119 / 281
第一章 外れスキル

119.元冒険者

しおりを挟む
 今日は依頼を受けようと冒険者ギルドに来ている。

「こんにちは! 異世界病院への依頼って来てますか?」

「まだ来てないわよ」

「そうですか。では違う依頼を探してきます」

 まだ異世界病院への依頼はなく、今もコルトンの介護のみだ。
 
 依頼を見ていると一つ気になったものがあった。

――――――――――――――――――――

【F.歩く練習を付き合って欲しい】

募集人数:1人
報酬:銀貨3枚
内容:歩く練習に付き合って欲しい。
時間:日中であればいつでも

――――――――――――――――――――

 すごく理学療法士向けの依頼が目に入ったのだ。

「歩く練習を付き合って欲しい……」

「あー、坊主それはやめとけ!」

 ボソッと呟くと鎧を被った男性が俺に話しかけてきた。

「何かあるんですか?」

「そいつ元冒険者なんだけど依頼に失敗して歩けなくなったんだよ。今は義足を付けて何とか生活出来てるけど、同じ冒険者としては見てられないぐらいだぞ」
 
「そうなんですね。なら受けてみます」

 そこまで言われると本当に俺のためにある依頼のような気がした。

 どこか埃が被っている依頼書を取り外した。

「すみません、依頼受理をお願いします」

「依頼ですね! この依頼本当に受けますか?」

 さっきの冒険者同様になぜか受付嬢の態度がいつもと変わっていた。

「ダメなんですか?」

「私達としては受けて貰いたいのですが、新人冒険者が見るにはあまりオススメは出来ないのが正直なところですね」

 受付嬢が言うには冒険者としての終着点を見せることになるため、若手が受けてしまうと冒険者になるのをやめる可能性があると言っていた。

 実際に過去にこの依頼を受けて、若手冒険者が辞めてしまい他の職業についた人もいたそうだ。

 命がけの冒険者にとってはそれほど覚悟がいることなんだろう。

 実際に死亡率の方が高いため、俺も今まで生き残った冒険者を見たことがなかった。

「それでも良いですよ! こういう依頼を異世界病院でもやっていきたいですし」

「わかりました。絶対に冒険者を辞めるって言わないでくださいね」

 受付嬢は依頼を受理し、詳細の情報を受け取ると依頼主は孤児院の前に住んでいるようだ。





 俺は依頼主の家の前に立っていた。

 ウルがこの前言っていた人と依頼主は同一人物なんだろうか。本当に孤児院の前に住んでいたのだ。

「すみません!」

 俺は扉をノックするが、中からの反応はなくしばらく待っても返事はなかった。

 少し心配になり扉を開けるとそこには男性が倒れていた。

「大丈夫ですか?」

「ああ、疲れているだけだ。それでなんか俺に用か?」

 男性はほふく前進で玄関まで来たがそこで力尽きて倒れていたようだ。

「冒険者の依頼で来ました」

「冒険者の依頼……ああ、まだそんなのが残ってたのか。やめとけ」

 思ったよりも返ってきた反応は悪かったそれだけ依頼を受ける人はいなかったのか放置され続けていたんだろう。

「いやせっかく来たんでやりましょうよ。切断箇所は下腿なんですね。特に傷口ももう綺麗なので問題はなさそうですね」

「えっ?」

 俺は依頼主を気にせず切断箇所の状態を確認した。依頼を通して冒険者や街の人と触れ合って思ったのは、結構強引に攻めた方が関係が気付きやすいということだ。

 マルクスやキーランドもそれに当たる。

「義足はどこにあるんですか?」

「んあっ? 義足は向こうに――」

「失礼します」
 
 部屋に入っていくと壁に義足が立てかけられていた。

「埃が被ってるじゃん」

 誰も長いこと依頼を受けていないのが義足を見てもわかった。

 俺は服で埃を払うと義足を持って男性の元へ戻った。

「おじさん! 義足に埃か被ってるじゃないですかー! 大事なものだから綺麗にしておいてくださいよ」

「……誰がおじさんだ! 俺はこれでも三十二歳だ!」

「あっ……意外に若いんですね」

 まさかのまだまだ若い人だった。その年齢なら体力もすぐに戻ってくるだろう。

「本当に最近の冒険者は年上に配慮も出来ないんか!」

「義足を大事に出来ない人に言われたくないですよ!」

 俺の一言に男性も笑っていた。どうやら少しは落ち着いたのだろう。

「そういえば名前はなんて言うんだ?」

「ケントと言います。えーっと……」

「俺はフェーズだ! おじさんじゃないぞ」

 俺がおじさんと言う前にフェーズは名前を言った。

 よほどおじさんと言われたくないのであろう。

「フェーズさんよろしくお願いします」

「ああ、こっちこそ頼むわ」

 こうして俺は元冒険者フェーズとのリハビリが開始した。
しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...