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第一区画
2.庭に穴が空いたそうです
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眠りに落ち、心地よく寝ていると俺の耳を刺激する雑音で目を覚ました。聞こえていたのはインターホンの音だ。
特にネットで買い物もしていないのに、なぜインターホンがなっているのか不思議に思いながらも、扉を開けると、明るい日差しに俺の目はチカチカとしていた。
何か立っている気もするが俺の目は日差しに邪魔されていた。
次第に視界が慣れてくると隣の家のおばさんが立っていた。なぜ、ずっと立っていたのか不気味に思いながら俺は笑顔をつくる。
睡眠を妨害したおばさんに殺意が湧いているが、昔から良くしてもらっているから仕方ない。
「おばさんおはようございます。朝早くからどうしたんですか?」
「慧くんおはよう。それにもうそろそろでお昼だよ?」
ニコニコしながらも内心は早く要件を話せとイライラしていた。
俺は大学生の時に、俺以外の両親と妹の家族を事故で亡くしている。
このおばさんはそんな俺のために、頻繁に料理を作ってお裾分けしてくれる第二の母みたいな人だ。ただ、俺の貴重な睡眠時間を邪魔するのは許せなかった。
お昼前は休日の俺にとってはまだ早朝なのと同じだ。
表情を読み取ったおばさんは訪ねてきた目的を話し出した。きっと俺の口角がピクピクしていたのだろう。
「これよかったらお昼に食べて」
おばさんから渡されたのは大量にあるおかずだった。お昼に食べられる量ではないが、久々の優しさに触れて自然と笑顔が溢れる。
決して仕事で手に入れた愛想笑いではないと思いたい。
「あー、懐かしいな」
「慧くんいつも仕事で忙しそうだったからね。昨日は普段よりウキウキしていたから休みなのかと思ってね」
「……」
ひょっとしたら、第二の母親じゃなくてストーカーだったのかもしれない。
そう思うとまた口角がピクピクも引くついている。やはり今までの笑顔は愛想笑いだった。
「そんなことより庭に大きな穴が空いているけど何か埋める気だったの?」
「穴……ですか?」
ついにこのおばさんも認知――いや、言うのはやめよう。
おばさんの話ではどうやら庭に大きな穴が空いているらしい。
庭の管理なんて母が死んでから何もやっていないから穴が空いていることすらも知らなかった。
3日前に洗濯をした時にはなかったはずだ。
「あー、気晴らしに花でも埋めようと思って土をほぐしていました」
「あっ、そうなのね。昔お母さんが綺麗な花を植えていたのが懐かしいわね」
「そのための庭でしたね」
母は家庭菜園や花を庭で育てるのが好きだった。近所でも見に来る人がいるぐらい庭は綺麗だった。
そんな庭は今はもうなく、ただの荒れ果てた荒地に近い。
「てっきり何かを隠したいのかと思ってたわ。嫌な勘違いね」
このおばさんは俺が死体か何かを隠しているのかと思ったのだろうか。知らない間にサスペンスドラマを見すぎておかしくなったのか。
ひょっとしたらニュースによく出てくる、近隣の人のインタビューも狙っているのかもしれない。
「花を植えてみようかと思ったけど、無理だと思って諦めたところなんですよ。それよりご飯ありがとうございます」
全く花を植える気もないけど、早く寝たい僕は話を終わらせることにした。
正直あの日のことを思い出したくもない。
「いえいえ、何かあったらお隣さんだし声をかけてね」
何かあったらってそれは今だよ。早くここから立ち去って寝かせてくれと俺は願った。しかし、俺の思いは砕け散った。
やっと解放されたと思ったが今度は眠気も来ない。おばさんの会話に付き合わされたら、完全に目が覚めてしまった。
立ち話で眠気も覚めた俺はコーヒーを片手に庭に出ることにした。やはりさっき言っていたおばさんの話が頭から離れない。
「大きな穴って埋め……熱っ!?」
庭に出ると驚きのあまり持っていたコーヒーカップを斜めにしていた。足の上に落ちた熱々のコーヒーに現実に戻された。
目の前には今日の休みを一日中使っても、埋めて解決できないほどの穴が空いていた。ほぼ、穴が空いているというよりは、庭が丸ごとなくなっているのに近い。
近くにコーヒーカップを置き、穴に近づいた。大きな穴に見えていたが、よく見ると階段みたいな段差がいくつかあった。どうやら中に入れる仕組みになっているようだ。
「これって降りても大丈夫なのか?」
ひょっとしたら防空壕が地下に残ってたのかもしれない。そんなことを思い、俺はジャージにサンダルという軽装で穴の中を降りていく。
「防空壕があるって聞いたこともないよな?」
明らかに人が短時間で空けられる穴ではないことは気づいていたが、その時はなぜか好奇心に駆られていた。
壁に手を触れるとコンクリートのようなもので固められており、意図的に作った人工物のように感じた。
「そもそも防空壕ってトンネル構造になってたか?」
防空壕にしては先が続いており、真っ暗だが中は空洞で小さな洞窟となっている。
「誰かいたりしますかー?」
声を出すと中で響き、狭い空間ではないことに気づいた。
そのまましばらく歩いていると急に声が聞こえた。
正確に言うと耳から聞こえたのではなく、直接脳内に響くAIのようなデジタルの声だ。
【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、ステータスが一部上昇します】
これが初めて俺が手に入れた能力だった。
特にネットで買い物もしていないのに、なぜインターホンがなっているのか不思議に思いながらも、扉を開けると、明るい日差しに俺の目はチカチカとしていた。
何か立っている気もするが俺の目は日差しに邪魔されていた。
次第に視界が慣れてくると隣の家のおばさんが立っていた。なぜ、ずっと立っていたのか不気味に思いながら俺は笑顔をつくる。
睡眠を妨害したおばさんに殺意が湧いているが、昔から良くしてもらっているから仕方ない。
「おばさんおはようございます。朝早くからどうしたんですか?」
「慧くんおはよう。それにもうそろそろでお昼だよ?」
ニコニコしながらも内心は早く要件を話せとイライラしていた。
俺は大学生の時に、俺以外の両親と妹の家族を事故で亡くしている。
このおばさんはそんな俺のために、頻繁に料理を作ってお裾分けしてくれる第二の母みたいな人だ。ただ、俺の貴重な睡眠時間を邪魔するのは許せなかった。
お昼前は休日の俺にとってはまだ早朝なのと同じだ。
表情を読み取ったおばさんは訪ねてきた目的を話し出した。きっと俺の口角がピクピクしていたのだろう。
「これよかったらお昼に食べて」
おばさんから渡されたのは大量にあるおかずだった。お昼に食べられる量ではないが、久々の優しさに触れて自然と笑顔が溢れる。
決して仕事で手に入れた愛想笑いではないと思いたい。
「あー、懐かしいな」
「慧くんいつも仕事で忙しそうだったからね。昨日は普段よりウキウキしていたから休みなのかと思ってね」
「……」
ひょっとしたら、第二の母親じゃなくてストーカーだったのかもしれない。
そう思うとまた口角がピクピクも引くついている。やはり今までの笑顔は愛想笑いだった。
「そんなことより庭に大きな穴が空いているけど何か埋める気だったの?」
「穴……ですか?」
ついにこのおばさんも認知――いや、言うのはやめよう。
おばさんの話ではどうやら庭に大きな穴が空いているらしい。
庭の管理なんて母が死んでから何もやっていないから穴が空いていることすらも知らなかった。
3日前に洗濯をした時にはなかったはずだ。
「あー、気晴らしに花でも埋めようと思って土をほぐしていました」
「あっ、そうなのね。昔お母さんが綺麗な花を植えていたのが懐かしいわね」
「そのための庭でしたね」
母は家庭菜園や花を庭で育てるのが好きだった。近所でも見に来る人がいるぐらい庭は綺麗だった。
そんな庭は今はもうなく、ただの荒れ果てた荒地に近い。
「てっきり何かを隠したいのかと思ってたわ。嫌な勘違いね」
このおばさんは俺が死体か何かを隠しているのかと思ったのだろうか。知らない間にサスペンスドラマを見すぎておかしくなったのか。
ひょっとしたらニュースによく出てくる、近隣の人のインタビューも狙っているのかもしれない。
「花を植えてみようかと思ったけど、無理だと思って諦めたところなんですよ。それよりご飯ありがとうございます」
全く花を植える気もないけど、早く寝たい僕は話を終わらせることにした。
正直あの日のことを思い出したくもない。
「いえいえ、何かあったらお隣さんだし声をかけてね」
何かあったらってそれは今だよ。早くここから立ち去って寝かせてくれと俺は願った。しかし、俺の思いは砕け散った。
やっと解放されたと思ったが今度は眠気も来ない。おばさんの会話に付き合わされたら、完全に目が覚めてしまった。
立ち話で眠気も覚めた俺はコーヒーを片手に庭に出ることにした。やはりさっき言っていたおばさんの話が頭から離れない。
「大きな穴って埋め……熱っ!?」
庭に出ると驚きのあまり持っていたコーヒーカップを斜めにしていた。足の上に落ちた熱々のコーヒーに現実に戻された。
目の前には今日の休みを一日中使っても、埋めて解決できないほどの穴が空いていた。ほぼ、穴が空いているというよりは、庭が丸ごとなくなっているのに近い。
近くにコーヒーカップを置き、穴に近づいた。大きな穴に見えていたが、よく見ると階段みたいな段差がいくつかあった。どうやら中に入れる仕組みになっているようだ。
「これって降りても大丈夫なのか?」
ひょっとしたら防空壕が地下に残ってたのかもしれない。そんなことを思い、俺はジャージにサンダルという軽装で穴の中を降りていく。
「防空壕があるって聞いたこともないよな?」
明らかに人が短時間で空けられる穴ではないことは気づいていたが、その時はなぜか好奇心に駆られていた。
壁に手を触れるとコンクリートのようなもので固められており、意図的に作った人工物のように感じた。
「そもそも防空壕ってトンネル構造になってたか?」
防空壕にしては先が続いており、真っ暗だが中は空洞で小さな洞窟となっている。
「誰かいたりしますかー?」
声を出すと中で響き、狭い空間ではないことに気づいた。
そのまましばらく歩いていると急に声が聞こえた。
正確に言うと耳から聞こえたのではなく、直接脳内に響くAIのようなデジタルの声だ。
【投資信託"全世界株式インデックス・ファンド"を所持しているため、ステータスが一部上昇します】
これが初めて俺が手に入れた能力だった。
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