではなくてバイオリンとは何ですか?」
「え……?」
もしかして、この世界にはバイオリンが無いの?
「すみません、今のは一旦忘れてください」
「そうですか、分かりました。それと、何か買いたいものがあるのでしたらわざわざ私の許可を取らなくていいです。公爵家の予算から自由に引いてもらって構いません。お金が足りなくなることなんてありませんから」
公爵様は、淡々と説明をした。
「あ、ありがとうございます。それと、明日街に出てもいいですか?」
「それも使用人に伝えてさえいれば、私の許可を取らなくていいです」
「分かりました」
ずいぶん冷たい人ね。
それより、この世界に本当にバイオリンが無いのか明日楽器屋にでも行って確認してみないと。
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