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第一章 外れスキル

44.過ち

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 次の日、俺達は冒険者ギルドに来た。二人が冒険者だと知ったラルフは自身も誘われるがまま付いていった。

 トライン街の冒険者ギルドはエッセン町よりも大きく人が多いのが特徴的だ。

「おい、あいつ鉄槌のマルクスじゃねーか」

「おいおい、今頃落ちぶれ元Aランクがトライン街のギルドに何の用がなんだよ」

 マルクスはトライン街でも有名だったが、街の規模が大きいため、どこか当たりも強かった。

「マルクスさんって鉄槌のマルクスって言われてるんですね」

「Aランクの冒険者になれば、二つ名とかつくからな。んー、ケントだと打診器のケントか?」

「うげぇ!? さすがにダサイじゃないですか」

 打診器のケントと呼ばれているのを想像すると、打診器の使用頻度を減らそうかと思うほどだ。

 受け付けに並んでいると、どこか知っている人と似た人が受け付けをしていた。

「あっ、マルクスさんお久しぶりです。姉は元気にしてました?」

「姉?」

「ああ、スターチスは元気だぞ。相変わらずギルドマスターを管理していたわ」

「えっ、スターチスさんの妹さんですか?」

「えーっと、あなたがケントくんかしら? 姉からの手紙で話しは聞いているわよ! 私はプラナスよ」

 トライン街の受付嬢の中にはスターチスの妹であるプラナスが働いていた。スターチスよりも小柄で柔らかい雰囲気をしている。

「よろしくお願いします」

「こちらこそよろしくね! あとそちらの子は?」

 プラナスは隣にいたラルフについて聞いてきた。

「ああ、冒険者登録をしようと思ってな。ただ問題があるからプラナスの受付に来たんだ」

 ラルフは少し震えていた。事前にラルフと冒険者登録をする話でまとまっていたが、ここで自身が犯した犯罪行為がまとわりつくとは思わなかった。

「こいつ貧困地区の出身で今訳あって一緒に暮らしているんだ」

「貧困地区ですか……。大体はわかりました」

 プラナスは水晶玉を取り出した。それはケントもエッセン町に入る時にロニーが確認した犯罪歴を確認するものだった。

「ラルフくん一度ここに手をかざしてもらってもいいかしら?」

 ラルフは水晶玉に手をかざすと少しずつ色が変わり、赤に近い橙色となっていた。

「やっぱりか」

「マルクスさんやっぱりって?」

「ああ、ケントは知らなかったのか」

 この水晶玉は手をかざした者の犯罪行為を知ることができる魔法具となっている。

 犯罪歴が無ければ透明だが、軽微な犯罪から黄色、橙色、赤色、紫色、黒色となっている。

 赤色から犯罪奴隷として、奴隷商人に売られる仕組みとなっており、紫色からは性犯罪や殺人罪が対象となる。

 その中でラルフは赤に近い橙色のため、あと少しで犯罪奴隷として売られる可能性があった。

「でもまだ赤じゃなくてよかったってことね! ラルフくんは何の罪を犯したの?」

 ラルフは自身の生活のために盗みをするしかなかったことを伝えた。

「こういう貧困地区の子ども達こそ冒険者ギルドに登録させてあげたいけど、そもそも知識がないと冒険者ギルドの存在や所属する方法を知らないですからね」

 貧困地区の人達は代々貧困の人達が多かった。

 そのため知識がないことに奴隷のように扱われ、お金を稼ぐ方法すらも知らない人も多い。

「ごめんなさい。悪いことだとはわかってました」

「まぁ、この先大変だけどどうにかなるわ。 その反省した気持ちがあれば大丈夫よ」

「ほんとですか? 俺も冒険者になれますか?」

「一言で言えば今は無理ね。ただ、あなた次第では冒険者になれるわ」

「冒険者になれるなら……。お金を稼げるならなんでもします!」

「大変だと思うけど頑張りなさいね」

 プラナスはラルフが冒険者になるまでにやらなきゃいけない手順を説明した。

【冒険者になるまでの手順】
1.無償で人々の手伝いや依頼を行う。
2.犯罪を犯した場所や人に会い直接謝罪する。
3.水晶玉を透明にする。(1と2を繰り返す)

「水晶玉が透明になれば登録できるようになるわ。その後は他の仮登録者と同じだけど、透明にするのはそんなに簡単なことじゃないわ」

 例えば、依頼を受けた時に依頼先の人に身分証明のためにステータスを提示しないといけない。

 一般の仮冒険者であればランク表記だが、犯罪者に限ってはランクなし冒険者と表記されている。

 そのためランクなし=冒険者にもなれないということは、犯罪歴があると認識されている。

 そんな冒険者に依頼をするということは、自身の店や依頼主自体に何かしらの影響を与えることになる。

 それと引き換えにメリットとしては依頼料が掛からないが、商店などにしてはデメリットしか無い。

「それでも冒険者になるつもりはあるかしら?」

「……」

 思ったよりも厳しい世の中にラルフは答えることが出来なかった。今までの自分で出来る自信がなかった。

「ラルフは大丈夫だ!」

「ケント……」

「俺達ルームメイトだろ?」

「ルームメイト……」

「ルームメイトは?」

「家族」

「そうそう! 俺達はルームメイトであり、家族だ。ラルフが辛かったら助け合うのは当たり前だろ? 」

 そもそもラルフの環境自体がいけなかったのだ。変わるきっかけは今しかない。

「俺とケントがついてるぞ」

 俺達の言葉にラルフは次第に顔が上がり、しっかりとプラナスを見ていた。

「覚悟が出来たようね」

「家族のためにも俺は冒険者になります! 登録させてください!」

 ラルフはプラナスに頭を下げた。やっと冒険者になろうと一歩踏み出したのだった。
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