278 / 281
第一章 外れスキル

278.それぞれの気持ち ※一部アリミア視点

しおりを挟む
 あれから数日が経ち、ついにアスクリス公爵家当主の処刑が行われる日になった。

「今日アリミアはどうするんだ?」

「私は今日ミィちゃんと予定があるよ」

「ならミィちゃんと一緒に食べてね」

 アニーはアリミアに袋にたくさん入ったクッキーを渡した。

 アリミアは処刑を見に行かない選択をした。

 彼女が選んだ選択なら俺達家族は尊重することにしている。

 ちなみに俺もどうするか迷ったが、今も反応がないケトのために見届けることにした。

「じゃあ、行ってくるね!」

 アリミアは朝食を食べ終わると元気に家から出て行った。

「じゃあ、俺達も準備しようか」

 どこか重苦しい空気の中、俺達は着替えを済まして広場の中心に向かった。

「ねぇ、ケント……」

「どうした?」

 あれだけ家族の思いを晴らしたいと言っていたラルフも、今は重苦しい表情をしていた。

「オラ達医療従事者は何のためにいるんだろうね」

「それは命を助けるため。そして、その人の人生を支えるためだと俺は思っているよ」

「ならこのオラの気持ちは正しいのかな……。家族はあの公爵に殺されたけど、公爵のために何かできなかったのかな」

 その言葉にどこか俺も引っかかっていた。

 ただ死刑にしてしまえば簡単だが、公爵のことを考えればちゃんとした社会に更生させる。

 つまりリハビリという選択肢もあった。

 犯罪者を監獄に収容するのではなく、復帰できるように何かしらの役割を与えて社会の一部として活躍させるという手もあるのは聞いたことがある。

「難しい話だよね。ロニーさん達も息子さんのことを受け入れるのに時間はかかったし……何で命を大切にできないんだろうね」

 どこの世界にも殺人に手を染める人もいれば、必死に命を助けようとする人がいる。

 俺達がどうこうできる問題ではない。ただ、今後も命を軽く見ているこの異世界で異世界病院は選択をしないといけない時が来るのだろう。

 俺達が話していると笛の音が鳴り、ついに始まった。





「ミィちゃん遊ぼう!」

 私は孤児院に着くといつものように声をかけた。

 別に遊ぶ約束をしているわけでもないが、私の中で父様が死ぬことを受け入れられないのかも知れない。

 だからお兄ちゃん達と一緒に行かずに孤児院に来た。

「何で来たの?」

「えっ? ミィちゃんと遊ぶためだよ」

 ミィは何を言っているのだろう。

 するとミィは怒って私の方に近づいてきた。

――ドン!

 気づい時には私はミィに押し倒された。

 何かいけないことをしているのだろうか。

「何で公爵様の子どもここに来てるのよ!」

 私は今までどうするべきなのかミィに相談していた。

 でもミィはわからないのか何も答えなかった。

「痛いよ……」

「痛いのは当たり前だよ! アリミアちゃんは羨ましいよ……」

「なんで?」

「私はお母さんにお別れも言えずに捨てられたのよ!」

 どこか私の胸は重く何かに掴まれているようだ。

「私のスキルでは必死にお母さんとお父さんに声をかけても繋がらないの! 顔も思い出せない二人には私の声はもう届かないの!」

 私の顔に冷たい雫が落ちてきていた。

「おい、ミィやめろ!」

 遠くで遊んでいたお兄ちゃん達が馬乗りになるミィを止めた。

「ミィちゃん……」

「だから最後のお別れぐらい行きなさい! あなたはまだ捨てられた私達と違うんだから……」

 ミィはそのまま泣きながらお兄ちゃん達に連れて行かれた。

「アリミアちゃんごめんね」

「ううん、私がいけないから」

「ミィのあのスキルは毎日両親を思って使えるようになったんだ。必死に毎日欠かさずお母さんとお父さんに声をかけてたんだ。だからこれからも仲良くしてあげてね」

 私はちゃんと考えていなかった。

 毎日ミィに相談して辛い思いをしているのは私じゃなくてミィだった。

「私行ってくるよ!」

 急いで立ち上がると王都の広場に向かって駆け出した。

しおりを挟む
感想 120

あなたにおすすめの小説

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...