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第一章 外れスキル
279.死刑執行 ※一部アスクリス公爵視点
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アスクリス公爵は近衛騎士団団長に引きずられながら処刑台に歩いてきた。
その姿は以前パーティーで見かけた時よりも痩せこけていた。
あんなに歩けなくなっているとは思いもしなかった。
「あれが有名だった公爵なんてね……」
女性達は処刑というよりは、公爵の美顔を見に来たのだろう。
ただ、今の姿は骨に皮がついているような見た目だ。
「ケント……オラ達間違えていないよね」
「ああ、大丈夫だ。俺達が関わらなくても結果は同じだったんだ」
心配そうにラルフは俺の手を握って来た。その手は汗で濡れて震えていた。
ゆっくりと歩く公爵は少しずつ死の宣告に自身から近づいていた。
しゃがみ込むと台に頭のみを出して顔を上げた。
「ヒイイィィィ!」
「目を瞑りなさい」
不気味な顔は必死に何かを探していた。
目はギョロギョロと動いており、俺達を探しているのだろうか。
目があった女性はその場で尻込み、子どもは目を塞がれていた。
「ケント……」
「俺達は間違えていない。大丈夫!」
広い王都は静まり返り、風の音だけが聞こえていた。
再び笛の音が鳴り響くと近衛騎士団団長は話し出した。
「マーベラス・アスクリス、今だけ話すことを許そう。何か最後に言い残すことはないか」
近衛騎士団団長の声に公爵はピクリと動いた。
そして、ニヤリと笑った。
「首が落ちても俺はいつでもお前ら全員を呪い殺してやる。先に天空の世界で待っている」
前を向いているはずだが、どこか俺達に言っていると感じた。
死んでも人を殺そうとする気持ちが全身を震え上がらせた。
言葉が終わると同時に騎士の剣は輝いた。
あまりの明るさに目を閉じた瞬間、剣は大きく振り下ろされた。
一瞬の出来事で気づかなかったが、公開処刑はあっさりと幕を閉じた。
公開処刑を見ていた子ども達は自分達の選択を考えさせられる者、家族に別れを告げる者、立派な門番になって国を守ると決意するものなど、人生の転機になったのは言うまでもない。
ただ、この事件と公爵の言葉はクレイウェン王国の歴史として残ると同時に、異世界病院の存在を国に広く知れ渡る出来事になった。
♢
「ははは、あいつらあんなスキルに騙されてやがって!」
私は忌々しい子ども達のスキルで死を覚悟した。
だから魔力を全て使って王都全体に仕掛けていた闇属性魔法を発動させて記憶を操作した。
本当はこの国を乗っ取るために集めた魔力だったが、あんなことに使うとはな……。
「偽物の私はあっけなかったが、あの姿は実に不気味だな。これで新しい――」
「あー、やはりあの人形は偽物だったんですね」
突然の声に振り返るとそこには誰もいなかった。あるのは物陰だけだ。
「お前は誰だ?」
姿を現したのは外套を被った男と思われる背丈の人だ。
「ふふふ、私はその辺にいる司書ですよ」
どこか不気味なその男は近づいてくると私の顔をみていた。
「せっかく魔人になったのにこんなに魔力が無くなってはもったいない」
「おい、私が魔人なのをなぜ知っている?」
私は実の父親を殺して魔人になった。
殺したと言っても私を道具のように扱っていたあいつが悪いんだ。
「さぁ? それはもう死ぬ運命のあなたに言っても仕方ないことです」
「何言ってんだ? 死ぬのはお前――」
そうだ……私には今、魔力がほとんどないのだ。
近づいてくると男はそっと私の肩に手を置いた。
「おい、私をどうするつもりだ」
「美味しくいただきます」
「へっ?」
男は大きく口を開くと私を頭から咥えた。
「うあああぁぁぁぁぁぁ!!」
路地裏では男の叫び声が聞こえたが、誰にも聞こえなかった。
「んー、これでも魔人になれないのか……。やっぱりあの子を食べるしかないのかな?」
その姿は以前パーティーで見かけた時よりも痩せこけていた。
あんなに歩けなくなっているとは思いもしなかった。
「あれが有名だった公爵なんてね……」
女性達は処刑というよりは、公爵の美顔を見に来たのだろう。
ただ、今の姿は骨に皮がついているような見た目だ。
「ケント……オラ達間違えていないよね」
「ああ、大丈夫だ。俺達が関わらなくても結果は同じだったんだ」
心配そうにラルフは俺の手を握って来た。その手は汗で濡れて震えていた。
ゆっくりと歩く公爵は少しずつ死の宣告に自身から近づいていた。
しゃがみ込むと台に頭のみを出して顔を上げた。
「ヒイイィィィ!」
「目を瞑りなさい」
不気味な顔は必死に何かを探していた。
目はギョロギョロと動いており、俺達を探しているのだろうか。
目があった女性はその場で尻込み、子どもは目を塞がれていた。
「ケント……」
「俺達は間違えていない。大丈夫!」
広い王都は静まり返り、風の音だけが聞こえていた。
再び笛の音が鳴り響くと近衛騎士団団長は話し出した。
「マーベラス・アスクリス、今だけ話すことを許そう。何か最後に言い残すことはないか」
近衛騎士団団長の声に公爵はピクリと動いた。
そして、ニヤリと笑った。
「首が落ちても俺はいつでもお前ら全員を呪い殺してやる。先に天空の世界で待っている」
前を向いているはずだが、どこか俺達に言っていると感じた。
死んでも人を殺そうとする気持ちが全身を震え上がらせた。
言葉が終わると同時に騎士の剣は輝いた。
あまりの明るさに目を閉じた瞬間、剣は大きく振り下ろされた。
一瞬の出来事で気づかなかったが、公開処刑はあっさりと幕を閉じた。
公開処刑を見ていた子ども達は自分達の選択を考えさせられる者、家族に別れを告げる者、立派な門番になって国を守ると決意するものなど、人生の転機になったのは言うまでもない。
ただ、この事件と公爵の言葉はクレイウェン王国の歴史として残ると同時に、異世界病院の存在を国に広く知れ渡る出来事になった。
♢
「ははは、あいつらあんなスキルに騙されてやがって!」
私は忌々しい子ども達のスキルで死を覚悟した。
だから魔力を全て使って王都全体に仕掛けていた闇属性魔法を発動させて記憶を操作した。
本当はこの国を乗っ取るために集めた魔力だったが、あんなことに使うとはな……。
「偽物の私はあっけなかったが、あの姿は実に不気味だな。これで新しい――」
「あー、やはりあの人形は偽物だったんですね」
突然の声に振り返るとそこには誰もいなかった。あるのは物陰だけだ。
「お前は誰だ?」
姿を現したのは外套を被った男と思われる背丈の人だ。
「ふふふ、私はその辺にいる司書ですよ」
どこか不気味なその男は近づいてくると私の顔をみていた。
「せっかく魔人になったのにこんなに魔力が無くなってはもったいない」
「おい、私が魔人なのをなぜ知っている?」
私は実の父親を殺して魔人になった。
殺したと言っても私を道具のように扱っていたあいつが悪いんだ。
「さぁ? それはもう死ぬ運命のあなたに言っても仕方ないことです」
「何言ってんだ? 死ぬのはお前――」
そうだ……私には今、魔力がほとんどないのだ。
近づいてくると男はそっと私の肩に手を置いた。
「おい、私をどうするつもりだ」
「美味しくいただきます」
「へっ?」
男は大きく口を開くと私を頭から咥えた。
「うあああぁぁぁぁぁぁ!!」
路地裏では男の叫び声が聞こえたが、誰にも聞こえなかった。
「んー、これでも魔人になれないのか……。やっぱりあの子を食べるしかないのかな?」
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