無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜

k-ing /きんぐ★商業5作品

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第四章 衣食住、服を着てオシャレをします

36.王子、乙女に会う

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 コボスケとヒツジとともに糸を探すために森の中に来た。今回は森の深部まで来ているのか、辺りが薄暗く日差しがあまり入って来ない。

「そういえばなんで糸を探すのを嫌がってたんだ?」

『拙者、あやつが苦手なんです』

『ワシも性格が合わない』

 どうやら苦手意識があったから、一緒に行くのに戸惑っていたらしい。今までそんなことを言ってこなかった奴らだからこそ、今回のやつは一段と変わり者が出てくるのかもしれない。

 ただ、この島には普通のやつがいないため、もう覚悟はできている。

「んあ!? なんだこれ」 

 突然顔に何かが付着した。手に取り、よく見てみると白い糸が顔に付いていた。

 やっと糸を見つけたことに喜んでいたが、コボスケとヒツジは少しずつ後退りしていく。

「そんなに嫌なやつ――」

『あらー、いらっしゃーい!』

 少ししゃがれた声が上から聞こえてきた。見上げるとそこには、とてつもなく大きな蜘蛛がいた。

 ウニョウニョする虫よりは見た目がよくて安心した。

 元々虫自体はあまり好きな方ではないが、これならまともに話せるだろう。

「あのー、この糸ってもらうことができますか?」

『いやん♡ そんなに私のことが欲しいのね』

 いや、欲しいのはあなたではなく蜘蛛ですが……。

「どちらかといえば糸が――」

『もう! 早く迎えに来てくれればよかったのに! 私の王・子・様!』

 うん、今回もキャラが濃いやつが出てきたようだ。

 一応王族だから王子様には変わりない。ただ、どこかこの言葉をそのまま受け取ってはいけない気がする。

 それにこの感じは、カンチーガイ伯爵家の令嬢に似ていた。

 昔、転んでいた令嬢に手を差し伸べてハンカチーフを渡したら、次の日には婚約をされたと令嬢達に自慢していた。

 それがカンチーガイ伯爵家の令嬢だ。

 次の日には、レオン兄さんとマリア姉さんに呼び出されて、三時間も問い詰められたことを思い出した。

 あの時は本当に婚約者にしたいのか、兄と令嬢どっちが好きなのかを聞かれた。

 特に令嬢には興味がなかったため、レオン兄さんとマリア姉さんの方が好きと言ったら、二人は泣いていたな。

 世継ぎのいらない僕には婚約者がいらないって考えなんだろう。

 そもそも友達もいないため、婚約者どころではない。

『ちょっと落ち込んでどうしたのよー』

「いやー、昔のことを思い出して」

 過去のことを忘れようと思っても思い出してしまう。初対面なのに蜘蛛を心配させてダメな王子様だな。

 僕は安心させるためににこりと微笑んだ。

『きゅん♡』

 どこからか変な声がしたと思ったら、糸がたくさん宙に舞っていた。

『アドル!』
『おい!』

 いつのまにか僕の体は糸で巻かれていく。

 すぐに気づいたコボスケとヒツジが近寄ろうとするが、糸が邪魔で近くに来れないようだ。

『あー、もうなんなのよ! この可愛い王子様は!』

「可愛いって誰のことですか?」

『無自覚王子様……あああん♡ 絶対私の理想の王子様ヨオオオオォォォ!』

 蜘蛛がさらに糸を出すと、僕はいつの間にか逃げられなくなったようだ。僕に巻くぐらいなら、そのまま糸として欲しい。

『じゃあ、王子様を誘拐するのは乙女オネエの役目よおおおおん』

 そう言ってグルグル巻きになった僕は蜘蛛に誘拐された。

 そういえば、乙女オネエって言葉聞いたことないな。
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