207 / 281
第一章 外れスキル
207.戦闘前夜
しおりを挟む
俺が食事の準備をしようとするとすでに冒険者達は集まっていた。
「何で皆さんこんなに……」
「そりゃーみんな異世界食堂に通っているやつらだからな!」
異世界食堂に通っている冒険者達であれば俺がレシピを作っているのは当たり前に知っていた。
「ほらこっちは準備できたぞ」
「えっ? ハワードさんまで!?」
俺は事前に窯を作れるか冒険者ギルドのスタッフに話していたハワードが作っていたらしい。
一応この人隣国の王位継承権第一位の男のはずだが……。
俺もせっかくの屋外だから異世界食堂の新作メニューも含めて窯を使った料理に挑戦してみたかったのだ。
「じゃあ、みんな来てもらってもいい?」
今回は異世界食堂で働く料理スキル組は来ていないが、他の子ども達でもある程度作れそうなメニューを考えていた。
今回作るのは主食にピザ、メインにローストビーフ、スープはポトフ、デザートは焼きりんごの予定だ。
戦う前だからこそしっかりとした食事を準備する予定だ。
ピザ以外は基本的に放置していればできる仕組みだ。
「今からピザを作ってもらうけど少し見ててね」
俺は事前に作っておいた生地をおおよそ均等になる厚さまで手を使って伸ばした。
「伸ばしたらここにあるソースと野菜、チーズの順番で乗せていきます」
俺はトマトソースにチーズとトマトを並べ、上からバジルを乗せた。
食材自体は前世と特に問題はなく、チーズは若干ヨーグルトの水分を取り除いたようなものだが、イメージとしてはモッツアレラチーズに似ていた。
チーズも存在しているのに異世界では乳製品をあまり食べないことに驚きだ。
最近ではやっとパスタで浸透してきているぐらいだ。
「あとは釜の中に入れて焼けるのを待って完成です」
しばらく釜の前に待機していると、良い匂いが漂い冒険者達もソワソワとしてる。
「ケントくんそれまだ食べられないの?」
すぐに声をかけてきたのは、破滅のトラッセンのリチアだった。
彼女は焼く前のピザを食べようとしていたのだ。
「まだダメです!」
「えー!」
お預けされたリチアは露骨に落ち込んでいた。まだ焼けてもいないのにお腹を壊したいのだろうか。
「あっ、なら子ども達じゃ焼くのは危ないので手伝ってください。そしたら自分が食べたい分だけ作れますよね?」
「えっ、いいの!」
俺がリチアに提案すると、他の冒険者達がゾロゾロと名乗り出てきた。
「いや、それは俺がやる!」
「いやいや、そこは剣士の俺だろ!」
「剣士は関係ないですが……」
彼らも空腹のせいか、異世界食堂の新メニューに釣られてなのか、自ら食事の準備を手伝おうとしていた。
普段の冒険者であれば中々見られない姿に遠くで見ていたカタリーナも驚いている。
「せっかくなのでみんなで作ってはやく食べましょうか」
この際セルフサービスにすることで手が足りない部分を補うことにした。
「おう、そうだな」
「やっぱり剣士が必要なんだな!」
「いや、だから剣士は必要ないって……」
冒険者達は戦闘前夜にも関わらず、張り詰めた空気感もなく普段通りに過ごすことができた。
♢
食事の準備が終わり俺はなぜかハワードと食べていた。
「お前って器用だよな」
「そうですか?」
「街の外に出る依頼で初めてちゃんとした食事を食べたぞ」
確かに俺の周りでは当たり前になっているが、普通に考えたらこの状況でピザを食べることなんてないからな。
「皆さんが作らないだけですよ」
「いやいや、このピザってやつも初めて食べたからな。色々旅してきたが見たことも聞いたこともない料理どこで覚えたんだ?」
不意をつくような質問に息を呑んだ。
俺は答えに戸惑っていると、緊張感をかき消すかのように怒鳴り声が聞こえてきた。
「わしを除け者にして何を食べているんだ」
「いや、これはムッシェル様のお口に合わないと思いまして……」
「そんなことは関係ない! はやくわしの分も持ってこんか!」
その声は聖教ギルドから派遣されて来た男だった。
救護施設の方から聞こえるその声はチーズの匂いに釣られて気になったのだろう。
「聖教ギルドの人間は糞ばかりだな。ただの神官スキル持ちがそんなにえらいのかよ」
ハワードはイラつきを隠せないようだ。
しばらくすると冒険者ギルドの職員が俺の元を訪ねて来た。
「ケントくん、少しいいですか?」
「どうされました?」
「ピザの余りってまだありますか?」
ギルドの職員があまったピザがないか聞きに来たのだ。
ピザを作ってから少し時間が経っており、他の冒険者達が全て完食していた。
「すみません、全て食べ終わってないですね」
「そうですか……わかりました。 はぁ……」
ギルドの職員は露骨に落ち込んでいた。あのまま戻ったらあの人はまた怒られるかもしれない。
ギルド職員が救護施設に戻ろうと向きを変えるとハワードは止めた。
「俺があいつに言ってくる」
「いえ、ハワードさんにそんなことさせられません」
「いや、流石にあれは横暴だぞ」
「ですが……」
今ここで問題を作っても解決しないのは目に見えている。ああいう人は常に文句を言うからな。
「材料はまだあるので作りましょうか?」
「良いんですか!?」
「すぐに出来るので待っててください」
俺は窯の元へ戻り、すぐにピザを作り直した。
焼き上がったものをギルド職員に持っていくと職員はほっとした顔をしていた。
「ケントくんありがとうございました」
ギルド職員は急いで聖教ギルドの救護施設に戻って行った。
社会人だった頃は理不尽なことにも振り回されていたからな。あのギルド職員の人が今回一番大変なのかもしれない。
「ほんとにケントはお人好しだな」
「あの方がかわいそうですからね。悪いのは聖教ギルドの人ですからね」
「そうか……。まぁ、ケントがそれで良いって言うならいいけどな」
「さぁ、後はお風呂でも入って休みますか」
「ふぇ!?」
俺の発言にさらにハワードは驚いていた。
「じゃあ、準備してきます」
その後俺が準備したお風呂にハワードも含めた冒険者達は驚き魅了されていた。
「何で皆さんこんなに……」
「そりゃーみんな異世界食堂に通っているやつらだからな!」
異世界食堂に通っている冒険者達であれば俺がレシピを作っているのは当たり前に知っていた。
「ほらこっちは準備できたぞ」
「えっ? ハワードさんまで!?」
俺は事前に窯を作れるか冒険者ギルドのスタッフに話していたハワードが作っていたらしい。
一応この人隣国の王位継承権第一位の男のはずだが……。
俺もせっかくの屋外だから異世界食堂の新作メニューも含めて窯を使った料理に挑戦してみたかったのだ。
「じゃあ、みんな来てもらってもいい?」
今回は異世界食堂で働く料理スキル組は来ていないが、他の子ども達でもある程度作れそうなメニューを考えていた。
今回作るのは主食にピザ、メインにローストビーフ、スープはポトフ、デザートは焼きりんごの予定だ。
戦う前だからこそしっかりとした食事を準備する予定だ。
ピザ以外は基本的に放置していればできる仕組みだ。
「今からピザを作ってもらうけど少し見ててね」
俺は事前に作っておいた生地をおおよそ均等になる厚さまで手を使って伸ばした。
「伸ばしたらここにあるソースと野菜、チーズの順番で乗せていきます」
俺はトマトソースにチーズとトマトを並べ、上からバジルを乗せた。
食材自体は前世と特に問題はなく、チーズは若干ヨーグルトの水分を取り除いたようなものだが、イメージとしてはモッツアレラチーズに似ていた。
チーズも存在しているのに異世界では乳製品をあまり食べないことに驚きだ。
最近ではやっとパスタで浸透してきているぐらいだ。
「あとは釜の中に入れて焼けるのを待って完成です」
しばらく釜の前に待機していると、良い匂いが漂い冒険者達もソワソワとしてる。
「ケントくんそれまだ食べられないの?」
すぐに声をかけてきたのは、破滅のトラッセンのリチアだった。
彼女は焼く前のピザを食べようとしていたのだ。
「まだダメです!」
「えー!」
お預けされたリチアは露骨に落ち込んでいた。まだ焼けてもいないのにお腹を壊したいのだろうか。
「あっ、なら子ども達じゃ焼くのは危ないので手伝ってください。そしたら自分が食べたい分だけ作れますよね?」
「えっ、いいの!」
俺がリチアに提案すると、他の冒険者達がゾロゾロと名乗り出てきた。
「いや、それは俺がやる!」
「いやいや、そこは剣士の俺だろ!」
「剣士は関係ないですが……」
彼らも空腹のせいか、異世界食堂の新メニューに釣られてなのか、自ら食事の準備を手伝おうとしていた。
普段の冒険者であれば中々見られない姿に遠くで見ていたカタリーナも驚いている。
「せっかくなのでみんなで作ってはやく食べましょうか」
この際セルフサービスにすることで手が足りない部分を補うことにした。
「おう、そうだな」
「やっぱり剣士が必要なんだな!」
「いや、だから剣士は必要ないって……」
冒険者達は戦闘前夜にも関わらず、張り詰めた空気感もなく普段通りに過ごすことができた。
♢
食事の準備が終わり俺はなぜかハワードと食べていた。
「お前って器用だよな」
「そうですか?」
「街の外に出る依頼で初めてちゃんとした食事を食べたぞ」
確かに俺の周りでは当たり前になっているが、普通に考えたらこの状況でピザを食べることなんてないからな。
「皆さんが作らないだけですよ」
「いやいや、このピザってやつも初めて食べたからな。色々旅してきたが見たことも聞いたこともない料理どこで覚えたんだ?」
不意をつくような質問に息を呑んだ。
俺は答えに戸惑っていると、緊張感をかき消すかのように怒鳴り声が聞こえてきた。
「わしを除け者にして何を食べているんだ」
「いや、これはムッシェル様のお口に合わないと思いまして……」
「そんなことは関係ない! はやくわしの分も持ってこんか!」
その声は聖教ギルドから派遣されて来た男だった。
救護施設の方から聞こえるその声はチーズの匂いに釣られて気になったのだろう。
「聖教ギルドの人間は糞ばかりだな。ただの神官スキル持ちがそんなにえらいのかよ」
ハワードはイラつきを隠せないようだ。
しばらくすると冒険者ギルドの職員が俺の元を訪ねて来た。
「ケントくん、少しいいですか?」
「どうされました?」
「ピザの余りってまだありますか?」
ギルドの職員があまったピザがないか聞きに来たのだ。
ピザを作ってから少し時間が経っており、他の冒険者達が全て完食していた。
「すみません、全て食べ終わってないですね」
「そうですか……わかりました。 はぁ……」
ギルドの職員は露骨に落ち込んでいた。あのまま戻ったらあの人はまた怒られるかもしれない。
ギルド職員が救護施設に戻ろうと向きを変えるとハワードは止めた。
「俺があいつに言ってくる」
「いえ、ハワードさんにそんなことさせられません」
「いや、流石にあれは横暴だぞ」
「ですが……」
今ここで問題を作っても解決しないのは目に見えている。ああいう人は常に文句を言うからな。
「材料はまだあるので作りましょうか?」
「良いんですか!?」
「すぐに出来るので待っててください」
俺は窯の元へ戻り、すぐにピザを作り直した。
焼き上がったものをギルド職員に持っていくと職員はほっとした顔をしていた。
「ケントくんありがとうございました」
ギルド職員は急いで聖教ギルドの救護施設に戻って行った。
社会人だった頃は理不尽なことにも振り回されていたからな。あのギルド職員の人が今回一番大変なのかもしれない。
「ほんとにケントはお人好しだな」
「あの方がかわいそうですからね。悪いのは聖教ギルドの人ですからね」
「そうか……。まぁ、ケントがそれで良いって言うならいいけどな」
「さぁ、後はお風呂でも入って休みますか」
「ふぇ!?」
俺の発言にさらにハワードは驚いていた。
「じゃあ、準備してきます」
その後俺が準備したお風呂にハワードも含めた冒険者達は驚き魅了されていた。
11
あなたにおすすめの小説
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる