無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第三章 衣食住、たらふくご飯を食べます

26.王子、鳥肌が止まらない

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 僕達はアースドラゴンと一緒に沼に向かうことにした。手を叩きながらなら、アースドラゴンもドシドシ付いてくる。

 どこかで手拍子をしているから、だんだん楽しくなってくる。

『にくにく、にっくにくー♪』

「おいしい、お肉が食べたいなー!」

『にくにく、にっくにくー♪』

「たらふく肉が食べたいなー!」

『にくにく、にっくにくー♪』

『ニョロニョロにっくにくー♪』

 いやいや、最後のは絶対肉ではないだろう。ニョロニョロする肉は絶対虫のはずだ。

『アドル着いたぞ?』

 コボスケに叩かれて立ち止まる。気づいた時にはすぐに沼についた。

『これは何の行列ですか?』

 よくよく考えたら人間がフェンリルと白虎、そしてアースドラゴンを連れて歩くって最強だろう。

 むしろこのまま隣国に押しかけたら、普通に国を奪えそうな気がする。

「いや、アースドラゴン……モグラが肉を食べたいって言うからさ」

『肉ですか?』

 リザードマンは沼に潜ると、すぐにフォークにあのニョロニョロしたものを突き刺して戻ってきた。

 本当に足が何本あるのだろうか。

 時折ビクビクとする動きがさらに気持ち悪さを演出している。

『これをモグラに渡せば良いんですか?』

 リザードマンは少しずつモグラに持っていくが、目が見えないためやはり気づかないのだろう。

 僕は近づきたくないため、ウニョウニョの隣で手は叩きたくない。

「コボスケ代わりに手を叩いてもらってもいいか?」

『拙者得意分野……音がならないぞ?』

 コボスケは何度も叩くが、風を巻き起こすだけで音がしない。むしろ、風で音をかき消しているような気がする。

「ヒツジはどうだ?」

『ふん! 仕方ないな』

 ヒツジは大きく手を叩く。

――ムニュ!

 肉球が邪魔しているのか、音が何も鳴らない。何度も叩くがムニュムニュずっと鳴っている。

 あまりにも悔しかったのか、その場で崩れるように落ち込んでいる。

 リザードマンを見るが、爪が当たって手が叩けないようだ。

 そういえば、歌っている時も僕だけしか手を叩いていなかった。

 僕はゆっくりリザードマンの隣に立つ。

 間近で虫がウニョウニョと動いている。

「はぁ、やっぱり僕が……」

――パチン!

 手を叩くたびに音に反応して、虫がウニョウニョと動いている。どこから見ても気持ち悪い。

 足が素早くカサカサと動くところが本当に無理だ。

『アドル頑張るんだ!』

『ワシも応援しているぞ!』

 なぜかコボスケとヒツジが応援している。応援してくれるなら、自分で手を叩いて音が出せるようにして欲しい。

「うー、気持ち悪いよー」

 それでも連続で何度か手を叩くと、音に反応してアースドラゴンが走ってきた。

『肉の臭いがするぞ!』

 目の前まできたら嗅覚も反応するのだろう。アースドラゴンはやっと虫の存在に気づいた。

 大きな口を開けて虫を噛み砕く。

 プチプチと音が鳴っているところを聞くだけで鳥肌が止まらない。

『クゥー! 酸っぱくて美味いぞ!』

 どうやら虫は酸っぱいらしい。どれだけ酸っぱいものが食べたくても、あの虫は食べる気にもならない。

『私は少し疲れているので休みますね』

 確かに少し疲れているように見える。沼に帰ろうとするリザードマンに声をかけた。

「そういえば、魚さんってそんなに肌ってボロボロでしたか?」

 体格は以前より大きくなっているが、前よりも肌艶が悪くなっているような気がする。鱗はツヤツヤしていたのに、今は若干カサカサとしている。

『最近食生活を変えたからですかね?』

「食生活を変えた?」

『はい。今は魚しか食べていないんです』

 どうやらリザードマンは、好きなものしか食べない固食のようだ。
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