62 / 158
第一区画

62. キラーアントの住処 ※一部桃乃視点

しおりを挟む
 俺達はドリアードに教えてもらった、キラーアントの住処を地図を見ながら移動している。俺しか見えない地図に桃乃は不安そうにしていたが強引に連れてきた。

 強引な男って世間では人気だから別に良いだろう。

 森を抜けると目の前には大きな湖があった。

 感覚的に言うと海に近いが、反対側にまた森が見えている。

「琵琶湖みたいですね」

「これが湖だと思えないよな」

 俺達は大きな湖に呆気に取られていたが、その隣には馴染み深いものが存在していた。

「先輩、あれってですよね?」

「ああ、だな」

 湖の隣には俺達がよく知っている穴が存在していた。どこから見ても家の庭に出来ている穴にそっくりだ。

「ひょっとしてあそこに入るんですか?」

 桃乃が言う通り、俺は再度確認すると地図上でも穴を指していた。

「いやー、俺達も穴から来てるけど、いきなり入ると良い思い出がないんだよな……」

 俺の言葉に桃乃も頷いていた。俺も桃乃も初めて異世界に来た時は大変な思いをしている。その穴が今目の前にあるのだ。

「ここに入りますか?」

「いやー、とりあえずキラーアントが出てくるまで待ってみようか?」

 キラーアントの住処であればきっと出て来るはず。そう願いを込めながら俺達は穴の前で待機していた。

――10分後

「中々出ませんね……」

――30分後

「キラーアントって夜行性なのか?」

――1時間後

「あー、もう行くぞ!」

 俺はイライラして、穴の中に入ろうとしていた。

「ちょっと先輩待ってください」

「行く前に食料の確保とこの辺の状況だけは確認しませんか?」

 そんな俺を桃乃は止めた。やはり彼女は慎重派なんだろう。

「穴の中に入ったらいつ出れるか分からないですし、他の穴を探すのも良いと思います」

 確かに桃乃の意見には賛成だ。穴が一つではなければそこからも出てくる可能性がある。

「じゃあ、とりあえずこの辺を散策して、何もなければここに戻ってくる方針でいいか?」

「そうしましょうか」

 まず、1時間を目安にお互いに食料や他に何かないか散策することにした。

「じゃあ俺は池を中心に右へ」

「私は左へ行きます」

 お互いに左右に分かれて移動することにした。





 私は池を中心に左側を散策している。特に景色は変わらないが、池の中心に来る方が木々は少なく、少し外れると森に囲まれている。

 特に池の周囲は何もないため、私は森と池の間を歩くことにした。

「思ったより果物もないな」

 どうやら穴も食料も無いが、何やらゴソゴソとしている生物がいた。

 私はすぐに身を隠し音が鳴っている方を見ていると、犬ぐらいのサイズになった蟻がいた。

 体は黒くなっており、少し硬そうな外観をしている。

「ウィンドカッター」

 隠れて風属性魔法を唱えるが、キラーアントは周りを確認するが特に気にしていないようだ。

 傷ができないことから、体自体が硬い何かに覆われているのは間違いない。

「ウォーターカッター」

 次は水属性魔法のウォーターカッターを唱えた。

 この魔法はウォータージェット切断のように高出力の水を噴射させることで、切断させる方法だ。

 キラーアントの体に向けて唱えると、どうやら効いているのかキラーアントが甲高い叫び声を上げた。

「キィー!」

 どこかその声に危険性を感じた。こういう時に叫ぶ動物は危険信号を仲間に共有する習性を持っている。

 しかし、水属性魔法が優秀なのか高出力のウォーターカッターには耐えられず、身体には大きな穴が空いている。ただ、問題なのはウォーターカッターはMPの消費量が多い。そのためあまり連発はできない。

 しばらく影から見張っていると、キラーアントの鳴き声にかけつけたのか、数匹仲間のキラーアントが現れた。

「ファイヤーボール」

 私は集団で巻き込むように火属性魔法で攻撃した。

 今度は単体よりは周囲を巻き込みやすい火属性魔法が効くのか確認すると、今までで一番良い反応を示している。

 やはり昆虫だからか火は苦手なんだろう。逃げ惑うと仲間にぶつかり、今度は仲間が巻き添いになって燃えていた。

 その後キラーアントが燃え尽き、死ぬまで待つことにした。

「そろそろ大丈夫かな?」

 しばらくすると、キラーアントは動かなくなっていた。まだ少し燃えているが、どうやら倒せたようだ。

「ウォーターボール」

 水属性魔法でキラーアントについている火を消し、改めて死んでいるか確認すると無事に倒せていた。

 体は硬く甲羅のような外観をしており、イメージとしてフライパンを体にくっつけている印象だ。

 鉄やアルミではないが、使えそうな素材なのは間違いない。

 その後、仲間が現れた方へ歩いていくとそこにも穴があった。

 やはり、キラーアントの巣自体はたくさん存在していた。全て繋がっているのかは、中に入ってみなければわからない。

 これ以上キラーアントが出てこないように私は土属性魔法で入り口を封じた。

 他に巣はありそうだが集合時間に近づいているため、私は先輩と待ち合わせしている最初の穴に戻ることにした。
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

合成師

あに
ファンタジー
里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。 そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...