68 / 72
第七章 家庭訪問編
68.姫様、暴走する ※メアリー視点
しおりを挟む
私は今ある魔法を必死に作り上げようとしている。それは見た目を変える"幻影魔法"だ。
童話の中で魔法神が使ったとされるその魔法が、姿を変えて魔法神が街に遊びに行ったという話がある。
ひょっとしたら光属性か闇属性がその魔法に関わっているのではないかと私は思っている。
そもそも幻影魔法を作ろうとするには理由があった。
『アドル、拙者街に行ってみたい』
「いやいや、お前が行ったらみんな驚いて死ぬよ」
「はにゃ? コボルトぐらいどうも思わないぞ。アドルもメアリーも普通じゃないか」
私達は驚いたが、すでにアドル兄様が側にいたから問題はなかった。だが、何も知らない街の人が見たらその場で気絶するのは間違いない。
それに違う理由で幻影魔法を使いたいと言っているやつもいた。
『ワシもアドルのご家族に挨拶がしたい』
ヒツジが私達の父である王に挨拶がしたいと言い出したのだ。流石にそれは難しいため、まずは肖像画を送るのはどうかという話になった。
「いやー、流石に魔道具で肖像画は作れるけど、見た目がな……」
ただ、フェンリルや白虎達に囲まれているアドル兄様を見てパニックになるのは間違いない。
『メアリーちゃんできそう?』
「んー、あと少しなんだけど中々上手くいかないんだよね」
幻影魔法の構造として、光の錯覚によって別の人に見えないかと思ったのだ。
実際に闇属性を全身に覆うことで姿を消すことができる。これでアドル兄様の寝室によく忍び込んでいた。
あとはどうやって調整するかの段階だ。それにしてもチラチラとこっちを見るアーサー兄様の視線が気になって集中できない。
「アーサー兄様少しいいですか?」
私に呼ばれたのか少し嬉しそうな顔をして駆けつけた。それだけカクレコと話したかったのだろう。
「カクレコさん何かあったんですか?」
ほらほら、私が呼んだのにカクレコに聞いている。
『メアリーちゃんが困っているので、お兄さんも何かアドバイスないですか?』
「よかったら名前で呼んで頂けたら――」
『いえいえ、ボクなんかがそんなことできません』
カクレコはかなりの鈍感だからそんなアプローチじゃ気づかないだろう。そもそも男の娘なのは気にしないのだろうか。
いや、それよりもダンジョンの方が問題か。アーサー兄様はため息をついて私に寄ってきた。
「それで何が原因なんだ?」
「どうやって幻影を作り出すかがわからなくてね」
アーサーは何かを思いついたのか、トルンルンを取り出した。
「あー、この魔道具は鑑定の魔法が応用しているのは知っているだろ?」
鑑定は見たものを文字に表して、その本質を覗く魔法。その本質である覗くを魔道具に組み込んで、雷属性の魔石を使って紙に映し出して偶然できたのがトルンルンだ。
「鑑定のように本質を闇属性と合わせたらできるかもしれないってことですか?」
「ああ、考えとしてはできなくもないが、そもそもそんなに器用なことができる人はいないだろうな。だって、鑑定と闇属性魔法を同時に操作して操るんだからね」
同時にいくつもの魔法を操るなんて簡単なことだ。
「私を誰だと思っているの?」
「ははは、メアリーは魔法神の申し子だったな!」
私は闇属性魔法を村全体に伸ばして、鑑定魔法を使った。
あれ……?
思ったよりもコントロールがしにくい気がする。
「おいおい、メアリー止めろ! 闇属性魔法はただでさえコントロールができないと言われている魔法だぞ!」
そういえば、ついこの間闇属性魔法で失敗したばかりだ。
私は急いで魔法の発動を止める。だが、すでに遅かった。
様々なところで爆発音が鳴り響いていた。それは隣にいるカクレコも同じだった。
童話の中で魔法神が使ったとされるその魔法が、姿を変えて魔法神が街に遊びに行ったという話がある。
ひょっとしたら光属性か闇属性がその魔法に関わっているのではないかと私は思っている。
そもそも幻影魔法を作ろうとするには理由があった。
『アドル、拙者街に行ってみたい』
「いやいや、お前が行ったらみんな驚いて死ぬよ」
「はにゃ? コボルトぐらいどうも思わないぞ。アドルもメアリーも普通じゃないか」
私達は驚いたが、すでにアドル兄様が側にいたから問題はなかった。だが、何も知らない街の人が見たらその場で気絶するのは間違いない。
それに違う理由で幻影魔法を使いたいと言っているやつもいた。
『ワシもアドルのご家族に挨拶がしたい』
ヒツジが私達の父である王に挨拶がしたいと言い出したのだ。流石にそれは難しいため、まずは肖像画を送るのはどうかという話になった。
「いやー、流石に魔道具で肖像画は作れるけど、見た目がな……」
ただ、フェンリルや白虎達に囲まれているアドル兄様を見てパニックになるのは間違いない。
『メアリーちゃんできそう?』
「んー、あと少しなんだけど中々上手くいかないんだよね」
幻影魔法の構造として、光の錯覚によって別の人に見えないかと思ったのだ。
実際に闇属性を全身に覆うことで姿を消すことができる。これでアドル兄様の寝室によく忍び込んでいた。
あとはどうやって調整するかの段階だ。それにしてもチラチラとこっちを見るアーサー兄様の視線が気になって集中できない。
「アーサー兄様少しいいですか?」
私に呼ばれたのか少し嬉しそうな顔をして駆けつけた。それだけカクレコと話したかったのだろう。
「カクレコさん何かあったんですか?」
ほらほら、私が呼んだのにカクレコに聞いている。
『メアリーちゃんが困っているので、お兄さんも何かアドバイスないですか?』
「よかったら名前で呼んで頂けたら――」
『いえいえ、ボクなんかがそんなことできません』
カクレコはかなりの鈍感だからそんなアプローチじゃ気づかないだろう。そもそも男の娘なのは気にしないのだろうか。
いや、それよりもダンジョンの方が問題か。アーサー兄様はため息をついて私に寄ってきた。
「それで何が原因なんだ?」
「どうやって幻影を作り出すかがわからなくてね」
アーサーは何かを思いついたのか、トルンルンを取り出した。
「あー、この魔道具は鑑定の魔法が応用しているのは知っているだろ?」
鑑定は見たものを文字に表して、その本質を覗く魔法。その本質である覗くを魔道具に組み込んで、雷属性の魔石を使って紙に映し出して偶然できたのがトルンルンだ。
「鑑定のように本質を闇属性と合わせたらできるかもしれないってことですか?」
「ああ、考えとしてはできなくもないが、そもそもそんなに器用なことができる人はいないだろうな。だって、鑑定と闇属性魔法を同時に操作して操るんだからね」
同時にいくつもの魔法を操るなんて簡単なことだ。
「私を誰だと思っているの?」
「ははは、メアリーは魔法神の申し子だったな!」
私は闇属性魔法を村全体に伸ばして、鑑定魔法を使った。
あれ……?
思ったよりもコントロールがしにくい気がする。
「おいおい、メアリー止めろ! 闇属性魔法はただでさえコントロールができないと言われている魔法だぞ!」
そういえば、ついこの間闇属性魔法で失敗したばかりだ。
私は急いで魔法の発動を止める。だが、すでに遅かった。
様々なところで爆発音が鳴り響いていた。それは隣にいるカクレコも同じだった。
3
あなたにおすすめの小説
聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~
夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力!
絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。
最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り!
追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?
【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-
いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、
見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。
そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。
泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。
やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。
臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。
ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。
彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。
けれど正人は誓う。
――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。
――ここは、家族の居場所だ。
癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、
命を守り、日々を紡ぎ、
“人と魔物が共に生きる未来”を探していく。
◇
🐉 癒やしと涙と、もふもふと。
――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。
――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
ギルド受付嬢は今日も見送る~平凡な私がのんびりと暮らす街にやってきた、少し不思議な魔術師との日常~
弥生紗和
ファンタジー
【完結】私はギルド受付嬢のエルナ。魔物を倒す「討伐者」に依頼を紹介し、彼らを見送る毎日だ。最近ギルドにやってきたアレイスさんという魔術師は、綺麗な顔をした素敵な男性でとても優しい。平凡で代わり映えのしない毎日が、彼のおかげでとても楽しい。でもアレイスさんには何か秘密がありそうだ。
一方のアレイスは、真っすぐで優しいエルナに次第に重い感情を抱き始める――
恋愛はゆっくりと進展しつつ、アレイスの激重愛がチラチラと。大きな事件やバトルは起こりません。こんな街で暮らしたい、と思えるような素敵な街「ミルデン」の日常と、小さな事件を描きます。
大人女性向けの異世界スローライフをお楽しみください。
西洋風異世界ですが、実際のヨーロッパとは異なります。魔法が当たり前にある世界です。食べ物とかファッションとか、かなり自由に書いてます。あくまで「こんな世界があったらいいな」ということで、ご容赦ください。
※サブタイトルで「魔術師アレイス~」となっているエピソードは、アレイス側から見たお話となります。
この作品は小説家になろう、カクヨムでも公開しています。
元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」
***
魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。
王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。
しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。
解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。
ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。
しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。
スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。
何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……?
「今日は野菜の苗植えをします」
「おー!」
「めぇー!!」
友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。
そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。
子育て成長、お仕事ストーリー。
ここに爆誕!
聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。
そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来?
エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる