42 / 281
第一章 外れスキル

42.トライン街

しおりを挟む
 エッセン町とトライン街は直線距離だと遠くはないが山が邪魔をしているため、森の近くを遠回りして行く必要がある。

 俺は森の中で川を目印に生活をしていたが、森を縁から縁へ抜けるのには歩いて五日程度はかかる。

 しかし馬車を使うことで半分の二日で着く予定だ。森の側を移動するため動物や魔物が出てくるのが問題になってくる。

 道中は特に何もなく無事にトライン街に着き、今は門の前で並んでいる。

「大丈夫か?」

 トライン街の石壁を見ると体が震え出していた。

「大丈夫……です」

 必死に手を握りこむと次は俺達の番だった。

「Bランク冒険者のマルクスとEランク冒険者のケントです」

 マルクスがステータスボードを門番に向け提示した。

「おい、小僧お前のは?」

「ケント大丈夫だ」

 マルクスは俺の肩を掴んだ。すると自然と震えは収まり、俺はステータスを提示した。

「ああ、マルクスとケントだな。トライン街にようこそ!」

 あれだけ震えていたのに実際は呆気なく終わり、問題なくトライン街の門を通った。

 まずはこれからの活動場となる宿を探すことが先だ。しかし宿に入るには問題があった。

「すまないね。うちは動物禁止だしその子は狼だろ? 危なくなくても周りからとやかく言う人いるからね」

「そんな物騒な動物を街に入れるな」
「トライン街を汚す気が!」
「病気を流行らす気かしら? 私らの宿に入れないで頂戴!」

 言い方はそれぞれであったが、狼のボスがいることで断る宿が多かった。

 そして、街全体がエッセン町と違い閉鎖的な街だ。

「マルクスさんすみません」

「いや、ケントが気にすることじゃねよ」

 それからも宿を探し出していると、いつのまにか人通りが少なく貧困地区についた。

 トライン街は主に四つに分けられており、一番大きな貴族地区、次に大きな商店地区、その次は生産および一般地区、最後に貧困地区となっている。

 貴族地区は主に男爵や子爵を中心に集まっている。その中でも領主のみ伯爵で絶対的な存在だ。

「ちょっとここから離れようか」

 マルクスは何かを警戒したのか向きを変えると振り向き様にフードを被った子供にぶつかった。

「痛っ!?」

「すみません」

「いえ、こちらこそすみません」

 子どもは用事があるのか走った。しかし、狼のボスは少年が怪しいと感じたのか走っていき押し倒していた。

「なんだこの狼! おいコラ!  やめろ!」

 今までそんなことを一度もしなかったボスが起こした行動だ。だからこそ何かあるんだと確信していた。

「ボスどうした?」

 ケントが詰め寄ると子供はもっと暴れてボスを押し退かそうとしている。

 そんな様子を見ていたマルクスは俺にポケットの中身を確認させた。そこには入っていたはずの財布がなくなっていた。

「あれ?」

「おい、お前金を盗んだな」

 すぐにマルクスは子ども上に馬乗りになった。

「チッ! 殺すなら早く殺せ! 俺らはいらない子だ!」

 子どもは暴れるのをやめその場で叫んでいた。

「なら殺してやろうか?」

 貧困地区ということもあり、財布を返すのであれば許すつもりだ。

「ひぃ!」

 子どもはマルクスの威圧に震えていた。

「ちょっとマルクスさんストップ!」

 それを止めたのはケントだった。

「おい、早く俺を殺せ。頼むから……殺してくれよ」

 子どもは手で目を擦っていると、被っていたフードが取れた。

 そこにはグレーと銀色を足して割ったような髪色に、ボスのような耳が付いていた。

 獣人を間近に見るのは初めてだった。そして彼は泣いていた。

「狼の獣人か」

「ボスひょっとして……」

 ボスは激しく尻尾を振ってお座りをしている。ただ自分と似た種族である、狼の獣人と遊びたかっただけであった。

「んで、どうするんだ?」

「えーっと、まず確認してみますね。君は財布を取ったんですか?」

「取ったよ。これでいいならはよ殺せ!」

 次々に質問をするがすぐに"殺せ"と発言していた。

 見た目も獣人のため少し大きいぐらいの少年が死を求めているのを不思議に感じた。

「君ってどこに住んでるの?」

「ここの奥で一人で暮らしている」

「僕達今日トライン街に来たばかりなんだけど、どこの宿でもボスがいるからって断られてるんだ。だからお金を渡すから泊めさせてくれない?」

 何かあるのではないかと思ったが、お金を盗むぐらいだからよっぽど貧乏だと予測した。お金を渡す条件で寝泊まりする場所を求めた。

「おい、盗みを働いたやつに流石にそれは……」

「君はなんで一人で住んでるの? 自分の家があるぐらいだから誰か家族はいたでしょ?」
 
「みんな殺されたんだ」

「誰に?」

「この街の領主にだよ。あいつらは俺から何もかも奪い取ったんだ」

 領主が住んでいるトライン街だが、あの領主であれば貧困地区をすぐに消そうとする。

 その貧困地区が残っているなら何かあるのだろう。

 時折炊き出しなどの支給はあるものの特に改善しようとする動きはないらしい。

「俺の家族をあいつは持っていっ――」

 獣人の少年は話している途中でそのまま力尽きて倒れてしまった。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...